減価償却する資産と償却する方法は?節税効果はあるのか

公開日:2018年11月01日
最終更新日:2022年04月11日

この記事のポイント

  • 減価償却とは、高額な資産の購入費用を何年かに分けて経費にしていくこと。
  • 減価償却するかしないかは、購入した資産の金額によって決まる。
  • 減価償却に関しては、中小企業者の租税優遇措置がある。

 

減価償却とは

減価償却とは、建物や社用車など長期間にわたって使用する資産である「減価償却資産」を、購入時に全額を費用として計上するのではなく、実際にその資産が稼働すると思われる期間で費用を分散して経費計上することをいいます。

減価償却した分の経費となる金額を「減価償却費」、減価償却した資産を費用にして、分散できる期間のことを「耐用年数」、その資産の購入代金を「取得価額」といいます。

(1)減価償却の対象となる資産とは

減価償却の対象となる資産とは、建物、機械装置、車両運搬具など、時の経過や使用することによってその価値が減っていく(減価)ものをいいます。
一方、土地は建物などとは異なり、時の経過や使用することによって価値が減っていくものではありませんので、資産であっても減価償却の対象からは除外されます。

主な減価償却資産

分類 勘定科目 内容
有形固定資産 建物 事業用の事務所、店舗、倉庫などの建物
構築物 事業用の橋、桟橋、岸壁、煙突、その他土地に定着した建物以外の工作物
機械装置 事業用の機械、装置、コンベアなど
車両運搬具 自動車、営業用の鉄道車両、その他の陸上運搬具
土地 事業用の工場・事務所の敷地、社宅敷地、運動場、資材置場など
無形固定資産 特許権 産業財産権(工業所有権)の1つで産業上利用できる新規の発明を独占的・排他的に利用できる権利
借地権 建物の所有を目的とする土地の賃借権または地上権
※普通借地権については減価償却の対象ではないが、借地権の更新料の支払がされる時には、その借地権の取得費につき一定の方法で計算した減価相当額が必要経費となる。
のれん 合併等によって取得した事業の支払対価が、承継した純資産額を上回る場合の差額(超過額)
ソフトウェア コンピューターシステムのソフトウェアを取得した際に要した金額

(2)減価償却資産の「耐用年数」とは

耐用年数は、新品の減価償却資産について、建物など減価償却資産の種類、構造、用途などにより、車なら6年、パソコンなら4年…というように、国税庁で定められています。

なぜなら、会社によって耐用年数を自由に決めることができるとしてしまうと、減耐用年数を短く設定して毎年の減価償却費を多くできることになり、会社によって税金の額を意図的に操作できてしまうからです。

そこで、資産の種類や構造、用途別の使用可能期間(耐用年数)が税法で規定されています。

耐用年数が短いと、毎年の減価償却費は多くなり、耐用年数が長いと毎年の減価償却費は少なくなります。

参照:国税庁「耐用年数表」

(3)減価償却資産の「取得価額」とは

減価償却資産の取得価額とは、「固定資産の購入代金+付随費用」です。

具体的には、減価償却資産の①購入代価に、②引取運賃、荷役費(にやくひ)、購入手数料、関税その他購入のために要した「外部付随費用」と、③事業のように供するために直接要した据付費(すえつけひ)、および試運転費などの「内部付随費用」を加算したものとなります。

なお、時価と比較して著しく低い価額で取得した資産については、実質的に贈与を受けたと認められる金額(時価)を取得価額に算入します。

(4)減価償却の「未償却残高」「減価償却累計額」の関係

減価償却をした分の経費となる金額を「減価償却費」といい、この減価償却費の今までの合計額が「減価償却累計額」です。
そして「未償却残高」とは、その資産において、まだ減価償却されていない部分のことです。
つまり、これらを整理すると、

未償却残高=「取得価額」-「減価償却累計額」

となります。
たとえば、500万円の機械設備を購入し、毎年50万円ずつ減価償却したものとします。
2年間の減価償却費は、100万円となります。この場合、この機械設備の未償却残高は「500万円-100万円=400万円」となります。
つまり、取得価額500万円は、減価償却累計額100万円と未償却残高400万円に分けることができるということになります。

(5)減価償却の方法「定額法」「定率法」とは

減価償却の計算方法には、定額法と定率法があります。

定額法 定率法
特徴 減価償却費の額が、原則として毎年同額 減価償却費の額は、初めの年ほど多く、年と共に減少する
減価償却の計算方法 取得価額+定額法の償却率 (取得価額-既償却額)×定率法の償却率または改定取得価額×改定償却率

(注)資産を年の途中で取得または取り壊した場合などは、上記の金額にその年において事業に使用していた月数を12で割った値を掛けた金額。

定額法
定額法とは、毎年の償却費が一定となる方法です。
減価償却資産の耐用年数中、毎事業年度において同額の減価償却費を計上する方法です。

例:1年目の減価償却費が5万円なら、毎期5万ずつ償却されます。

定率法
定率法とは、毎年一定率で償却していく方法です。
毎期、期首の見償却残高(取得原価-減価償却累計額)に一定の償却率をかけて、減価償却費を計算する方法です。

例:減価償却費の金額が1年目に20万、2年目には15万、3年目には10万円というように、1年目が多くてその後は徐々に少なくなっていきます。

生産高比例法
生産高比例法とは、減価償却資産の耐用年数の期間中、毎期その資産による生産または役務の提供の度合いに比例して、減価償却を計上する方法です。
税法上は工業用設備に限って適用できます。

