事業目的とは?書き方や業種別の事例集をわかりやすく

公開日:2023年01月05日
最終更新日:2023年10月17日

この記事のポイント

  • 事業目的とは、会社が行う「事業内容」のこと。
  • 事業目的の数には、上限はない。
  • 事業目的は、登記事項証明書に記載され、誰でも閲覧可能である。

 

事業目的とは、会社が行う事業内容のことです。
事業目的は、定款の絶対的記載事項なので、必ず定款に記載しなければなりません。
会社を設立してから事業目的を定款に追加すると、手続きが面倒なうえに登記変更の際に費用がかかりますから、「将来やってみたい」という事業があれば、最初から定款に記載しておくことをおすすめします。

事業目的とは

事業目的とは、会社が行う事業のことで、定款に「目的」として記載します。
事業目的は、登記事項証明書にも記載され、誰でも閲覧することができます。

つまり事業目的は、定款に記載しなければならない事項ということだけでなく、登記にも記載され新規の取引先や金融機関などにとって、「重要な判断材料になり得るのだ」ということを念頭に置いたうえで、慎重に検討することが大切です。

(1)事業目的は定款の絶対的記載事項

株式会社を設立する場合には、定款を作成しなければなりません。そして、この定款には記載が絶対に必要となる「絶対的記載事項」があり、絶対的記載事項の記載がない場合には、定款自体が無効となってしまいます。

定款の記載事項としては、以下のようなものがあります。

①事業目的
②商号
③本店の所在地
④設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
⑤発起人の氏名または名称および住所

会社は、定款に定められた目的の範囲内で事業を行うことになります。そして、新たに別の事業を行いたいという場合には、事業目的を追加する手続きをとらなければなりません。
ただし、定款で定めた目的そのものを行う行為ではなくても、その目的を達成するために必要な行為であれば有効とされることはあります。

(2)事業目的は「何書いてもOK」ではない

会社は社会的な存在ですから、事業目的に何を書いてもいいというわけではありません。法律違反や公序良俗違反は当然にNGですし、会社が営利を目的とした組織である以上、ボランティア活動などを事業目的とすることはできません。

①法律違反、公序良俗に反する事業は当然NG
当たり前のことではありますが、法律に違反したり公序良俗に反したりする事業は、事業目的とすることはできません。

②許認可が必要な場合は注意が必要
許認可が必要な事業を行なおうと思っている場合には、かならずその事項について記載しなければなりません。それぞれの監督官庁に「どのような文言を記載すべきか」について、事前に確認しておきましょう。表現方法が違うだけで許認可がおりないケースもあるからです。
また、将来その事業を行う可能性があるからと、許認可が必要な目的を載せると、その目的のために必要な許認可を取得していない場合、銀行口座が開設できないこともあります。

③事業目的は「明確性」が必要
語句の意味が一般的に理解しづらいものについては、明確性に欠けると判断される場合があります。たとえば、雑務作業・経営代行といった事業内容が明確でないものは避けるようにします。

④営利性が必要
株式会社は、営利を目的とした組織なので、ボランティアや寄付などを目的とすることはできません。

⑤金融業をする予定がないのに「金融業」を入れるのはNG
金融業を行う予定もないのに、事業目的に金融業と入れてしまうと、金融機関から融資を受けづらくなってしまうことがあります。

(3)事業目的は将来予定している事業も書く

事業目的には、設立後にすぐに行うものだけではなく、将来やってみたいと思っている事業についても、最初から記載することをおすすめします。
設立してから事業目的を追加しようとすると、株主総会で目的を追加する定款変更決議を行わなければならず、登記を変更するために法務局に変更登記申請をしなければならないため、費用がかかってしまいます。

定款の変更手続きについては、以下の記事でご紹介していますので、あわせてご覧ください。

▶ 定款変更の手続き|決議方法・登記(記載事例付)

