事業承継の相談|いつ誰に何を相談すべきか

公開日:2018年10月31日
最終更新日:2022年06月23日

この記事のポイント

  • 事業承継の相談は、50代~60代から始めるとよい。
  • 事業承継の相談相手は、税理士・弁護士など課題ごとに異なる。
  • 中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」の活用も、おすすめ。

 
「事業承継の準備は、早いほどよい」
「元気なうちに、次世代の体制を整えるべきだ」
このような言葉を耳にするたびに「早く事業承継について、考え始めなければ」と思いながら、「とは言え、何から始めて良いか分からない」という方は多いのではないでしょうか。
また、「後継者がまだ若い」「経営が忙しくてそれどころではない」という方も多いでしょう。

しかし特に創業者社長の場合には、意識的に事業承継と向き合うことが必要です。
社長の座はいずれ譲らねばならないのです。そして、本当に守るべきものは社長の座ではなく、会社であり、従業員であり、取引先であり、残された家族です。
これらの守るべきものをしっかり守るためには、事業承継に向き合い、必要な対策を行っていくことが必要なのです。

ここでは、事業承継を検討する際のポイントとなる、納税資金、後継者育成、相続トラブル対策、自社株評価などについてご紹介します。

事業承継|何を相談すべきか

事業承継対策を進めるためには、さまざまな事項について検討する必要がありますが、なかでも、後継者を選定すること、会社資産や相続財産を算定し納税のための資金を用意すること、相続人たちが相続トラブルを起こさないように相続対策をしておくことなどが重要なポイントとなります。
ここでは、事業承継で相談すべき主なポイントをご紹介します。

(1)後継者の選定

後継者の選定は、事業承継における最重要課題のひとつです。
後継者としては、以下の3種類が考えられます。

・子どもなどの親族への承継
・従業員、役員への承継
・他の会社への事業売却(M&A)
子どもなどの親族
中小企業の場合、子どもなどの親族に承継させたいと希望する経営者も多いと思います。後継者を親族とすれば、会社内外の関係者からの理解が得やすいなどのメリットがありますが、相続人が何人かいる場合には、後継者を選定するのが難しく、相続トラブルの火種となるリスクがあります。

従業員、役員
子どもが承継を希望しないケースや、親族に能力や適性のある者がいないといったケースでは、社内の能力の高い従業員や、長年経営者の右腕となって働いてきた役員などに承継させる方法も検討します。このような従業員承継の場合には、社内で理解を得ることが、ひとつのポイントとなります。

他の会社への事業売却(M&A)
親族への承継も従業員への承継も困難というケースでは、他の会社へのM&Aを検討すべきケースもあります。
事業の譲渡(M&A)は、かつてはネガティブなイメージを持たれることも多かったのですが、事業がそのまま継続されますし、大切な従業員の雇用も守ることができるので、大変メリットの多い手法です。

(2)相続財産の評価

事業承継を行うときには、資産の承継が重要なポイントとなってきます。
資産を承継する際には、まず相続財産の評価と相続税の試算が必要です。
相続財産とは、具体的には、自社株式や事業用資産、自宅などの不動産、預貯金などです。
後継者を選定した場合には、後継者に株式や事業用資産を引き継ぐことが必要になりますが、事業を継続するうえで必要となる資産はまとめて後継者に承継させなければなりません。その際には、後継者以外の他の相続人の遺留分などにも配慮して、適切な方法で行う必要があります。相続人が複数いるにもかかわらず、遺言書の作成などの適切な相続対策を行わずに経営者が死亡した場合には、相続人とその家族の間でトラブルが起こってしまい、経営権が分散させてしまい、事業の存続が難しくなってしまいます。
相続財産の評価を適切に行って、誰にどの遺産を相続させるのか、慎重に検討しましょう。

(3)納税資金の確保

経営者が亡くなると、多額の相続税が発生する可能性があります。
したがって、相続税等の納税資金をどのように確保するのかについても検討する必要があります。
納税資金を確保するための方法としては、生前贈与や生命保険の活用、自社株の売却資金によって納税資金を用意する方法などがあります。

