公開日:2018年08月01日
最終更新日:2022年04月04日
当たり前ですが、会社を辞めて起業をするということは、それまであった定期的な収入(給与)がなくなってしまうということですから、起業準備の際には、起業前後のイニシャルコスト、ランニングコストや当面の生活費がいくら必要となるか計算し、その資金を確保する方法についてもあわせて検討しましょう。
ここでは、起業時にかかる費用や、起業資金を調達する方法などについてご紹介します。
起業するためには、さまざまなお金がかかります。
会社を設立するのであれば、登記費用などがかかりますし、事務所や店舗を借りる場合には、その資金が必要になります。
ここではまず、起業時に必要となる主な費用についてご紹介します。
起業する場合、個人事業で始めるか会社を設立するかによって、設立費用が異なります。
個人事業主で規模が小さい場合には、税務署や都道府県税事務所に設立の届出をする必要はありますが、手数料はかかりません。また、会社を設立する場合にかかる登録免許税なども不要です。
しかし、会社を設立するとなると、登録免許税や公証人報酬、公証役場印紙代などがかかります。
会社の形態としては、大きく株式会社、合同会社、合資会社、合同会社の4つの種類があり、いずれの形態で会社を設立するかによって設立費用は異なります。
株式会社の場合でいうと、登録免許税が15万円程度、定款に関する費用が9万円ほどかかります。
LLC(合同会社)、合資会社、合名会社などは、株式会社より設立費用を抑えることができます。
なお、法人を登記する場合には、会社の印鑑を作成する必要があります。
印鑑は銀行印、代表者印、社印などさまざまな種類がありますが、設立時には実印があれば、法的に問題はありません。
また、事業によっては許認可が必要なこともあります。
許認可といっても、役所に届出さえすればよいものから、申請書を提出して行政官庁の審査を受け、初めて「許認可」されるもの、一定の資格が必要となるものなど、さまざまです。
これから始めようとする事業に許認可が必要かどうか、またその費用がかかるのかについては早めに確認しておきましょう。
会社を辞めると定期収入(給料)がなくなるうえに、健康保険料や年金保険料の金額はグッと上がることになります。
会社員の場合、健康保険料や年金保険料は、それまで会社が半分負担してくれていましたが、起業するとすべて自己負担になるからです。
事業をスタートさせても、すぐに事業が軌道に乗るとは限りません。
毎月の定期収入がなくなるうえに、健康保険料や年金保険料の額が増えることもしっかり視野に入れ、住居費、水道光熱費、通信費、食費、各種保険料など細かく書き出して、当面必要な生活費を計算するようにしましょう。
子どもがいる場合には、子どもの教育費なども計算に入れるようにしましょう。
なお、生活費を何カ月分確保しておけばいいかについては、人それぞれです。
「1年分は確保しておかなければ不安」という人もいるでしょうし、起業してすぐに黒字を計上できる自信がある人は、半年程度の生活費を用意すれば十分な場合もあります。
その点もよくシミュレーションして計算するようにしましょう。
事務所や店舗を借りる時には、敷金、礼金、保証金、仲介手数料などが発生します。さらに、起業してからすぐに黒字を計上できない場合も考えて、3カ月~半年分の賃料もあわせて見ておくとよいでしょう。
また、事務所や店舗の内相や外装費用、電気工事、配管工事、看板製作などの設備費用がかかることもあります。工事が必要な時には、複数の業者から相見積もりを取って、不明な見積もり項目があれば、しっかり交渉するようにしましょう。
起業をしたばかりの時期は、どうしても思い入れが強くなってしまい、無理な設備投資をしてしまうこともあります。しかし起業時だからこそ、無理は禁物です。
強いこだわりのある設備なら、もちろん構いませんが、その場合にも「本当に今必要な設備なのか」を今一度考え、まずは費用を抑える努力をするようにしましょう。
なお忘れがちですが、事務所・店舗は退去する際にも費用がかかります。
なかには、退去費用として1,000万かかることもあり、この退去費用が払えないがために退去することができず、無理に営業を続けている店舗もあります。
事務所・店舗と賃貸契約を締結する場合には、この退去費用についてもしっかり確認するようにしましょう。
サービス業など仕入のない業種の場合には、仕入費用はかかりませんが、販売業を始める場合には、材料や商品などの仕入費用がかかります。すぐに売上が計上できない場合にも、仕入れ費用は支払う必要がありますので、正確に計算をしておくようにしましょう。
また、事務所や店舗を借りる場合には、机、椅子、パソコン、電話などの備品を購入する必要があります。
借りる事務所や店舗の規模にもよりますが、最低でも100万以上はかかるケースが多いようです。
会社を設立して名刺やホームページなどを作成する際には、広告宣伝費がかかります。
起業時には、事業を多く知ってもらいたいということで、案内状やチラシをたくさん作成したくなると思いますが、SNSの活用を併用するなど、他の広告宣伝の手段がないか検討するとよいでしょう。
また、営業費用も検討しておく必要があります。
営業活動費とは、交通費や書籍代などのことです。
起業時には、交流会やセミナーなどに積極的に参加して、人脈を広げたり販路を拡大したりする努力が必要になることもあります。
予想外に営業活動費がかかることもありますので、余裕を持って計算するのがおすすめです。
これまでご紹介したように、起業時にはさまざまな費用が必要となります。
全額を自己資金で賄える人もいると思いますが、店舗や事務所の工事費が数百万円単位とかかるような場合には、自己資金ですべてを賄うのは無理なケースがほとんどでしょう。
そこで、検討したいのが起業時のさまざまな資金調達方法です。
一番望ましいのは、事業で儲けることです。
まずは個人事業主として小規模で開業し、その事業で稼いだお金を投じて法人化し、さらに事業拡大しておく方法は、理想的な資金調達方法です。事業で得た資金であれば返済する必要もありませんから、返済による資金減少もありません。
