在庫管理とは|基礎知識・決算書との関係

公開日:2019年12月06日
最終更新日:2022年06月15日

この記事のポイント

  • 在庫管理とは、「在庫の最適な量を保有するために管理する」ということ。
  • 売れないままの在庫を抱えていても、保管料や税金も発生するため「負の資産」となってしまう。
  • 必要最小限の在庫量を把握し、その量だけを維持できるようシステム化することが重要。

 

在庫管理というと、以前は「在庫品を壊さずに、しっかり保管する」というような意味で使われていたこともありますが、現在は在庫管理といえば「適切な在庫の量を確保するための管理」のことをいいます。

この記事では、在庫の量を最小に抑え適切に管理するための基礎知識や、在庫管理を効率化する方法、在庫と決算書の関係についてご紹介します。

在庫管理とは

在庫管理とは、簡単にいうと「在庫の最適な量を保有するために管理すること」をいいます。
以前は、在庫は多ければ多いほど安心であるという考えを持つ企業がほとんどでした。
確かに在庫管理を担当している人からすれば、「在庫がないといってクレームなどの問題になるより、在庫をなるべく多く持っていた方が安心だ」と思うのも当然でしょう。さらに言えば、仕入をする際に「まとめて仕入れたほうが安くなる」という事情もありますし、また、「顧客のニーズに迅速に応えるためにも、できるだけ在庫は用意されていた方がよい」という考え方もあります。

これらの事情から、「在庫はできるだけ多い方がよい」と考えるのは無理のないこととも言えますし、確かに以前は、「在庫は多いほどいい、持てるだけ持とう」と思われていた時期もありました。

しかし、在庫を持っていても、その管理や保管にコストがかかるばかりでは、結局在庫の存在が事業の維持に大きな影響を与えかねません。そこで、在庫を最小限に抑え、適切に管理するための「在庫管理」が重要であるという考えが生まれたのです。

(1)在庫管理と生産制約の関係

在庫をなるべく持たないで済むようにするためには、さまざまな事情を考慮したうえで、必要最小限の在庫量を把握し、その量だけを維持できるようシステム化することが必要です。

期末に一斉に在庫削減に取り組む会社がありますが、期末のたびに在庫削減をしなければならない状態こそ、まさに在庫管理ができていないということでもあります。
最適な在庫の量を把握し、在庫の少ない状態を維持するためには、在庫管理システムをベースとして、在庫の補充を出荷に合わせてコントロールできるようにすることが必要です。

そのためには、生産ラインにも配慮する必要があります。
必要な補充量が少ししかなくても、生産ラインを稼働させれば一定量が生産される場合、「生産」という面からだけみれば効率の良い生産ということになりますが、そうなると結果的にこの分の在庫は持たざるを得なくなってしまうわけです。

このような生産に関する制約を排除するためには、「どんなに効率よく生産(もしくは仕入)したとしても、その商品が売れなければ、何も得るものはないのだ」という意識を徹底させ、「売れる分だけ生産することの重要性」を認識することが大切です。

(2)在庫管理の「カンバン方式」

在庫管理の世界で有名なキーワードとして「カンバン方式」という言葉があります。
カンバン方式とは、必要な時に必要な量だけ原材料を購入し、生産途中にある仕掛品を必要に応じて次の工程に供給する方法をいいます。

このカンバン法を採用していることで有名なのが、トヨタです。
トヨタのカンバン方式について、大野氏は以下のように語っています。

いくら車をつくっても、ものが売れない限りお金は入ってこない。つくり過ぎは会社を潰すことになる。つくり過ぎは罪悪だ。売れないものをいくらつくってみても在庫の山をつくるだけ。『売れるものを、売れる時に、売れるだけつくる』ことが大切である。
参照:ビジネス+IT「トヨタ流の「在庫」管理術、リードタイム短縮のための7つのポイント」より一部引用

在庫管理能力を見るための指標

決算書とは、会社の経営状況、経営成績をあらわすものです。
主な決算書としては、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」があり、この3つの決算書を見れば会社の現在の状況を把握することができるようになります。
また、在庫管理のための代表的な指標として在庫回転日数と交差比率がありますので、あわせてご紹介します。

