国際税務とは|海外進出する時に検討すべき事項とは

公開日:2019年06月02日
最終更新日:2019年06月02日

目次

  1. 海外進出する際の検討事項
    • 海外進出の現状
    • 支援団体の整備
    • 国と国、企業間の税金の奪い合い
  2. 海外進出と国際税務
    • 租税条約とは
    • PEとは
  3. 海外進出する時に活用すべき税制
    • 外国子会社配当益金不算入制度
    • 外国税額控除
  4. 海外進出する時に注意すべき税制
    • タックスヘイブン対策税制
    • 移転価格税制
  5. まとめ
    • 国際税務に強い税理士をお探しの方
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この記事のポイント

  • 最近は、大企業だけでなく中小企業の海外進出も増えている。
  • 海外進出をする際には、まず国際税務について検討すべきである。
  • 租税条約を締結していない国との間では、二重課税が発生する可能性もあるので注意する。

 

ここ数年、大企業だけではなく、中小企業の海外進出も相次いでいます。

以前は人件費の安い海外に工場を持つ製造業が主流でしたが、今は、海外をマーケットとして意識したうえで、販路拡大などのビジネス戦略上の理由とした海外進出も増えています。
このような状況に伴い、海外進出を支援する支援機関も増え、企業にとって海外進出のハードルは以前より身近になっています。

ここでは、海外進出を検討する際に知っておきたい国際税務の基礎知識について、ご紹介します。

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海外進出する際の検討事項

世界中で国境を越えた取引が増加しています。
以前は海外進出というと、人件費の安い海外に工場を持ち、そこで製品を生産することで原価を低くするという製造業が主流でしたが、昨今は、製造業以外にも、卸売業やサービス業、小売業の進出も目立ってきています。
これは、日本の人口減少社会に突入しているという状況を受けて、国内だけでビジネスを成長することに限界を感じている企業が増えているものと思われます。
ひとくちに海外進出といっても、貿易から海外拠点の設立など、形態はさまざまであり課題も多様化していますが、海外進出をするうえで必ず検討しなければならないのが「国際税務」です。

海外進出の現状

2018年に発表された経済産業省の「海外事業活動基本調査」によると、2016年度末における現地法人数は2万4959社であり、そのうち製造業が1万919社、非製造業は1万4,040社となっていて、大企業のみならず中小企業も積極的に海外進出している状況が分かります。
地域別にみると中国が依然としてトップで、北米、アジア、欧州の現地法人数はいずれも減少していますが、その他は増加傾向にあります。
特にタイ、フィリピン、マレーシア、インドネシアのASEAN4への進出が増加しており、2015年には4,493社だったのが、2016年には4,521社にまで増加しています。

参照:経済産業省「第47回海外事業活動基本調査概要(2016年度実績)」

支援団体の整備

海外進出を検討する中小企業の増加に伴い、海外進出の支援体制も整備されています。
以前から海外進出を支援している日本貿易振興機構(JETRO)はもちろん、中小企業基盤整備機構や各地の商工会議所、都道府県や市区町村等の公的機関の支援体制も増加しています。
また、資金面においても支援体制が充実していて、日本政策金融公庫や民間の銀行では、海外展開資金の貸出しを積極的に行なうことで、海外進出を検討する企業を後押ししています。

国と国、企業間の税金の奪い合い

日本は、多くの国との間で租税条約を締結しています。
租税条約は、基本的に二重課税を排除することで海外進出企業をサポートすることを目的としています。

しかし、日本で納める税金が増えれば、もう一方の国で治める税金が減るということになりますから、何とか税金を守りたい国との間で「税金の奪い合い」という状況が起こりやすくなります。
つまり、海外進出を検討する際には、少しでも税率の低い国で利益を集めようとする企業と、そのような企業を集めたい低税率国、自国の税金を守ろうとする高税率国の3社のせめぎ合いが起きているという状況をしっかり認識する必要があります。

また、海外進出をした場合には、源泉徴収や消費税の取り扱いなどが通常の国内取引と異なるためミスが起こりやすく、税務調査の対象となりやすい点にも注意が必要です。

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海外進出と国際税務

海外進出をする際に欠かせないのが、国際税務の考え方です。
国際税務については、日本国内の税制に相手国の税制も加わり、どちらの国にどこまで課税権があるかという問題も絡んでくるので、極めて複雑になりがちです。
ここではまず、国際税務を検討する際に必ず知っておきたい基礎知識について、ご紹介します。

租税条約とは

租税条約とは、国際的な二重課税回避を目的とした条約であり、所得の源泉地国の課税率等の制限を定めています。
二重課税とは、1つの取引に対して2回以上課税されることをいいます。国際税務の世界では、1つの取引に対して2カ国以上で課税されてしまうことをいいます。二重課税に該当してしまうと、税負担が非常に重くなってしまうので、これを解消しようとするのが、租税条約です。

