公開日:2019年07月03日
最終更新日:2019年07月27日
税務調査で否認された内容が仮装隠蔽であるなど悪質だった場合には、重加算税が発生します。
この記事では、税務調査後になにを払うことになるのか、また、不服がある場合の対処法や税理士の活用法についてご紹介します。
加算税とは、申告納税義務および徴収納付義務の履行確保を図るために、行政上の制裁として加算される附帯税のことをいいます。
附帯税には、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税の4種が規定されています。
重加算税とは、過少申告加算税などが課税される場合に、内容が仮装隠蔽であるなど悪質だった場合に、その過少申告加算税などに代えて課税される附帯税のことです。
期限内に確定申告を行なわなかった場合や修正申告書の提出、更正処分となった場合、追加の本税とともに附帯税を納付しなければならなくなります。
これらの税金は、罰金的な意味合いがあるため、損金に算入することはできません。
※損金とは「法人税を計算する際に、収益(益金)から差し引くことのできる費用」のことをいいます。
たとえば税務調査が入り、ある経費200万円について損金性が認められず「これは経費ではない」と否認を受けることがあったとしましょう。
そうなると、この200万円に関する法人税等の本税が発生することになります。
また、この追加の本税について過少申告加算税や延滞税が追加されます。
さらに、否認を受けた内容が仮装隠蔽など悪質であると判断された場合には、重加算税が課されてしまいます。
重加算税は、過少申告加算税・不納付加算税に代えて35%、無申告加算税に代えて40%の税率で課されることになります。さらに不納付加算税に代えては、その納付税額の35%の割合で追加されます。
納付税額×35%(40%)※5,000円未満不徴収 |
繰り返し重加算税となった場合の最高税率は50%となってしまうので、このようなことがないようにしたいものです。
税務調査で否認された場合に課される税金としては、重加算税以外にもペナルティとして課される税金がいくつもあります。
法定納期限までに税金を納付しなかった場合に課税される附帯税です。
原則として、法定納期限後に納付した本税に対して、納期限の翌日から2カ月間は年7.3%、その後の期間は14.6%の割合で課税されます。
納付税額×年7.3%(2カ月以降は14.6%) |
会計監査人の監査を受けなければならない等の理由で、申告期限を延長した場合に課税される附帯税です。附帯税は損金に算入されませんが、この利子税だけは損金に算入されます。
納税が延長された本税に対して、その延長された日数に応じて、原則として年7.3%の割合で課税されます。
延長した本税×原則年7.3% ※1,000円未満不徴収 |
期限内に確定申告書を提出した後、修正申告書の提出または更正によって追加税額が生じた時に課税される附帯税です。
修正申告の提出をする場合には、税務調査によって更正があることを予想して修正申告書を提出した場合以外、過少申告加算税は課せられません。
原則として、その追加本税の10%が加算されます。
ただし、その追加税額のうち期限内確定申告額または50万円のいずれか多い金額を超える部分については、15%の割合で課税されます。
追加本税×10%(15%)※5,000円未満不徴収 |
期限内に、確定申告書の提出がない場合で、納付すべき税額が合った場合に課税される附帯税です。税額は納付税額の15%です。
ただし、更正または決定があると予想される前に申告した場合には、5%の割合で課税されます。
納税額×15%(5%)※5 000円未満不徴収 |
源泉徴収等による国税が、法定納期限内に完納されなかった場合に課税される附帯税です。税額はその納付税額の10%です。ただし、調査などが予想されその前に納付すれば5%の割合で課税されます。
納税額×10%(5%)※5 000円未満不徴収 |
税務調査の結果、税法に違反していたとなると追徴税を支払うことになります。その際でも修正申告を行なう場合と更正処分を行う場合があります。
税務調査の結果、誤りがあった場合、調査官から修正申告をするよう指示されます。
修正申告とは、すでに行った申告について税額が少なかった場合などに行う手続きです。税務調査によって誤りを指摘されて提出する場合だけでなく、自分で誤りを見つけて提出することもあります。修正申告は税務署から更正処分を受けるまではいつでも行うことができます。
