青色申告のために必要な帳簿づけの基礎知識(個人事業主)

公開日:2018年08月01日
最終更新日:2022年06月11日

この記事のポイント

  • 個人事業主は、原則として確定申告をしなければならない。
  • 確定申告をするためには「帳簿づけ」が必要。
  • 帳簿づけの基本「取引」「仕訳」「勘定科目」は知っておこう。

 

個人事業主、フリーランスの方たちは、原則として確定申告をする必要があります。
フリーランスが納めなければならない税金は、所得税、住民税、個人事業税などがありますが、確定申告を行なえば別途改めて手続きをする必要はありません。

確定申告を青色申告で行なうためには、複式簿記で記帳した帳簿が必要となりますが、会計ソフトを活用すれば銀行やクレジットカードの明細が自動転記されますし、簿記の知識などはほとんどなくても、すぐに帳簿づけを行うことができます。

ここでは、会計ソフトを活用するための仕訳、勘定科目、経費のルールなどについてご紹介するほか、帳簿づけの手間を最小限に抑えることができるクラウドの会計ソフトの機能についてもご紹介します。

個人事業主はなぜ帳簿づけが必要か

サラリーマンであれば毎月給料から所得税が源泉徴収され、そして年末に年末調整を行うことで所得税の納税手続きはほぼ完了しています。つまり、実際の納税手続きはすべて会社が行ってくれています。

しかし、個人事業主は、所得税を納めるために必要な手続きをすべて自分で行わなければなりません。この手続きを「確定申告」といいます。

そして、この確定申告を行うために必要なのが、帳簿づけということになります。

帳簿づけは確定申告するために必要

確定申告とは、1年間の「収入」を計算し、その収入を得るためにかかった「必要経費」を計算し、収入から必要経費を差し引き「所得」を計算して税額を求める必要があります。

そして、この必要経費について記録する作業が帳簿づけです。
帳簿づけを行うことで、収入や必要経費を適切に把握し、正確に納税することができるほか、事業の状態(今、どのくらい売上があるか、経費がかかり過ぎていないか)などをチェックすることができます。

確定申告するなら青色申告がおトク!

確定申告には、青色申告と白色申告の2種類がありますが、青色申告を行うと、 青色申告特別控除(最大65万円を所得から差し引くことができるので、その分税金が安くなる)が受けられたり赤字を3年間繰越ができたりするなど、さまざまなメリットがあります。

※青色申告特別控除については、令和2年分から青色申告特別控除額が65万円から55万円に改正されました。
ただし、e-Tax による申告(電子申告)または電子帳簿保存を行うと、引き続き65万円の青色申告特別控除を受けることができます。

参照:国税庁「青色申告特別控除額が変わります!!」

「青色申告のメリット・デメリット・確定申告スケジュール」を読む

青色申告するために必要な帳簿づけ

青色申告を選択すると、複式簿記で帳簿を作成する必要があります。
白色申告を申告する際に必要な帳簿は、「単式簿記」といって青色申告を行なう際に必要な「複式簿記」より簡単に作成することができる帳簿ですが、会計ソフトをつかえば、複式簿記でも簡易簿記でもそれほど手間が変わりません。
したがって、白色申告のメリットは、あまり感じられなくなってしまったので、確定申告は青色申告で行うのがおすすめです。

また、個人事業主が確定申告を行なう際には、自宅兼事務所の場合にはどのように経費を分けるべきなのか、請求書や納品書はどのように作成するべきか、といった会計の基礎知識が必要になります。

帳簿づけの基本「取引」「仕訳」「勘定科目」

帳簿づけの基本は、取引について仕訳をすることです。
取引とは、よくいう「○○会社と取引がまとまった」という場合の取引ではなく、財産が増減した事実のことをいいます。「現金を払う」「商品を仕入れる」「商品を販売する」などの事実は、すべて取引に該当します。

以前のように、手書きで帳簿をつける必要がなくなり、会計ソフトのおかげで作業がとてもシンプルになった経理業務ではありますが、帳簿づけを行う前提の知識として「取引」「仕訳」「貸方」「借方」などといった用語の意味は知っておく方がよいでしょう。

