法人とは|法人の定義と種類・設立方法

公開日:2019年07月08日
最終更新日:2022年12月20日

この記事のポイント

  • 必要な手続きを行い「法人格」が与えられると、法律上、人とは全く別の社会的な存在となる。
  • 法人には、さまざまな種類がありそれぞれ設立方法が異なる。
  • 税理士に相談すれば、法人の設立手続きはもちろん、税制上のメリット・デメリットについてもアドバイスをもらうことができる。

 

法人というと会社や社団法人などをイメージする人が多いと思いますが、労働組合、私立学校、神社も法人です。
必要な手続きを行い「法人格」が与えられると、法律上、人とは全く別の社会的な存在となり、法律行為などを行うことができるようになります。

ここでは、法人の代表例である株式会社や合同会社、NPO法人などの法人の特徴と設立方法についてご紹介します。

法人とは

法人とは、人間とまったく別の存在である法律上人格が認められたもののことをいいます。会社を設立すると会社の代表者である「人間(自然人といいます)」と法律上全く別の存在である「法人」ができることになります。
たとえば会社を設立すると、マンションを契約する時には本来なら個人で加入すべき生命保険に会社の名義で加入できるようになります。

法人と個人事業主との違い

起業する時に迷うのが、個人事業主として起業するか、法人をつくって起業するか迷う人が多いのではないでしょうか。
法人と個人事業主は、それぞれメリット・デメリットがありますので、自分がやりたい事業の内容に照らし合わせて考えてみましょう。

個人事業主 法人
資本金 不要 必要
設立費用 不要 登記費用など25万円程度
(株式会社の場合)
決算月 12月31日 好きな月に決めて良い
確定申告 3月15日 決算日より2カ月
融資などの資金調達 不利 有利
赤字の繰越欠損 青色申告なら3年間 9年間
(平成29年4月1日以後に開始する事業年度において生じた欠損金については10年)
・個人事業主
個人事業主とは、株式会社などの法人を設立せず、自分で事業を行う個人のことをいいます。一般的には「自営業」と言ったりしますが、税務では「個人事業主」といいます。

・メリット
法人を設立するためには資本金が必要で、登記費用がかかるが、個人事業主は、税務署に「個人事業の開業・開業等届出書」などを提出すればいいので、初期費用がかかりません。

・デメリット
個人事業主は、法人と比較すると信用度が低いため、融資を受けたり出資を受けたりする時に不利になる傾向があります。また、許認可が必要な事業の場合、個人事業主だと開業できないこともあります。
また、利益が大きくなると法人より税金が高くなります。

・法人
法人とは株式会社などの法人を設立して法人格を与えられることで、代表者とは法律上全く別の存在のことをいいます。

・メリット
個人より信用度が高いので、融資を受けるなど資金調達が有利になります。また人材を採用する時にも個人事業主より有利になります。

・デメリット
資本金や登記費用などの初期費用がかかり、設立手続きも煩雑です。
また、法人の場合には赤字であっても法人住民税の均等割がかかります。(東京都の場合には、最低7万円)
そして、個人事業主と違い社会保険への加入を義務づけられます。社長1人の会社であっても加入しなければならず、社会保険料を負担しなければなりません。

法人の種類

法人といっても、株式会社や合名会社などさまざまな種類がありますし、それぞれ特徴があり設立手続きも違います。
会社法における会社は全部で4種類あり、NPO法人やNPO法人や一般社団法人などの法人もあります。
ここでは、それぞれの法人の特徴、設立手続きについてご紹介します。
なお、法人の設立手続きについては、別の記事で詳しくご紹介しています。あわせてご覧ください。

株式会社

株式会社は、利益をあげることを目的として、株主から資金を集める会社のことをいいます。株主から経営を委託された人が取締役となって、会社の価値を上げるために事業を行います。

特徴

株式会社は、経営者自ら出資を行うことができますし、株主が1人取締役1人でも、株式会社を設立することができます。個人事業主が法人成りする時には、経営者=株主である「1人会社」が最も多いパターンとなります。

