事業承継税制|平成30年度税制改正ポイント・特例措置と一般措置の違い

公開日:2018年08月01日
最終更新日:2019年04月18日

目次

  1. 事業承継税制とは
    • 事業承継税制創設の背景
    • 事業承継税制の「納税猶予制度」とは
    • 平成30年度改正で創設された「特例措置」とは
  2. 特例措置における事業承継税制
    • 特例措置と一般措置の違い
    • 事前の計画策定が必要
  3. 特例措置の「相続税」の納税猶予制度
    • 適用を受けるための要件
  4. 特例措置の「贈与税」の納税猶予制度
    • 適用を受けるための要件
  5. その他の事業承継支援制度
    • 親族外への事業承継(M&A)の支援策
    • 「事業引継ぎ支援センター」を設置
  6. まとめ

この記事のポイント

  • 中小企業の経営者の高齢化し事業承継ができずに廃業する企業が増加。それに伴い雇用が年間20~35万人失われると推測されている。
  • このような背景をもとに、従来の事業承継税制が大幅に緩和された措置が創設された。
  • この特例を受けると、相続税・贈与税が、猶予・免除される。

 

中小企業の経営者の高齢化が進展し、事業承継ができないことを原因に廃業する企業が毎年7万社に達しそれによって失われる雇用が年間20~35万人と推測されています。事業承継税制とは、このような事態を改善して、事業経営が次世代に円滑に承継されるために創設された税制措置です。

事業承継制度は、これまで何度か改正されてきましたが、2018年(平成30年)1月1日から10年間の時限措置として、従来の事業承継税制が大幅に緩和された措置が設けられることになりました。

この特例措置の適用を受けるためには、2018年(平成30年)4月1日から5年間に「特例承継計画」を作成し都道府県に提出しなければなりません。
早めに税理士に相談して、特例措置を受けるための要件を整え、特例承継計画の作成をしましょう。

事業承継税制とは

事業承継税制とは、「非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度」および「非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度」のことをいいます。

後継者である受贈者・相続人等が、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です。

・贈与税
現経営者からの贈与によって後継者が取得した自社株式に対応する贈与税の納税が猶予・免除されます。

・相続税
現経営者から、相続又は遺贈によって後継者が取得した自社株式の80%部分の相続税額が猶予・免除されます。

参照:国税庁「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(事業承継税制)のあらまし」

事業承継税制創設の背景

少子高齢社会が到来したことで、中小企業の経営者の高齢化はますます加速しています。
中小企業庁の「事業承継に関する現状と課題について」によると、2020年頃に団塊経営者の大量引退期が到来するとしています。

そして、60歳以上の経営者のうち、50%超が廃業を予定していると回答しています。
特に個人事業者においては、約7割が「自分の代で事業をやめるつもりである」と回答していて、廃業の理由としては、「当初から自分の代でやめようと思っていた」が38.2%で最も多く、「事業に将来性がない」が27.9%「子供に継ぐ意思がない」、「子供がいない」、「適当な後継者が見つからない」との後継者難を理由とする廃業が合計で28.6%を占める結果となっています。

参照:経済産業省「事業承継に関する現状と課題について」

このように事業承継を断念したことで廃業する企業が毎年7万社に達し、それによる雇用が失われている状況を受けて、事業経営を次世代に円滑に承継するための制度整備が、重要な政策課題として認識されるようになりました。
このような背景から平成21年度の税制改正によって創設されたのが、事業承継税制です。

事業承継税制の「納税猶予制度」とは

事業承継税制の「納税猶予制度」とは、相続等または贈与によって取得した非上場株式等に対応する相続税・贈与税の納税が猶予されるというものです。
この納税猶予制度は、租税特別措置法で次のように規定されています。

【租税特別措置法70条の7の3】
先代経営者の死亡により後継者が贈与によって取得した非上場株式等は、相続によって取得したものとみなされます。

【租税特別措置法70条の7の4】
後継者は非上場株式等に係る課税価格の80%相当額の相続税の納税が猶予され、後継者の死亡等により免除されます。

【租税特別措置法70条の7】
先代経営者から後継者に非上場株式等の全部または一定数以上の贈与による贈与税全額の納税が猶予され、先代経営者の死亡により免除されます。