減価償却に関する中小企業者の租税優遇措置

通常、減価償却資産を取得した場合には、その年には取得のために支出した一部しか費用に計上することができませんが、減価償却については、中小企業者の租税優遇措置が設けられています。たとえば、30万円未満の資産においては、300万円を限度として全額を損金算入することができます。
つまり購入した年に経費として計上できるため、利益額を抑えることができるので節税効果があります。

(1)30万円以上の資産

30万円以上の資産については、中小企業者もそれ以外の法人も、通常の減価償却を行います。

たとえば、30万円以上の機械装置を購入した場合には、まずその購入した資産が機械装置に該当するか確認します。

機械装置の要件
①耐性のある物体でできている
②一定の動きをする機能を持っている
③それ自体が仕事をする

この3つの全てに該当すれば、機械装置となりますので、設備の種類ごとに区分された耐用年数によって減価償却を行います。

設備の種類 細目 耐用年数
農業用設備 7
林業用設備 5
食料品製造業用設備 10
飲料・たばこ・飼料製造業用設備 10
繊維工業用設備 炭素繊維製造設備
 黒鉛化炉 3
 その他の設備 7
その他の設備 7
木材・木製品(家具を除く。)製造業用設備 8
家具・装備品製造業用設備 11
パルプ・紙・紙加工品製造業用設備 12
印刷業・印刷関連業用設備 デジタル印刷システム設備 4
製本業用設備 7
新聞業用設備
 モノタイプ・写真・通信設備 3
 その他の設備 10
その他の設備 10
ゴム製品製造業用設備 9
なめし革・なめし革製品・毛皮製造業用設備 9
窯業・土石製品製造業用設備 9
鉄鋼業用設備 表面処理鋼材・鉄粉製造業・
鉄スクラップ加工処理業用設備 5
純鉄・原鉄・ベースメタル・フェロアロイ・
鉄素形材・鋳鉄管製造業用設備 9
その他の設備 14
金属製品製造業用設備 金属被覆、彫刻業・打はく、金属製
ネームプレート製造業用設備 6
その他の設備 10
林業用設備 5
鉱業・採石業・砂利採取業用設備 石油・天然ガス鉱業用設備
 坑井設備 3
 掘さく設備 6
 その他の設備 12
その他の設備 6
総合工事業用設備 6
倉庫業用設備 12
運輸に附帯するサービス業用設備 10
飲食料品卸売業用設備 10
飲食料品小売業用設備 9
その他の小売業用設備 ガソリン・液化石油ガススタンド設備 8
その他の設備
 主として金属製のもの 17
 その他のもの 8
宿泊業用設備 10
飲食店業用設備 8
洗濯業・理容業・美容業・浴場業用設備 13
その他の生活関連サービス業用設備 6
自動車整備業用設備 15

(2)30万円未満20万円以上の資産

中小企業者等においては、平成18年4月1日から令和4年3月31日までに30万未満の新品・中古の減価償却資産を取得した場合には、300万円を限度として一括で計上することができます。これを「中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入の特例」といいます。

参照:国税庁「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」
※令和2年4月1日以降の取得による減価償却資産については、常時使用する従業員数の要件が500人以下に引き下げられました。
事業年度が1年に満たない場合には、300万円を12で割り、活動した月数を掛けた金額が上限です。
この「中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入の特例」を各事業年度に分散して利用すれば、有効な節税対策になります。
ただし、損金経理し、確定申告書等に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添付して提出しなくてはいけないので忘れないように注意しましょう。

(3)20万円未満10万円以上の資産

20万円未満10万円以上の資産については、中小企業者等は一括償却(3年定額償却)が可能です。また、300万円を限度として全額損金算入することもできます。
※中小企業者等以外の法人については、一括償却(3年定額償却)のみ可能です。

(4)10万円未満の資産

取得価額が10万円未満の少額減価償却資産であれば、消耗品費として一括してその取得年度の損金に算入することができます。
なお、10万円未満の資産だからといって、必ずしも損金算入しなければならないということはありません。通常の減価償却を選択することもできます。

たとえば、「今期は赤字が予想される」という時には、とりあえず資産に計上して通常の減価償却を選択し、経費にするのを見送るというのも1つの選択肢です。
なお、少額資産を資産に計上して減価償却してしまうと、後から全額損金にすることはできませんので、この点は注意が必要です。

決算前には、損金にするべきものが減価償却していないかなど、税理士に確認しておくことをおすすめします。

まとめ

以上、減価償却についてご紹介しました。減価償却は、中小企業者のための租税優遇措置を活用すれば、有効な節税対策となります。しかし、何が減価償却資産であるのか分かりにくかったり、減価償却の計算方法が複雑であったりするなど、会計処理をするうえでも分かりにくい点も多いでしょう。その場合には、「クラウド会計ソフト freee会計」を活用し、さらにそのデータを税理士と共有することで、不明点や疑問点等をすぐに質問することができ、経理を効率化することもできます。
「freee会計」を活用すれば、減価償却による費用計上の金額を計算するのが簡単になって計算ミスが起きにくくなります。具体的には、減価償却資産の購入年度に購入金額、購入日、耐用年数を入力するだけ、以降は毎年の費用計上は自動計算してくれます。

毎年経費に計上する償却額の計算は、メインメニューから「固定資産台帳」を選択し、固定資産の登録を行っておけば、あとは、「freee会計」が減価償却費の計算を自動で行ってくれます。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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