年末調整の手続き~1年間の所得税の清算

公開日:2018年11月09日
最終更新日:2018年12月11日

目次

  1. 年末調整とは
    • なぜ年末調整が必要か
    • 所得税の計算
    • 確定申告との違い
    • 年末調整で必要な書類
  2. 年末調整の対象になる人・ならない人
    • 年末調整の対象になる人
    • 年末調整の対象にならない人
    • 年末以外に年末調整を行う人
    • 年末調整では処理できない所得控除・税額控除
  3. 年末調整の作業内容
    • 1. 必要書類の準備
    • 2. 源泉徴収簿の作成
    • 3. 給与所得金額の計算
    • 4. 所得額の計算
    • 5. 所得税額の計算
    • 6. 所得税の過不足を計算
    • 7. 法定調書の作成と提出
  4. まとめ

この記事のポイント

・年末調整を行うためには、5種類の書類を準備する必要がある

・年末調整の対象になる人・ならない人がいる

・年末調整の作業は、以下の1~7の手順で作業していく

年末調整とは

年末調整とは、従業員が納めるべき1年間の所得税と、従業員の毎月の給与や賞与から控除した所得税額を比較して、所得税額の過不足を調整する作業のことをいいます。
具体的には、毎年末に1年間の所得が確定した時点で所得税を算出し、納付した源泉徴収額との差額を12月(または翌年の1月分)の給与で調整(追加徴収・還付)する処理を行います。

なぜ年末調整が必要か

毎月の給与から控除される所得税は、年間を通じて給与額の変動があることが予定されて算出されていません。しかし、実際には、1年間で従業員の給与は変更になることもありますし、扶養家族などの数に変動が生じることがあります。

所得税の額は、所得に対して課税されるので、従業員の給与が変更され、所得が少なくなればその分所得税も少なくなります。また、所得金額からは控除できる金額があり、生命保険料を支払ったり、扶養家族がいたりする場合には、所得金額から控除される制度があります。

したがって、これらの事情を反映させて計算した所得税額と、毎月給与から控除された所得税額を比較すると、所得税の額にズレが生じることになります。
そこで、年末調整を行い、この税額のズレを調整する必要があるのです。

所得税の計算

給与・賞与の所得税の計算は、以下の方法で行います。

1. 給与収入(社会保険料も含む「総支給額」)から一定割合を控除した「給与所得」を算出します。
※この控除を「給与所得控除」といいます。

2. 1で求めた「給与所得」から、基礎控除、扶養控除等の額を引きます。
※これを「所得控除」といいます。


3. 所得控除後の残額は「課税される所得金額」となりますので、この金額に税率を掛けて所得税額を算出します。税率は、「年末調整のための所得税額の速算表」を見ます。
参照:国税庁「平成29年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」

確定申告との違い

確定申告とは、個人や法人が納税すべき税額を税務署に申告する手続きのことをいいます。
会社員は、原則として確定申告をする必要はありません。それは、会社が従業員に代わって従業員の毎月の給与や賞与から所得税額を納税し、納付した源泉徴収額との差額を12月(または翌年の1月分)の給与で調整(年末調整)しているからです。

ただし、給与の収入が2,000万円を超える人や、年の途中で退職した人などは、年末調整を行われていないので、自分で確定申告をしなければなりません。

下記の記事では給与計算の際に必須となる、労働条件のルール、労働契約のルール、賃金支払い方法のルールや最低賃金、労働時間や休日の考え方など、必要な事項をまとめてご紹介しています。併せてご覧ください。

「給与計算をする担当者が知っておくべき賃金に関する法律」を読む

年末調整で必要な書類

年末調整を行うためには、まず次の5種類の書類を準備する必要があります。
これらの書類は、毎年11月頃に税務署から会社に送られてきます。

1. 扶養控除等(異動)申告書
2. 保険料控除申告書
3. 配偶者特別控除申告書
4. 源泉徴収簿
5. 住宅借入金等特別控除申告書

「住宅借入金等特別控除申告書」は、住宅を購入したり増改築したりした従業員のみ本人宛に送られます。「扶養控除等(異動)申告書」「保険料控除申告書」「配偶者特別控除申告書」は、従業員に配布して必要事項を記入してもらってから回収します。

年末調整の対象になる人・ならない人

年末調整には、対象になる人とならない人がいます。
年末調整の対象にならない人は、原則とて3月15日までに確定申告をしなければなりません。

年末調整の対象になる人

年末調整の対象者は、会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している従業員です。

【年末調整の対象になる人】
・1年を通じて勤務している人
・年の途中で就職し、年末まで勤務している人
・年の途中で海外勤務などにより非居住者となった人
・年の途中で退職した人のうち次の4つのケースに当てはまる人
①死亡により、退職した人
②著しい心身障害により退職した人で、本年中に再就職できないと見込まれる人
③12月中の給与を受けたあとに退職した人
④パート従業員などが退職した場合で、その年の給与総額が103万円以下の人

