セグメント情報とは|実際の財務諸表から分かりやすく解説

公開日:2021年12月30日
最終更新日:2022年03月29日

この記事のポイント

  • セグメント情報とは、売上高、損益などの財務情報を事業や地域などの構成単位に分別したもの。
  • セグメント情報の開示によって、経営者の視点で企業を理解できることが期待されている。
  • セグメント情報は、「マネジメント・アプローチ」という方式で作成される。

 

セグメント情報とは、売上高、利益(または損失)その他の財務情報を製品およびサービスなどの事業や、地域などの構成単位に分別したものをいいます。
セグメント情報の開示によって、財務諸表の利用者が経営者の視点で企業を理解できるようになるというメリットが期待されています。

セグメントとは

セグメント(segment)とは、英語で部分や区分、階層などを意味します。
そして、企業の業種や所属地域などの構成単位(セグメント)に売上高、利益(または損失)、その他の財務情報を分別した情報を「セグメント情報」といいます。

(1)セグメント情報とは

セグメント情報とは、1つの会計主体をいくつかの部門に分割し、各部門別に作成された会計情報です。

連結財務諸表に含まれる子会社は、親会社の支配があるか否かによって判定されますが、親会社とは事業内容が全く異なることがあります。

たとえば、鉄道会社がホテル業や不動産業の子会社を持っていることもあります。
これらの全く事業内容が異なる子会社の財務諸表が合算されると、企業グループ全体の経営実態が捉えにくくなり、投資家に対する情報が不足してしまう懸念があります。

そこで、投資家に対する情報が不足しているために生じる誤解を防止するとともに、多角化した事業内容に関する詳細な情報を提供するための情報として、セグメント情報(企業集団全体の数値を、事業の種類別などに区分した情報)を開示することが求められることとなりました。

(2)事業セグメントとは

事業セグメントとは、セグメント情報の開示における企業の構成単位で、以下の要件すべてに該当するものをいいます。

①収益を獲得し、費用が発生する事業活動に関わるもの
②企業の最高経営意思決定機関が、当該構成単位に配分すべき資源に関する意思決定を行い、またその業績を評価するために、その経営成績を定期的に検討するもの
③分離された財務情報を入手できるもの

企業はまず、収益・費用を生じる事業活動から、企業内部の経営管理の目的で区分し、他と分離された情報を集計している部門を「事業セグメント」として識別します。
そして、それらの売上高、営業利益、資産などの金額を部門別に記載します。

(3)セグメント管理者とは

セグメントの事業活動や業績、予測または計画に関して最高経営意思決定機関に対する報告責任を有する管理者を「セグメント管理者」といいます。
セグメント管理者は、特定の肩書の個人であるとは限らず、会議体であることもあります。
セグメント管理者は、セグメント情報における事業セグメントの識別にあたって考慮する事項の1つとなり、セグメント管理者が責任を負う構成単位を事業セグメントとして区分します。

(4)セグメント区分の方法とは

企業会計基準「セグメント情報の開示に関する会計基準」が2010年4月から適用されたことにより、セグメント情報の作成は、「マネジメント・アプローチ」という方式に変更されています。
「マネジメント・アプローチ」とは、経営上の意思決定を行い、業績を評価するために、経営者が企業を事業の構成単位に分別した方法を基礎とする方法です。

マネジメント・アプローチのメリットとしては、以下のような点を挙げることができます。

①財務諸表の利用者が、経営者の視点で企業を観察することで、経営者の行動を予測し、その予測から企業の将来キャッシュフローの評価を行うことが可能となる。

②マネジメント・アプローチによるセグメント情報は、内部管理資料から作成されるので、追加負担が少ない。

③マネジメント・アプローチによるセグメント情報は、実際の企業構造に基づいて区分を行うので、恣意性が入りにくい。

一方、マネジメント・アプローチについては以下のようなデメリットも指摘されています。

①企業の組織構造に基づく情報であることから、企業間の比較が困難となる。

②内部的に利用されている財務情報を基礎として情報の開示がなされるので、企業の事業活動の障害となる可能性がある。

(5)セグメント情報のメリット

「マネジメント・アプローチ」が導入された結果、報告の対象となるセグメントの区分は、経営者が意思決定や業績評価のために設定している企業の構成単位を基礎として企業ごとに決定されています。また、経営者が区分集計している項目が、セグメント別に開示すべき情報項目となりました。

財務諸表の利用者は、経営者の視点で企業を見ることができ、経営者の行動を予測してその予測を企業の将来キャッシュ・フローの評価に反映することが可能となります。

セグメント情報で経営分析する

セグメント情報は、事業の種類別や所在地別など、会社が設定する部門別に売上高や利益などが区分され注記されています。
このセグメント情報を利用すれば、多角化した企業や海外展開している企業について、事業部門別または活動地域別に区分して、収益性を分析することができます。

(1)事業の種類別セグメント情報(ホンダ)

下記は、ホンダの2020年3月期決算における事業の種類別セグメント情報から、一部抜粋・加工したものです。

本田技研工業
事業の種類別セグメント情報
2019年4月1日 至 2020年3月31日

二輪事業 四輪事業 金融サービス事業 ライフクリエーション事業及びその他の事業
売上収益 2,059,335 9,959,080 2,586,965 325,629
営業利益
(△損失)
285,668 153,323 219,704 △25,058
資産 1,483,888 7,821,499 10,282,136 354,472
減価償却費および償却費 67,512 555,153 823,996 14,742
資本的支出 93,871 498,260 2,248,597 17,611

参照:本田技研工業「決算報告書」

この事業の種類別セグメント情報から利益率をみると、以下のようになることが分かります。

本田技研工業
事業の種類別セグメント情報の利益率(営業利益÷資産)

二輪事業 四輪事業 金融サービス事業 ライフクリエーション事業及びその他の事業
営業利益÷資産 19.3% 2.0% 2.1% △7.1%

営業利益÷資産で見ると、二輪車の利益率は19.3%であり、二輪車の業績がとくに好調であることや、ライフクリエーション事業及びその他の事業においての利益率は赤字になっていることが分かります。このことから、企業全体としては基本的に自動車事業セグメントの資本利益率の高低に依存していることが分かります。

(2)事業の地域別セグメント情報(ホンダ)

下記は、ホンダの2020年3月期決算における地域別セグメント情報から一部抜粋・加工したものです。

本田技研工業
事業の地域別セグメント情報
2019年4月1日 至 2020年3月31日

日本 北米 欧州 アジア
売上収益 2,307,523 8,167,345 561,856 3,207,470
営業利益
(△損失)
△28,162 305,315 14,996 319,565
資産 11,375,801 7,821,499 689,158 319,565

参照:本田技研工業「決算報告書」

この所在地セグメント情報から利益率をみると、以下のようになることが分かります。

本田技研工業
事業の所在地別セグメント情報の利益率(営業利益÷資産)

日本 北米 欧州 アジア
営業利益÷資産 △0.6% 2.7% 2.2% 11.2%

世界の地域別の業績を見ると、日本においては赤字が出ているものの、アジアにおける利益率が目立って高いことが分かります。

まとめ

セグメント情報とは、事業の種類別や所在地別など、会社が設定する部門別に売上高や利益などを区分した情報です。
多角化した企業や海外展開している企業について、事業部門別または活動地域別に区分して収益性を観察することができ、企業集団の財務内容に関する判断について誤解が生じることがないように、また経営者と同じ視点で企業を理解できるようになることが期待されています。

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