設立方法

株式会社を設立する場合には、定款の認証を受け、登記手続きを行う必要があります。
設立費用は25万円ほどで、その他実印の作成費用などもかかります。

株式会社の設立登記までの流れ
① 会社の基本事項の決定
② 定款の作成
③ 定款の認証(公証役場)
④ 登記に必要な書類の作成
⑤ 設立登記を法務省に申請

「株式会社の会社設立の手続き・流れ」を読む

合同会社(LLC)

合同会社(LLC)は、最近増えてきた会社形態です。
株式会社をさらに小さくしたようなイメージを持つ人が多いと思いますが、実際小規模の事業(美容院、小売店、クリーニング店、飲食店、アパート経営など)を行う時には、合同会社が向いています。
合同会社も株式会社と同様登記が必要ですが、設立費用は10万円ほどで済みます。

特徴

合同会社は株式会社と共通点が多いのですが、いくつかの違いがあります。
株式会社では、お金を出す人は「株主」であり、経営を行う人は「役員」です。
しかし、合同会社ではお金を出す人が経営者であり両方とも「社員」と呼ばれます。

設立方法

設立に必要な手続きや期間は、株式会社より圧倒的に手間がかからず短期間で済ませることができます。株式会社の場合には、どんなに早くても10日以上かかるケースがほとんどですが、合同会社は株式会社と異なり公証人の認証が必要ないので、4~5日程度で設立登記が可能です。

合同会社の設立登記までの流れ
① 会社の基本事項の決定
② 定款の作成
③ 登記に必要な書類の作成
④ 設立登記を法務省に申請

「合同会社(LLC)のメリット・デメリットと設立手続き」を読む

合名会社・合資会社

合名会社は、無限責任社員だけから成る会社のことで、出資者の全員が「無限責任」を負います。
一方合資会社には、無限責任社員と有限責任社員があります。

特徴

合名会社は、出資者の全員が「無限責任」を負います。
これは、もし会社が破産した場合には、個人の全財産を投げ打ってでも、会社の借金を支払わなければならないという大変厳しい責任です。

一方合資会社には、無限責任社員と有限責任社員があり、無限責任社員は合名会社と同じく無限責任を負いますが、有限責任社員は、自分の出資した金額以上の責任を負う必要はありません。
この点からいえば、合資会社は、合名会社と比較すると「所有と経営の分離が進んでいる」ということができるでしょう。

ただし合名会社も合資会社も、無限責任社員の責任は大変厳しいものです。
会社が破産した時の弁済責任は、会社の債務が消滅しない限りなくなりません。時効も成立しないのです。
したがって、合名会社や合資会社を設立する際には、相当の覚悟が必要となるということを覚えておきましょう。

設立方法

設立方法は、株式会社等と同様定款の作成などは必要ですが、定款には有限責任社員・無限責任社員を明記する必要がありますし、損益の分配割合を決める必要もあります。

合資会社・合名会社の設立登記までの流れ
① 会社の基本事項の決定
② 設立時社員が出資者となり、出資金を準備する
③ 損益の分配割合を定める
④ 業務執行社員・代表社員の選任
⑤ 定款の作成(有限責任社員・無限責任社員を明記、認証は不要)
⑥ 出資金の払込

NPO法人

NPO法人とは、非営利的な法人のことで「特定非営利活動促進法」に基づいて、認証を受けて法人になった団体のことをいいます。
NPO法人の「非営利」という言葉から、「無償で活動を行う団体」というイメージを持つ人も多いと思いますが、そうではありません。
「非営利」とは、「事業収益を上げてそこから諸経費を差し引き、人件費も差し引いてもし利益が残ったら、それは次の活動に使う資金とする」という意味であり、NPO法人も収益を上げることができます。

特徴

NPO法で掲げられる「特定非営利活動」については、(1)保健、医療または福祉の増進を図る活動、(2)社会教育の推進を図る活動など、20の活動内容が規定されています。
20項目すべての活動を行う必要はなく、1つでも該当していればそれでかまいません。
具体的には、被災地復興支援、動物保護活動、難民支援などのボランティア活動や、学童保育、介護施設、託児所などの社会貢献活動などが挙げられます。