年末調整の対象にならない人

会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人でも、例外的に年末調整をしない場合があります。
例えば、1年間の給与収入金額が2,000万円を超える従業員などは、年末調整の対象外となります。

【年末調整の対象にならない人】
・その年の主たる給与収入が2,000万円を超える人
・災害減免法の規定により、その年の給与に対する源泉所得税の徴収猶予または還付を受けた人
・2カ所以上から給与の支払いを受けている人
(他の会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人や、年末調整までに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない人)
・非居住者
・継続して同一の雇用主に雇用されない日雇い労働者など、「源泉徴収税額表」の日額表の丙欄の適用者

参照:国税庁「平成30年分 源泉徴収税額表」

年末以外に年末調整を行う人

年の途中で死亡退職した従業員や、12月に給与の支払いを受けた後に退職した従業員などは、退職時などに年末調整を行うことになります。

【年末以外に年末調整を行う人】

・年の途中で海外勤務などにより非居住者となった人(非居住者になった時に年末調整)
・年の途中で退職した人のうち次のケースに当てはまる人
①死亡により、退職した人
②著しい心身障害により退職した人で、本年中に再就職できないと見込まれる人
③12月中の給与を受けたあとに退職した人
④パート従業員などが退職した場合で、その年の給与総額が103万円以下の人

年末調整では処理できない所得控除・税額控除

所得控除とは、所得金額から控除できる金額で14種類あります。
適用される控除の種類・金額が多ければ多いほど節税効果があります。
会社で年末調整をしてもらっている人は、改めて所得控除を申告する必要はありませんが、雑損控除、医療費控除、寄付金控除の3つについては、会社で年末調整が行われないので、自分で申告をする必要があります。

税額控除とは、直接所得税から差し引かれる控除です。
寄付をした場合には、寄付控除を受けることができますが、認定NPO法人、公益社団法人、政治活動への寄付を行った人は、寄付金特別控除か所得控除のどちらか有利な方を選ぶことができます。
(※税額控除は、税額から直接差し引くことができるので、一般的には税額控除の方が有利です)

「税額を減らす!14種類ある所得控除|控除を受けられる人と控除額」を読む

年末調整の作業内容

年末調整は、1年間の給与所得にかかる所得税を算出する作業のことです。
具体的には、1年間の給与額を確定し、扶養の人数や1年間で支払った生命保険料などの金額を反映し、支払うべき所得税額を確定します。

年末調整の作業は、以下の1~7の手順で作業していくことになります。

1. 必要書類の準備

年末調整をするためには、下記5つの書類を準備して、従業員に配布し回収することから始める必要があります。

①扶養控除等(異動)申告書
扶養控除等(異動)申告書は、従業員全員に必須で提出してもらう必要があります。
申告書は実務上、当年分と翌年分の2枚を配布し回収します。
当年分は、当年中の扶養控除に関係する変更を確認するための書類です。12月31日時点での扶養親族の人数が年末調整に反映されます。
住所地は、翌年1月1日の住所を使用します。
翌年分は、当年の年末調整には使用しませんが、翌年の毎月の給与計算の扶養控除欄に使用します。

②保険料控除申告書
従業員が1年間に支払った保険料の額を確認します。
対象となる保険料は、1年間に支払った生命保険料(上限あり)や社会保険料です。
社会保険料には、国民年金保険料や国民健康保険料が含まれます。

・生命保険
生命保険会社から本人に郵送される「保険料控除証明書」で確認することができます。
証明書には「証明額」と「申告額」の2種類が記載されていますが、申告額の方の数字を記入します。

・地震保険料
地震保険料も控除の対象になります。
地震保険料の控除は、合計で最大5万円です。

・社会保険料
社会保険料は、給与で天引きされている健康保険料や厚生年金保険料については、記入する必要はありません。
ただし、新入社員が入社前に支払った国民年金保険料や、本人と同一生計の配偶者や親族が負担すべき社会保険料を支払ったなどの事情がある場合には、その金額について所得控除を受けることができます。

③配偶者特別控除申告書
「配偶者特別控除申告書」は、「保険料控除申告書」と同じ用紙になっています。
配偶者の年間所得額は38万円以下(給与年収103万円以下)ではにと、配偶者控除は受けられません。しかし、38万円を超えていても「配偶者特別控除」は受けることができます。
配偶者特別控除は、所得38万円超76万円(給与年収141万円未満)の場合に、所得に応じて3万円~38万円の控除額になります。
なお、配偶者特別控除は、本人の年間所得が1000万円を超える場合には受けることができません。