(1)貸借対照表で「在庫」を見る

貸借対照表とは、ある一定の時点における会社の財産や負債の状況をあらわすもので、会社が事業に使う資金をどのように調達し、どのようなかたちで保有しているかが分かります。
貸借対照表では、右側に「資金をどうやって調達したか」が示され、左側には「調達した資金を使って何を買ったか、それともそのまま保有しているか」が示されていて、左右が必ず同じ金額になるような仕組みになっていることから、「バランスシート(B/S)」と呼ばれます。

在庫は、左側の「資産の部」の「棚卸資産」に計上されていますが、もしこのなかに何年も倉庫に眠っているような在庫があれば、それを現金化することは難しいので、それはもはや「資産」とはいえないということができます。

(2)損益計算書で「在庫」を見る

損益計算書とは、会社が儲かったかどうかをあらわす書類で、「どのようにお金を使い、どのように稼いだか」が分かります。
損益計算書は、売上高から売上原価を差し引いた「売上総利益」、売上総利益から「販売費および一般管理費」を差し引いた「営業利益」など、5つの利益に区分してあらわされます。

在庫との関わりで発生する費用は、「販売費および一般管理費」の中に含まれます。たとえば、在庫を保管するためにかかった費用や在庫を管理するために働いた人の人件費などです。また、在庫を移動するためにトラックなどを使った場合には、その車両費もこの中に含まれます。
これらの経費は、少なければ少ないほど会社にとって利益になることは言うまでもありません。在庫を持てば持つほど、その在庫を保管するためのスペースが必要になりますし保管費用や人件費など、在庫にかかる費用は高くなる傾向があります。
在庫が多いということは、「販売費および一般管理費」が増えるということであり、つまりは「営業利益」が減ってしまうということになってしまうのです。

(3)キャッシュフロー計算書で「在庫」を見る

キャッシュフロー計算書とは、一定期間のうちに現金がどれだけ入りどれだけ出ていったかという「現金の流れ」を示す書類です。
キャッシュフロー計算書は、中小企業に作成義務はありませんが、会社の経営状況を適切に把握するためには、現金の流れを知ることは大変重要です。

たとえば、売上が上がると損益計算書のうえでは、黒字、つまり利益が出ていることになりますが、実際の現金が入ってくるのが先であるという場合があります。この時先に支払うべき金額の期日が先に来てしまうと、黒字が出ているのに倒産してしまう、いわゆる「黒字倒産」という事態が起こってしまいます。
この黒字倒産を避けるためには、キャッシュフロー計算書で常に現金の流れに着目することが必要となります。

キャッシュフロー計算書は、「営業活動によるキャッシュフロー」「投資活動によるキャッシュフロー」「財務活動によるキャッシュフロー」の3つの区分があります。

営業活動によるキャッシュフローには、商品の販売による収入や仕入による支出など、企業の本来の活動によるものが区分され、投資活動によるキャッシュフローには、固定資産の取得による支出や売却による収入など投資活動によるものが区分されます。
財務活動によるキャッシュフローには、借入による収入や配当金の支払いなど財務活動によるものが区分されます。

そして、在庫に関わる金額は、「営業活動によるキャッシュフロー」の「棚卸資産の増減額」に計上されます。

前述したとおり、「営業活動によるキャッシュフロー」は、企業の本来の活動によるものが区分されているので、「棚卸資産の増減額」は常にプラスであることを目指すべきです。
在庫金額が増えると在庫にお金がかかったということになるので、営業キャッシュフローはマイナスになってしまいます。
つまり、在庫が会社の現金の流れを悪化させる原因になってしまうこともあるのです。

なお、在庫を顧客に販売すると、損益計算書上は売上となり利益が計上されますが、キャッシュフローという視点からすると実際に入金されないと、依然としてマイナスのままです。
つまり、在庫量を適切に管理するということ以外にも売掛金の回収を早めるという対策も必要となります。

たとえば「仕入後3~6カ月在庫として残っているものは、不良在庫化しつつある在庫」と基準を決め、販売の促進を行ったり、返品を行ったりといった方法について検討します。同じように「6~ 12カ月残っている在庫は不良在庫」と決め、値引きをしたり返品したり、同業者に転売します。最後に「12カ月以上残っている在庫は廃棄在庫」として、廃棄処分や寄附等を行います。在庫の処分を区分や基準を決め、早く実行することは資金繰りの安定につながります。

(4)在庫回転日数で在庫管理能力を見る

在庫回転日数とは、商品を仕入れてからどのくらいの期間でその商品を販売できているのかを示す指標です。

在庫回転日数=棚卸資産÷(売上原価÷365日)