①保健、医療又は福祉の増進を図る活動
② 社会教育の推進を図る活動
③ まちづくりの推進を図る活動
④ 観光の振興を図る活動
⑤ 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
⑥ 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
⑦ 環境の保全を図る活動
⑧ 災害救援活動
⑨ 地域安全活動
⑩ 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
⑪ 国際協力の活動
⑫ 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
⑬ 子どもの健全育成を図る活動
⑭ 情報化社会の発展を図る活動
⑮ 科学技術の振興を図る活動
⑯ 経済活動の活性化を図る活動
⑰ 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
⑱ 消費者の保護を図る活動
⑲ 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
⑳ 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動

設立方法

NPO法人を設立するためには、株式会社より多くの手続きが必要となりますし、時間もかかります。

NPO法人の設立登記までの流れ
① NPO法人の概要の決定
② 申請書類の作成(設立趣旨書など)
③ 所轄官庁に設立認証申請
④ 申請書類の縦覧期間(2カ月)
⑤ 所轄官庁による申請内容の審査(2カ月)
⑥ 設立認証決定
⑦ 法務局への設立登記申請
⑧ 所轄官庁へ設立登記完了届出書の提出

「NPO法人の設立方法と必要書類」を読む

一般社団法人

一般社団法人とは、社団法人の一種であり営利を目的としない「非営利」法人ですが、必ずしも「公益」を目的とする事業内容である必要はなく、事業目的に制限はありません。一般社団法人は、非営利型と非営利型以外に分類することができます。
そして、一般社団法人のうち、公益法人認定法によって、公益性の認定を受けたものが公益社団法人です。

特徴

一般社団法人には、通常社員で構成される社員総会、理事で構成される理事会、業務監査・会計監査などを行う監事という期間があります。
理事は、社員総会の決議に基づいて業務執行を行わなければなりません。また、社員総会にかける議案について審議を行うのも理事の業務です。

設立方法

一般社団法人は、所轄庁の認可や認証を受ける必要はなく、登記のみで設立することができます。
設立までかかる時間も1~4週間ほどで、他の法人と比較すると短い期間で設立することができます。ただし、社会的な知名度や信用度は低いというデメリットがありあす。

「一般社団法人の設立方法と必要書類10枚を解説」を読む

社会福祉法人

社会福祉法人は、社会福祉法に基づいて設立され、社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人をいいます。
ここでいう「社会福祉」とは、貧困者や心身に障害を持っている人に対して、さまざまな分野の支援を行うという意味です。
具体的な事業は、社会福祉事業と公益事業、収益事業に分類されます。

社会福祉事業:
社会福祉施設等の入所者に対する救護や医療サービス
在宅サービス

公益事業:
有料老人ホーム

収益事業:
事業から上がった収益を社会福祉事業や一定の公益事業に充てることが目的で行われる事業

特徴

社会福祉法人は、民法で規定された公益法人を発展させた「特別法人」です。特徴としては(1)行う事業について公益性を持っていること、(2)営利を目的としないこと(非営利性)などが挙げられます。
社会福祉法人の理事や監事は、その他の職員とは異なる地位にあり、社会福祉法人ごとにさまざまな報酬体系が採られています。理事長に対しては役員報酬が支払われると定められていますが、その他の理事や役員については一定の役員報酬が支払われるわけではなく、出席回数に応じて報酬が支払われるしくみになっています。

設立方法

社会福祉法人と設立するためには、大きく4つの手続きが必要となります。

社会福祉法人の設立登記までの流れ
① 設立準備手続き設立準備会の発足や事業計画の作成
② 定款の作成
③ 所轄官庁の認可(都道府県知事や厚生労働省の認可)
④ 設立手続き

まとめ

以上、法人の意味や法人の種類、それぞれの特徴や設立方法などについてご紹介しました。
これまでご紹介してきたように、法人にはさまざまな種類があり、認証を受けなければならない場合もあります。また、設立手続きは煩雑で多くの書類を準備する必要があります。また、法人の形態や規模によって税制上のメリットがある場合もあり、設立前には、事業目的に合致しているか検討するとともに、税制上のメリットについてもしっかり理解しておく必要があります。
会社の設立手続きに精通している税理士には、設立手続きのサポートはもちろん、税制上のメリット・デメリットについても教えてもらうことができます。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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