租税条約と国内税法の規定が異なる場合には、租税条約の取り決めが優先されます。
日本は、2019年2月1日現在で128の国や地域と租税条約を締結しています。
租税条約を締結していない国との間では、二重課税が発生してしまう可能性が高くなり、二重課税になってしまった場合には、その事態を回避することができないので注意が必要です。

参照:財務省「我が国の租税条約ネットワーク」

PEとは

国際税務の世界には「PEなければ課税なし」という言葉があります。
PE(恒久的施設)とは、「Permanent Establishment」の略で、事業を行う一定の場所や代理人のことで、PEと認定されるとその国で課税対象となります。
支店や工場、1年を超えて建設作業等を行う場合の他、代理人等を置いている場合も、PEと認定されます。
平成30年度税制改正大綱では、PE関連規定の見直しが行われ、PE認定の条件は更に厳しいものになりました。
しかしPEの定義や概念は各国の税法によって異なるので、日本の税法上のPEに該当しなくても、その国ではPEに該当する可能性があり、PEと認定されると課税対象となりますので、注意しましょう。

「恒久的施設(PE)とは|平成30年度税制改正大綱でどう変わったか」を読む

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海外進出する時に活用すべき税制

日本の法人税法では、企業の税負担を軽減し、企業が海外進出をしやすいような税制が整備されています。海外進出を検討するうえでは、これらの税制を活用し、税負担を軽減させる工夫が重要です。

外国子会社配当益金不算入制度

外国子会社配当益金不算入制度は、平成21年(2009年)に創設された制度です。
この制度によって、海外子会社からの配当金については日本の高税率の法人税負担がなくなることになり、海外子会社利益の国内還流が進むことが期待されています。
平成27年(2015年)度税制改正では、外国子会社で損金算入される配当を、益金不算入の対象外とする旨の改正が行われました。

この制度を活用するためにはさまざまな条件がありますし、また、必ずしもすべての海外子会社からの配当金について日本で課税されなくなったわけではありません。

参照:財務省「外国子会社配当益金不算入制度の見直し」

外国税額控除

外国税額控除とは、国際的な二重課税を排除するために外国で得た利益に対して外国で課税された税額は、日本の納税額から差し引く制度です。
外国子会社に対する外国での課税と、当該外国子会社から内国法人が受ける配当に対する課税との国際的二重課税については、当該配当の95%相当額を益金不算入として、調整が行われます。
この外国税額控除についても、控除のタイミングや限度額等について注意する必要があります。

参照:財務省「外国税額控除制度の概要」

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海外進出する時に注意すべき税制

海外に進出する際には、優遇措置の他に注意すべき税制もあります。
特に日本法人と現地法人の間で物品を売買したり、サービスを提供したりする場合には、「タックスヘイブン対策税制」と「移転価格税制」に注意する必要があります。

タックスヘイブン対策税制

タックスヘイブン対策税制は、正式名称を「外国子会社合算税制」といいます。
タックスヘイブンとは、バハマ、バージン諸島、クック諸島など、税金が著しく低い地域のことで、このようなタックスヘイブンと言われる国や地域に実体のない子会社を作り、そこに資金を留保した場合には、その資金にも課税しますよ、という趣旨の制度です。

タックスヘイブン対策税制については、平成29年度税制改正によって、外国関係会社の租税負担割合が30%未満でペーパーカンパニーに該当するものとされました。
また、ペーパーカンパニーではなくても、租税負担割合が20%未満で、かつ、「経済活動基準」のすべてを満たす場合は、当該外国関係会社の部分合算課税がされるものとされました。

参照:財務省「外国子会社合算税制の概要」

「タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)とは」を読む

移転価格税制

移転価格税制とは、所得の海外移転(租税回避)を防止するために、国境をまたぐ取引で発生する所得に対して、一方の国が関連会社間の価格調整によって他国に流れた税金を自国に取り戻そうとする課税制度です

たとえば、日本の親会社から海外の子会社に対して通常の金額より低い金額で販売し、税率の高い日本での親会社の利益をなるべく少なくして税負担を抑えようとする行為は、租税回避とみなされてしまい、親子会社間の取引価格が、第三者間価格で取引したものとして課税されることになります。

参照:財務省「移転価格税制の概要」

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まとめ

以上、海外進出する時に検討すべき国際税務の基礎知識などについてご紹介しました。海外進出をする際には、各国の税制の違いを意識したタックスプランニングが大きく影響をします。
二重課税に該当してしまうと、場合によっては稼いだ利益のほとんどに課税されてしまうこともあります。
海外進出をする際には、国際税務に精通している税理士のアドバイスが欠かせないといえるでしょう。

国際税務に強い税理士をお探しの方

海外進出をする際の支援や、検討すべき国際税務について相談できる税理士は、税理士検索freeeで見つけることができます。税理士検索freeeでは2,000以上の事務所の中から国際税務に精通している税理士を、業種やエリア別に検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

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