1日あたりの売上原価を計算し、棚卸資産の金額をこの値で割ることで、棚卸資産が何日分の売上原価に相当するか分かります。
この日数が多ければ多いほど在庫をたくさん抱えていることになります。
ちなみに、前述したトヨタの在庫回転日数は約30日超となっています。

(5)交差比率で在庫の投資効率を見る

交差比率とは、投資価値のある商品かどうかを見極める指標です。
ムダな在庫を増やさないためには、「投資するに値する商品なのか」をよく検討することが大切です。これを見る指標が交差比率です。

交差比率 = 売上総利益 ÷ 棚卸資産

交差比率、高ければ高いほど、投資価値のある商品であると判断することができます。

(6)ROAで在庫の効率性を見る

資産を利用してどれだけ利益を上げているかを見る指標にROA(総資産利益率)があります。

ROA=(営業利益+受取利息・配当金)÷総資産×100

同じ利益の会社でもROAが高い方が、より少ない資産で多くの利益を生み出しているということがいえるので、投資家はROAが高ければ、より少ない投資でより高い配当を期待できる会社であると評価します。

このROAを良くするためには、総資産を小さくするか利益を増やすか、もしくは両方に取り組めばよいということになります。

在庫は貸借対照表上、棚卸資産に計上されていて、在庫を保管するための倉庫や設備は固定資産に計上されています。
つまり、在庫管理を実施して不良在庫を削減しようとすれば、これらの資産を売却する可能性が生まれ、新たに利益を生み出すことになります。つまり、在庫を最小限に維持することができるように在庫管理を行うことが、ROAを改善することにつながるわけです。

在庫管理を効率化するためには

これまでは在庫管理の重要性についてご紹介してきましたが、ここでは在庫管理を適切に実施するための方法についてご紹介します。

(1)freee会計とZAICOの活用

クラウド在庫管理アプリZAICOは、クラウド型の在庫管理システムで、スマートフォンのカメラでコードをスキャンするだけで在庫が登録されます。QRコードが発行されるため、スマートフォンやパソコンから誰でも簡単に操作することができ、在庫管理を効率化することができます。

また、クラウド在庫管理アプリZAICOは、「クラウド会計ソフト freee会計」と連携させることができるので、商品を出庫する際に商品に貼り付けられたバーコードまたはQRコードにスマートフォンのカメラをかざすだけで、納品履歴を記録することができます。

さらにこの納品履歴は「スマート在庫管理」上の在庫データに自動的に反映し、商品の在庫不足や在庫過多をリアルタイムで把握することができるだけでなく、「スマート在庫管理」で記録された複数の納品履歴を取引先ごとにまとめ、「freee会計」に1つの売掛金の取引として登録できるようになります。

クラウド会計ソフト freee会計とクラウド在庫管理ソフトZAICOと連携する

(2)税理士による決算カウンセリング

「freee会計」クラウド在庫管理アプリZAICOを連携させることで、商品の在庫不足や在庫過多をリアルタイムで把握し、適切な在庫管理を行うことができるようになりますが、損益計算書や貸借対照表を分析したうえで、在庫管理を経営戦略の一環として検討する際には、税理士による決算カウンセリングを受けるのがおすすめです。

税理士に相談すれば、売上高に対する期末の在庫額の割合を分析し、在庫日数が長い商品を割り出し、早期に改善するための施策はもちろん、売掛金の回収日数や経費削減のポイントなどもあわせてアドバイスを受けることができます。

▶ 在庫管理について相談できる税理士を探す

まとめ

以上、在庫管理の意味や、なぜ在庫管理が必要なのかという理由、在庫と決算書の関係などについてご紹介しました。
企業は、変動費、固定費、売上高のバランスをリアルタイムで把握し、変動費、固定費は少なく利益がしっかり確保できている状態にすることが大切です。
不良在庫が増え、変動費や固定費が増えてしまうと、会社は赤字に陥り経営を維持することが難しくなってしまいます。

このような状況を回避するためにも、適切な在庫管理を実施することは極めて大切なことなのです。適切な在庫管理は、きちんとした経営分析を行ったうえで実施する必要があります。税理士に相談し、経営者や従業員が納得できる形で在庫管理を進めるようにしましょう。

在庫管理について相談する

freee税理士検索では数多くの事務所の中から、在庫管理や、「クラウド会計ソフト freee会計」クラウド在庫管理アプリZAICOの連携について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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