通勤手当が非課税なのはいくらまで?

公開日:2019年12月17日
最終更新日:2022年07月13日

この記事のポイント

  • 通勤手当とは、自宅から会社までの通勤にかかる費用について支給する手当。
  • 通勤手当の非課税限度額は、1カ月あたり15万円。
  • 通勤手当は、税額や保険料の算定基礎に加えるか否かが複雑なので注意する。

 

通勤手当とは、自宅から会社までの往復の交通費の実費を会社で負担する手当です。バスや電車で通勤していて通勤手当を支給する場合には、月15万円までは所得税は非課税となりますが、15万円を超えると給与として取り扱われ、所得税が課税されます。
マイカー通勤の場合には、その距離によって上限が異なります。
なお、通勤手当は15万円までは所得税は非課税ですが、労働保険料や社会保険料を計算する時には対象には含めて計算しますので、その点についても注意しましょう。

▶経理・記帳をしてくれる税理士を探す

通勤手当とは

通勤手当とは、自宅から会社までの通勤にかかる費用を支給する手当のことをいいます。このような「手当」には、他に残業手当、家族手当、住宅手当、営業手当、見舞金、結婚祝い金などがありますが、税金が課されるものと非課税となるものがあります。
残業手当、家族手当、住宅手当、営業手当は、全額が課税され、通勤手当は月15万円までは非課税ですが、それを超えると課税対象となります。
出張旅費、残業の際の食事代、見舞金、結婚祝い金などは、所得税は非課税です。

税金がかかるもの
(課税)
税金がかからないもの
(非課税)
基本給
残業手当
家族手当
住宅手当
営業手当
歩合給
通勤手当(月15万円まで)
出張旅費
出張の際の日当
残業の際の食事代
見舞金
結婚祝い金

(1)バス・電車通勤は15万まで非課税

通勤には、電車やバスなどの公共交通機関を利用するのが一般的です。このように電車やバス通勤の運賃を通勤手当として支給する場合には、15万円までが非課税となります。

通勤手当の非課税限度額の上限額:15万円

以前は、非課税の上限額は10万円でしたが、平成28年度(2016年)の税制改正により、通勤手当の非課税限度額の上限額が10万円から15万円に引き上げられました。

参照:国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げ」

なお、新幹線通勤をしている場合、運賃や特急料金は非課税の対象となります。しかし、グリーン車の料金は対象外となり課税対象となりますので、新幹線通勤をしている場合は注意が必要です。

また、非課税限度額に合わせて通勤手当の上限を15万円にしている会社が多くありますが、法的には合わせる義務はありません。自社の状況に応じて限度額を決めるようにしましょう。

また、3カ月定期や6カ月定期の場合、前払いをすると額が大きくなり非課税限度額を超えてしまうケースがあります。
しかし、このような場合には1カ月あたりの金額に換算して15万円を超えなければ、非課税扱いとすることができます。

なお、同じように後述する社会保険や労働保険の保険料を算定する際にも1カ月換算した金額で計算することができます。

(2)マイカー通勤の非課税限度額は距離による

自動車や自転車、バイクなどで通勤する場合には、ガソリン代や減価償却費などを見積もって、実費に相当する金額を支給するのが原則です。
下記の表に従って、超過する部分については、その部分から給与として所得税が課税されます。

区分 非課税となる上限
通勤距離が片道55キロメートル以上である場合 31,600円
通勤距離が片道45キロメートル以上55キロメートル未満である場合 28,000円
通勤距離が片道35キロメートル以上45キロメートル未満である場合 24,400円
通勤距離が片道25キロメートル以上35キロメートル未満である場合 18,700円
通勤距離が片道15キロメートル以上25キロメートル未満である場合 12,900円
通勤距離が片道10キロメートル以上15キロメートル未満である場合 7,100円
通勤距離が片道2キロメートル以上10キロメートル未満である場合 4,200円
通勤距離が片道2キロメートル未満である場合 (全額課税)

高速道路などの有料道路を利用してマイカー通勤している場合には、上記の表の通勤距離に応じた限度額と有料道路の料金の合計額が15万円までなら非課税となります。

(3)マイカー&電車の併用は15万円まで非課税

自宅から駅までは車で、駅から職場までは電車といった手段で通勤するケースもあるでしょう。
このように、マイカーと電車を併用して通勤する場合には、その合計額が15万円までが非課税の対象となります。

(4)徒歩通勤は非課税とならない

徒歩通勤しているのに通勤手当を支給する会社がありますが、徒歩通勤している距離がいくら長くても、非課税にはなりません。
通勤手当が一定額まで非課税となるのは実際に費用が発生するからであり、費用が発生しない徒歩通勤は対象とならないと判断されるからです。

(5)自転車通勤は非課税の対象となる

徒歩通勤は非課税とならないとなると「自転車通勤も費用がかからないのでは?」と思う人もいると思いますが、自転車という交通用具を購入した際に費用が発生したと判断されるので、自転車通勤の場合には、非課税措置の対象となります。

▶経理・記帳をしてくれる税理士を探す

通勤手当の支給方法のポイント

通勤手当の支給方法としては、現金を支給する場合と定期券を現物支給する場合が考えられます。
いずれの支給方法の場合でも、定期券の後払いは賃金支払いの5原則により許されませんので注意が必要です。

