公開日:2019年11月09日
最終更新日:2022年06月15日
創業融資とは、創業時に受ける融資のことです。
実績がない個人事業主や創業間もない会社では、銀行から融資を受けることはほとんど期待できません。
このようなときに活用したいのが、日本政策金融公庫の新創業融資制度など、創業時の支援制度です。
創業計画書では、説得力のある数値的根拠を用いて客観的かつ具体的に記述することで、事業の実現性や将来性を分かりやすく記述する必要があります。
この記事では、創業融資を受けるための創業計画書を作成するための基本的な考え方や記載すべき項目などについてご紹介します。
創業融資とは、これからビジネスをスタートする人、もしくはスタートして間もない人が受けられる融資です。
誰でも無一文でビジネスをスタートすることはできません。どんなビジネスを始めるにせよ、そのための軍資金が必要になります。
この軍資金をすべて自分の預貯金だけで賄えるのであればそれに越したことはありませんが、それでは軍資金を貯めるまでに時間がかかってしまいます。このような時に利用したいのが創業融資です。
創業間もない場合には、銀行からの融資はほとんど期待できません。そこで、創業融資は、大きく以下の2つに区分することができます。
①日本政策金融公庫の創業融資 新たに事業を始める人、または事業開始後税務申告を2期終えていない人が利用できる制度です。 ②地方自治体が推進する制度融資 |
日本政策金融公庫とは、株式の100%を国が常時保有する特殊な株式会社です。
民間の金融機関の場合には、実績がない法人にはなかなか融資をしてくれません。しかし、日本政策金融公庫は積極的に支援を行っています。
なかでも「新創業融資制度」は、無担保・無保証人で利用することができるメリットのある融資制度です。
この新創業融資制度を利用できるのは、主に以下の①~③に該当する人です。
①対象者の要件 新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方 ②自己資金の要件 |
地方自治体が推進している制度融資も、創業融資としてはおすすめの制度です。
たとえば東京都の場合であれば、東京都と東京信用保証協会と指定金融機関の三者が協調して制度融資を運営しています。万が一返済が不可能となった場合には、信用保証協会が金融機関に返済し、債務者は、信用保証協会に借入金を返済します。
令和4年度 東京都中小企業制度融資における創業融資の要件は、以下のとおりとなっています、
①から③のいずれかに該当するもの ①事業を営んでいない個人で、東京都内で創業しようとする具体的計画を有するもの ②創業した日から5年未満である 中小企業者又は組合 ③東京都内で分社化しようとする会社又は分社化により設立された日から5年未満の会社 参照:東京都中小企業制度融資 |
このような創業者向けの融資制度は、自治体ごとに設けられているので、各自治体のホームページで確認しましょう。
日本政策金融公庫の新創業融資制度に限らず、新規事業の資金調達のために提出を求められるのが、事業計画書です。
新しい事業を始めるうえで必要となる資金を自己資金で賄えない場合、あるいは事業を加速的に拡大したい場合は、銀行等から資金を調達することが必要不可欠です。そして事業計画書とは、融資を受ける際の説得の根拠として使われる書類です。
返済できる見込みのない事業や成長性のない事業には、資金面での支援は得られません。したがって事業計画書には、ビジネスの戦略や採算性、成長性といった事業の目標を、具体的かつ客観的に示して記載する必要があります。
創業計画書をはじめとする事業計画書は、目的や用途に応じて作成すべき内容が変わります。つまりその計画書を見せる人に応じて、どの部分を特にアピールするべきかが変わります。
創業計画書では、融資担当者に創業計画書の内容について納得してもらい、返済できる見込みのある事業であることを示し、創業融資を受けるために作成する事業計画書です。
通常の銀行等からの借入の申し込み時には、直近の決算書や試算表の提出が求められ、最近の財務状況によって融資を受けられるかが決まります。しかし、創業時にはそのような財務書類がないので、創業計画書が頼みの綱ということになります。
したがって、融資担当者に創業計画書の内容について納得させられるかどうかが、非常に重要になるというわけです。
日本政策金融公庫では、決められたフォーマットがあり、ウェブページからダウンロードすることができますので、まずは全体像を眺めてみましょう。
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また、「freee創業融資」は、無料で日本政策金融公庫の「新創業融資制度」の申請に必要な計画書類が自動で出力することができます。書類作成に必要な情報、主な収入や支出の内容を入力するだけで、計画書が完成します。また、作成した事業計画書については、専門家による面談が無料で受けることもできます。ぜひご活用ください。
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「創業計画書」の冒頭には「創業の動機」を記載します。
単なる思いつきで創業したのではなく、以前から心に秘めていた熱い目的があり、その目的を達成するための手段が創業であるということを、効果的かつ端的に伝えます。
人によっては冒頭から書き始めるとうまく表現ができないこともあるでしょう。その場合には他の項目から書き始めて、創業の動機は、後回しにするのがおすすめです。まず「創業計画書」の全体を完成してから、「その計画書の内容にふさわしい動機」を記入するようにすると、自分の思いを改めて見つめ直して表現することができます。
創業の動機:記載例
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「経営者の略歴」では、これまでの自分の職歴のうち「今回創業するうえでふさわしい職歴を持っている」ことを示す職歴をピックアップしてまとめます。
そして、その職を通じて実際にどのような経験をして何を学んだのか、経営者として生かせる人脈がどれだけあるか、創業して事業を行うに足るスキルを身につけることが十分あるかをまとめます。
担当者には、「借りたお金をきちんと返す人かどうか」を理解してもらうことになりますので、誠実に仕事を行ってきたかことが伝わる内容であることを心掛けたいものです。
経営者の略歴等:記載例