調査官の言い分に納得がいかない部分があるという場合、修正申告を拒否することもできます。また、「Aの指摘部分は修正申告するが、Bの指摘部分については納得がいかないのでしない」と一部だけを拒否することも可能です。
拒否した場合には、税務署から更正処分(※後述)を受ける可能性があります。
税務調査によって修正申告する場合には、前述した過少申告加算税が課せられる可能性がありますが、自ら修正申告すればこれが免除されることになっています。
ただし修正申告をした場合には、申告書を提出した日が納期限となりますので、未納税額についてその日まで延滞税が発生することになります。
したがって、修正申告をすると決めた場合には、できるだけ早く手続きを行うことをおすすめします。
しかし繰り返しますが、税務署の主張に納得がいかなければ修正申告をする必要はありません。
後述する更正処分を受けた場合には不服申立や税務訴訟を行うことができますが、修正申告書を提出すると、原則としてこれらの手続きを行えなくなってしまうからです。
更正処分とは、提出された納税申告書に記載された税額等の計算が間違っているなどの時に、税務署長がその調査に基づき、申告書に関わる課税標準または税額等を修正するために行う税務当局側が行う処分です。
前述した修正申告も、「税額等を修正する」という内容は同じですが、修正申告は後で修正内容や税額について不満が生じた時に不服を申し立てることができません。
しかし、更正処分は不服申立てができるという点で違いがあります。
これは、修正申告が納税者自ら行う手続きであるのに対し、更正処分は税務署が強制的に行う処分だからです。
更正処分後不服申立てをされると、担当調査官の説明不足などが指摘され、担当官の評価に関わることもあることから、税務署は修正申告をするよう求めてきますが、どちらを選ぶかは納税者が決めることなので、言いなりになる必要は全くありません。
修正申告を拒否して更正処分を受け、不服申立の手続きをとることになります。この不服申立の手続きには、期限の制限があり、通知を受けた日の翌日から1カ月以内となっています。
税務調査によって指摘事項が示された時に修正申告をするべきか、拒否して更正処分を受けるべきかについては、迷うところです。
時間も経費もかかりますが、どうしても指摘事項等に納得がいかない場合はとことん争うのも一つの手段でしょう。
「税理士に依頼しても、結局税務署に言いなりになるのではないか」と心配される人もいます。
しかし、税理士は、税務に関する専門家として、納税義務者の信頼にこたえ、納税義務の適正な実現を図ることを使命としています(税理士法1条)。
つまり、税理士は納税者の味方として仕事をしなければならないのです。
税理士は、納税者(会社や個人事業主など)の味方であるということを忘れず、タッグを組んで税務調査に対応することをおすすめします。
税務署は、税務調査を行う前にある程度申告に問題がありそうな会社を選定したうえで出向いています。したがって、最初から「この会社は怪しい」と思っているからこそ、時間と労力を使ってでも調査するのです。
したがって税務調査では、まさに重箱の隅をつつくような、細かい質問を次から次へとされることを覚悟しなければなりません。
ただし、これまで述べてきたように、調査官が指摘したことをすべて認める必要はありません。指摘事項のなかには、単純に判断することができないような「グレーゾーン」といわれる事項もたくさんあるはずです。特に交際費や役員賞与などの科目については、何のために支出したのか、なぜ支出したのかという点を厳しく追及されることがあります。
しかし、調査官によって問題があると指摘した事項についても、見方によって問題なしとなる可能性も十分あります。
税理士が立ち会ったからといって指摘された事項をすべて拒否することは難しいかもしれませんが、このようなグレーゾーンの事項については、納税者の立場に立ってしっかりと主張してもらうことができます。
以上、重加算税の意味や税務調査における対応方法などについてご紹介しました。
税務調査に対応するためには、味方になってくれる税理士の存在が不可欠ですが、「顧問税理士がおらず、誰に頼めばいいのか分からない」ということもあるでしょう。
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