平成30年度改正で創設された「特例措置」とは

平成21年度改正で創設された事業承継税制は、毎年のように改正が行われ見直されてきましたが、それでも適用を受ける中小企業は限定されていました。
そこで、もっと多くの中小企業が利用できるようにとした措置が、平成30年の「事業承継税制の特例」です。平成30年1月1日から10年間の時限措置で、従来の事業措置が大幅に緩和されています。

この特例措置では、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の最大3分の2まで)が撤廃され、納税猶予割合の引上げ(80%から100%)等の措置がなされています。

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特例措置における事業承継税制

前述したとおり、事業承継の特例措置は、従来の事業承継税制の各種要件の緩和を含む抜本的な拡充が行われています。
具体的には、(1)猶予対象の株式の制限(発行済議決権株式総数の3分の2)を撤廃し、納税猶予割合80%を100%に引き上げることによって、贈与・相続税の納税負担は生じないとしました。また、(2)2名または3名の後継者に対する贈与・相続に対象を拡大し、(3)経営環境の変化に対応した減免制度を創設して将来の税負担に対する不安への措置などが講じられました。

特例措置と一般措置の違い

前述したとおり、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の最大3分の2まで)が撤廃され、納税猶予割合の引上げ(80%から100%)等の措置がなされることになりました。
特例措置と一般措置については、以下のような違いがあります。

参照:国税庁「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(事業承継税制)のあらまし」

事前の計画策定が必要

特例措置の適用を受けるためには、施行日(2018年(平成30年)4月1日)後5年以内に承継計画を作成して、都道府県に提出する必要
があります。この承継計画を提出しない場合は、従来の事業承継税制の適用になります。

具体的には、会社の後継者や承継時までの経営見通し等を記載した「特例承継計画」を策定し、認定支援機関の所見を記載したうえで、2018年(平成30年)4月1日から2023年3月31日までに都道府県知事に提出し、その確認を受けなければなりません。
2023年3月31日までの相続・贈与については、相続・贈与に承継計画を提出することも認められています。

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特例措置の「相続税」の納税猶予制度

特例措置における「非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度」の基本的な仕組みは、これまでの事業承継税制の仕組みを準用する形で規定されています。

相続人等が会社の代表権を有していた一定の個人から、相続または遺贈によってその会社の非上場株式等を取得した場合には、その非上場株式等のうち特例対象非上場株式等に係る納税猶予分の相続税額に相当する相続税は、一定の要件のもとで、その承継した相続人が死亡するまでその納税が猶予されます。

参照:国税庁「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(事業承継税制)のあらまし」

適用を受けるための要件

特例措置の適用を受けるためには、次の1~3の要件を満たす必要があります。

(1) 特例認定承継会社の範囲
中小企業者のうち、特例円滑化法認定を受けた会社であって、これまでの事業承継税制におけるお相続税猶予制度と同様の要件を満たすもの
なお、特例円滑化法認定を受けるためには、認定経営革新等支援機関の指導及び特例承継計画を作成し、都道府県に提出する必要があります。

(2) 特例被相続人の範囲
① 最初の相続または遺贈にかかる特例被相続人
② 2回目以降の相続または遺贈に係る特例被相続人

(3) 特例経営承継相続人等の範囲
特例における経営承継相続人等は、1社に月3人まで適用をうけれるとされましたが、相続時における議決権数の要件は、相続人の人数によって異なります。

会社や後継者の要件は、以下の要件が必要となります。

(1) 会社の主な要件
次の会社のいずれにも該当しないこと
① 上場会社
② 中小企業者に該当しない会社
③ 風俗営業会社
④ 資産管理会社(一定の要件を満たすものを除きます。)
⑤ 総収入金額(営業外収益及び特別利益以外のものに限ります。)が零の会社、従業員数が零の会社(特例の適用に係る会社の特別関係会社が一定の外国会社に該当する場合には従業員数が5人未満の会社)