(4)事業目的はたくさん書き過ぎない

事業目的の数には制限はありませんが、そうは言ってもあまりに多く記載し過ぎると、新規の取引先や金融機関に「何をしている会社なのか」と疑問を持たれてしまうリスクがあります。
事業目的は、誰が見てもその会社をイメージできるよう、具体的かつ明瞭な言葉で表現されていることが重要です。

(5)合同会社も「事業目的」は絶対的記載事項

合同会社を設立する場合の定款でも、事業目的は絶対的記載事項で、絶対的記載事項の記載がない定款は無効となり、設立登記の申請をしても却下されます。
合同会社の絶対的記載事項は、以下のとおりです。

①事業目的
②商号
③本店の所在地
④社員の氏名または名称及び住所
⑤社員全員が有限責任社員である旨
⑥社員の出資の目的及びその価額または評価の標準

事業目的の業種別事例集

事業目的が数種類ある場合には、各項目の頭に1、2、3と数字を付けて、事業目的の最後の項目に「上記各号に附帯関連する一切の業務」と記載します。

1.○○の製造
2.○○の販売
3.上記各号に附帯関連する一切の業務

(1)卸売業・小売業

スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストア、通信販売、ネットショップ、洋品店、書店、雑貨店、フラワーショップなどです。
商品選びや売り方に工夫をすることで、店の特徴が出せることや、出店方法がいくつもあることから、人気の高い業種です。

・各種商品の企画、開発、製造、卸売、販売及び輸出入
・インターネット等を利用した通信販売業及び卸売業並びに小売業
・店頭及びインターネット等を通じた商品及びサービス等卸売及び販売
・食料品及び飲料品の卸売・小売業
・古物の販売及びリサイクル店の経営
・美術品、骨董品の卸売、販売及び輸出入
・酒類の販売・卸売業
・化粧品・化粧用調整品の販売・卸売業
・薬局の経営並びに医薬品の販売・卸売業
・各種商品の卸売及び小売業
・自動車の修理、整備、卸売及び販売
・スポーツ用品、日用品雑貨、化粧品、医薬品及び衣料の輸出入業、卸売業

(2)宿泊業・飲食サービス業

旅館やホテル、カフェ、レストラン、居酒屋、ラーメン店などです。料理の腕はもちろんですが、人柄など接客面で個性を発揮することができます。変化をもたせ、常連客が飽きないような工夫も求められます。

・宿泊施設、カラオケルーム、駐車場の経営
・飲食店・宿泊施設・売店等の運営・管理
・教育施設・飲食店・宿泊施設・売店等の運営・管理
・ホテルその他の宿泊施設、飲食店、文化施設等の経営
・ホテル及び宿泊・料飲施設等の経営、運営、業務の受託
・宿泊施設及び飲食店・売店等の運営
・スポーツ・宿泊施設及びレストラン,飲食店の経営
・スポーツ施設、観光施設、宿泊施設の経営、管理

(3)不動産業・建設業

マンション分譲、住宅設備・建材、土木建築などです。
建設業のうち約9割は、従業員20人以下の中小工務店で、一握りのゼネコンが、中小企業を下請け、孫請けとしてコントロールするピラミッド型の構造が確立されています。
不動産業は、オフィスビルの賃貸や流通、管理などが大きな収益源となっています。

・不動産業、および倉庫業
・不動産の保有・利用・売買・賃貸および仲介事業
・不動産の管理及び賃貸借に係る業務
・不動産の売買、仲介、賃貸、管理業務
・不動産の賃貸および運営
・宅地建物取引業及び不動産の管理
・不動産に関する運営・管理業務の受託
・不動産の管理、賃貸
・不動産の管理、売買、賃貸および仲介事業
・不動産の管理及び鑑定並びに不動産コンサルティング
・不動産の取得、所有、処分ならびに貸借

