相続時精算課税制度を活用するポイントと必要な手続き

公開日:2018年11月06日
最終更新日:2019年06月07日

目次

  1. 相続時精算課税制度とは
    • 2,500万の特別控除
    • 相続時精算課税制度の条件
    • 暦年贈与は使えなくなる
  2. 相続時精算課税制度を利用した節税対策
    • 収益物件を贈与する
    • 値上がりする財産を贈与する
    • 敷金相当額を贈与する
  3. 相続時精算課税制度を選択した際の申告
    • 申告書の書き方
    • 相続時精算課税選択届出書
    • 相続時精算課税の添付書類
  4. まとめ
    • 税理士をお探しの方

円満な相続を実現するためには、生前の相続対策が欠かせません。
相続対策としては、「相続トラブル対策」「相続税対策」「納税資金の確保」の3つの視点から対策を検討する必要がありますが、そのうち「相続税対策」の1つの選択肢として「相続時精算課税制度」があります。

相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度とは、親や祖父母が20歳以上の子どもや孫に財産を贈与する時に、最大2,500万円までは、当面の間非課税となるという贈与税の特例制度です。
「当面は非課税」の意味ですが、これは相続が発生した段階で、先渡しされていた財産に相続税がかかるからです。

つまり相続時精算課税制度とは、「相続税の納税を後回しにして、相続財産だけ先渡しする制度」だということになります。
親が子どもに財産を贈与すると、原則として贈与税がかかりますが、この制度を利用すれば、2,500万円までは贈与税がかかりません。「相続まで待たせずに、今ある財産を使わせてあげたい」という親の思いがある場合や、「親のお金をアテにしたいが、相続までは待てない」という子どもの事情がある場合には、メリットがあるといえるでしょう。

この相続時精算課税制度を選択すると、2,500万まで贈与税が非課税になるというメリットがありますが、後に相続が発生した時には相続税がかかることや、いったん相続時精算課税制度を適用すると暦年贈与を利用できなくなることなど、注意すべき点もあります。

2,500万の特別控除

相続時精算課税制度のもっとも大きな特徴なのが、最大2,500万円までの贈与分にかかる贈与税が当面非課税となるという点です(2,500万円を超える贈与分に対しては、一律で20%の贈与税がかかります)。
一般的な贈与税の基礎控除は年間110万円までであり、それを超えると贈与税が発生してしまいますので、一気に多額の財産を贈与する時には、相続時精算課税制度のメリットが大きくなるといえるでしょう。

ただし、前述したとおり、将来相続が発生したときには、送られた全額に相続税がかかりますし、非課税限度額内でも無税とはなりません。
つまり「贈与税はかからない」が「相続税はかかる」という制度になります。

相続時精算課税制度の条件

相続時精算課税制度が適用されるには、いくつかの条件を満たす必要があります。

①当事者の要件
贈与者は、贈与をした年の1月1日に60歳以上となっている父母又は祖父母である必要があります。
そして、受贈者は、贈与を受けた年の1月1日に20歳以上の子どもや孫に限定されます。

つまり、相続時精算課税制度を利用できるのは、祖父母や父母から成人した子どもに贈与を行うケースに限られるということになります。
親や祖父母は60歳以上なので、それより若い親から子どもに贈与することもできません。

未成年は受贈者になれないので、子どもが未成年のうちには、この制度を適用できないことになります。また、配偶者間の贈与や兄弟姉妹間の贈与、義父から嫁に対する贈与などにおいても、相続時精算課税制度は適用することができません。

例えば、以下のようなケースでは、相続時精算課税制度が適用されます。
・65歳の親が40歳の子どもに居住用の家を生前贈与
・70歳の祖父が25歳の孫に預貯金を生前贈与

反対に、以下のようなケースでは、相続時精算課税制度は適用されないということになります。
・59歳の親が35歳の子どもに預貯金を生前贈与
・65歳の祖母が10歳の孫に定期預金を生前贈与
・40歳の親が8歳の子どもに預貯金を生前贈与
・夫が妻に不動産を贈与

このように相続時精算課税制度では、当事者に関する要件がかなり厳しくなっているので、正確に理解しておくようにしましょう。

②相続時精算課税選択届出書の提出
相続時精算課税制度を利用するためには、初めて贈与があった年の翌年2月1日から3月15日までの間(贈与税申告期間)に、贈与税の申告を行い、相続時精算課税選択届出書を税務署に提出しなければなりません。
この書類を提出しないと、相続時精算課税制度が適用されず、通常通りの贈与税が課税されてしまいますので、注意しましょう。

なお、相続時精算課税制度では、財産の種類についての要件はありません。どのような財産でも対象にすることができます。現金預貯金だけではなく、土地建物などの不動産そのものでもかまいません。

