算定基礎届|算定方法・届出の記載方法・必要な手続き

公開日:2019年12月13日
最終更新日:2022年07月12日

この記事のポイント

  • 算定基礎届とは、毎年7月1日現在の従業員の標準報酬月額を決め直すための届出。
  • 算定基礎届に基づいて、社会保険料の見直しが行われる。
  • 算定基礎届の提出の対象となるのは、7月1日現在のすべての被保険者(例外あり)。

 

被保険者が実際に受ける報酬月額と標準報酬月額との間に大きな差が出ないよう、毎年7月1日時点に事業所に在籍している全被保険者の報酬月額を届け出て、標準報酬月額の見直しを行います。

算定基礎届とは、この見直し作業を行う(7月1日時点で雇用しているすべての被保険者の給与額をもとに社会保険の保険料を算出する)ために、年金事務所に届け出る書類です。

算定基礎届とは

社会保険料の計算は、標準報酬月額に対して決められた保険料率を掛けて計算します。
標準報酬月額とは、あらかじめ定めた枠の中にある報酬を等級として「標準報酬月額表」で決められた月額のことです。
そして、この標準報酬月額が実際の報酬額とかけ離れることのないように、年に1度行われる見直し作業は、社会保険の算定基礎届によって行われます。

(1)算定基礎届は「標準報酬月額」を決定するもの

標準報酬月額とは、保険料の額や給付額を計算するために、毎月の給料などの月額を区切りのよい幅で区分し設定したものです。
この標準報酬月額は、4月から6月までの3カ月間に支給した給与額で決まります。この標準報酬月額の決定や改定は、「定時決定」によって決められるほか、「臨時決定」や「資格取得時決定」などさまざまな方法で決められます。

「定時決定」とは、実際の給与額と社会保険料の間に大きな差が生じないように行う作業です。
毎年7月1日現在で雇用しているすべての従業員について、会社が4月から6月までの3カ月間の賃金を「算定基礎届」によって届け出ます。
そして、この「算定基礎届」に基づいて年に1度社会保険料の見直しが行われ、「標準報酬月額」が決定されます。

定時決定のしくみと1年間の適用サイクル

(2)そもそも「標準報酬月額」はどう決定するか

標準報酬月額は、4月から6月までの平均給与で決まります。
ただし、翌月払いの給与では、ずれが生じるので注意が必要です。
たとえば、翌月払いでは4月分は5月支給、5月分は6月支給、6月分は7月支給になりますが、定時決定の対象となるのは、4月から6月までの実際に支払われた額です。

なお、なぜあらかじめこのような「標準報酬月額」を定めるのかという理由についてですが、報酬のなかには、残業手当のような毎月変動する項目があるので、それをもとにして保険料を毎月計算すると作業があまりに煩雑になってしまうため、標準報酬月額をもとにして計算することとしたのです。

参照:全国健康保険協会「令和3年度保険料額表(令和3年3月分から) 」

(3)標準報酬月額の対象となる報酬とは

標準報酬月額の対象となる「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与などの名称を問わず、労働者が労働の対償として受ける全てのものを含みます。また報酬は、金銭(通貨)に限られません。通勤定期券、食事、住宅など現物で支給されるものも報酬に含まれます。ただし、臨時に受けるものなどは、報酬には含まれません。

金銭(通貨)で支給されるもの 現物で支給されるもの
報酬となるもの 基本給(月給・週給・日給など)、能率給、奨励給、役付手当、職階手当、特別勤務手当、勤務地手当、物価手当、日直手当、宿直手当、家族手当、扶養手当、休職手当、通勤手当、住宅手当、別居手当、早出残業手当、継続支給する見舞金、年 4 回以上の賞与※など 通勤定期券、回数券、食事、食券、社宅、寮、被服(勤務服でないもの)、自社製品など
報酬とならないもの 大入袋、見舞金、解雇予告手当、退職手当、出張旅費、交際費、慶弔費、傷病手当金、労災保険の休業補償給付、年 3 回以下の賞与※(標準賞与額の対象になります。)など 制服、作業着(業務に要するもの)、見舞品、食事(本人の負担額が、厚生労働大臣が定める価額により算定した額の2/3以上の場合)など

 