(1)定期券は現物支給もできる

通勤手当は、毎月払い、3カ月払い、6カ月払いが一般的です。現金(振込)で支給するケースが多いのですが、定期券を現物支給する場合があります。現物支給する場合には、労働組合と締結する労働協約の中でその旨を定める必要があります。

現物支給は、通勤手当の不正受給を防止するのに効果があると考える会社があります。
確かに通勤手当は不正受給の起こりやすい手当のひとつです。たとえば、自転車や徒歩で通勤しているのに、バスや電車利用の申請をしたり実際より運賃の高い別ルートを申請したりする方法があります。
従業員の方は「お金を少しでも浮かそう」という軽い気持ちでいるのですが、不正受給している場合には通勤中に事故に遭っても、労災扱いにならないこともあり、デメリットが従業員自身に生じるリスクがあります。
したがって、現物支給としないまでも購入した定期券のコピーを提出してもらうなど、通勤手当の不正受給が起こらないように対策を講じましょう。

(2)通勤手当の後払いはできない

3カ月定期や6カ月定期の場合、現物支給なら問題はありませんが、定期券を支給する場合には、6カ月の最終月に後払いで支給することは許されません。
なぜなら、賃金支払いの5原則の「①通貨で ②直接、労働者に ③その金額を ④毎月1回以上⑤一定の期日を定めて、支払わなければならない」のなかの「④毎月1回以上」に抵触して違法となるからです。
したがって、最初の月に前払いするか、毎月均等に分割して支払う必要があります。

(3)退職時・住所変更時の処理方法は決めておく

定期券代を支給している場合には、あらかじめ退職時や住所変更時の手続きについても決めておく必要があります。
処理方法としては、①定期券の払い戻しをしてもらい、その払い戻し金額を返金してもらう方法と、②定期の金額を日割りにして出勤日数分との差額を戻してもらう方法、③退職月、住所変更月の定期券を購入せずに実費を支給する方法があります。
個々の状況に応じて、もっとも効率の良い方法を選択するようにしましょう。

▶経理・記帳をしてくれる税理士を探す

通勤手当の処理のポイント

通勤手当は、所得税法では非課税となりますが、社会保険や労働保険料の計算には含まれます。一方、時間外手当の割増賃金の計算には含みません。

(1)所得税法の控除計算

通勤手当は15万円までは非課税ですが、家族手当などの支給対象を決める基準を配偶者控除や扶養家族控除の基準とした場合には、所得判定の賃金からは除かれ非課税の通勤手当部分は含めずに計算します。これに対して、健康保険の扶養の判定基準を判定する際には、非課税である通勤手当の部分も含めて計算することになります。

法令による取扱事項 算入額 計算基礎への導入
所得税 非課税 最高15万円まで 非課税通勤手当は除いて所得税を計算する
労働保険
社会保険
保険料の算定 全額 保険料の算定に非課税通勤手当を含めて計算する
労働基準法 平均賃金の計算 全額 平均賃金の基礎計算に含める
労働基準法 割増賃金の計算 全額 平均賃金の基礎計算に含めない

(2)社会保険料の算定基礎額には含める

社会保険(健康保険、介護保険、厚生年金)や労働保険(雇用保険、労災保険)の保険料計算のもとになる算定基礎額は非課税通勤手当も含めて計算します。
労働保険や社会保険の対象となる手当には、他に家族手当、住宅手当、役職手当などがあります。

労働保険・社会保険料の
対象となるもの
労働保険・社会保険料の
対象とならないもの
基本給
通勤手当
家族手当
住宅手当
役職手当
結婚祝い金
見舞金
出張旅費、宿泊費
休業補償費
死亡弔慰金

(3)割増賃金の計算には含めず平均賃金には含める

時間外手当の割増賃金を計算する際には、その算定基礎額からは課税分を含む通勤手当全額を除外します。
ただし、平均賃金を計算する際には、通勤手当も含めて計算します。

割増賃金の計算に含む手当 割増賃金の計算に含まない手当
通勤手当
役職手当
家族手当
住宅手当
通勤手当
家族手当
住宅手当
単身赴任手当
臨時に支払われる賃金

まとめ

通勤手当は、上限15万円までが非課税で、それを超える部分には所得税が課税されます。このように非課税限度額が15万円ということで、多くの会社が通勤手当の上限を15万円に設定しています。しかし、この限度額にしなければならないとする法的な義務があるわけではありませんので、自社の実情に従って試算表などをもとにして税理士のアドバイスを受けながら、限度額を決めるようにしましょう。

税理士をお探しの方

freee税理士検索では数多くの事務所の中から通勤手当の支給や処理について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
経理・記帳をしてくれる税理士をさがす

この記事の監修・関連記事

監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

クラウド会計ソフトの「クラウド会計ソフト freee会計」が、税務や経理などで使えるお役立ち情報をご提供します。
「クラウド会計ソフト freee会計」は、毎日の経理作業を最小限で終わらせることができるクラウド型会計ソフトです。疑問点や不明点は、freee税理士検索で税理士を検索し、通勤手当の処理について相談することができます。

クラウド会計ソフト freee会計



クラウド会計ソフト freee会計



クラウド会計ソフト freee会計なら会計帳簿作成はもちろん、日々の経理業務から経営状況の把握まで効率的に行なうことができます。ぜひお試しください!




PageTop