決算3カ月前の15個の節税対策

公開日:2018年12月18日
最終更新日:2022年11月29日

この記事のポイント

  • 節税対策の第一歩は、青色申告の承認を受けること。
  • ムダな経費の計上は、節税ではない。
  • 旅費規程や社宅の活用など、効果のある節税対策を実施することが大切。

 

決算3カ月前の15個の節税対策

会社を強くして経営を安定させるためには、「税引き後の利益」を蓄積して、財務体質を強化していく必要があります。しかし、納税予想をしてみて「税金を支払う余裕がない」「来期の見通しが悪い」ということであれば、次に具体的な節税対策について検討していくことになります。

よく「節税になるから」と消耗品を大量に購入したり、3年ごとに車を買い替えたり、飲食費を盛大に使ったりしてしまうケースがありますが、これらの方法は、会社の現金残高を減らしてしまうことになり資金繰りを悪化させてしまうこともあるため、よい節税対策とはいえません。
確かに必要経費にはなるかもしれませんが、その分お金も出ていくからです。
どの節税対策を行うかについて判断する際には、①資金をなるべく使わない(会社の現金残高を減らさない)こと、②節税効果が高いこと を基準にして判断することが大切です。

ここでは、この2つの視点を踏まえ、決算3カ月前でも実行できる15個の節税対策リストをご紹介します。
自社の状況を踏まえ、税理士に相談しながら、実行の可否を判断しましょう。

(1)使用していない固定資産の除却

実際に使われていないパソコンや机、ロッカー、機械等などあれば処分してしまいましょう。これらは、帳簿に資産として計上されていますが処分することで、除却損を経費に計上することができます。
除却・廃棄には多少費用はかかるかもしれませんが、「スペースをその分空けることができる」などのメリットもあります。
また、償却資産税(償却資産税とは固定資産税のうち、償却資産に課せられる税金)は、持っている償却資産の対象となる資産の金額で決定しますが、償却資産の課税標準額の合計額が150万円未満であれば、免税扱いで課税されることはありません。
したがって、使っていない資産を除却すれば、償却資産税を払う必要もなくなることになります。

(2)各種税額控除の活用

税額控除とは、法人税を直接少なくすることができる制度で、永久免税措置です。
たとえば、中小企業者などが新品の機械などを取得して事業に利用した場合には、その取得価額の7%相当額(法人税額の20%が限度)を、法人税額から差し引くことができ、翌事業年度に繰り越すことができます。
また、試験研究に関する支出についても、手厚い税額控除制度が設けられています。
試験研究費関連の制度は、「一般試験研究費の額に係る税額控除制度」「中小企業技術基盤強化税制」「特別試験研究費の額に係る税額控除制度」の3つから構成されていて、上手に組み合わせて活用すれば、法人税額の50%もの税額控除が可能となります。

(3)1人当たりの飲食交際費の特例適用

法人の事業のために必要な飲食費(取引先との会議の際の飲食費や取引先の接待費)は、損金とすることができます。
ただし、使った分がすべて損金にすることは認められず、税務上の上限が定められています。
資本金1億円以下の法人の場合には、少なくとも800万円まで損金となりますが、1人あたり5,000円以下の飲食費であれば、この800万円の枠にカウントする必要がありません。したがって、1人あたり5,000円以下の飲食費は交際費と区別して「会議費」などの勘定科目を使用し、損金にできるよう管理しましょう。

なお、従業員との新年会は福利厚生費として損金とすることができます。ただし、この場合には全社員を対象とするものであることが前提で、特定の部署の人たちだけの新年会などは対象となりませんので、注意が必要です。

(4)含み損を抱える不要資産の売却

含み損を抱えた固定資産を売却すると、繰越欠損金が出るため、節税になります。
欠損繰越金とは、簡単にいうと「今までの赤字」という意味です。
つまり、今までの赤字が残っている場合には、黒字の金額と欠損金を相殺することができるので、黒字の部分を減らすことができるので、節税となります。
会社の場合には、各事業年度開始の日前10年(平成30年4月1日前に開始した事業年度において生じた欠損金額の繰越期間は9年)以内は繰越欠損金として赤字を計上することができます。

(5)決算セール(ただし、リスクあり)

決算時に原価割れ販売をすることで、棚卸資産の評価損を計上する「決算セール」は、節税対策として使われる方法ではあります。しかし、会社の利益のことを考えれば、少しでも利益が出るように販売する方がメリットはありますし、税務否認される可能性もあります。
また、あまりに安価で販売すると自社のブランドイメージが損なわれるかもしれないというリスクもあります。
これらのリスクを踏まえたうえで、検討する必要があります。

(6)決算日(事業年度)の変更

「急に利益が出ることになった」という時に使える節税が決算期変更という方法です。
決算期を変更することで、今期の決算で多額の納税をする必要はなくなり、約1年の猶予期間ができることになります。そして、その間にできる限りの節税対策を実行していくことになります。
決算を税理士に依頼している場合には、一時的に税理士への報酬が増えるかもしれませんが、長い目で見れば経営状況を予測しやすい流れに変えることができるので、大きなメリットがあります。

(7)社会保険料・労働保険料・固定資産税の未払計上

社会保険料・労働保険料・固定資産税は、支払いが済んでいなくても債務が確定していれば、未払費用として計上することができます。たとえば、社会保険料は、半額を従業員本人が負担し、残りの半額を会社が負担する仕組みですが、会社負担分の社会保険料を未払計上することで、損金に算入することができます。

