減損とは|減損損失の判定方法は?会計処理の方法は?

公開日:2019年11月24日
最終更新日:2022年03月15日

この記事のポイント

  • 固定資産が収益性の低下によって投資額の回収が見込めなくなった時には、「減損処理」をする。
  • 減損会計は、①減損の兆候、②減損損失の認識、③減損損失の判定の手順で実施する。
  • 減損損失の計算方法は「帳簿価額-回収可能額」で計算する。

 

固定資産の収益性の低下によって、投資額の回収が見込めなくなった状態を「固定資産の減損」といいます。
そして、減損処理とは、このように収益性の低下によって投資額が見込めなくなったときに回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理をいいます。

この記事では、減損の意味や減損処理、減損の判定方法などについて、わかりやすく解説します。

減損とは

固定資産の収益性が低下したことによって、投資した額の回収が見込めなくなることがあります。減損とは、固定資産の収益性が低下したことによって、投資額の回収が見込めなくなった状態をいいます。
そして、固定資産の収益性が低下したことで投資額の回収が見込めなくなった場合には、一定の条件のもとで回収可能性を反映させるように帳簿価額を減損する会計処理を行います。これを減損処理(減損会計)といいます。

(1)減損と即時償却との違い

固定資産の帳簿価額を臨時的に減額する会計処理としては、減損のほかに「即時償却」があります。
即時償却とは、減価償却計算に適用されている耐用年数または残存価額が予想できなかった原因によって著しく不合理な状態となったときに、耐用年数の短縮や残存価額を修正することで、一時に行われる減価償却累計額を修正することをいいます。
つまり減損会計の原因が「収益性の低下」であることに対して、即時償却の原因は「耐用年数・残存価額の不合理」であるという点で異なります。
また、減損会計では減損損失として帳簿価額を修正しますが、即時償却は、即時償却として減価償却累計額を修正します。

原因 処理
減損会計 収益性の低下によって投資額の回収が見込めなくなったこと 減損損失として、帳簿価額を修正する
即時償却 耐用年数や残存価額が予想できなかった原因等によって著しく不合理となったこと 即時償却として、減価償却累計額を修正する

(2)減損損失の計算方法

減損損失を認識すると判定した資産または資産グループについては、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、その減少額を減損損失として計上することになります。
減損損失は、帳簿価額から回収可能額を差し引いて計算します。
回収可能額は、①正味売却価額と②使用価値のいずれか高い方の金額です。

減損損失の計算方法

減損損失=帳簿価額-回収可能額

回収可能額:①と②のいずれか高い方
①正味売却価額:売却による回収額である正味売却価額(資産または資産グループの時価から処分費用見込額を差し引いて計算する金額)。

②使用価値:使用による回収額である使用価値(資産または資産グループの継続的しようと使用後の処分によって、生じると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値)。

(3)減損損失は特別損失に計上する

減損損失は、固定資産の収益性の低下によって発生する臨時的な性質をもつことから、原則として特別損失に計上しなければなりません。
具体的には、貸借対照表に計上されている固定資産の帳簿価額を、投資の損失の金額分だけ減額をします。そして、その減額した金額を損益計算書の特別損失に「減損損失」として表示します。

また、減損損失を計上した場合には、減損損失を認識した資産または資産グループごとに、以下の事項を財務諸表に注記する必要があります。

①当該資産または資産グループについて、用途、種類、場所等の概要
②減損損失を認識するに至った経緯
③減損損失の金額および主な固定資産の種類ごとの当該金額の内訳
④資産グループがある場合には、当該資産グループにかかる資産をグループ化した方法
⑤回収可能価額が正味売却価額の場合にはその旨および時価の算定方法、回収可能価額が使用価値の場合にはその旨および割引率

資産グループとは、資産を使用してキャッシュを生み出す最小の単位に資産をまとめることをいいます。つまり、他の資産または資産グループのキャッシュ・フローから独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位です。このグルーピングによってまとめられた資産または資産グループで減損を判定することになります。

減損会計のフロー

減損処理は、以下の手順で実施します。

①減損の兆候
内部管理用の損益報告や経営環境、資産の市場価格などの情報に基づいて、減損の兆候が生じているかどうかの判定を行う。

②減損損失の認識の判定
減損の兆候がある資産について、その資産が生み出す割引前の将来キャッシュ・フローの総額がその資産の帳簿価額を下回るときには、減損の存在が相当程度に確実であるとして、減損損失を認識する。

③減損損失の測定
減損損失を認識すべきであると判定された資産または資産グループについて、帳簿価額を回収可能額まで減額して、その減少額を減損損失として当期の損失とする。
※判定と測定は、異なる基準で行います。

