低価法とは|評価損の計上で有利になる場合とは

公開日:2022年03月30日
最終更新日:2022年04月08日

この記事のポイント

  • 棚卸資産の評価方法には、原価法と低価法がある。
  • 低価法とは、取得原価と時価を比較し、いずれか低い方の価額で資産計上する方法。
  • 評価方法を選択しない場合には、「最終仕入原価法」が適用される。

 

棚卸資産の評価方法としては、原価法と低価法があります。
一度採用した棚卸資産の評価方法は、特別の事情がない限り継続して適用しなければなりませんので、注意が必要です。

低価法とは

低価法とは、棚卸資産の評価方法です。
生産や販売のために仕入れた原材料や商品、製造途中の半製品などの資産を「棚卸資産」といいます。決算の際には、倉庫などに保管されている商品や原材料などの棚卸資産と、帳簿上で管理されている棚卸資産の数量が一致しているかどうかを確認する作業を行います。この作業を「実地棚卸」といいます。
この実地棚卸を行う目的は、当期の売上原価を算出することです。
この売上原価は、以下の計算式で算出します。

当期の売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高

このように売上原価を確定させることで、当期の利益を正確に把握することができます。
そして、この売上原価を売上から差し引いた「売上総利益(粗利)」は、売上原価とともに損益計算書に記載されます。

(1)低価法と原価法

棚卸資産の売上原価や原材料の消費高などを計算するためには、棚卸資産(期末棚卸資産)の評価をしなければなりません。この棚卸資産の評価方法は、大きく原価法と低価法に区分されます。

原価法 個別法 期末の棚卸資産のすべてについて、その個々の取得価額を評価額とする方法
先入先出法 期末に最も近い時期に取得したものから、順次期末の棚卸資産になるものとみなし、その取得価額を評価額とする方法
総平均法 期首棚卸資産の取得価額の総額と、期中に取得した棚卸資産の取得価額の総額との合計額を総数量で割り、その単価で評価する方法
移動平均法 棚卸資産を取得するたびに、その取得価額とその時にある棚卸資産の取得価額とを総平均したうえで、帳簿価額を定め評価する方法
最終仕入原価法 その事業年度の最後に取得したものの単価で評価する方法
売価還元法 期末棚卸資産の販売価額の総額に、原価率を掛けて評価する方法
低価法 上記の原価法のうち、いずれかの方法によって計算した取得原価と、その事業年度終了時におけるその取得のために通常要する価額(時価)とを比較して、いずれか低い価額を、その評価額とする方法
低価法には翌期首において評価損に相当する金額の戻入れ益を計上する「洗替低価法」と戻入れ益を計上しない「切放し低価法」があるが、税務上は平成23年4月1日以後に開始する事業年度から、「切放し低価法」は廃止されている。

季節商品など陳腐化が激しい商品を扱っている場合には、期末に「在庫の市場価値が陳腐化した」「品質が低下した」などの事情からで帳簿価額を下回ることがあります。

低価法を採用すると、上記のような場合にその下回った価額で在庫の棚卸資産を評価することができ、帳簿価額との差額を費用として計上することが可能となります。
つまり、低価法を採用した結果、原価法と同じ結果となることはあっても不利になることはありません。適用要件を満たしていれば、低価法によって評価損を計上し当期の利益を圧縮することができます。

(2)低価法のメリット「節税効果」

低価法によって取得価額と時価(正味売却価額)との間に差額がある場合には、商品評価損として損金算入することができます。
たとえば、帳簿価格200万円の棚卸資産について時価が180万円と判定された場合には、「200万円-180万円」で差額の20万円を評価損としてその期の費用計上されるため、法人税額を軽減させることができます。

つまり在庫品の時価が取得したときより下がっているのであれば、早期にその商品評価損を計上することができるので、原価法を採用したときより当該事業年度の利益を圧縮し、法人税額を軽減させることができます。
評価法として低価法を選択した場合には、原価法と比較して同じ結果となることはあっても不利になることはありません。
季節商品など陳腐化が激しい商品を扱っている場合には、とくに低価法を積極的に活用することをおすすめします。

