創業時の資金調達方法1位は「自己資金」2位は「融資(政府系金融機関)」

公開日:2019年04月08日
最終更新日:2022年06月14日

この記事のポイント

  • 創業費の総額は「100万円超~500万円以下」が最多で36.8%。
  • 創業時の資金調達方法1位は「自己資金」で71.1%。
  • 創業後の課題は、1位が「販路開拓」で2位「資金調達」。

 

2022年4月に東京商工会議所から発表された「創業・スタートアップ実態調査」によると、創業時に利用した資金調達法で最も多かったのは、「経営者本人の自己資金」でした。

創業したばかりの中小企業に融資をしてくれる民間の金融機関がほとんどないことから、創業資金については、自分で用意したり知人や親戚から借りたりするケースが多いということが分かります。

創業・スタートアップ実態調査

創業時には、家賃や補償金、事業に必要な備品、ホームページ作成費用など、何かと資金が必要になります。
このような創業時の資金を調達する方法としては、「経営者本人の自己資金」「金融機関から融資を受ける」「知人や親戚から借りる」「クラウドファンティングで投資を受ける」「ベンチャーキャピタルから投資を受ける」などさまざまな方法が考えられます。

(1)1位は「自己資金」

2022年4月に東京商工会議所から発表された「創業・スタートアップ実態調査」の調査発表によれば、10年未満の中小企業の企業について「創業時に利用した資金調達方法」で最も多かったのは、「経営者本人の自己資金」でした。

自己資金 71.1%
融資(政府系金融機関) 31.3%
融資(信金、信組) 17.1%
親族・友人 14.7%
融資(銀行) 12.5%
創業助成金(東京都) 5.9%
その他補助金・助成金 4.10%
取引先・連携他社 3.70%
個人投資家 2.80%
CVC(事業会社) 0.80%
クラウドファンディング 0.60%
VC(ベンチャーキャピタル) 0.50%
その他 1.10%

引用:東京商工会議所「創業・スタートアップ実態調査」単純集計結果

(2)創業費は「100万円超~500万円以下」が最多

創業に際して必要だった資金(創業費の総額)については、「100万円超~500万円以下」が最多で、36.8%、次いで「500万円超~1,000万円以下」が18.8%、「50万超~100万円以下 」が13.0%となっています。「費用はかからなかった」と回答した人も4.8%いました。

費用はかからなかった 4.80%
50万円以下 11.50%
50万超~100万円以下 13.00%
100万円超~500万円以下 36.80%
500万円超~1,000万円以下 18.80%
1,000万円超~2,000万円以下 10.00%
2,000万円超~5,000万円以下 3.40%
5,000万円超~1億円以下 1.10%
1億円超 0.40%

引用:東京商工会議所「創業・スタートアップ実態調査」単純集計結果

(3)創業後の課題は「販路開拓」「資金調達」

「創業準備期」、「創業後・事業拡大期」にそれぞれ課題としては、「資金調達」「販路開拓」「経営に必要な知識・ノウハウの習得」と回答した人が多い傾向が見られました。

創業準備期 創業後・
事業拡大期
資金調達 53.30% 47.80%
経営に必要な知識・
ノウハウの習得
45.70% 19.70%
販路開拓 43.10% 54.40%
人材確保 29.50% 38.30%
事業計画の検討・見直し 20.10% 21.40%
新製品・新サービスの
開発
16.30% 22.50%
法規制や制度 10.30% 11.50%

 
創業前後の相談相手や機関としては、最も多かったのが「先輩経営者・経営者仲間」で40.8%、次いで「取引先・連携他社」が31.3%となりました。「コンサルタント・専門家」と回答した人も15.8%いました。
引用:東京商工会議所「創業・スタートアップ実態調査」単純集計結果

(4)「売上高は1千万円超~5千万円以下」が最多

直近決算期(前期)の売上高については、「1千万円超~5千万円以下」と回答した人が最も多く、31.9%、「1千万円以下 」と回渡した人が30.3%と続きました。

1千万円以下 30.30%
1千万円超~5千万円以下 31.90%
5千万円超~1億円以下 13.40%
1億円超~3億円以下 16.70%
3億円超~10億円以下 6.00%

引用:東京商工会議所「創業・スタートアップ実態調査」単純集計結果

(5)コロナ影響「売り上げ減少」が50%超

コロナの影響については、コロナ以前と比較した、2021年1~12月の売上状況については、「減少(概ね50%以上・30%以上・10%以上減少の合計値)」が53.0%と最も多く、「増加(概ね50%以上・30%以上・10%以上増加の合計値)」が33.8%、「不変」が13.1%となりました。

2019年1月~12月(コロナ以前)と比較した、2021年1月~12月の売上状況

概ね50%以上増加 9.50%
概ね30%以上増加 8.70%
概ね10%以上増加 15.60%
不変 13.10%
概ね10%以上減少 11.50%
概ね30%以上減少 18.90%
概ね50%以上減少 22.60%

引用:東京商工会議所「創業・スタートアップ実態調査」単純集計結果

創業時に検討したい2つの融資制度

ご紹介した調査からは、創業資金の調達方法は「経営者本人の自己資金」を用意するという方法が最も多いことが分かります。
確かに自己資金なら返済義務はありませんし、自分の意思で自由に使うことができるので、安心な資金調達方法ということがいえます。
しかし、目標金額を貯めるためには時間がかかるものですし、その間にビジネスチャンスを逃してしまう可能性があります。
また、家族・親族、友人・知人等からの借入る方法も、人間関係の悪化や思わぬトラブルに発展するリスクがあります。