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「取扱商品・サービス」については、ビジネスの将来性を感じてもらうことが大切です。
商品・サービスをただ列挙するだけでなく、それらの利点を的確にまとめることが必要です。本当に儲かる商品・サービスなのか、そしてその儲けで借りたお金を十分返済できることをアピールします。
なお、ここでは専門用語を使い過ぎないことが大切です。自身の業界では普通に使用している用語でも、融資担当者には分かりにくいこともあります。
たとえば、Visual Studioとは、システムエンジニアが利用するアプリケーションを構築するための統合された開発環境のことですが、システムエンジニア以外には耳慣れない用語です。このような用語を頻繁に使ってしまうと、いかに魅力的な商品・サービスでも、担当者には伝わりにくくなってしまいます。
取扱商品・サービス:記載例
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「取引先・取引関係等」については、副業での経験も遠慮しないで記入します。
なぜその取引先と取引を始めたのか、どのような取引を行っているのかは、融資担当者としても知りたいポイントです。
取引先・取引関係等の欄にある「掛取引」とは、先に商品を受け渡してから後日商品代金を回収するという取引形態です。
たとえば、7月末に請求し、8月末に振り込まれるというような取引です。
このような掛取引を行っている場合には、「掛取引の割合」の欄に100%と記載し、回収・支払いの条件を記載します。
なお、取引先については、取引していることを説明できる根拠も用意しておきましょう。取引先の担当者の名刺のコピー、契約書、発注書、請求書などの帳票があれば、原本も用意しておきます。
日本政策金融公庫のホームページでは、取引先・取引関係について、前の勤務先や親族の経営会社など、販売先や仕入先と何らかの結びつきがある場合に、記入することを推奨しています。開業時には取引先が見つからず苦労することを融資者は理解しているので、つながりのある取引先を確実に確保できていることはプラス材料となるでしょう。また、立地条件がビジネスに大きく影響を与える事業の場合、立地選定の理由を市場分析と合わせて記載することが推奨されています。
「従業員」については、創業時には雇用していないケースが多いでしょう。その場合には、後述する「事業の見通し」の欄で「軌道に乗ったら、従業員を5人ほど雇用し、事業の拡大と安定を図る」などと記載し、雇用を創出する意欲があることを示すことで補足することができます。
なお、従業員の欄には「うち家族従業員」という欄がありますが、家族は別の仕事に就いていた方が別に収入があることになるので、融資担当者は安心します。
「お借入の状況」には、代表者個人の借入の現状を記入します。マイホームや車、教育ローンなどを返済している途中であれば、その返済の状況や残高を記入します。
ここで注意したいのが、カードローンです。カードローンは他の借入より利率が高く大きな返済負担になっているケースもあるからです。もしカードローンの残高がある場合には、創業融資を受ける前にできるだけ返済しておきましょう。
「必要な資金と調達方法」の欄で最も大切なのは、左右の必要な資金と調達の方法の合計値を一致させることです。
この時「調達の方法」の合計額の方が多くなっていると借入過多と判断されてしまいますし、「必要な資金」の合計額が多ければ、いずれ支払いが困難になるのではないかと判断されてしまいます。
なお自己資金の欄は、本人名義の預金通帳できちんと確認できる必要があります。必要資金の3割程度の自己資金が預金通帳で確認できるか、もしそれが難しい場合には家族の預金通帳や担保の提供が可能なのかも検討する必要があります。
また、この時預金通帳の残高が少しずつでも増えていると、印象がよくなります。
「事業の見通し」は、その見通しを計算式で示すことが大切です。
通常は事業を始めてすぐに軌道が乗るものではありませんから、見通しとして「2カ月後には軌道に乗せる」などと記載してしまうと「それなら融資を受ける必要はないのでは」と判断されてしまいます。しかし、だからといって、2年後、3年後に軌道に乗ると説明するのもそれはそれで時間がかかり過ぎだという理由で、印象は悪くなってしまいます。
軌道に乗る時期について「○カ月後とするべき」という正解はありませんが、大体半年後くらいに軌道に乗せるつもりで事業の見通しを考えていくのが妥当でしょう。
なお、事業の見通しの右欄には、売上高のほかに売上原価、人件費・家賃などの経費を計算した根拠を記入する欄があります。この売上高の予測は、基本的には業種・業態によっていくつかのパターンがあります。
たとえば、自動車販売、化粧品販売など労働集約的な業種の場合には「従業員1人あたりの売上高×従業員数」で計算し、飲食業や美容院など店舗を持ってサービスを行う業種であれば「客単価×設備単位数×回転数」で計算します。
日本政策金融公庫では「創業の手引、創業のポイント集」で業種による作成の手引きを掲載していますので、参考にして下さい。
創業計画書は、創業融資を受ける際に大変重要な資料です。
この創業融資を根拠のある内容とできるか、それを裏づけるだけの十分な資料を添付できるかは、審査の段階で大きな影響を与えます。
また、創業計画書を作成することで、創業する自分の頭を整理することができるという効果もあります。
また、創業計画書を根拠のある資料とするためには、さまざまな添付資料が必要です。
すでに事業を行っている場合であれば、事業用の預金通帳原本が必要となりますし、資金繰り表などが必要になることもあります。
店舗を始めるなら、立地調査や交通量調査くらいは行っておくべきです。
添付資料は、個々の状況に応じて用意すべき資料は違いますので、創業融資をサポートしてくれる税理士などに相談してアドバイスを求めましょう。
創業計画書は、長い時間をかけて作成するものではありません。創業計画書のなかでも最も大切なのは、将来の利益の見込とその算定が合理的に説明できるかどうかです。創業時には、創業計画書のほかにもやるべきことがたくさんありますので、創業計画書の作成についてサポートしてくれる税理士にアドバイスを受けながら、必要なことを効率よく記入して余計な時間をかけないようにしましょう。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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