(4)争族対策

親族のうちの1人を後継者と選定した際には、相続トラブルを回避する対策「争族対策」も考えておかねばなりません。
争族対策とは、その字のとおり、子どもたちやその他の相続人が遺産争いを起こさないようにする対策です。
事業を承継させるために後継者となる子どもだけに資産を集中させると、他の相続人がこれに納得せずトラブルになってしまう可能性があるのです。
ひとたび相続トラブルが起これば、事業の経営どころではなくなり、最悪の場合倒産というケースも考えられます。

また、相続税対策を優先させて自社株を広く親族に分配させてしまうと、議決権を分散させることになり、事業の運営が困難になってしまうこともあります。
このようなトラブルが起きないよう、遺言書を作成したり、生前に相続人が納得できるような贈与を行ったりするなどの対策を講じておきましょう。

(5)M&Aの検討

子どもや従業員が承継しない場合、適切な後継者が見つからない場合には、M&Aを検討することになります。
M&Aというと、かつては敵対的買収といったイメージがありましたが、実際には友好的に進めるケースがほとんどですし、良い譲渡先が見つかれば、子どもや従業員に承継させるよりも好ましい結果を得られる可能性もあります。
なお、M&Aを有利に進めるためには、キャッシュ・フローがプラスになっている必要があります。ですから、M&Aを進めたい時には、業績のよいうちに買い手を見つけて売却する方がよいでしょう。

事業承継|いつ誰に相談すべきか

事業承継について、通常業務を行いながら経営者だけで検討するのは大変です。かといって、事業承継対策に時間を取られ、通常業務が疎かになっては本末転倒です。したがって、事業承継対策を進めるためには、早めに適切な相談先に相談を行うようにしましょう。

(1)可能な限り早期の相談がベスト

「事業承継対策は、早いほどよい」とは、よく言われることです。遅かれ早かれ、事業承継は必ず問題となります。そして、万全な体制で事業承継を行うためには、10年程度の時間が必要になることもあります。
それを踏まえると、現経営者の引退時の10年前には、事業承継計画をスタートしている必要がありますから、65歳で引退を考えているなら、55歳から事業承継計画の検討を始めるとよいことになります。
とは言うものの、「60歳を過ぎたら、もう遅いのか」といえば、そういうこともありません。たとえ引退まで1年しかない段階で事業承継の相談を思い立ったとしても、何もしないよりははるかに良い結果が期待できます。
「10年程度の時間が必要」というのは、あくまでもひとつの目安です。大切なのは「事業承継を思い立ったら、すぐに相談する」ということです。

(2)税理士・弁護士|課題ごとの相談相手

事業承継については、親族や従業員に相談することが大切ですが、外部の専門家(税理士や弁護士、司法書士など)への相談は欠かせません。
税理士は、税務問題のスペシャリストであり、税金対策については税理士に相談して必要な施策をアドバイスしてもらうことが必要です。また、弁護士は法律問題のエキスパートであり、相続法や会社法が絡む問題については、早めに相談するとよいでしょう。

2021年から、中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」が開始されました。M&Aの仲介業務を行なっている、一定の要件を満たしたM&Aアドバイザーや士業事務所、金融機関等が登録されています。
M&A支援機関によってM&Aの仲介がなされると、補助金の対象となるなどのメリットがありますので、まずは下記データベースで支援機関を検索してみてはいかがでしょうか。

参照:中小企業庁 M&A支援機関

(3)事業承継の相談費用の相場

事業承継の相談について、無料で対応してくれるケースもありますが、相談料が発生するのが一般的です。初回の相談料は、弁護士の場合で30分5,000円~1万円程度かかることが多いようです。
このほか、小計画の立案や実施にかかる費用もあります。
月額顧問料が設定されている場合もありますが、タイムチャージの場合には、1時間1万円~3万円程度のケースが多いようです。
定額制の契約を締結してアドバイスを受ける場合には、選択する承継方法や専門家の関与の度合いによって大きく異なりますが、一般的には100万円以上を見込んでいた方が安心でしょう。
いずれにせよ、事前に費用を確認し、納得してから依頼をすることが重要です。

まとめ

以上のように、事業承継を行うときには、相続税対策のみならず、後継者選びや遺留分問題、自社株の承継方法などさまざまな問題を検討し、時間をかけて解決する必要があります。
やり方を間違えてしまうと、無用な相続トラブルを招いたり、事業の存続が危うくなったりしてしまいます。税理士や弁護士などのアドバイスを受けながら、円滑かつ確実な事業承継を実現させましょう。

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また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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