雇用保険とは|加入手続きや必要書類・2022年4月の改正ポイントを解説

公開日:2019年07月07日
最終更新日:2022年07月12日

この記事のポイント

  • 雇用保険とは、労働者の生活や雇用をサポートするための保険制度。
  • 雇用保険の適用事業所になったら、その日の翌日から10日以内に加入手続きを行う。
  • 新たに労働者を雇用した時は、その都度ハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」の提出が必要。

 

雇用保険労災保険を合わせて「労働保険」といいます。
雇用保険と労災保険は、従業員を1人でも雇用する時には必ず加入手続きを行わなければなりません。
労働保険や、労働者として働く人をサポートすることを目的とした公的保険であり、従業員を一人でも雇い入れれば労働保険が適用される事業所(適用事業所)となるからです。
労災保険は、従業員を初めて雇い入れた時に1度届出をすれば、次に従業員を雇用する時などの手続きは原則として不要ですが、雇用保険は、加入条件を満たす従業員を雇用するごとに「雇用保険被保険者資格取得届」の提出が必要となりますし、退社時には雇用保険の喪失手続きを行う必要があります。
また、従業員が結婚した時、転勤した時、出向した時などにも、それぞれ手続きが必要となります。

雇用保険とは

雇用保険とは、失業して収入が不安定な求職者の取得を保障することを目的とした保険制度です。
雇用保険というと、失業手当というイメージが強いと思いますが、雇用保険の給付は失業等給付と二事業(雇用安定事業・能力開発事業)による助成措置の2つに区分されます。

失業等給付は、労働者が失業した時と雇用の継続が困難となる事由が生じた時に、生活と雇用の安定を図るために必要な給付を行うことを目的としていて、求職者給付・就職促進給付・教育訓練給付・雇用継続給付の4つの種類があります。

雇用保険二事業は、失業の予防、雇用機会の増大、労働者の能力開発のための雇用対策で、雇用安定事業・能力開発事業の2種類があります。

参照:厚生労働省「雇用保険制度の概要」

(1)雇用保険の窓口はハローワーク

雇用保険は、労働者を雇用する事業はその業種、規模等を問わず、農林水産業の一部を除きすべて適用事業となり、雇用保険の適用事業に雇用される労働者は、原則としてその意志にかかわらず被保険者となります。
雇用保険の適用事業所となったら、その日の翌日から10日以内にハローワークで雇用保険の加入手続きを行います。
たとえば、会社設立後、最初の従業員が入社した日の翌日から10日以内が手続き期限となります。

(2)雇用保険の加入手続きは事業主が行う

雇用保険の加入手続きは、事業主が行います。

①はじめて従業員を雇用したとき
雇用保険や労災保険は、事業所単位で適用されます。1人でも労働者を雇用すれば、雇用保険、労災保険の保険関係が成立しますので、当然に適用事業となります。
労災保険と雇用保険を1つの労働保険の保険関係として扱い、保険料の申告や納付を両保険一括で行う事業を「一元適用事業」といい、ほとんどの事業がこの「一元適用事業」となります。

雇用保険の適用対象となる労働者を初めて雇い入れることとなった場合は、一元適用事業所の場合には、まず労働保険の「保険関係成立届」を所轄の労働基準監督署に提出し、その後雇用保険の加入手続きを行います。具体的には、事業所を管轄するハローワークに「事業所設置届」、「雇用保険被保険者資格取得届」を提出しなければなりません。

②その後新たに労働者を雇い入れた場合
雇用保険は、その後新たに労働者を雇い入れた場合は、その都度、事業所を管轄するハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出しなければならないこととなっています。ハローワークから交付された「雇用保険被保険者証」は、事業主から従業員本人に渡します。

※雇用保険被保険者証を紛失した時
従業員が雇用保険被保険者証を紛失した場合には、「再交付申請書」を提出します。

再交付申請書は、ハローワークホームページでダウンロードすることができるほか 電子申請による届出も可能 です。

(3)保険料は事業主と被保険者で分担する

労災保険は、健康保険のような自己負担金はありませんが、雇用保険の保険料は、会社と労働者(被保険者)が、一定割合を負担することになっています。
この雇用保険料率は、業種によって異なります。
この雇用保険料率は、改正雇用保険法が成立し、保険料率を段階的に引き上げることとなりました(※後述)。