なお、中小会計指針では、資産の使用状況の大幅な変更があった場合に、減損の可能性について検討することとし、固定資産が機能を有していたとしても、以下のいずれかに該当する場合で、かつ時価が著しく下落している場合には、減損損失の認識をすることとしています。

①将来使用の見込みが客観的にないこと(資産が相当期間遊休状態にある)
②固定資産の用途を転用したものの、採算の見込みがないこと

(1)減損の兆候

「減損の兆候」とは、資産または資産グループに減損が生じている可能性を示す事象のことをいいます。
すべての資産について減損の認識の判定を行うと費用や時間がかかるので、その前に「減損を検討するべきか」を判断するのが「減損の兆候」ということになります。

減損の兆候としては、たとえば以下のような事象が考えられます。

①資産または資産グループが使用されている営業活動から生じる損益またはキャッシュ・フローが継続してマイナスとなっているか、あるいは継続してマイナスとなる見込みであること。
②資産または資産グループが使用されている範囲または方法について、当該資産または資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化が生じたか、あるいは生じる見込みであること。
③資産または資産グループが使用されている事業に関連しているもので、経営環境が著しく悪化したかまたは悪化する見込みであること。
④資産または資産グループの市場価格が著しく下落したこと。

①の「資産または資産グループが使用されている営業活動から生じる損益またはキャッシュ・フローが継続してマイナスとなっているか、あるいは継続してマイナスとなる見込みであること。」とは、営業活動から生じる損益またはキャッシュ・フローが継続してマイナスの場合、あるいは継続してマイナスとなる見込みの場合です。
「継続してマイナス」とは、過去2期がマイナスであったというようなケースです。ただし過去2期がマイナスでも、当期の見込みが明らかにプラスとなる場合には、減損の兆候には該当しません。

②の「資産または資産グループが使用されている範囲または方法について、当該資産または資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化が生じたか、あるいは生じる見込みであること」とは、企業の内部事情や固定資産の個別的な要因で、収益性が低下するまたは、収益性の低下が見込まれる場合です。

たとえば以下のようなケースは「減損の兆候」に該当します。

・事業の廃止または再編成(会社分割、事業規模の縮小なども含む)
・予定より著しく早期に資産の除却、売却を行った
・当初の用途からの転用
・資産の遊休化
・資産の著しい稼働率低下
・資産の著しい機能低下
・計画の中止や大幅な延期の決定 など

③の「資産または資産グループが使用されている事業に関連して、経営環境が著しく悪化したか、あるいは悪化する見込みであること」とは、社会環境の変化によって収益性が低下する、あるいは収益性の低下が見込まれる場合です。

たとえば以下のようなケースは「減損の兆候」に該当します。

・市場環境の著しい変化(材料価格の高騰など)
・技術環境の著しい変化(特許期間の終了など)
・法律的環境の著しい変化(重要な法律改正・規制緩和など)

④の「資産または資産グループの市場価格が著しく下落したこと」とは、資産または資産グループの市場価格が簿価から少なくとも50%以上下落した場合などです。
このような場合には、市場価格の著しい下落があったものとして、「減損の兆候」に該当します。
市場価格とは「市場において成立している価格」です。事業用資産は市場価格の把握が困難なケースもありますが、土地の公示価格や路線価などの一定の評価額などを用いたり、一般的に使用されることの多い指標を市場価格とみなしたりします。

(2)減損損失の認識の判定

減損会計は、減損損失の認識の判定と測定を異なる基準で行います。
「減損損失の認識の判定」とは、減損の兆候のある資産または資産グループについて、帳簿価額と割引前将来キャッシュ・フローの総額を比較して、減損を実施するか否かを判定することをいいます。

「減損損失の認識の判定」は、固定資産の帳簿価額(事業で取らなければならない部分)と将来キャッシュ・フロー(事業で回収できる見込みのキャッシュ・フロー)の割引前の総額を比較して、固定資産の帳簿価額の方が大きければ「減損処理を実施する必要がある」と判断します。

この時大切なのは、※将来キャッシュ・フローの算定方法で、以下の2点がポイントとなります。

※将来予想キャッシュ・フロー
資産または資産グループが将来において生み出すと予想されるキャッシュ・フローについて、考慮せずに単純に合計したものです。

見積期間(いつまでを見積期間とするか)
見積方法(どのようにして行うか)

そこで、減損損失の認識の判定で必要な「見積期間」と「見積方法」についてご紹介します。

見積期間
割引前将来キャッシュ・フローの見積期間は、資産の経済的残存価値使用年数まで見積るのが基本です。そこで、資産または資産グループの主要な資産の使用年数が20年を超えるか否かで計算方法は、以下のように異なります。