『社会保険料の金額のうち、会社が負担すべき部分の金額は、その計算の対象となった月の末日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。(法人税基本通達9-3-2)』

(8)未払費用で計上できるものはないか検討

社会保険料・労働保険料・固定資産税以外にも未払計上できるものはないか、検討します。

たとえば、従業員に対する賞与は、支給した時に経費に計上するのが原則ですが、以下の条件を満たせば、未払賞与を計上して、当期の費用とすることができるので、節税となります。

①同時期に賞与の支給を受ける全ての従業員に対して各人別に支給額を通知していること
②通知した日が属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に、通知をした全ての従業員に対してその通知金額を支給していること
③損金経理を行っていること

参照:納税協会「未払計上した決算賞与は損金算入?」

なお、未払賞与の計上は役員賞与では認められません。また、税務調査が入った場合には、他の経費より厳密に判断されますので、注意が必要です。

また、既に請求書が来ていたりサービスの提供を受けたりしているのであれば、実際には支払いが済んでいなくても、税金の計算上経費にすることが可能です。
ただし、未払のものを経費にして、翌期に実際に支払いを行った時に再度経費に計上してしまうというミスには注意しましょう。

(9)減資(資本金を減らす)の検討

資本金の額を減らすと、さまざまなメリットがあります。

・資本金1,000万円未満
まず、会社設立時で大事な税務上の資本金の基準は、「1,000万円未満」であることです。
資本金が1,000万円未満であれば、会社設立後2事業年度、消費税が免税されるからです。

・資本金1億円以下
資本金を1億円以下にすると、少額減価償却資産の特例が利用できる、欠損金の全額繰越控除が適用できるなど、税務上様々な特例が受けることができます。

設立後に資本金が増加していくと、税金が増えていくことがあります。その際判断すべき基準は1,000万円、1億円のラインです。増資する際には、これらの特例について税理士に確認してからにしましょう。

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(10)30万円未満の少額減価償却資産の特例の適用

資本金の額等が1億円以下の法人については、少額の減価償却資産が一定の条件に該当する場合には、取得時に全額損金算入する方法や、一括して3年で均等償却する方法が認められています。

取得価額 中小企業者等 中小企業者等以外の法人
30万円以上 通常の減価償却 通常の減価償却
30万円未満20万円以上 300万円を限度として全額損金算入
20万円未満10万円以上 一括償却(3年間定額償却)可能または300万円を限度として全額損金算入 一括償却(3年間定額償却)可能
10万円未満 消耗品費等として全額損金算入可能

(11)中古の固定資産の購入

「中古のベンツを買うと、節税になる」と聞いたことはないでしょうか。これは、中古の固定資産の償却年数が異なるためです。
通常ベンツの償却年数は6年ですが、中古になると償却年数がグッと短くなるので、早く費用にできるという理由からです。
中古の高級車は、4年経ったところでそれほど市場価格が落ちるわけではありません。しかし、法定耐用年数が短くなるので、かなりの金額を経費にできるのです。
固定資産を購入する時には、中古資産の購入を検討するのがおすすめです。

(12)役員退職金の支給

中小企業において役員退職金は、節税対策上非常に有効です。
課税所得の計算上、退職所得控除を控除できる。会社としては退職金として多額の費用を計上することができますし、退職金は分離課税なのでほかの所得があっても、税率が累進しないなどのメリットがあるからです。
なお、退職金は、株主総会の決議があれば、未払計上によっても損金に計上することができます。

(13)出張旅費や日当を支払うための旅費規程の作成

出張旅費規程を作成すれば、出張手当を支給することができます。
出張手当を支給した場合には、その全額を費用に計上することができますし、消費税計算において、税額控除も可能になります。
注意点としては、出張旅費規程を作成するだけでなく、出張をした証拠の資料もきちんと残しておくこと、全社員を対象とした規程とすることなどです。
税務署によけいな疑念を抱かせないためにも、念には念を入れて証拠資料を残しておくのが賢明です。

(14)中小企業退職金共済への加入

中小企業退職金共済とは、中小企業のための国の退職金制度で、掛金は税法上損金(法人)または必要経費(個人)に参入することができます。
役員や対象となりませんが、従業員の退職に備えて毎月掛金を支払い、節税をしながら、社外に退職金を積み立てることができる制度です。法人企業の場合は損金算入することができますし、個人企業の場合は必要経費として全額非課税となります。

参照:中小企業退職金共済

(15)中小企業倒産防止共済への加入

中小企業倒産防止共済とは、取引先が倒産などした場合に、掛金総額の10倍までの金額の融資が無担保無保証無利子で受けられる制度です。

参照:中小機構「共済制度」

掛金は税法上損金(法人)または必要経費(個人)に参入することができます。そして、掛金を40か月以上支払うと解約手当金が100%戻ってきますので、外部に積立しているのと同じことになります。掛金は年払いと月払いを選択でき、最高で年240万円まで、満額は800万円です。

まとめ

必要のない経費を使えば確かに納税額は減らすことができますが、資金繰りが悪化してしまうこともあり、会社にとってはデメリットしかありません。
自社の状況に最もメリットのある節税対策を行うためには、税のしくみや考え方を知ることが大切です。
そして、そのためには、節税対策について気軽に相談することができる税理士を選ぶことが大切です。
めまぐるしく改正される税制についても、日々知識をアップデートしている税理士に相談すれば、効果的かつリスクのない節税対策を積極的に提案してもらうことができます。

節税対策について相談する

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また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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