税額控除とは|特別償却との違いは?節税になるのはどっち?

公開日:2019年12月04日
最終更新日:2022年07月16日

この記事のポイント

  • 税額控除とは、納付税額を減額できること。
  • 特別償却は課税の繰延措置だが、税額控除は算出税額から控除できる措置。
  • 税額控除には、租税特別措置法による税額控除と法人税法による税額控除がある。

 

税額控除とは、納めなければならない税額からマイナスする措置をいいます。

特別償却とは、特定の機械や設備を購入し利用した時に、通常の償却額に加えて、取得価額に一定割合を乗じて計算した金額を上乗せして償却できる制度です。
一方、税額控除は、納めるべき税額から一定額を特別に控除することができる特例です。

税額控除とは

税額呼応所とは、納付税額を減額できる税法独自の概念で、算出税額から一定額を控除できる永久免税措置です。
税額控除は、大きく「租税特別措置法」による税額控除と、「法人税法」による税額控除に区分されます。

そして、租税特別措置法委による税額控除が法人税法による税額控除より先に行われます。

①租税特別措置法による法人税額の特別控除
②仮装経理に基づく課題申告の更正に伴う控除法人税額

(1)税額控除と特別償却との違い

特別償却とは、法人税法の規定によって計算された普通償却限度額のほかに追加的償却が認められる租税優遇措置で、青色申告法人に認められます。
普通償却限度額とは別に特別に一定額の減価償却を拡大し、当該事業年度における税負担を軽減することができる措置で、特別償却が認められる資産の償却限度額は「普通償却限度額+特別償却限度額」ということになります。
この特別償却には①初年度の特別償却と②割増償却が認められています。

①初年度の償却
特定の減価償却資産を取得して事業用に提供した事業年度において、特別償却限度額としてその取得価額の一定割合を一時的に損金算入する措置です。

特別償却限度額 = 取得価額 × 特別償却割合
②割増償却
税法で認められた通常の方法による償却に加えて一定割合を乗じて計算した金額を上乗せして償却できる措置です。

特別償却限度額 = 普通償却限度額 × 割増償却割合

特別償却も割増償却も、適用となる法人は、ほとんどの場合で青色申告法人であることが要件ですが、対象法人、適用対象業種、地域、計算方法、適用期間(指定期間)、特別償却割合等は変更されることがあります。

特別償却は、初年度に普通償却とは別に追加的償却が認められるため、初年度の税負担を軽減することができます。けれども、その後の減価償却費は先取りした分だけ減少しますので、期間を通算してみると全体で償却できる額は同じです。つまり、特別償却は、非課税・免税措置ではなく減価償却制度を利用した課税繰延措置に過ぎません。
ただし、早期計上償却分に見合う納税額が、特別償却時には法人税としての支出しないことになる(将来に猶予されたことになる)ので、流動資金として内部留保することができるという点がメリットということができます。

(2)税額控除と特別償却はどちらが得か

税額控除とは、納めるべき税額から一定額が特別に控除される措置です。

特別償却は、償却を前倒しして課税を繰り延べる措置であるのに対して、税額は、一定額の法人税を控除(差し引く)する一種の免税ですから、永久免税効果のある税額控除の方が、節税には有利です。

たとえば、特別償却である中小企業投資促進税制では、取得価額全額の即時償却(初年度に全額損金(経費)として計上すること)または取得価額の7%(特定の中小企業については10%)の税額控除の選択をすることができます。

仮に200万円の機械を購入した場合に特別償却を選択すると200万円を初年度の損金に算入することができるので、中小法人の税率を15%として計算すると、納付する法人税は200万円×15%=30万円少なくなることになります。ただし、初年度の全額費用化してしまっているので、翌年以降は損金に算入することはできません。

一方税額控除を選択すると、200万円の機械を購入した場合、200万円×7%=14万円を納付する法人税額から直接控除することができます。

特別償却を選択した場合には、30万円を損金算入することができるので、30万円と14万円を比較すると、当期の節税効果は税額控除の方が小さいですが、別枠で取得価額200万円に対する通常の減価償却もあわせて行うことができます。
つまり、耐用年数に応じて全額を損金算入することができるのです。

