株主総会とは|普通決議・特別決議の違いは?

公開日:2023年01月20日
最終更新日:2023年10月17日

この記事のポイント

  • すべての株式会社は、株主総会と取締役を設置しなければならない。
  • 株主総会とは、会社の重要事項を決定する会社の最高意思決定機関である。
  • 株主総会の決議は、普通決議・特別決議・特殊決議の3つに区分される。

 

株主総会とは、その会社の重要な事項や基本的な方針を決定する機関であり、最高の意思決定機関です。
会社法は、すべての株式会社に株主総会と取締役を置くことを義務づけています。
そして、役員の選任や解任、定款変更、合併や解散など会社の重要な事項は、株主総会で決議しなければならないとされています。

 

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株主総会とは

株式会社は、発起人が定款を作成して認証を受け、出資を行い、その本店所在地で設立登記をすることで、設立します。
そして、この「発起人」が会社設立時の株主となります。発起人は1人でもOKですし複数人でもOKです。
つまり、出資者は、株式を取得することで株主総会における会社の意思決定に関して、一定の議決権を行使できることになります。

(1)そもそも株主の権利とは

他人に出資してもらい株式を保有してもらう場合には、あらかじめ株主の権利を理解しておくことが大切です。
株主は、その保有する株式の引受価額を限度として責任を負います。つまり出資額以上の責任を負いません。これを「株主有限責任の原則」といいます。
これは、株主も取締役も社長も1名という「一人会社」の場合も同様で、原則として有限責任です。仮に会社が倒産しても、株主にとっては出資した株式の価値が0円となるだけで、借入金など会社の負債を引き受ける必要はありません。
ただし、会社で融資を受ける時に代表取締役が保証人となっている場合には、もちろん返済義務を負うことになります。
また、公開会社以外の多くの株式会社は、株式の譲渡が自由にできるわけではないので、倒産前に株式や持分を売却して済ませることはできません。

また、株主は、行使要件によって「単独株主権」と「少数株主権」に区分され、以下のような権利を有することになります。

単独株主権とは、株主が1株でも株式を保有していれば行使することができる権利をいい、少数株主権とは、一定割合以上の議決権または発行済株式を保有する株主のみが行使することができる権利をいいます。

単独株主権

権利の内容 議決権・株式数の要件 保有期間の要件
剰余金の配当を受ける権利
残余財産の分配を受ける権利
反対株主の株式買取請求権
議決権
株主総会における議題提案権
定款閲覧等請求権
取締役会議事録の閲覧等の請求権
募集株式の発行または自己株式の処分の差止請求権
代表訴訟の提起権 行使前6カ月(公開会社でなければ要件なし)
取締役の違法行為差止請求権 行使前6カ月(公開会社でなければ要件なし)
少数株主権

権利の内容 議決権・株式数の要件 保有期間の要件
株主総会招集の請求権 総株主の議決権の3%以上 行使前6カ月(公開会社でなければ要件なし)
株主総会における議題提案権(取締役会設置会社) 総株主の議決権の1%以上または300個以上の議決権 行使前6カ月(公開会社でなければ取締役会設置会社要件なし)
取締役の解任請求権 総株主の議決権の3%以上または発行済株式の3%以上 行使前6カ月(公開会社でなければ要件なし)
会計帳簿の閲覧等の請求権 総株主の議決権の3%以上または発行済株式の3%以上
解散請求権 総株主の議決権の10%以上または発行済株式の10%以上

(2)設立時の出資割合は注意が必要

出資者は会社設立時の株主となり、議決権を行使することができるので、議決権の割合によって、会社の事業に多大な影響を与える決議も可能となります。したがって、誰が出資者となるのか、そして出資割合はどうするのかは、出資金の払込前に十分に検討して、事前にこれらが会社に与える影響についてよく検討する必要があります。
会社の代表者は、少なくとも過半数の議決権を確保していなければ、その後の会社運営に大きなリスクを抱えることになってしまいます。
創業時の役員としては、特別決議も議決可能である「出資総額の3分の2以上」を確保することができれば、創業時の役員が予期しないような議決を防止することができて、安定した状態を保つことができます。

(3)「定時株主総会」と「臨時株主総会」

株主総会には、定時株主総会と臨時株主総会があります。

定時株主総会とは、各事業年度の終了後一定の時期に招集される株主総会で、臨時株主総会とは、必要な場合に開催される株主総会です。
定時株主総会では、通常は当期事業年度の決算承認、剰余金の配当などが議題となります。
臨時化主総会は、必要なときにいつでも開催することができるもので、株主総会の決議が必要な事項が発生した時に開催されます。

なお、定時か臨時かに関係なく、株主総会の招集決定権者は、原則として取締役会非設置会社の場合は取締役、取締役会設置会社の場合は、取締役会です。
そして、実際に招集手続きを行うのは、取締役会非設置会社の場合は取締役、取締役会設置会社の場合は、代表取締役か業務執行取締役です。

(4)株主総会の「普通決議」

株主総会の決議は、大きく普通決議、特別決議、特殊決議の3つに区分されます。
普通決議とは、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数をもって行われる決議です。