仕訳をする取引は、かならず2つの側面からとらえる
そして、複式簿記で仕訳をする取引は、かならず2つの側面からとらえる必要があります。
たとえば「1,000円の書籍を現金で購入した」という場合には、+書籍という資産が増えた、-1,000円という現金が減ったという2つのことが同時に起きていることになります。

取引は、必ず財産が増減するもので、プラスになったものは原則として「貸方」、マイナスになったものは原則として「借方」に記入されることになります。

「借方」「貸方」というと、どうしても「借りる」「貸す」ということをイメージしてしまいがちです。しかし、最初はシンプルに「借方は左側で、資産がプラスになったもの」、「貸方は右側で、資産がマイナスになったもの」と覚えてしまいましょう。

たとえば、「現金で、売上高1,000円を得た」という取引の場合には、左側の借方に現金が増加したことを記入し、右側の貸方にその理由を記入することになります。
具体的には、現金は資産であり、現金が増えたのであれば借方(左側)に「現金 1,000」と記入し、現金を得た理由の「売上高 1,000」を右側に記入します。

仕訳例) 現金で、売上高1,000円を得た

借方 貸方
現金 1,000 売上高 1,000

なお、会計ソフトに入力する際には、よく発生する取引については、仕訳のパターンをあらかじめ会計ソフトに登録してしまいましょう。
たとえば、「資料として書籍を購入する」という取引が多い場合には、「書籍の購入は、『新聞図書費』で仕訳する」とパターンを登録してしまうのです。
すると、入力する時に「借方 新聞図書費」「貸方 現金」と登録されますので、作業時間を大幅に短縮することができます。

仕訳は「勘定科目」に割り当てます。
「勘定科目」とは、事業の取引を記録するときに、どんな取引があったのかという「性質」をあらわす項目名のことです(※前述した「書籍の購入」について割り当てた「新聞図書費」は、勘定科目の1つです)。

「勘定科目」の代表的なものとしては、収支をあらわす売上、仕入、経費をあらわす旅費交通費、消耗品費、交際費、財産をあらわす工具器具備品、車両運搬具などがあります。

仕訳に勘定科目を割り当てることで、「このお金はどのようにして入ってきたのか」ということを把握できるようになります。
最初は、「どの勘定科目に割り当てればいいのか」と悩む人も多いのですが、勘定科目は自分でルールを決めることができますし、「クラウド会計ソフトfreee会計」なら、直感的に勘定科目を選ぶことができます。

必要経費の勘定科目は自分で設定してもOK

必要経費の勘定科目は、自分で分かりやすい勘定科目を作成することもできます。
しかし、適当に勘定科目を選択すると、どの経費をどの勘定科目で処理したか分からなくなってしまって、業績把握しにくくなってしまいます。
したがって、どの経費をどの勘定科目で処理するかについては、きちんとルールを作り、同一の取引は、毎回・毎年同じ勘定科目に割り当てるようにしましょう。
このように会計データをきちんと記録することで、税務署にもきちんと説明できる資料となりますし、事業を見直すための資料として活用することもできます。

減価償却する経費がある

取引の仕訳は、左側の借方に増加した額を記入し、右側の貸方にその理由を記入するのが原則です。
しかし、10万円以上の固定資産は、基本的に「減価償却」をする必要があります。
減価償却とは「高額で、長期にわたって利用できるもの」を数年にわたって、少しずつ経費として計上する仕組みのことをいいます。
たとえば、事業で使う小型車を購入したとします。小型車は「高額かつ長期にわたって使えるもの」なので、一括で経費にすることはできません。この場合は、減価償却費とし、固定資産ごとに決められた年数(耐用年数)に応じて、少しずつ経費処理することになります。

何をどのような期間で償却していくかは、あらかじめ物品ごとに国が定めていて、これを「法定耐用年数」といいます。
減価償却の計算方法には、定率法と定額法がありますが、個人事業の場合は、基本的に定額法で計算します。減価償却を定率法で計算する場合には、あらかじめ申請を出して許可をとる必要があります。