暦年贈与は使えなくなる

相続時精算課税制度を適用すると、その後は暦年贈与ができなくなります。
相続時精算課税選択届出書を提出すると、以後その当事者間については年間110万円までの贈与税の基礎控除は適用されなくなってしまうのです。
たとえ、相続時精算課税制度の2,500万円の枠を全部使い切ってしまったからといって、暦年贈与に戻してもらうことはできません。
つまり、「2,500万円までは、相続時精算課税制度で、あとは暦年贈与で」ということができなくなるわけです。
いったん相続時精算課税制度を利用してしまったら、贈与者や受贈者が亡くなるまで暦年贈与ができなくなるので、贈与者が若い場合や他にも贈与したい財産がある場合などには、本当にこの制度を適用して良いのかどうか、慎重に検討した方が良いでしょう。

ただし、贈与の方法は、父母ごとに選択することが可能なので、父親からの贈与は暦年課税贈与を選択し、母親からの贈与は相続時精算課税制度を選択するということは可能です。
さらに、夫婦が両方の親から贈与を受ける場合には、2,500万円×2=5,000万円までは非課税となります。

参照:国税庁「相続時精算課税の選択」

「相続時精算課税制度と暦年課税の選択と利用法」を読む

「暦年課税制度」(暦年贈与)の方法と申告方法(記載事例付)を読む

相続時精算課税制度を利用した節税対策

メリットとデメリットがある相続時精算課税制度ですが、それではどのようなケースで相続時精算課税制度を利用するとメリットがあり、どのような点に注意をすべきなのでしょうか。

収益物件を贈与する

相続時精算課税制度は、収益を生む財産を贈与すると節税になります。
不動産は高額になることも多いので、一度に2,500万円までの贈与分にかかる贈与税が無税になり、贈与後に生み出された利益は相続財産とはならないのです。
また、いったん子どもに収益物件を贈与すると、その後に発生する賃料もすべて子どもが受け取れるようになり、相続財産の増加を抑えることができます。

例えば、親が賃貸アパートを所有していたとします。そして、年間の経費を差し引いても毎年,1000万円ほどの家賃収入があるとします。
この時、親がそのままそのアパートを所有し続けた場合には、財産が毎年1,000万円ずつ増え続けることになるので、その分だけ相続税も増えることになります。

しかしこの賃貸アパートを、相続時精算課税制度を利用して子に贈与したとします。
すると、この賃貸アパートのオーナーは子になり、贈与後の家賃は子どもに入るようになります。
つまり、親の相続財産は以降増えなくなり、相続税も増えなくなるということになるわけです。

値上がりする財産を贈与する

値上がりが予想される財産を贈与すると、節税になります。
相続時精算課税の持ち戻しについては、「時価主義」というルールがありますが、これは、例えば100円の有価証券を贈与し、その後持ち戻しの時に300円に値上がりしていたとしても、逆に1円に値下がりしていたとしても、贈与時の時価である「100円」で評価されるというルールです。
したがって、贈与した財産の時価が、後々値上がりすると分かっている場合に、先に財産を贈与すると、相続時の財産総額を抑えることができるわけです。
「確実に、この財産は値上がりする」と分かっているような場合には、相続時精算課税制度を活用するメリットは大きいといえるでしょう。

敷金相当額を贈与する

子どもや孫に収益物件の贈与をするときには、敷金に注意が必要です。
不動産を賃貸するとき、賃貸人は賃借人から敷金を預かりますが、敷金は契約終了時に賃借人に返還しなければなりません。敷金返還債務は賃貸人の地位に附随するものなので、贈与や相続によって賃貸人が変更すると、敷金返還債務も当然に新しい賃貸人に引き継がれます。
つまり、親が子どもに収益物件を贈与したときには、賃貸借契約の終了時、子どもが賃借人に対して敷金を返還しなければならなくなってしまうのです。

そうなると、子どもは「敷金返還義務を履行する」という負担と引換に不動産の贈与を受けることになります。このように、一定の負担を引換に財産を贈与することを「負担付贈与」と言います

負担付贈与になった場合、贈与税の計算における贈与財産は「路線価」や「固定資産評価」ではなく「時価」によって評価されます。
時価とは、その時々の値段という意味ですが、土地の路線価は時価の8割程度、建物の固定資産税評価額は時価の7割程度となっているので、時価評価をされると贈与財産の評価額が上がって税の金額が大きく増額されてしまうリスクがあるということになります。

したがって、収益物件の贈与を負担付贈与にしないためには、不動産の贈与の際、同時に現金で敷金相当分も贈与する必要があります。そうすれば負担付贈与ではなく一般の贈与として取り扱うという通達が、国税庁から出されているからです。

