公開日:2019年12月21日
最終更新日:2022年04月22日
フリーキャッシュフローとは、その「フリー」の文字のとおり「自由に使うことができるお金」という意味です。
フリーキャッシュフローは、キャッシュフロー計算書を見る時の大切なポイントとなります。
フリーキャッシュフローとは、会社が本業で稼ぎ出したお金から、事業維持のために必要な設備投資などの支出を差し引いたキャッシュフローのことをいいます。
「自由に使うことができる部分のお金」という意味で、フリーキャッシュフロー(Free cash flow)、略して「FCF」と呼ばれます。
キャッシュフローとは、会社がどこにお金(キャッシュ)を使い、どのようにお金を増やしたのかという現金の流れのことをいい、3つの活動別に区分して表した計算書をキャッシュフロー計算書といいます。
![]() ①営業活動によるキャッシュフロー 会社が通常の事業活動で稼いだお金 ②投資活動によるキャッシュフロー ③財務活動によるキャッシュフロー |
キャッシュフロー計算書とは、株式公開会社には作成が義務づけられていますが、キャッシュフローを重視する経営「キャッシュフロー経営」が推奨されたことで、一般の会社にも普及したものです。
会社は、本来の営業活動以外にもさまざまな活動をしています。
そこで、キャッシュフロー計算書は、「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つに区分してキャッシュフローを見ていくことで、何のための活動で資金が増減したかを把握することを目的としています。
「営業活動によるキャッシュフロー」では、会社本来の営業活動によるキャッシュを見ます。しかし、この営業活動を継続するためには、設備投資などが必要ですから、資金運用によるお金の出入りを見るために「投資活動によるキャッシュフロー」を見ます。そして、設備投資をする資金を銀行から借り入れた場合のキャッシュフローは、「財務活動によるキャッシュフロー」で見ていきます。
このような構造を数字であらわし、上から順に見ていくと、会社の現金の流れが分かるようになっているのが、キャッシュフロー計算書ということになります。
営業活動によるキャッシュフロー 営業活動によるキャッシュフローは、会社の本業によるキャッシュフローです。 営業活動によるキャッシュフローがプラスであれば、本業でしっかりキャッシュを残しているといえますが、逆にマイナスであれば利益が出ない商品を売っている、あるいは売上を上げているのにキャッシュの回収はできていない、回収より支払いサイトの方が短いなどの原因が考えられますので、早急に対策が必要となります。 |
投資活動によるキャッシュフロー 投資活動によるキャッシュフローは、会社が将来に向けて投資した現金を表しています。 投資キャッシュフローは、営業キャッシュフローとのバランスが大切です。 たとえば、投資キャッシュフローがマイナス1億円だったとして、営業キャッシュフローが1億円を超えていれば、投資キャッシュフローを営業キャッシュフローで賄えていると判断できます。 投資に使ったキャッシュをどれくらいの期間をかけて回収できるのか、営業活動によるキャッシュフローにどのような影響を与えるのかについては、3~5年のキャッシュフローを合計してその推移を見れば確認できます。 |
財務活動によるキャッシュフロー 財務活動によるキャッシュフローは、財務活動によって増減したキャッシュを表します。銀行から借入れたり、事業で利益を出して借りた現金を返済したりするキャッシュの動きが表示されます。この返済がフリーキャッシュフローの範囲内で行われていれば問題ありませんが、経常的にフリーキャッシュフローの金額を超えていると、事業資金が不足し新規の借入が必要になるなど、経営が厳しくなることが予想されますので、何らかの対策を検討するべきといえるでしょう。 したがって、財務活動によるキャッシュフローとフリーキャッシュフローのバランスを見て、無理なく返済できそうな金額を把握することが大切です。 |
なお、キャッシュフロー計算書の作成方法には「直接法」と「間接法」があります。
直接法は、その期に発生した取引のうちキャッシュに影響するものをすべて集計するという作成方法で、間接法は、キャッシュに関係ない項目を除き、キャッシュに関係する項目を加える作成方法です。
「クラウド会計ソフト freee会計」の資金繰りレポートは、直接法のキャッシュフロー計算書に準じた内容となっています。
![]() freee会計「資金繰りレポートでキャッシュフローを確認する」 各項目のキャッシュフローが総額で確認することができるので、前事業年度と当事業年度を簡単に比較することができる構成になっています。 |
フリーキャッシュフローの計算方法は、営業活動によるキャッシュフローから、投資活動によるキャッシュフローを差し引いたものととらえておけば、まずは十分です。フリーキャッシュフローがプラスなら、本業の稼ぎで(借金などしないでも)、投資を賄えているといえるので、うまく経営されているといえます。
