円滑に事業承継を進めるためのポイント、スケジュール

公開日:2018年08月01日
最終更新日:2019年05月22日

目次

  1. 事業承継とは
    • なぜ事業承継対策は必要か
  2. 事業承継対策の基本的な流れ
    • 1. 現状を分析する
    • 2. 財産を評価する
    • 3. 後継者を選定する
    • 4. 事業の承継方法を選定する
    • 5. 事業承継計画を作成する
    • 6. 計画の実行・事業の引き継ぎ
  3. 事業承継対策のポイント
    • 10年スパンで考える
    • 税金対策シミュレーションを行う
    • 短期で行う税金対策
    • 中期で行う税金対策
    • 長期で行う税金対策
  4. まとめ
    • 事業承継に強い税理士を探す

事業承継とは、事業に必要な経営権や資産を現在の経営者から後継者にスムーズに引き継ぐための一連のプロセスのことです。中小企業の事業承継は、経営者を交代するだけで円滑に事業が承継されるものではなく、後継者の選定や育成から始めるとおよそ10年の期間は必要になるとされています。
後継者へスムーズに事業を承継できなければ、会社の業務は停滞し、最悪の場合倒産に至るケースもあります。

ここでは、事業承継を円滑に進めるためのポイントを、計画の立案・実行と税金対策の側面からご紹介します。事業承継について知りたい中小企業経営者の方はぜひ参考にしてください。

事業承継とは

事業承継とは、現在の経営者から後継者に経営を引き継ぐプロセスのことで、後継者の選定・育成、経営権の承継などの事をいいます。
どんなに有能な経営者でも、歳をとります。永遠に社長を続けていくことはできません。
残された家族や従業員、そして取引先のためには、円滑に次世代に事業を承継することが大切なのです。

なぜ事業承継対策は必要か

事業承継は、現在の経営者が影響力を持っている間に自身の意思で行うべきです。

経営者に予期せぬ病気やケガなどが起こり、後継者に突然経営を引き継ぐことになれば、従業員だけでなく取引先にも先行きの不安を与えてしまうことになります。

しかし、経営者が後継者を探すべき時期を迎えているにもかかわらず、後継者にバトンタッチする準備をできていないというケースは大変多いのが実情です。
とはいうものの、経営者の引退時期については、なかなか周囲から切り出せるものではありません。事業承継は、経営者が自ら決断し対策を始めることが大切です。

事業承継対策の基本的な流れ

事業を次世代に引き継ぐと判断した際には、事業承継対策を行っていくことになります。
事業承継は、基本的には以下のような流れで事業承継計画を立てて、その計画をもとに実行していきます。

1. 現状を分析する

事業承継対策を考えるには、まず、会社や事業の現状を分析します。
「経営者だから、自社のことはよく分かっている」と思いがちな人も多いのですが、細かく調べていくと気がつかなかった部分が見えてきます。
また、事業承継の現状分析においては、オーナー経営者だけでなく、役員や従業員、取引先などの利害関係者全ての視点から現状を分析し、最良の手法を選択する必要があります。

現状を分析したうえで事業を承継させると決めた場合は、できるだけ良い状態で後継者に引き継げるように事業内容や財務内容を改善していきます。事業が先細りしていて立て直せる見込みがない場合は、廃業も選択肢とします。

2. 財産を評価する

次に、事業に使っている資産がどれぐらいあるかを確認します。承継する資産には経営者が保有する株式のほか、会社に貸し付けている個人の資産も加えます。

中小企業の株式は、上場株式のように市場価格があるわけではないため、以下の方法で株価を算定します。

・類似業種比準方式:業種が類似した上場企業の株価や財務内容を参考に株価を算定
・純資産価額方式:会社の純資産額をもとに株価を算定

どの方法出算定するかは会社の規模によって異なり、上記の方法を併用することもあります。なお、実際の株価の算定は非常に難しいため、事業承継を扱う税理士に依頼することをおすすめします。

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3. 後継者を選定する

後継者候補は、以下の順番で検討するのが一般的です。

親族への承継
まずは、親族内で後継者がいないか検討するのが一般的です。従業員や取引先などの理解も得られやすく、承継までの準備期間を確保しやすいというメリットがあります。
しかし、親族内に承継の意志がなかったり、経営者の素質を持つ者がいなかったりする場合もあります。
また、相続人が複数いる場合には、誰を後継者とするのかはトラブルの元になるというリスクもあります。

従業員への承継
親族に適任者がいない場合には、従業員への承継を検討します。
従業員であれば、業務や業界に精通していますし、他の従業員の理解を得られやすいケースがほとんどですが、事業承継のために自社株や事業用資産を取得しようとしても、資金がなく、事業承継を断念せざるをえないケースもあります。