(4)農・林・漁・鉱業

農・林・漁・鉱業については、起業する際に各自治体の支援制度をチェックすることをおすすめします。
たとえば高知県では、周期就農相談センターがあり、技術・ノウハウの習得のためのセミナーが開催されており、支援交付金の制度も設けられています。

・農業並びに農産物の製造及び加工
・農業に関する事業
・農産物の生産、加工及び販売
・漁業その他の水産業
・漁業ならびに水産物の輸出入及び加工・販売

(5)生活関連サービス・娯楽業

介護サービス、美容院、ネイリスト、ブライダル、結婚相談所、警備、フィットネス、音楽関連などです。
生活スタイルの多様化に伴い、さまざまなサービス、アミューズメントが生まれています。サービス内容を自分なりに工夫したり、流行や最新技術を取り入れたりするなど、リピート率を高める工夫が大切です。

・結婚相談および冠婚葬祭に関する情報の提供及び仲介斡旋
・結婚相談および仲介業
・ネイルサロン、美容院など美容サービス業に関する店舗の経営
・ネイルサロン、美容院、理容院など美容サービス業のフランチャイズシステムの運営
・音楽、ゲーム、映画、演劇その他各種催事の企画、製作、興行
・音楽教室の企画、運営ならびに管理

(6)IT・通信・インターネット

ソフトウェア、情報サービス、コンサルティング、SNS、ショッピングサイト、ポータルサイトなどは、クラウド、AI、IoTなどの最新技術を活用した事業化が拡大しています。企業のIT投資が活発であり、好景気で人手不足であることから、業務効率化のシステム需要が高まっています。

・インターネットおよび情報システムを利用したサービス業務
・インターネットのドメイン取得代行業務
・インターネットのホームページの企画、制作
・インターネットのホームページの運用および保守に関する業務
・インターネットの代金決済システムの導入代行業
・インターネットメディア事業
・インターネットを媒介とした市場のマーケティング業務
・インターネットを利用したデジタルコンテンツの企画
・インターネットを利用した各種情報提供サービス業
・インターネットを利用した広告、宣伝に関する企画、製作、実施
・インターネットを利用した電子商取引事業
・インターネット広告に関するコンサルティング事業
・インターネット上のWebサイトの売買の仲介業務
・インターネット上のWebサイト構築事業
・インターネット上のネットワーク構築事業
・インターネット放送の企画及び運営
・ホームページの企画、制作及び運営
・ホームページの企画、設計及び受託制作

まとめ

会社を設立する際には、発起人、株主、代表取締役、取締役などを決めなければなりません。1人で会社を設立するときは、その人が発起人となり、株主、代表取締役を兼ねます。
そして、発起人が会社の骨格を決定し、定款に定めます。
定款には、商号、事業目的、本店の所在地、出資金、事業年度など、会社を運営する際に重要な事項を記載します。
定款を会社設立後に変更する際には、そのたびに変更登記を申請しなければなりませんので、慎重に決定するようにしましょう。

定款の記載事項については、以下の記事で詳しくご紹介しておりますので、あわせてご覧ください。

▶ 定款とは|記載方法・注意点(サンプル付)

事業目的・会社設立について相談する

freee税理士検索では、数多くの事務所の中から、事業目的や会社設立の手続き、設立後の節税対策や、決算・申告について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

事業目的・会社設立について相談できる税理士をさがす

この記事の監修・関連記事

監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

クラウド会計ソフトの「クラウド会計ソフト freee会計」が、税務や経理などで使えるお役立ち情報をご提供します。
「クラウド会計ソフト freee会計」は、毎日の経理作業を最小限で終わらせることができるクラウド型会計ソフトです。疑問点や不明点は、freee税理士検索で税理士を検索し、相談することができます。

クラウド会計ソフト freee会計



クラウド会計ソフト freee会計



クラウド会計ソフト freee会計なら会計帳簿作成はもちろん、日々の経理業務から経営状況の把握まで効率的に行なうことができます。ぜひお試しください!




PageTop