「節税効果大!減価償却する資産、償却する方法とは」を読む

自宅兼事務所の経費は「按分」で

自宅兼事務所の場合には、礼金、共益費、住宅を借りる際に支払った仲介手数料、家賃に盛り込まれている電気代やガス代などの光熱費などについて、どこまで経費になるかを自分で判断します。
実際に使っている面積や時間で按分して、事業の経費とすることができます。

なお按分する際には、仕事場として使っている場所にはプライベートな私物を置かないようにしましょう。税務調査の対象となった場合に、事業所として使用している部屋から業務とは関係のない私物が出てくると、その場所について事業按分として認めてもらえないこともあります。
また、自動車を事業で使用している場合は、自動車にかかる費用(毎月の駐車場の費用やガソリン代、自動車に掛かる税金や損害保険料など)も経費として認められることが多く、節税効果が高くなりますが、プライベート車と混同している場合は、按分に合わせた分しか経費として認められないことも多いので、注意しましょう。

請求書・納品書等の作成と保管

事業によっては、請求書や納品書の作成が必要になることがあります。
請求書や納品書は、売上の証明ともなる大変重要な書類であり、必ず保管しておく必要があります。

請求書とは
請求書には、請求書発行日付、請求金額、入金期日、振込先を記載します。依頼主が、末締めなど一定期間で区切ってまとめて支払うシステムをとっているのであれば、その締め日に合わせた日付で発行します。

請求書は、仕事の完了や締日などのタイミングで送付する必要があり、請求書を送付しない限りは基本的には支払ってもらえません。
親切な依頼主であれば、毎月「〇日までに請求書を送付してください」と発行を促してくれますが、原則として請求書を送付しない限り入金されることはありません。
請求書の送付漏れにはくれぐれも注意しましょう。

最近ではメールなどにPDFを添付して送るケースなども増えてきています。請求書は依頼主に入金を頂くための重要な書類になりますので、依頼主が見過ごしてしまうことのないよう、確実に受取ってもらえる方法を選択するか、後から「請求書が届いたか」について確認することが大切です。

納品書とは
納品書とは、納品する際に納品物と一緒に同封する書類です。
納品書を同封することで、依頼主は何が送られてきたのかを確認することができます。
納品書には、納品日、納品した商品などの名称、数量、金額などを記載します。

帳簿・領収書等の保存
青色申告の場合、帳簿や決算関係の書類、現金や預金の取引等に関係した書類は7年間保存、その他の書類については5年間保存する必要があります。

領収書類の保管方法ですが、日づけごとにいらない用紙などに貼りつけて月ごとにまとめ、1年分を封筒や紙袋に入れて保管するのがおすすめです。

勘定科目別に保管するのがベストではありますが、あまり厳密に仕訳をしようとすると手間暇がかかり、結局整理しなくなってしまいがちです。
帳簿・領収書の保存は、継続することが大切なので、無理なく続けられる方法で行うようにしましょう。

開業したら個人事業用の銀行口座を開設しよう

個人事業を開業したら、まず個人事業用の銀行口座を開きましょう。
なぜなら、個人事業の経理処理で一番のポイントは、仕事上のお金の出入りとプライベート用のお金の出入りをしっかりと分けることだからです。

事業の採算管理や確定申告の際にも必要となりますので、個人事業用の銀行口座の開設は、なるべく早めに行っておきましょう。できれば、開業前に個人事業用の銀行口座を開設し、事業で使う費用で口座から自動引き落としされるものに関しては、その口座で統一しておくと、後から設立費用なども把握することができます。
そして、事業用のお金の出入りは、なるべく現金をつかわずに、この口座を通して管理するようにします。

freeeでは「freeeカード」を発行しています。freee会計と合わせて使うことで、クレジットカードの決算内容を記帳する作業が簡単になります。

帳簿づけの際に知っておきたい所得税額の計算方法

確定申告をする際には、申告書第一表に「収入金額」と「所得金額」を記入する必要があります。
「収入」とは、入ってきたお金のことで、「所得金額」とは収入から必要経費を差し引いたものです。そして、所得金額は、所得の種類によって記入する箇所が違います。

