公開日:2019年12月02日
最終更新日:2020年01月29日
従業員の入社が正式に決定した場合には、さまざまな入社手続きが必要です。
採用が正式に決定したら入社日や出社時刻などを通知しますが、同時に「入社年の源泉徴収票」「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」などの提出を求め、「基礎年金番号」や「雇用保険の被保険者番号」について確認する必要あります。
また、新卒の場合には、卒業証書や成績証明書などの提出を求めることもあります。
従業員の採用が正式に決定した場合には、各種保険の手続きをはじめ、いろいろな手続きが必要となります。
まずは労働条件を明示した労働契約書を締結し、「入社年の源泉徴収票」「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」などの提出を求めます。
また、「基礎年金番号」や「雇用保険の被保険者番号」について確認するため、雇用保険の被保険者証や年金手帳の確認も必要です。
提出する書類に個人情報に関する事項が入る場合には、あらかじめその書類の利用目的を伝えなければなりません。
まずは労働条件を明示した労働契約書を締結し、「入社前には、健康診断を行うことが義務づけられていますが、その代わりとして採用前3カ月前に健康診断を受けていれば、その診断書を提出してもらうことが認められています。
入社時に従業員に提出してもらう主な書類(個々の会社や雇用条件によって異なります) ・ 身元保証書・誓約書 ・ 健康診断書 ・ 年金手帳 ・ 雇用保険の被保険者証 ・ 源泉徴収票 ・ 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 |
「年末調整における扶養控除等申告書の記入例と確認するべきポイントを解説」を読む
労働契約書(雇用契約書)とは、雇用主(会社)と従業員の両者間で、労働条件を明らかにするために交わす契約書をいいます。
会社は、採用者に対して「賃金を支払う義務」を負います。また、採用者は「使用されて労働する義務」を負います。これを労働契約といい、基本的には合意をしたうえで押印し、会社と従業員がそれぞれ1通ずつ保管します。
労働契約書では、労働契約の期間や就業の場所、従事する業務の内容、休憩、休日等を必ず明示しなければなりません。
・労災保険
従業員が1人でもいる会社は、労災保険に加入しなければなりません。
これは、アルバイトやパートを雇用した場合も同じです。
はじめて従業員を雇用した非が労災保険の加入日となりますので、この日から10日以内に労働基準監督署で加入手続きを行う必要があります。
・雇用保険
従業員を雇用したら、雇用保険に加入させなければなりません。法律で適用除外とされる従業員(65歳以上の人や季節的な事業に4カ月以内の期間を定めて雇用される者など)を除いたすべての従業員が加入対象者となります。パ^と従業員も適用要件を満たす場合には、加入対象者となります。
・社会保険
社会保険については、雇用保険と違って役員も加入対象者となります。採用した日から5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を所轄の年金事務所に提出し、雇用保険については、採用月の翌月10日までに、所轄のハローワークに提出します。
その他、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿の作成も必要です。
正社員にかぎらず、アルバイトやパートを雇用した場合も、「労災保険」に加入しなければなりません。
従業員が1人でいる会社は加入が義務づけていて、1日限りのアルバイトを含め、会社に雇われる従業員を採用したら、速やかに加入手続きを行います。
労災保険とは、仕事中にケガや病気をした時や通勤途中にケガをした時に使う保険制度です。
農業、畜産業、養蚕業で常時従業員が5人未満の個人事業や、林業で従業員を常時使用しない(年間のべ300人未満)の個人事業主などは、労災保険の強制適用対象ではありません。
労災保険は、療養(補償)給付、休業(補償)給付、障害(補償)給付などの種類があり、傷病の状況によって、受けられる給付の種類が異なります。
労災保険は、従業員を雇用するたびに加入手続きをする保険ではなく、会社が事業所自体として加入し、その事業所で働いている従業員がすべて保険の対象となるしくみの制度です。
したがって労災保険は、はじめて従業員を雇用した日が労働保険の加入日となり、この日から10日以内に労働基準監督署で加入手続きをする必要があります。
従業員が入社したり退社したりするたびに、その都度手続きが発生するというわけではなく、2人目以降の採用時には、労災保険の手続きは不要です。ただし、会社に従業員が全くいなくなった時には、労災保険の脱退手続きを行います。
従業員を雇用したら、「雇用保険」に加入させなければなりません。
加入対象者は、法律で適用除外とされる従業員を除いたすべての従業員です。パート従業員も適用要件を満たすと加入対象者となります。
雇用期間見込みが31日以上あり、1週間の所定労働時間が20時間以上あれば、その従業員は雇用保険の被保険者となりますので、加入手続きが必要となります。
雇用保険の主な目的は、失業して収入が不安定な求職者の所得を保障することにあります。具体的には、退職した従業員が次の職を見つけるまでの期間、所得を保障したり、能力開発を行ったりして、職を探すうえで手助けを行います。
雇用保険は、一定の適用除外者に該当する従業員をのぞき、すべての従業員が加入対象者となります。
パートやアルバイトでも、1週間の所定労働時間が20時間以上で、かつ31日以上雇用されることが見込まれる場合には、加入させなければなりません。
ただし、4カ月以内の期間の仕事を行う季節的事業の雇用など、雇用形態等により被保険者とならない場合もあります。