所得控除

所得税 住民税
基礎控除 38万円 33万円
配偶者控除 38万円 33万円
扶養控除 38万円 33万円
社会保険料控除 全額控除
生命保険控除 契約内容による

※ 所得、年齢、年度によって異なりますので、都度確認してください。

配偶者がいても、その配偶者が控除対象配偶者に該当しない場合には、一定の額を従業員の所得額から控除できるようになっています。

④源泉徴収簿
源泉徴収簿とは、毎年税務署から送られてきます。
年末調整は、源泉徴収簿に計算結果を記入しながら進めます。
毎月の総支給額、社会保険料の控除額、源泉徴収税額を集計して該当欄に記入をすると、年末調整の計算作業の数値が揃った集計一覧表となります。

⑤住宅借入金等特別控除申告書
住宅借入金等特別控除とは、いわゆる住宅ローン控除のことです。
住宅ローンを利用して新築や増改築をした場合に、住宅借入金がある時には、その住宅借入金の年末時点での残高を基準にして算出した一定額を所得税額から控除することができます。
控除を受けるためには、入居日、住宅面積、所得金額、使用方法など、一定の要件を満たす必要があります。

なお、「住宅借入金等特別控除」については、入居1年目は従業員本人が確定申告して控除を受ける必要があります。2年目以降は、年末調整が可能になるので、従業員に「住宅借入金等特別控除申告書」を提出してもらいます。

2. 源泉徴収簿の作成

源泉徴収簿は、1年間の実績と年末時の確定数値の集計一覧表です。
個々の従業員別に、1年間の月別の総支給金額、控除額、源泉徴収額などを一覧できます。
前述した、年末調整のために従業員から回収した必要書類(配偶者特別控除申告書や住宅借入金等特別控除申告書など)の内容を記入することで完成します。
源泉徴収簿の左側には、会社が従業員に支払った給与と賞与の額を記入します。
右側には、年末調整のために改修した各申告書の数字を転記して、控除額を確定します。

3. 給与所得金額の計算

1年間の総支給金額の計算は、給与と賞与の合計額です。

具体的には、源泉徴収簿の左側の「給料・手当等」の総支給金額の年間合計額を、右側の「年末調整」の集計欄に転記します。年間賞与の合計額も転記し、総支給額合計を記入します。

4. 所得額の計算

所得金額は、「課税の対象になる所得金額」のことです。
課税の対象になる所得金額を求めるためには、総支給額合計から各種控除を引いていくことになります。

まず最初に差し引く控除は、給与所得控除です。
給与所得控除は、計算して求めるのではなく、「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を使用して求めます。
表は、税務署から送られてくる「年末調整のしかた」のなかに掲載されていますので、参照してください。

給与所得控除

給与等の収入金額与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,800,000円以下 収入金額×40% 650,000円に満たない場合には650,000円
1,800,000円超 収入金額×30%+180,000円
3,600,000円超6,600,000円以下 収入金額×20%+540,000円
6,600,000円超10,600,000円以下 収入金額×10%+1,200,000円
10,000,000円超 2,200,000円(上限)

5. 所得税額の計算

所得税額は、所得額に税率を掛けて算出します。

税率は、「年末調整等のための所得税額の速算表」を見ます。
求められた金額が、従業員が納めなければならない所得税額となります。
算出した所得税額からは、税額控除額を差し引いて、「年末調整をして算出した所得税額」を計算します。

年末調整等のための所得税額の速算表

課税される所得金額 所得税 住民税
195万円以下 5% 10%+5,000円
195万円を超え 330万円以下 10%-97,500円
330万円を超え 695万円以下 20%-427,500円
695万円を超え 900万円以下 23%-636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33%-1,536,000円
1,800万円を超え 4,000万円以下 40%-2,796,000円
4,000万円を超 45%-4,796,000円

※住民税は、都道府県、市区町村によって異なります(上記は標準的な税率)。
※復興特別所得税(上記で算出した税額の2.1%)を加算します。

6. 所得税の過不足を計算

「年末調整をして算出した所得税額」と、「毎月の給与や賞与から控除した所得税額の合計」を比較して、その過不足を清算します。超過なら還付、不足なら徴収となります。

「年末調整で還付金をもらえる人の条件」を読む

7. 法定調書の作成と提出

年末調整が終わったら、法定調書を作成し、税務署に提出しなければなりません。
法定調書には、「給与所得の源泉徴収票」や「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」などがあります。
期限は毎年1月31日となっています。
なお、年末調整をしなかった人でも、給与支払報告書(市区町村提出用)の提出が必要になる場合がありますので、注意が必要です。

まとめ

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