第三者への承継
適切な後継者がいない場合は、M&Aなどの方法で、第三者へ承継する方法も検討します。
ただし、経営者が望む条件を満たす買い手を見つけるのは、非常に困難です。

廃業
後継者が見つからず、また事業を残したいという意思がなければ廃業を検討することになります。

4. 事業の承継方法を選定する

事業の経営権、つまり会社の株式を後継者に承継させるには、個々の状況に応じて以下の中から最適な方法を選びます。
過去に事業承継のことを考えず、相続税対策だけ検討していた場合には、株式が分散されているケースもありますので、その分散された株式をどのように後継者に集約するかという視点も必要になります。

・株式を後継者に生前贈与する
・遺言で後継者に株式を相続させる
・後継者に株式を買い取らせる
・株式に関する会社法の制度を利用する

贈与や相続で承継する場合は、後継者は贈与税や相続税を納めなければなりません。ただし、事業承継税制が適用できれば納税は事実上免除されます。
事業承継税制の適用を受けるためには、以下の要件が必要になります。

(1) 平成30年4月1日から平成35年3月31日までに、都道府県庁に「特例承継計画」を提出していること。
(2) 平成30年1月1日から平成39年12月31日までに、贈与・相続(遺贈を含む)により自社の株式を取得すること。

※平成29年12月31日までに贈与・相続により株式を取得した場合は、特例の認定を受ける(あるいは通常の認定から特例の認定へ切替えを行う)ことはできません。

参照:中小企業庁「平成30年4月1日から事業承継税制が大きく変わります」

会社法では、配当を多く出すかわりに議決権を制限する株式や、相続人に対する株式の売渡請求などさまざまな制度を認めています。これらの制度も相続と事業承継の対策に役立てることができます。

5. 事業承継計画を作成する

ここまで検討してきた事項(現状分析、後継者、承継方法)をもとに、事業承継の具体的なスケジュールを立てていきます。

スケジュールは経営者の引退時期を決めた上で、逆算するのがよいでしょう。
社長を退いて会長として後継者の後見をする場合は、社長退任と会長退任の両方の時期を決めておく必要があります。

この時、引退の年齢は、70歳前後に据えておくことが理想的です。高齢でも元気な経営者はたくさんいますが、高齢になるとどうしても突然亡くなるリスクが増加しますし、判断力が衰えることもあります。
「まだまだ現役を退くつもりはない。10年後も問題なく経営している」と考える元気な経営者もいますが、今の元気な自分が10年後も続く保証はありません。
もし現在すでに70歳を過ぎている場合は、可能な限り事業承継に取りかかることをおすすめします。

6. 計画の実行・事業の引き継ぎ

事業承継計画を作成すれば、その計画を実行に移して事業を後継者に引き継ぎます。

計画の実行で注意が必要なのは、定期的に進捗を確認する機会を持つことです。定期的に進捗を確認しなければ、日常業務に忙殺されてせっかくの計画が実行できなくなってしまいます。
また、後継者に円滑に事業譲渡を行うためには、積極的に後継者を信頼関係を築くことが大切です。事業承継をちらつかせて無理難題を押し付けたり、後継者のミスを必要以上に線たりすると、後継者は委縮してしまい、正しい経営判断を行うことができなくなってしまいます。

事業承継対策のポイント

ここまでご紹介してきた事業承継の一連のプロセスを実行するには、10年程度の期間が必要とされています。心身ともに健康なうちに事業を承継できるように、また税金対策の選択肢を多くするためにも、10年スパンで考えて早期に取りかかることがポイントです。

10年スパンで考える

事業承継は10年かけて実施する必要があります。「10年もかかるのか?」と思う人もいるかもしれません。しかし、会社の事業価値や財産を減らさず、事業承継をスムーズに実行するためには、10年スパンのなかで短期・中期・長期の時間軸を立て、実行することが大切です。
なお、この「10年」は、中小企業庁が公表している事業承継ハンドブックでも推奨されているスパンです。

参照:中小企業庁「事業者のための事業承継マニュアル」

なお、後継者の育成に必要な機関については、経営者の約半数が「約5年」「5年~10年」と回答しています。
事業を承継できる後継者を選定・育成するための時間を考えても、やはり10年のスパンで考えるのが得策といえるでしょう。

引用:中小企業庁「事業者のための事業承継マニュアル」

税金対策シミュレーションを行う

会社の株式を贈与や相続で引き継ぐ場合は、後継者に贈与税や相続税などの税金がかかります。業績が良い会社の株式は評価額が高くなり、税額もおのずと高くなります。
なお、相続で引き継ぐ場合は、経営者個人の財産も念頭におき、相続人間のトラブルが発生しないように対策することも必要です。