フリーキャッシュフローの計算方法はいくつかありますが、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを足すことで、簡易的に計算することができます。
フリーキャッシュフロー(FCF)=「営業キャッシュフロー」-「投資キャッシュフロー」 |
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ただし、実はキャッシュフロー計算書では、現事業維持のための設備投資等の金額まではわかりません。
投資活動によるキャッシュフローには、他の投資額も一緒に入っているからです。
したがって、以下のように計算することもできます。
フリーキャッシュフロー(FCF)=「営業キャッシュフロー」-「投資キャッシュフローの現事業維持のための投資設備等」 |
いずれの計算方法で計算した場合でも、フリーキャッシュフロー(FCF)は大きければ大きいほどよいと判断することができます。
フリーキャッシュフローとして自由になるお金は、株主への分配や新規事業などへの投資資金、借入金の圧縮などの目的に使われることになります。つまり、どれだけ会社が優良であるかを計る目安となるものです。
①株主への分配 事業継続のために必要な資金は確保したうえで、なお余剰がでたら、リターンを期待する株主に分配するための原資になります。 新規事業などへの投資 ③借入金の返済 |
フリーキャッシュフロー(FCF)が大きいほど、配当金の支払いや投資など、株主と会社にとってプラスになることに自由にお金を使うことができるということになります。
amazonも、フリーキャッシュフローを経営の最重要課題にするとしていて、毎年フリーキャッシュフローを積み上げることで、事業を拡大してきました。
これは、稼いだお金の範囲内でビジネスを拡大してきたことを意味しますから、まさに模範的な経営を行っているといえます。
フリーキャッシュフロー(FCF)が少なかったりマイナスだったりするということは、手もとにお金がないことを意味します。
手もとにお金がなければ、借入や会社の資産を取り崩して会社を運営するしかありませんから、大きなリスクを伴います。
ただし、マイナスだからと言って絶対にダメだとは言い切れません。事業を拡大するうえで設備投資を行うのであれば、一時的にフリーキャッシュフローがマイナスになることもあるからです。そのような事情があれば、将来的にはフリーキャッシュフローがプラスになる可能性もあります。
したがって、フリーキャッシュフローがずっとマイナスなのか、ある期間だけマイナスなのかを判断したうえで、その原因を探ることが大切となります。
フリーキャッシュフローは、会社の今後の価値を決める基準として使われることがあり、フリーキャッシュフロー(FCF)の合計額を「企業価値」と呼ぶことがあります。
しかし、10年後のキャッシュと現在のキャッシュの価値は同じではなく、将来のキャッシュの方が低いと想定されます。
なぜなら、資本にはコスト(金利)がかかるため、時が経てば経つほど資本コストは積み重なり資本が目減りします。
このように「資本は目減りする」という点に着目して、将来のキャッシュフローを現在の価値に引き戻す方法を「割引キャッシュフロー」といったり「ディスカウントキャッシュフロー(DCF)」といったりします。
割引キャッシュフローでは、キャッシュフローの現在の価値を、以下のように計算します。
キャッシュフローの現在の価値=将来のキャッシュフロー/(1+資本コスト)年数 |
たとえば、資本コストを5%とした場合、1億円の価値は1年後には9,524万円となります。
1年後=1億円÷(1+0.05)=9,524万円 |
そして、10年後には約6,139万円まで目減りします。
計算式が難しそうに見えますが、エクセルの数式にすれば、「100,000,000/(1+0.05)^9」です。
以下のExcelをダウンロードして金額と割引率を入力すれば、簡単に計算することができます。
割引キャッシュフロー(DCF法)計算シート ※クリックすると、ダウンロードすることができます。ぜひご活用ください。 ![]() |
以上、フリーキャッシュフローの意味や計算方法、キャッシュフロー計算書の構造などについてご紹介しました。
フリーキャッシュフローは、「会社が自由に使えるお金」という意味であり、一般的にフリーキャッシュフローがプラスの会社は、堅実で安定しているという評価となります。
自社のキャッシュフロー計算書を作成したい時や、分析方法について知りたい場合には、決算書のコンサルタントに力を入れている税理士等に相談してみることをおすすめします。
freee税理士検索では数多くの事務所の中から、フリーキャッシュフロー(FCF)の計算や課題、必要な対策について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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