所得の種類は10種類あって、税金のかかり方は、所得によって異なります。
フリーランスが確定申告をする際の所得の種類は、「事業所得」となります。

所得控除は「所得から控除できる金額」

所得税は、所得に対して課税される税金で、所得金額が少なくなればそれだけ税金の額も少なくなります。
そして、この所得金額を少なくするために知っておきたいのが「所得控除」という制度です。
所得控除とは、納税者個人個人の事情に沿って、一定の金額を差し引くことができる制度のことです。

たとえば、同じ300万円の所得がある人でも、子どもが何人もいるAさんと独身で一人暮らししているBさんがいるとします。
Aさんは、子どもの養育費がかかるのに、独身のBさんと同じ税金が課せられてしまうと、不公平になってしまいます。

そこで、このような個人的な事情を加味し、個々の事情に応じて一定の額を差し引いて、公平な税制となるよう、バランスをとるのがこの「所得控除」の制度です。

所得控除は、雑損控除(災害などの被害に遭った場合に受けられる)や、医療費控除(1年間に支払った医療費が10万円を超えた場合に受けられる)など、14の種類があります。

所得控除は、適用される控除の種類が多ければ多いほど節税効果がありますが、原則として自分で申告をしなければ、適用を受けることができないので、注意して下さい。

税額控除は「税額から控除できる金額」

税額控除とは、一定の条件を満たす場合に、納税額から直接一定の金額を控除する(差し引く)ことができる制度のことです。
身近な税額控除は、住宅ローン控除になります。所得税は、所得から所得控除を差し引いた金額に対して税率をかけて算出しますが、税額控除はこの税率をかけて算出された税額から直接差し引くことができるため、所得控除よりも税額控除のほうが節税効果があり、メリットがあります。

帳簿づけはクラウド会計がおすすめ

確定申告を青色申告で行うためには、複式簿記で帳簿を作成して申告書類を完成させて、確定申告を行なう必要がありますが、会計ソフトを活用することで、難解な複式簿記でもスムーズに帳簿づけを行うことができます。
難解な簿記知識が必要な部分や面倒な計算は、すべて会計ソフトが自動的に行ってくれますし、複数ある帳簿もそれぞれに自動転記されます。

帳簿づけは、ほぼ自動化できる

クラウド会計を利用すると、銀行口座やクレジットカードの連携による、明細の自動帳簿付けが可能となり、経理初心者から経理経験者まで使いやすい入力機能のため、手入力も無理なく完了できます。また、エクセルなどからの一括データ取込み による、他のソフトからのデータ連携も可能です。さらに、取り込んだ領収書や請求書のデータから、「日付・金額・取引先・使用用途」を「クラウド会計ソフトfreee会計」が解析し、書類データを見ながら会計データを登録できるため、会計処理をスムーズに行えます。よって、書類を探す際も、登録日や登録者、メモから検索をすることが可能で、探す手間を短縮できます。

書類(証憑)データも一括管理できる

クラウド会計ソフトの「freee会計」を利用すると領収書や請求書をスキャナでデータ化し、ファイルボックス機能(書類管理機能)を使って取り込むことができます。電子帳簿保存法の改正により、要件を満たしてスキャナ保存をした書類の原本は廃棄できます。もう保管場所の心配やファイリングする手間も必要ありません。

「開業届」が質問に答えるだけで作成できる

個人事業の開業時や、これから青色申告を始めたい場合に作成が必要な「開業届」は用紙の入手から必要事項の記入まで、初めて開業する方にとっては煩雑な作業です。「freee会計」を利用すると、簡単な質問に答えるだけで、すぐに必要な書類を自動で作成できます。クラウドサービスなのでPCからでもスマホからでもいつでもどこでも作業をすすることができます。

まとめ

以上、フリーランスが知っておきたい帳簿の基礎知識についてご紹介いたしました。複式簿記は単式簿記に比べ複雑で一から勉強するのは大変だと思います。ですが、前述したようにクラウドの会計ソフトを使えば個人事業主やフリーランスの方は日々の記帳から確定申告まで簡単にできるようになります。

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freee税理士検索では数多くの事務所の中から個人事業主の開業から帳簿づけ、確定申告手続きまでサポートしてくれる税理士・会計士・社労士の認定アドバイザーに出会うことができます。 また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。 税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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