(4)令和3年4月から現物給与の価額が改正

報酬や賞与の全部または一部が、現物給与(通貨以外のもので支払われる場合)の価額は、厚生労働大臣が定めることとされています。この現物給与の価額が改正され、令和3年4月1日より適用されています。

参照:日本年金機構「令和3年4月から現物給与の価額が改正されます」

(5)算定基礎届の対象となる被保険者とは

算定基礎届の対象となるのは、7月1日時点で雇用しているすべての被保険者です。
算定基礎届の要旨は、通常年金事務所や所属健康保険組合から送られてきて、すでに健康保険被保険者の番号や氏名、生年月日、種別、従前の標準報酬月額が記入されていますので、この届出を使用して届出を行います。

直前に資格を取得した人については、名前や生年月日が印字されていないこともあるので、その場合には追加記入します。

ただし、以下の①~③のいずれかに該当する人は、算定基礎届の提出が不要です。

①6月1日以降に資格取得した人
②6月30日以前に退職した人
③7月改定の月額変更届を提出する人(7月、8月、9月随時改定の月額変更届対象者)

届出の対象となる従業員と対象とならない従業員がいるので、どの従業員が算定基礎届の対象となるのかは、事前に確認をして届出もれがないように注意しましょう。

算定基礎届の記入方法

前述したとおり、社会保険に対する保険料は、標準報酬月額に対して保険料を乗じて計算します。社会保険の保険料は、毎年4月から6月までの給与額をもとにして算出します。これを「定時決定」といいます。7月1日時点で雇用している社会保険の被保険者全員について、原則として7月10日までに年金事務所に届出をする必要があります。

算定基礎届を作成する際には、まず記載をするために必要な情報を収集します。

①4月、5月、6月に支払われた給与額を確認する
4月、5月、6月に支払われた給与額を確認します。この給与額については、前述した「報酬となるもの・報酬とならないもの」に注意します。

②4月、5月、6月のうち、支払基礎日数が17日以上ある月を確認する
標準報酬月額は4月、5月、6月の報酬の平均額から算出しますが、支払基礎日数がそれぞれ17日以上あることが要件となっています。

③支払基礎日数が17日未満の月の取り扱い
支払基礎日数が17日未満の月の報酬月額は「算定基礎届」の報酬月額の総計、平均額の計算には入れずに計算します。
たとえば、5月の賃金支払基礎日数が15日しかない場合は、4月と6月の給与額を合計して、2カ月あたりの平均給与額を算出します。

④70歳以上の提出について
以下の①~③に該当する場合には「70歳以上被用者算定基礎届」の提出が必要です。
①70歳以上である。
②過去に厚生年金保険の被保険者期間がある。
③事業所で常時使用されている。

⑤パート(3/4以上の勤務者)の取り扱い
・支払基礎日数が17日以上ある場合は、17日以上ある月の報酬月額の総計を、その月数で割って平均額を算出します。
・支払基礎日数がすべて17日未満であるものの、15日以上の月がある場合には、15日以上17日未満の月の報酬月額の総計を、その月数で割って平均額を算出します。
・支払基礎日数がすべて15日未満の場合には、従前の標準報酬月額で決定するため、⑭統計と、⑮平均額の欄は、記入しません。

⑥算出した1カ月あたりの給与額を社会保険料月額表にあてはめて確認する
新保険料は9月から適用となり、実際に給与計算に反映するのは10月支給分からです。

参照:全国健康保険協会「令和3年度保険料額表(令和3年3月分から) 」

(1)給与計算の基礎日数

給与計算の基礎日数とは、その報酬の支払対象となった日数のことをいいます。月給者は、暦日数、日給・時給者は、出勤日数を記入します。
月給者で、欠勤日数分給与が差し引かれる場合には、就業規則等によって定められた日数から欠勤日数を引いた日数を記入します。

(2)通貨によるものの額

4月、5月、6月中に通貨で支払われた報酬をそれぞれの月に記入します。
報酬には、給与だけでなく通勤手当等も含まれます。
税額計算では、通勤手当のうち非課税部分(1カ月当たり15万円以下)は除かれます。しかし、標準報酬月額を計算する場合には、非課税通勤手当も含まれます。したがって、通勤手当が高い人は、標準報酬月額も高くなります。