(2) 後継者である相続人等の主な要件
① 相続開始の日の翌日から5か月を経過する日において会社の代表権を有していること
② 相続開始の時において、後継者及び後継者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、これらの者の中で最も多くの議決権数を保有することとなること
③ 相続開始の直前において、会社の役員であること(被相続人が60歳未満で死亡した場合を除きます。)

(3) 先代経営者である被相続人の主な要件
① 会社の代表権を有していたこと
② 相続開始直前において、被相続人及び被相続人と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと

(4) 担保提供
納税が猶予される相続税額及び利子税の額に見合う担保を税務署に提供する必要があります。

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特例措置の「贈与税」の納税猶予制度

特例措置における「非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度」の基本的な仕組みも、これまでの事業承継税制の仕組みを準用する形で規定されています。
この特例の適用を受けるためには、贈与により、先代経営者である贈与者から、全部または一定数以上の非上場株式等を取得する必要があります。

参照:国税庁「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(事業承継税制)のあらまし」

適用を受けるための要件

適用を受けるためには、特例円滑化法認定を受けた会社であることが必要です。
特例円滑化法認定を受けるためには、認定経営革新等支援機関の指導を受けて特例承継計画を作成し、2023年3月31日までに都道府県知事に提出し、その確認を受けなければなりません。

会社や後継者の要件は、以下の要件が必要となります。

(1) 会社の主な要件
次の会社のいずれにも該当しないこと
① 上場会社
② 中小企業者に該当しない会社
③ 風俗営業会社
④ 資産管理会社(一定の要件を満たすものを除きます。)
⑤ 総収入金額(営業外収益及び特別利益以外のものに限ります。)が零の会社、従業員数が0人の会社(特例の適用に係る会社の特別関係会社が一定の外国会社に該当する場合には従業員数が5人未満の会社)

(2) 後継者である受贈者の主な要件
贈与の時において、
① 会社の代表権を有していること
② 20歳以上であること
③ 役員等の就任から3年以上を経過していること
④ 後継者及び後継者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、これらの者の中で最も多くの議決権数を保有することとなること

(3) 先代経営者である贈与者の主な要件
① 会社の代表権を有していたこと
② 贈与時において、会社の代表権を有していないこと
③ 贈与の直前において、贈与者及び贈与者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと

(4) 担保提供
納税が猶予される贈与税額及び利子税の額に見合う担保を税務署に提供する必要があります。

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その他の事業承継支援制度

これまでご紹介してきた事業承継税制以外にも、中小企業の事業承継を支援するための施策があります。

親族外への事業承継(M&A)の支援策

事業承継税制は株式の相続・贈与にしか使えませんが、経営力向上計画の認定を受けると、M&Aの際に発生する登録免許税・不動産取得税が軽減されます。

「事業引継ぎ支援センター」を設置

後継者不在の中小企業者等の事業引継ぎを支援するため、平成23年(2011年)度より事業引継ぎ支援事業が開始されました。全国の認定支援機関に「事業引継ぎ支援センター」を設置し、事業承継に関するさまざまな悩みを相談することができます。

参照:中小企業庁「事業承継の支援施策」

まとめ

以上、事業承継税制についてご紹介しました。
これまでご紹介してきたように、さまざまなメリットがある事業承継税制ですが、適用を受けるためには、認定経営革新等支援機関の指導を受けて特例承継計画を作成する必要があります。
経営革新等支援機関(認定支援機関)とは、中小企業・小規模事業者を支援するために、専門知識や、実務経験が一定レベル以上の者に対して国が認定している公的な支援機関です。
事業承継税制の特例措置の適用を受けるためには、認定経営革新等支援機関の税理士の指導、助言が欠かせません。特にこの事業承継税制の特例は、10年という時限措置でもあるので、ぜひ早めに税理士に相談して必要な手続きを行うようにしましょう。

認定経営革新等支援機関いついては、「認定支援機関(経営革新等支援機関)とは」をあわせてご覧ください。

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