雇用保険の適用除外者とは ・65歳に達した以降に雇用される者 ・1週間の労働時間が30時間未満で、正社員の1週間の所定労働時間に比べて短く、季節的に雇用される者、短期の雇用に就くことを常態とする者 ・4カ月以内の期間を予定して行われる季節的事業(スキー場、スケート場など)に雇用される者 ・日雇い労働者で、日雇労働被保険者となる者以外 ・船員保険の被保険者 ・国、都道府県などの事業に雇用される者のうち、離職した場合にほかの法令などに基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、雇用保険の失業手当などの金額を超えると認められ者 |
初めて雇用保険の加入対象者を雇い入れた場合には、ハローワークで雇用保険の手続きを行うことになります。支店が複数ある会社の場合には、本店だけでなくそれぞれの支店を管轄するハローワークでも加入手続きが必要になります。
手続きの際には、法定の申請書類と登記簿謄本、雇用契約書などの添付書類が必要となります。
従業員を新規に雇い入れた場合にも、個々の従業員に対して雇用保険の資格取得手続きが必要です。この手続きは、従業員が入社した日の翌月10日までに行わなければなりません。
社会保険は、法律で適用除外とされる者を除いて、すべての役員や従業員が加入対象となります。法人で代表者が1人という場合でも強制加入となるうえに、一定の条件を満たすアルバイトやパートも加入対象となります。
社会保険とは、健康保険や厚生年金保険を合わせた制度のことを言います。
健康保険とは、日常生活でケガや病気となった時に、主に治療を受けるために使う保険です。健康保険の対象は、適用除外者以外の会社で雇用されている従業員です。
パートやアルバイトも労働時間と労働日数が、正社員の4分の3以上だと加入対象となります。
なお、この「社会保険へ加入すること」を、正式には「社会保険の適用事業者所になる」といいます。
この適用事業所は、強制適用事業所と任意適用事業所に分類されます。
強制適用事業所
国が法律で加入を義務づけている事業所
法人の場合は、業種や従業員数に関係なく、すべて「強制適用事業所」ですが、個人事業主の場合は、従業員5人以上が強制適用事業所となります。
任意適用事業所
個人事業主の場合、一般的な事業所で従業員が5人未満の場合は任意適用事業所となります。なお、農林水産業、飲食などのサービス業、士業などは、人数問わず任意適用事業所となります。
社会保険の適用除外者とは ・日雇いで雇用される者(ただし1カ月超えて雇用されるなら加入しなければなりません) ・雇用契約期間が2カ月以内の者(雇用契約期間を超えて雇用されるなら加入しなければなりません) ・サーカスなど事務所や事業所が一定しない事業に雇用されている者 ・4カ月以内の期間を予定して行われる季節的事業(スキー場、スケート場など)に期間を決められて雇用される者 ・博覧会などの臨時的な事業に6か月以内の期間を決められて雇用される者 ・船員保険に加入している者 |
社会保険は、法人を設立した場合で適用除外者に該当しない限り、原則としてすべての従業員が社会保険の対象となります。
手続きをする際には、申請書類と会社の登記簿謄本が必要となります。
従業員を新規で雇い入れた場合には、5日以内に社会保険の資格取得手続きを行う必要があります。
手続きの際には、基礎年金番号が必要となるので、従業員の入社時に確認しておきましょう。
手続き時に、従業員が年金手帳を紛失してしまっている場合には、資格取得手続きとともに「年金手帳の再発行手続き」を行うことになります。
年金手帳再交付申請書は、以下でダウンロードすることができます。
社会保険に加入する従業員に家族がいる場合には、その家族を「健康保険の被扶養者」として加入させることができます。
被扶養者として健康保険に加入するためには、一定の条件を満たす必要があります。
①被保険者となる従業員の直系尊属、配偶者、子、孫、兄弟姉妹、これら以外の3親等内の親族であること。
※配偶者は内縁であっても構いません。また、子は実子である必要はなく養子でも構いません。
②被保険者となる従業員と同居している場合には、年間収入130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は、年間収入※180万円未満)であることと、被保険者となる従業員の年収の2分の1未満であることが必要です。
※別居の場合には、収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満であること。
なお、この「収入」には、健康保険の出産手当金や雇用保険の失業手当なども含まれます。
参照:年金機構「従業員が家族を扶養にするときの手続き」
人事労務freeeでは、従業員の入社時に必要となる以下の書類を、従業員情報から簡単に作成することができます。
・健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 ・健康保険被扶養者(異動)届及び国民年金第3号被保険者にかかる届書 ・雇用保険被保険者資格取得届 ・住民税の普通徴収から特別徴収への変更依頼届 ・健康保険被保険者資格証明書交付申請書 |
①従業員の詳細情報を入力します。
詳細情報は、管理者の方が入力するか、従業員の方に入力してもらうことができます。
②[従業員]画面で「入社予定の従業員がいます」の表示が出ていますので、入社処理の画面(入社手続き未完了者一覧画面)へ移ります。
③「入社書類の出力」をクリックすると、各提出先毎に必要書類を出力することができます。
社員の基本情報、社会保険や雇用保険等の入力がまだの場合は、従業員名をクリックし必要情報の入力を完了させてから書類を出力します。
④入社書類の出力後、入社手続き未完了者一覧から該当の従業員を選択し、従業員詳細画面にて「入社手続き済みにする」ボタンをクリックし、入社手続きは完了となります。
以上、従業員が入社した時の社会保険手続き・雇用保険手続きについてご紹介いたしました。従業員が入社した時や退社した時には、必要な手続きが多いので、出来る限り早めに行うようにしましょう。なお、下記の記事では社会保険の年間スケジュールについてご説明しています。あわせてご覧ください。
「社会保険の届出|1年間の社会保険手続きスケジュール」を読む
また、最近は従業員の退職トラブルも増えています。退職トラブルを防ぐポイントについては、以下の記事でまとめています。退職届は退職後のトラブルを防ぐためにも、必ず提出してもらうようにしましょう。