普通決議
定足数 議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席する
(定款で撤廃・緩和することも可能)
決議要件 出席した株主の議決権の過半数
(定款で別途定めることも可能)
決議事項 役員および清算人の報酬決定
剰余金の配当
自己株式の取得
など
特殊普通決議
定足数 議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席する
(定款で3分の1まで軽減することも可能)
決議要件 出席した株主の議決権の過半数
(定款で過半数を上回る割合を定めることも可能)
決議事項 役員(取締役・会計参与・監査役)の選任・解任
など

(5)株主総会の「特別決議」

特別決議とは、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行われる決議です。

特別決議
定足数 議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席する
(定款で3分の1まで軽減することも可能)
決議要件 出席した株主の議決権の3分の2以上
(定款で3分の2を上回る割合を定めることも可能)
決議事項 定款の変更
資本金の額の減少
事業譲渡等、解散
組織変更、合併、会社分割、株式交換、株式移転
相続人等に対する売渡請求
など

(6)株主総会の「特殊決議」

特殊決議とは、議決権を行使することができる株主の半数以上であり、その株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行われます。

特殊決議
定足数 なし
決議要件 要件①:議決権を行使できる株主の半数以上(定款で半数を上回る割合を定めることも可能)
要件②:議決権を行使できる株主の議決権の3分の2以上(定款で3分の2を上回る割合を定めることも可能)
決議事項 発行する全部の株式に譲渡制限を設ける定款変更
など

(7)議決権と定足数要件とは

定款モデルでは、株主総会の決議を定めた条項について、以下のように定足数要件を撤廃または緩和しているものがあります。

株主総会の決議(普通決議)は、法令または定款に別段の定めのある場合のほか、出席した議決権のある株主の議決権の過半数をもって決する。

会社法第309条第2項に定める決議(特別決議)は、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上に当たる多数もって行う。

しかし、このように定足数要件を撤廃または緩和した場合には、株主総会に出席した株主だけで決議を行うことを認めていることになってしまいます。

たとえば、それぞれ議決権を100個持っている株主AさんとBさんがいて、議決権の合計が200個であるケースで考えてみましょう。

定足数要件がある場合:
Aさんだけが株主総会に出席した場合、定足数要件があればBさんが出席しなければ株主総会の決議は成立しません。

定足数要件がない場合:
定款で定足数要件をなくしてしまうと、株主の誰か1人でも出席すれば株主総会は成立し、決議をすることができるため、株主Aさんの意向だけで会社の経営が決まってしまいます。

定足数要件を緩和もしくは撤廃することは、株主が不特定多数である場合には過半数の出席が難しいことから設けられているものなので、株主数が少ない小規模の会社では、定足数要件を撤廃するメリットはありませんから、定款に定める場合には、よく検討してから決める必要があります。

(8)株主総会議事録の記載例

株主総会や取締役会(取締役会非設置会社の場合は、代表取締役の決定書)などの議事録や決定書を作成し保存しておくことが大切です。
ここでは、株主総会の議事録例についてご紹介します。

第〇号議案 任期満了に伴う取締役改選の件

議長は、当社定款第〇条の規定によって、本定時総会終結のときをもって、取締役3名全員が任期満了し退任することになるため、その改選が必要である旨を述べ、現認取締役である○田〇男、〇川〇子、〇山〇太の3名の再選を提案し、可否を諮ったところ、本議案は満場意義なく承認可決された。
なお、被選任者は席上その承認を承諾した。

第〇号議案 取締役報酬額改定の件

議長は、取締役の報酬額について、令和〇年〇月〇日開催の第〇期定時株主総会において、年額金1000万円以内と承認されているところ、その後の経済情勢の変化及び諸般の事情を考慮し、取締役の報酬額について年額金2000万円以内(従来通り、使用人兼務取締役の使用人分の給与は含まない)としたい旨を提案し、可否を諮ったところ、本議案は満場意義なく承認可決された。

第〇号議案 任期満了に伴う取締役改選の件

議長は、当社定款第〇条の規定によって、本定時総会終結のときをもって取締役3名全員が任期満了し退任することになるため、その改選が必要である胸を述べ、現認取締役である○田〇男、〇川〇子、〇山〇太の3名の再選を提案し、可否を諮ったところ、本議案は満場意義なく承認可決された。
なお、被選任者は席上その承認を承諾した。

第〇号議案 取締役解任の件

議長は、当社の取締役である〇田〇夫が、令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日までの機関、合計約300万円の正当な理由のない経費を使った事実を議場に報告した。そして議長は、当該事実をもって取締役〇田〇夫を本日付で解任したい旨を延べ、可否を諮ったところ、本議案は満場意義なく承認可決された。

まとめ

資本金を提供する人を出資者といい、出資者は、株式を取得して一定の議決権を行使することができます。
会社を設立する際には、多くの事業資金を集めようと多くの株主から出資を集めたいと思うものですが、会社は株主のものですから、会社の経営に口出しをしてほしくないような人が株主になると、後々事業にリスクを与えることになりかねません。
したがって、会社の経営に口出ししてほしくないような人から資金を出してもらうときには、出資ではなく借入という方法にするなどし、出資金の払込前には十分に考慮してから決定することをおすすめします。

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