(3)現物によるものの額

4月、5月、6月中に食事、住宅、定期券などの現物による支給がある場合には、金銭に換算して記入します。
食事、住宅については都道府県ごとの価額によって算定した額を記入します。

参照:日本年金機構「令和3年4月から現物給与の価額が改正されます」

(4)合計

各月の合計額を記入します。
「3/4以上の勤務者」の場合は、支払基礎日数が15日以上の月の合計額を記入します。「短時間労働者」の場合には、支払基礎日数が11日以上の月の合計額を記入します。

(5)総計

総計の欄には、支払基礎日数が17日以上の月の報酬の総計を記入します。
「3/4以上の勤務者」の場合は、すべての月の支払基礎日数が17日未満である時には15日以上の月の報酬の総計を記入します。「短時間労働者」の場合には、支払基礎日数が11日以上の月の報酬の総計を記入します。

(6)平均額

平均額は、「総計」(支払基礎日数が17日以上の報酬月額の総計)を、支払基礎日数が17日以上の月数で割った額を記入します。
「3/4以上の勤務者」の場合は、すべての月の支払基礎日数が17日未満である時には15日以上の月の報酬の総計を、その月数で割った額を記入します。
「短時間労働者」の場合には、支払基礎日数が11日以上の月の報酬の総計を、その月数で割った額を記入します。

(7)修正平均額

3月以前にさかのぼって昇給したことによって、4月から6月の報酬額に当該差額分が含まれている場合には、差額分をのぞいた3カ月分の平均額を記入します。
年間報酬の平均で算定することを申し立てる場合には、前年の7月から当年の6月までの間に受けた報酬の平均額を記入します。

算定基礎届よくあるQ&A

これまでご紹介したように、算定基礎届とは、毎年9月に改定する健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料の徴収額が、本来の収入とかけ離れないように毎年行われるものです。ここでは、算定基礎届に関してよくあるご質問についてご紹介します。

(1)4月、5月、6月が繁忙期の時には?

新保険料は、4月、5月、6月に支払われた給与額をもとに算出しますが、ちょうど4月、5月、6月が繁忙期に当たる会社の場合だと、新保険料が高くなってしまいます。
このような場合には、4月から6月までの3カ月間の報酬の1カ月あたりの平均額から算出した標準報酬月額と前年の7月から当年の6月までに受けた報酬の1カ月あたりの平均額から算出した標準報酬月額とを比較して、2等級以上の差が出た場合には、その差が業務の性質上毎年発生すると認められれば、前年の7月から6月までの1年間の報酬をもとに計算した平均額を標準報酬月額とすることができます。

この場合には、被保険者本人の同意が必要になるので、「年間報酬の平均で算定することの申立書」を添付して、1年間の報酬額を記載する必要があります。

いずれの月も、15日未満の場合には従前の等級で決定します。

(2)病気療養中のため給与の支払いがない被保険者について

病気療養中のため、4月、5月、6月の給与の支払いがない被保険者についても、算定基礎届の提出は必要です。
この場合には、備考欄の「病休・育休・休職等」を〇で囲み、「その他」欄に「〇月〇日から休職」と記入することで、従前の標準報酬月額によって決定することになります。

(3)算定後に必要な手続きは?

算定基礎届を作成したら、年金事務所に届け出なければなりません。
そして、年金事務所に届け出ることで、新しい社会保険料額が正式に決定することになります。

また、算定基礎届をもとにして標準報酬月額が改定されるのは、その年の9月1日からで、新しい標準報酬月額に基づく社会保険料の控除は、10月1日以降に支給する給与から適用されます。なお、この改定された標準報酬月額は、原則として翌年8月31日まで有効となります。

この標準報酬月額が決定したら、個々の被保険者に必ず新しい標準報酬月額を通知するようにしましょう。

まとめ

以上、算定基礎届についてご紹介しました。
算定基礎届は、7月1日時点で在籍している全被保険者の標準報酬月額を記入し、原則として7月10日までに所轄の年金事務所または健康保険組合に提出しなければなりませんが、事前に誰が対象となるかなど確認しなければならない事項も多く、そのうえ保険料額表で区分されている等級を確認しなければならず、大変煩雑な作業が必要となります。
届出もれがないよう、早めに作業の準備を行なうようにしましょう。

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監修:「クラウドfreee人事労務」

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