なお、中小企業の株式の贈与や相続では、受け継いだ非上場株式にかかる相続税の税負担を軽くできる事業承継税制を受けることができます。
この制度は、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です。

参照:税務署「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(事業承継税制)のあらまし」
これらの税金対策は、事業承継に詳しい税理士に相談してシミュレーションすることをおすすめします。

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短期で行う税金対策

短期で行う税金対策としては、贈与税の配偶者控除、オーナーの会社に対する貸付金の自社株への転換(DFS)などの方法があります。

贈与税の配偶者控除
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた際には、110万円の贈与税の基礎控除のほかに、最高2000万円までの控除をすることで、合計年間2110ま年までの贈与を無税で行うことができる制度です。
(※配偶者控除は同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができません。)

参照:国税庁「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」

オーナーの会社に対する貸付金の自社株への転換(DFS)
「デット・エクイティ・スワップ(DES)Debt Equity Swap」とは、債務(Debt)と資本(Equity)を交換(Swap)することをいいます。
旧経営者の会社への貸付金は、会社から見れば債務です。その会社の債務を旧経営者から出資を受けたものとして借入金から資本金へ振り替えることで、貸付金は、株式へ転換しますので、株式として評価されることになるわけです。

しかし、債務免除益として会社に課税される可能性がありますし、明らかに贈与税、相続税を回避するだけの目的の場合はこの税金対策が認められず、ペナルティを科されることがありますので注意が必要です。

中期で行う税金対策

中期で行う税金対策としては、養子縁組や会社の組織再編などがあります。
子どもがいる場合なら1人、子どもがいない場合なら2人まで相続税の計算で考慮されて、節税につながります。

養子縁組は円滑な事業承継を妨げる恐れもありますが、孫に事業を継がせる場合には有効です。組織再編は、採算の良い事業と不採算事業に会社を分割し、採算の良い会社を後継者に継がせて不採算の会社を清算するといった方法です。

具体的な節税効果としては以下の通りです。
(1)基礎控除
そもそも相続税は相続人一人当たり600万円を控除することができます。養子縁組で養子1人増やせば、同額の基礎控除が増加します。

(2)死亡保険金の非課税枠の増加
死亡保険金には相続人一人当たり500万円の非課税枠があります。

(3)死亡退職金の非課税枠の増加
旧経営者の死亡による退職金は死亡日から3年以内に支給が確定したものは相続税の対象となります。しかし、相続人一人当たり500万円の非課税枠があります。

長期で行う税金対策

事業承継の税金対策としては、生前贈与、役員退職慰労金の支給、生前退職金、従業員持株会の活用などがあります。時間をかける対策ほど選択肢が多くなり、効果も期待できます。

生前贈与
生前贈与では、贈与税の基礎控除(年間110万円)を利用して長期間にわたって少しずつ株式を譲渡することができます。子供や孫への承継では2,500万円まで控除される相続時精算課税も利用できます。

役員退職慰労金の支給
自社株式の相続税評価額を下げながら納税資金を確保する方法として、役員慰労退職金を支給することが挙げられます。たとえば、旧経営者が引退したタイミングで支給する生前退職金や死亡退職金として支給する方法です。
退職金を受け取る社員の所得税は、退職所得となり税負担が少なくすることが可能です。
役員退職慰労金の支給については、経営者個人の相続財産が多くなる点についても併せて注意するようにしましょう。

生前退職金
生前退職金は、退職所得として、旧経営者個人の所得税が優遇されます。
しかし、実質的に退職していないと税務署に判断された場合、給与所得となり所得税が増税されますので注意が必要です。
しかも、役員賞与として会社の経費で落とせないため、法人税なども増税されるリスクもあります。支給するときは慎重に検討しましょう。

従業員持株会の活用
従業員持株会の活用とは、従業員が持株会に加入し給与から天引きされた資金を拠出して自社株を取得していく制度です。
自社株の取得目的は、経営権の取得ではなく配当を得ることにあり低い価額で取得することが可能と考えられます。したがって、現経営者は自社株を低い価額で持株会へ譲渡することで、文字株数を減少し相続財産を減らす効果があります。
なお、持株会へ自社株を譲渡する場合には、経営のコントロールが不安定にならないよう、留意する必要があります。

まとめ

以上、円滑に事業承継を進めるためのポイント、スケジュールについてご紹介しました。
10年後を見据え、事業を持続的に発展させるためにも、次世代へのスムーズな事業承継を実現させることは大変重要です。税理士に相談すれば、後継者の選定・育成のポイントや、事業承継計画の策定、特例制度の活用などについてサポートを受けることができます。

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