①主要な資産の経済的残存使用年数が20年以下のケース
主要な資産の経済的残存使用年数が20年を超えない場合には、経済的残存使用年数が経過した時点においての主要な資産の正味売却価額を、経済的残存使用年数までの割引前キャッシュ・フローに加算します。

②主要な資産の経済的残存使用年数が20年以上のケース
主要な資産の経済的残存使用年数が20年を超える場合には、21年目以降に見込まれる将来キャッシュ・フローに基づいて算定された20年経過時点においての回収可能価額を、20年目までの割引前将来キャッシュ・フローに加算します。

ここでいう「使用年数」とは、減価償却資産の耐用年数ではなく、あくまでその資産をあと何年にわたり経済的に使用可能であるかを企業が見積った年数です。

見積方法
割引前将来キャッシュ・フローを見積もる方法としては、経営環境などの外部要因や、売上見込みなどを前提に作成された中長期計画に基づいて、見積もりを行う方法があります。中長期計画の見積期間を超える期間について、将来キャッシュ・フローを算定する場合には、計画に基づいた一定の成長率の仮定を行って、見積もりを行います。

なお、将来キャッシュ・フローを見積もる際には、現金基準のほか、発生基準に基づいて見積もった金額に減価償却費などの重要な非資産損益項目を加減した金額を使用することができます。

(3)減損損失の測定

減損損失を認識すると判定した資産または資産グループについては、帳簿価額を回収可能価額まで減額して、その減少した額を減損損失として計上することになります。
合理的な経営者の行動からすれば、資産または資産グループに対する投資の回収方法として検討するのは、売却か使用かいずれかの手段になると考えられます。
正味売却価額が使用価値より高い場合には、企業はその資産を売却して投資を回収すると考えられますし、使用価値が正味売却価額よりも高ければ、企業はその資産を継続して使用するものと考えられます。
そこで、減損会計基準では、回収可能額を正味売却価額と使用価値のいずれか高い方としています。

減損損失=帳簿価額-回収可能額

回収可能額:①と②のいずれか高い方
①正味売却価額:売却による回収額である正味売却価額(資産または資産グループの時価から処分費用見込額を差し引いて計算する金額)。
ただし、固定資産について観察可能な市場価格があることはほとんどないため、その場合には合理的な価額を見積って時価とします。

②使用価値:使用による回収額である使用価値(資産または資産グループの継続的しようと使用後の処分によって、生じると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値)。
将来キャッシュ・フローを現在価値に割引計算します。

(4)減損損失の処理仕訳

減損損失累計額という勘定科目を使って、減損損失を計上します。
減損処理を行った資産は、減損損失を差し引いた帳簿価額から残存価額を差し引いた金額を、減価償却することになります。減価償却の戻入を行うことはできません。
また、減損処理後に販売目的で保有するために流動資産に振り替える場合をのぞき、処分が予定されているときでも、残存価額まで減価償却を行います。

「減損の兆候が生じている固定資産(簿価500万円)について、将来収益の割引前のキャッシュ・フローが400万円と見積もられたため、減損損失の認識を行う。なお、当該資産の時価は、250万円であり、将来キャッシュ・フローの現在価値は300万円である。」

借方 貸方
減損損失 2,000,000 減損損失累計額 2,000,000

2,500,000円<3,000,000円であることから、回収可能額は3,000,000円となる。
5,000,000円-3,000,000円=2,000,000円

(5)減損損失の税務処理

減損処理は、税務上損金とは認められません。
そこで、減損損失を計上した場合には申告調整が必要となります。
建物や機械などの償却資産については、減損後の償却費が税務上の償却限度額よりも小さくなることから、翌期以降に認められますが、土地は売却しない限り認められることはありません。

まとめ

以上、減損の意味や判定方法などについてご紹介しました。
通常購入した固定資産は、一定期間に渡り少しずつ資産価値を減額していく減価償却を行いますが、減損処理では固定資産の価値を一気に減額することによって、その後生じるはずだった減価償却費が少なくなります。それに伴いその後の減価償却費が減少するため、次年度以降の利益が相対的に増加するというメリットがあります。
ただし、減損処理を実行すると「投資が失敗した」と外部に知られるケースもありますので、安易に用いるべきではありません。
また、減損処理については、「減損の兆候」「減損の認識の判定」「減損損失の測定」など、さまざまな項目について検討する必要がありますので、減損処理を行いたい時には早めに税理士に相談しましょう。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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