(4)雇用保険の加入対象となる従業員とは

雇用される労働者は、常用・パート・アルバイト・派遣等、名称や雇用形態にかかわらず、①1週間の所定労働時間が20時間以上であり、②31日以上の雇用見込みがある場合には、原則として被保険者となります。

契約期間が31日未満であっても、雇用契約書に更新規定があり、雇止め(企業が労働契約の更新を拒否して労働者との雇用が終了すること)の明示がない場合や、更新規定がなくても同じ契約の労働者が31日以上雇用された実績がある場合には、雇用保険の加入対象となります。
加入要件を満たさない日雇労働者であっても、①31日以上継続して同じ会社で働いている、または②2カ月連続して18日以上働いている場合には雇用保険に加入することができます。
外国人も日本において合法的に就労する場合には、原則として在留資格を問わず被保険者となります。

(5)退職時は雇用保険の喪失手続きを行う

従業員が退職したら、ハローワークで雇用保険の資格喪失手続きをしなければなりません。
具体的には、「雇用保険被保険者資格喪失届」と失業給付額等の決定に必要な「離職証明書」の提出が必要となります。これらの書類には、退職者の氏名や住所、退職理由などを記載します。退職理由が変わると基本手当をもらえる期間やもらえる期間が大きく変わってきますので、正確に記載するようにしましょう。
必要書類は個々の状況によって異なる場合がありますので、事前に確認しておきましょう。

(6)令和4年度の雇用保険料率がアップ

雇用保険料の引き上げを柱とする雇用保険法などの改正法が2022年3月30日、参院本会議で賛成多数で可決、成立しました。
これにより、現在賃金の0.9%を労使で負担する保険料率を段階的に引き上げられることになり、令和4年(2022年)4月から、事業主負担の保険料率が変更になり、令和4年(2022年)10月から、労働者負担・事業主負担の保険料率が変更になります。
令和4年(2022年)4~9月は0.95%となり、令和4年(2022年)年10月~2023年3月は1.35%となることが決まりました。

参照:厚生労働省「令和4年度雇用保険料率のご案内」

その他雇用保険の手続きが必要となる時

雇用保険については、従業員が結婚した時や転勤した時、出向した時などにも、さまざまな手続きが必要となります。

(1)従業員が結婚した時

結婚すると氏名が変わることがあります。
氏名が変わったら、ハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失・氏名変更届」を提出します。「雇用保険被保険者資格喪失・氏名変更届」は、従業員を採用して「雇用保険の被保険者資格取得届」を提出した際に交付されます。

(2)従業員が転勤した時

従業員が転勤した時は、「雇用保険被保険者転勤届」と従業員の雇用保険被保険者証を転勤後のハローワークに提出します。なお、すでに交付されている「雇用保険被保険者資格喪失・氏名変更届」は、無記入で持参します。

(3)従業員が定年後引き続き雇用した時

従業員が定年後同じ条件で雇用されるのであれば、雇用保険・健康保険・厚生年金保険の被保険者資格に変更はありません。
しかし給与が上がったり下がったりした場合には、報酬月額変更の確認を行う必要があります。
また、給与が下がった場合には「高年齢雇用継続給付支給申請」の際に「雇用保険被保険者60歳到達時賃金証明書」と「高年齢雇用継続給付受給資格確認表(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書」の手続きを同時に行います。

(4)従業員が出向した時

出向元で賃金が支払われるのであれば、特に手続きは不要ですが、出向先からも賃金が支払われる場合には、雇用保険は主として適用される事業所でのみ被保険者資格を取得することになります。

(5)従業員が死亡した時

従業員が亡くなった時には、雇用保険も社会保険も被保険者資格を失いますので、「被保険者資格喪失届」を提出します。この時、資格喪失の理由欄は「離職」ではなく「離職以外の理由」となりますので、注意してください。

まとめ

以上、雇用保険の内容や加入手続き、主な給付の内容や、従業員の入退社時に必要となる手続きなどについてご紹介しました。

雇用保険の手続きは、個々の従業員の入退社、結婚、出向などによって手続きが必要となりますし、必要書類の様式が異なります。
不明点等は社会保険労務士に相談し、ミスなく手続きを行なうようにしましょう。

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