とはいうものの、創業したての企業では民間の金融機関からは「実積不足」などを理由に、融資を受けられないケースがほとんどです。
そんな創業したての企業の資金調達方法としておすすめしたいのが、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」と自治体の「制度融資」です。

(1)日本政策金融公庫の「新創業融資制度」

創業したての企業や創業前の経営者に融資してくれる民間の金融機関はほとんどありませんが、そのような創業時の資金調達方法として最もおすすめなのが日本政策金融公庫の「新創業融資制度」です。
日本政策金融公庫とは、株式の100%を国が常時保有している特殊な株式会社で、民間の金融機関が引き受けることができない分野を補完する役割を担っています。

日本政策金融公庫の「新創業融資制度」の最もおすすめのポイントは「無担保・無保証人制度」であるということです。利用率も高く毎年約2万社が利用しています。

参照:日本政策金融公庫「新創業融資制度」

新創業融資制度は、申し込みから融資まで3週間程度かかるケースが多いので、1カ月程度の余裕をもってスケジュールを立てましょう。

「新創業融資制度」を利用する際には、まず申し込みをする管轄支店の窓口に電話をしてみましょう。必要書類や面談日、融資までの大まかな流れなどについて説明してくれます。融資の申し込みは、ホームページから必要書類をダウンロードして郵送して申し込むこともできますが、日本政策金融公庫では担当者との面談が重視される傾向がありますので、面談前には事前にリハーサルをしておくことをおすすめします。
創業したいと思った動機や事業概要、事業計画、借りたい金額とその使い道などは、面談で質問されることが多い事項なので、面談前に整理しておきましょう。

必要書類
融資を受ける際に必要な書類は以下の5点ですが、他にも資料を求められることがありますので、担当者にしっかり確認をしましょう。特に創業計画書は融資を申し込むにあたって大変重要となる書類です。空欄のままにしておいたり「特になし」といった記述をしたりすることは避けて、事業内容や関連する事項をできる限り詳しく書き、アピールするようにしましょう。

①借入申込書
②創業計画書(資金繰り表があればなお可)
③見積書(設備資金を借入れる場合)
④会社の登記事項証明書(発効後3カ月以内のもの)
⑤店舗などで借りている場合は賃貸契約書

(2)自治体の「制度融資」

創業資金の調達方法としてもうひとつおすすめしたいのが、自治体の「制度融資」です。自治体の「制度融資」とは、各自治体の中小企業振興政策などにしたがって、自治体・金融機関・信用保証協会が協調して運用している制度です。そのなかでも創業者向けの制度融資は、一般の民間金融機関が融資しにくい創業時の資金調達の手段として利用しやすいものとなっています。

参照:東京都産業労働局「都制度融資の相談窓口」

信用保証協会とは、中小企業や小規模事業者が、創業資金を円滑に調達することを支援する公的機関です。
経営者が創業資金の融資を申し込む際の公的な保証人となり、万が一返済できなくなった時には、その企業に代わって負債を返済します。簡単にいえば、信用保証協会が保証人になってくれるということです。
ただし、保証協会が代わりに返済をしてくれても、借入をした企業は保証協会が立て替えたお金を保証協会に支払う義務が残ります。

制度融資の内容は、自治体によって異なりますが、東京都の場合は、融資限度額が3,500万円(自己資金がない場合は2,000万円)です。

参照:東京都産業労働局「令和4年度東京都中小企業制度融資の一覧」

制度融資を利用するためには、まず事前に自治体か金融機関に制度融資を受け付けしているかを確認しておきます。自治体と親密な金融機関(地方銀行や信用組合など)は、制度融資を積極的に取り扱っています。
金融機関を決定したら、事前にその金融機関に相談して必要書類や注意点を聞いておくとよいでしょう。
制度融資の申し込みは金融機関に対して行うケースが多いのですが、必要書類を自治体に提出しなければならないこともあります。

また、信用保証協会の保証を受けるためには、事業内容や経営計画などについての審査が必要となります。そして、保証協会の審査の結果を受けて、金融機関でさらに独自の審査を行うことになります。

必要書類
制度融資を申し込む際に必要となる主な書類は以下の通りです。
各自治体によって求められる書類は異なりますので、問合せの際に確認するようにしましょう。

①信用保証委託申込書
②信用保証委託契約書
③個人情報の取り扱いに関する同意書
④創業計画書
⑤印鑑証明書
⑥登記事項証明書
⑦許認可が必要な事業の場合には、許認可書(コピーで可)
⑧見積書(設備資金の場合)

日本政策金融公庫の審査と同じように、制度融資の審査でも創業計画書が最も重要な書類となります。実績のある企業であれば、過去の決算書を提出することで実績を示すこともできますが、創業時にはその実績を示すことができません。ですから、創業計画書でしっかりアピールするようにしましょう。

まとめ

以上、商工会議所の調査結果や、創業資金調達方法としておすすめしたい2つの調達方法についてご紹介しました。
ご紹介したように、創業資金の調達方法としては、「新創業融資制度」と「制度融資」がおすすめです。そして、融資を受ける際には、創業計画書が大変重要になります。
記載方法や組み立て方が分からない時には、中小企業支援センターの窓口や資金調達に強い税理士に相談してアドバイスを受けてください。

特に税理士は、資金調達の方法だけでなく、会社経営のノウハウや節税方法、会社を成長させるために有効なお金の使い方などについてもアドバイスしてもらうことができます。創業資金の調達だけでなく企業を成長させる「会社成長のパートナー」として、税理士が持つ情報やノウハウを上手に活用していきたいものです。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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