(3)低価法のデメリット「翌期は洗替低価法」

翌期の処理としては再び実際の取得価額に振り戻し、前期の評価損の取戻益を計上する洗替低価法が採用されますので、事務的な手間を要する点については注意が必要です。

洗替法とは、棚卸資産の評価損を計上する場合に、前期末に計上した費用を戻入処理する方法です。
具体的には、決算整理前で前期末費用処理した後の残高をすべて一度利益に戻入処理します。
そして、期末に改めて必要な費用計上を行います。

(4)低価法を選択するための手続き

税法上の評価基準は、原価法と低価法の選択適用とされています。
税務署に評価方法の届出または変更承認申請によって低価法を選定すれば、正味売却価額までの切り下げによる評価損が税務上認められることになります。
棚卸資産の評価方法は、事業の種類ごと、かつ商品または製品、半製品、仕掛品、主要原材料および補助原材料その他の棚卸資産の区分ごとに選定し、確定申告の期限までに納税地の所轄税務署長に届け出る必要があります。
この届出をしなかった場合や、選定した評価方法によって評価しなかった場合には、法定評価法である「最終仕入原価法」によって算出した取得価額に基づく原価法が適用されます。

なお、営業循環過程から外れて滞留または処分見込である棚卸資産に関する処分見込価額までの切り下げや、一定の回転期間を超える場合の規則的な帳簿価額の切り下げについては、一定の資産の評価損の要件に該当しない限り、損金算入することはできませんので、注意が必要です。

(5)特定の事実が生じた場合の低価法の適用

棚卸資産については、例外的に以下の特定の事実が生じた場合には、資産の評価損を損金算入することが認められています。

原則:原価法
例外:届出による低価法の適用
例外:「特定の事実」が生じた場合の低価法の適用

「特定の事実」とは、以下のとおりです。

①当該資産が災害によって著しく損傷したこと
②当該資産が著しく陳腐化したこと
③上記①または②に準じる特別な事実
④法的整理の事実(会社更生法などの法定手続きに準じる事実)

低価法の仕訳

これまでご紹介したように、棚卸資産の評価方法には原価法と低価法があります。低価法は、取得原価と期末時点の時価を比較して、いずれか低い方の価額を棚卸資産の価額とする方法です。
会計上は、収益性が低下したときには正味売却価額まで切り下げを行わなければなりません。つまり、①当該資産が災害によって著しく損傷したこと、②当該資産が著しく陳腐化したこと、③上記①または②に準じる特別な事実、④法的整理の事実(会社更生法などの法定手続きに準じる事実)があったときには、帳簿価額を切り下げなければなりません。
なお、税務上は従来どおりに低価法を選定した場合に低価法を採用することができます。

(1)収益性の低下した在庫を評価減した

「新商品の販売により、旧商品300万円が著しく陳腐化した。販売見込額は100万円と見込まれる。」
300万円-100万円=200万円…評価損

借方 貸方
商品評価損 2,000,000 商品 2,000,000

(2)商品が災害によって陳腐化した

「新商品の販売により、旧商品500万円が著しく陳腐化した。見切り処分時価の100万円まで強制評価減を行った。」
商品が災害によって著しく損傷したり、著しく陳腐化したりしたときには、帳簿価格の切り下げを行わなければなりません。
これは、棚卸資産の評価方法に関わらず、です。
時価が著しく低下し、かつ取得原価まで回復できない場合には、時価で評価します。これを「強制評価減」といい、特別損失に計上されます。

借方 貸方
商品評価損(特別損失) 4,000,000 商品 4,000,000

まとめ

低価法は、取得原価と期末時点の時価を比較して、いずれか低い方の価額を棚卸資産の価額とする方法です。
棚卸資産の帳簿価格より時価が下がっていると判定された場合には、差額を評価損としてその期の費用計上することができるので、法人税額を軽減させることができます。
季節商品など陳腐化が激しい商品を扱っている場合には、税理士等に相談して要件を確認したうえで、低価法を選定することをおすすめします。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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