「特別償却」が課税繰延措置であるのに対し、「税額控除」は算出税額から控除できる免税効果が伴う措置ですので、有効に活用していきたいものです。

ただし、実際に特別償却と税額控除のどちらを選択する方が良いかについては、その時の会社の状況によっても異なります。
したがって、実際にどちらを選択する方が有利なのかは、税理士に相談してシミュレーション等を行い、検討してみるとよいでしょう。

中小企業に認められる「税額控除」とは

中小企業に認められる「税額控除」は、その多くが「○○税制」という名前がついています。それぞれ適用できる事業年度や要件に制限がありますので、利用を検討する場合には、事前に十分な確認が必要です。
ここでは、主に中小法人・中小企業者等のみに「税額控除の設定」の優遇措置が認められている税額控除で、かつ利用しやすいものについてご紹介します。

(1)試験研究を行った時の税額控除

試験研究費にかかる税額控除制度については、以下のものがあります。

① 試験研究費にかかる税額控除
② 特別試験研究費にかかる税額控除
③ 中小企業の試験研究費の税額控除(中小企業技術基盤強化税制)

青色申告をしている法人については、「試験研究費の額×控除割合」または「超過試験研究費の額×控除割合」で計算した金額を税額控除することができますが(ただし上限あり)、中小企業者等は、試験研究費の12%を乗じた金額が、税額控除として調整前法人税額から控除することができます。

参照:国税庁「中小企業技術基盤強化税制」

(2)機械等を取得した時の税額控除

中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)とは、特定中小企業者等(資本金または出資金が3,000万円以下の法人または農業協同組合等)が、特定機械装置等を取得した場合、取得価額(内航船舶は取得価額の75%)の7%相当額が税額控除される措置です(ただし、法人税額の20%が限度)。

税額控除限度額がその事業年度の法人税額の20%相当額を超えて、その事業年度において税額控除限度額の全部を控除しきれなかった場合には、その控除しきれなかった金額は、1年間繰越が可能です。

参照:国税庁「中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)」

(3)高度省エネルギー推進設備等を取得した時の税額控除

中小企業者等について、高度省エネルギー推進設備等を取得した時には、取得価額の7%相当額が税額控除となります。ただし、法人税額の20%が限度であり、その事業年度において税額控除限度額の全部を控除しきれなかった場合には、その控除しきれなかった金額は、1年間繰越が可能です。

参照:国税庁「高度省エネルギー増進設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除」

(4)特定経営力向上設備を取得した時の税額控除

中小企業者等が、特定経営力向上設備等を取得した場合、取得価額の7%(資本金または出資金が3,000万円以下の中小企業者等については10%)相当額が税額控除となります。
※「特定経営力向上設備等」とは、生産等設備を構成する機械装置、工具、器具、備品、建物・付属設備および一定のソフトウェアで一定の規模のもの)です。

ただし、法人税額の20%が限度であり、その事業年度において税額控除限度額の全部を控除しきれなかった場合には、その控除しきれなかった金額は、1年間繰越が可能です。

参照:国税庁「中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)」

(5)給与等を引き上げた時の税額控除

中小企業者等について、継続雇用者給与等支給額が全事業年度の継続雇用者比較給与等支給額より1.5%(中小企業者等以外には3%)以上増加している場合に、支給増加額の15%相当額が税額控除となります。

なお、以下の要件を満たす場合には、税額控除が給与等支給増加額の25%相当額となります。

①継続雇用者給与等支給額が、全事業年度の継続雇用者比較給与等支給額より2.5%以上増加している。

②以下の2要件のいずれかを満たしていること。
・「教育訓練費の額」が、全事業年度の「比較教育訓練費の額」よりも10%以上増加していること。
・中小企業等経営強化法の認定を受け、経営力向上計画に記載された経営力向上を確実に行使した証明がされていること。

参照:国税庁「給与等の引上げ及び設備投資を行った場合等の税額控除」

まとめ

以上、税額控除の意味や税額控除と特別償却の違いなどについてご紹介しました。
特別償却と税額控除は選択適用となるケースが多々ありますが、一般的には税額控除の方が節税効果は高くなります。
ただし、適用できる事業年度や要件に制限がありますし、特別償却と税額控除のどちらを適用すべきなのかについては、個々の会社の状況によっても異なります。
事前に税理士と相談し、十分なシミュレーションを行ってから利用をするようにしましょう。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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