そこで、相続時精算課税制度によって収益物件を子どもや孫に贈与するときには、「負担付贈与」と認定されて贈与税が増額されるのを防ぐため、必ず「敷金相当分の現金」と不動産をセットで贈与する必要があります。

参照:国税庁「賃貸アパートの贈与に係る負担付贈与通達の適用関係」

相続時精算課税制度を選択した際の申告

前述したとおり、贈与の際に相続時精算課税制度を利用すると、当初に贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告をする必要があります。
ここでは、その際に提出する「相続時精算課税選択届出書」という書類の作成方法と手続きについてご紹介します。

申告書の書き方

相続税精算課税制度を適用する場合、贈与税の申告書の第一表と第二表の両方を作成する必要があります。
まずは第二表からみていきます。

第二表の書き方

①右上に、受贈者(申告者)の氏名を書きます。

②「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税選択の特例」を受ける場合は、チェックを付けます。それ以外の場合はチェックをつける必要はありません。

③「特定贈与者の住所、氏名、申告者との続柄、生年月日」欄には、贈与者の住所や氏名、生年月日などの情報を記載します。

④「左の特定贈与者から取得した財産の明細」に、贈与対象財産の明細を記載します。
複数の財産が贈与された場合には、それぞれの個別の財産ごとの記載が必要です。
「所在場所等」には、預貯金や株などの財産のある場所を記載しましょう。
「固定資産税評価額・倍数」は、贈与財産が不動産の場合に必要に応じて記載します。
「財産を取得した年月日や財産の価格(贈与税評価額)」も忘れず記載しましょう。

⑤「種類」の項目には、土地や家屋、事業用資産、現金、預貯金や有価証券などを記載します。
「細目」には田、畑や宅地、上場株式等などの財産の種類を記載します。
現金、預貯金の場合、細目の記載は不要です。

「利用区分・銘柄等」については、現金、普通預金、定期預金、自用地や貸付地、自用家屋などを書きます。
「数量・単価」は不動産の面積や株式の株数を書きます。

⑥「財産の価格の合計額(課税価格)」には、贈与財産の合計額を記載します。

⑦「特別控除額の計算」には、2,500万円または財産価格の少ない方の金額を記入しましょう。

⑧今回の贈与額が2500万円未満の場合、来年に繰り越される金額を「翌年以降に繰り越される特別控除額」に記入します。金額は㉓から㉔の数字を差し引いた額です。

第一表の書き方

第二表を作成したら、次に第一表を作成します。

①税務署名や提出年月日申告者(受贈者)の氏名、住所、マイナンバーなどを順番に記載します。

②暦年課税分の欄には記入不要です。

③「合計欄」に、贈与対象の財産評価額の合計を記載します。

相続時精算課税制度を初めて適用する場合(非課税範囲内)に記載が必要な箇所は、
⑪の相続時精算課税分の課税価格の合計額です。この欄には第二表の㉑の金額を転記します。
⑬の課税価格の合計額には、第一表の左記の⑪の数字を記載します。

相続時精算課税選択届出書

相続時精算課税制度を利用する際には、相続時精算課税選択届出書の提出が必要です。

①左上に税務署名と提出年月日を記載します。

②「受贈者欄」には受贈者(贈与税を申告する人)の氏名、住所、電話番号などを記載します。

③「特定贈与者との続柄」については「長男」や「長女」、「孫」などと記載します。

④「特定贈与者に関する事項」には、贈与者の氏名や住所、電話番号などを記載します。

⑤「年の途中で特定贈与者の推定相続人又は孫となった場合」には、養子縁組などで1年の途中に子どもや孫になった場合に記載します。

相続時精算課税の添付書類

相続時精算課税の届け出の際の添付書類は以下の通りです。

・特定贈与者、受贈者の関係がわかる戸籍謄本類
・受贈者の戸籍の附票または住民票の写し
・特定贈与者の住民票の写し(氏名、生年月日を示すもの)
・特定贈与者の戸籍の附票の写し(贈与した年の1月1日に60歳になっていることを示すもの)

まとめ

以上、相続時精算課税制度による贈与税の計算方法についてご紹介しました。
相続時精算課税制度を利用すると、最大2,500万円までの贈与分にかかる贈与税が当面は非課税となり、それを超える分には一律20%の贈与税がかかる制度ですが、後に相続が発生したときに贈与分が清算されてまとめて相続税がかかることや、いったん相続時精算課税制度を適用すると暦年贈与を利用できなくなることなど、注意すべき点もあります。
まずは、相続時精算課税制度について、正しく理解し、損しないために相続税に精通している税理士に相談してみましょう。

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