家族や知人からお金を借りるという方法もありますが、お金のやり取りが介在すると、今まで良好だった人間関係が壊れてしまうケースが多々ありますので、おすすめはできません。
起業時の資金調達方法として、おすすめなのが日本政策金融公庫の「新創業融資制度」です。
日本政策金融公庫とは、政府系金融機関で、株式の100%を国が常時保有することが法律で定められている特殊な株式会社です。
起業時にも利用することができ、無担保・無保証で利用することができます。
新創業融資制度を利用する条件
新創業融資制度を利用するためには、「新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できること」などの条件に該当している必要があります。
最も重視されるのが、事業計画書
日本政策金融公庫から融資を受ける際に最も重視されるのが、事業計画書です。
事業計画書は、起業前もしくは起業したばかりで、決算書など実績をあらわす素材が何もない企業に対して、融資を行うか否かを判断するための重要な指標となるからです。
事業計画書には、事業の概要やユーザー分析、事業投資の具体的な目標などを、記載する必要があります。
新創業融資制度は、原則として無担保無保証人
新創業融資制度は、原則として無担保無保証人の融資制度です。ただし、法人のお客さまがご希望される場合は、代表者が連帯保証人となることも可能であり、その場合は利率が0.1%低減されます。
なお、日本政策金融公庫の融資制度としては、他にも「新規開業資金」「女性、若者/シニア起業家支援資金」などがあります。
補助金・助成金とは、国や自治体から交付される「返済不要」のお金です。
新しいアイデアや技術を持つ企業や雇用を増加するための施策を行った企業が申請すると、審査・面談などを経て交付されます。
補助金 | 助成金 | |
---|---|---|
管轄 | 経済産業省および自治体が中心 | 厚生労働省が中心 (経済産業省および自治体が実施しているものもある) |
支援の目的 | 技術開発、商店街活性化など | 雇用の増加・安定、能力開発など |
難易度 | 倍率が高い | 条件に該当していれば、申請することで高い確率で受給できる |
金額 | 数百万~数億円(5000万円程度が多い) | 数十万~100万円程度 | 募集時期 | 不定期 | 通年 |
補助金・助成金は公募が原則
補助金・助成金は公募が原則です。
また、内容は政策方針によって毎年変わるので、こまめにチェックする必要があります。また、申請をして交付が認められても、すぐに入金されるわけではなく、原則として補助金・助成金は「後払い」です。対象となる事業を実施して、その報告書を作成し提出した後に、やっと交付されるというケースがほとんどです。
なお、起業時に利用できる補助金としては、「創業促進補助金」があります。
新たに創業しようとする個人、中小企業、小規模事業者が起業するために必要な経費の一部を補助することを目的とした補助金です。
限度額は200万円で、起業にかかった費用の女性や若者の地域での起業・創業に、補助が出ます。
ベンチャーキャピタル(略してVC)とは、中小企業に出資を行い、いずれその会社の株式が株式上場することによって、その売却益を得ることを目的とする企業のことをいいます。
VCから出資を受けるためには、株式上場を狙えるほどの優れた技術やサービスを持っていることが前提であり、厳しい審査が必要です。
ベンチャーキャピタルの種類
ベンチャーキャピタルは、公的(政府系)ベンチャーキャピタル、銀行系ベンチャーキャピタル、証券会社系ベンチャーキャピタルなどさまざまな種類があります。
ベンチャーキャピタルからの出資を検討する際には、それぞれの特徴を理解したうえで、その特徴に沿って、事業計画書の作成などの準備を進める必要があります。
エンジェル投資家
エンジェル投資家とは、起業間もないベンチャー企業に投資し、投資した以上のリターンを得ることを目的とした個人投資家のことで、将来そのベンチャー企業が株式上場した際の出資金のキャピタルゲインを得ることを目的としています。
製品やサービスが魅力的であれば、エンジェル投資を受けることができるうえに、エンジェル投資家の人脈やノウハウの支援(ハンズオン)を受けて事業を成長させることができるというメリットも期待できます。
昨今は、クラウドファンディングによる資金調達も増えてきました。クラウドファンディングは、事業自体に面白さや目新しさ、意義があり、さらにそれらが分かりやすく人の目に惹くものであると、成功しやすい傾向にあります。
ただ、クラウドファンディングは結局は資金調達をしようとしている本人が知人や友人に呼びかけを行うことが必要であること、またクラウドファンディングの手数料は調達額の10%~20%程度で、決して安いものではないため、この手数料も視野に入れ、利用を検討する必要があります。
以上、起業時にかかる費用や資金調達の方法などについてご紹介しました。
これまでご紹介してきたように、起業時には必要な費用も多く、登記手続きなど慣れない作業も多々あります。
また、資金調達をするためには、事業計画書などの作成が必要になり、本業以外に思いがけず時間が取られることもあるでしょう。
そのような時には、会社設立に精通している税理士に相談するのがおすすめです。
会社設立に精通している税理士であれは、必要に応じて司法書士、社会保険労務士、弁護士等の複数の専門家と連携し、会社設立の際に必要となる手続や、起業時に利用できる融資制度や助成金や補助金の活用についてアドバイスやサポートしてもらうことができます。
また、「クラウド会計ソフト freee会計」の導入支援を受け、自計化を実現することができますし、節税対策についてアドバイスをしてもらうこともできます。
freee税理士検索では数多くの事務所の中から、起業時の費用や資金調達について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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