資金調達を税理士に相談するメリットは?資金調達の方法別に解説

公開日:2019年05月25日
最終更新日:2024年02月10日

この記事のポイント

  • 決算書に税理士法第33条の2の書面があると、信用力が高まる。
  • 中小企業会計指針に関するチェックリストを税理士に作成してもらうのも有効。
  • 税理士に会計参与に就任してもらうという方法もある。

 

資金調達の方法は、大きく分けて銀行などの金融機関から融資を受ける方法、省庁や自治体などが募集している助成金・補助金を受給する方法、ベンチャーキャピタル(VC)や個人投資家から出資を受ける方法があります。

他にも、ファクタリングや私募債発行従業員持株会などを利用して資金調達をする方法がありますが、ここでは大きく「借入」「受給」「出資」の3つに資金調達の方法を分け、それぞれの特徴や、資金調達を成功させるための税理士の活用法などについてご紹介します。

 

資金調達の豆知識

資金調達では、決算書の内容と提出する資料の量と質が重視されます。これらは、税理士をどのように活用するかによって、効果が大きく変わります。
決算書や試算表などについては、金融機関にどのような説明をすればよいのか税理士にアドバイスをもらっておきましょう。「経営者が決算書や試算表の数字を理解しているか」「会社の課題を把握しているか」「改善策を考えられるか」は、大きなポイントです。これらができない経営者では、事業を継続していくのは難しいと見られてしまうからです。
また、申告書には税理士法第33条の2項に規定されている書面添付制度を活用し、決算書の信用力を高めてもらいましょう。この書面は、税務調査の対象となりにくいというメリットもあります。
さらに中小企業会計指針に準拠した決算書や中小企業会計指針に関するチェックリストを税理士に作成してもらい提出することで、金利の優遇などのメリットを享受できる可能性もあります。

資金調達で税理士がいるメリット

資金調達の方法は、大きく「金融機関からの借入」「助成金・補助金などの受給」「出資を受ける」の3つの方法があります。
そして、どの方法でも共通しているのが、税理士などの専門家のサポートを受けることが、資金調達を成功させるポイントだということです。

(1)書類の作成をサポートしてくれる

資金調達をする際には、決算書、直近の試算表、事業計画書などさまざまな書類の提出が求められます。これらの書類については、そもそも作成方法が分からないケースも多々ありますし、仮に作成した書類でも専門家のサポートを受けないと「熱意は伝わってきたが、結局何を伝えたいのか分からない」という書類になってしまいがちです。

相手が最も知りたい目標が数値化されていなかったり、市場規模やニーズが的確に捉えられていなかったりする書類を作成したところで、担当者を納得させることはできませんし、それだけ審査通過が難しくなってしまいます。また、業界の人にしか分からないような専門用語ばかり使っている事業計画書も敬遠されがちです。

資金調達について熟知している専門家であれば、担当者を納得させることができ必要な事項を簡潔にアピールし、かつ一般的に理解されやすい書類作成をサポートしてくれます。

また、中小企業会計指針(※)に準拠した決算書を税理士に作成してもらい、このときあわせて中小企業会計指針に関するチェックリストを作成してもらうことで、金利の優遇などのメリットを享受することもできます。
※中小企業会計指針とは、日本税理士会連合会などが中小企業庁などと協力して、中小企業が決算関係書類を作成するうえでの指針を明確化したものです。

(2)資金調達の方法に合わせてサポートしてくれる

資金調達方法は、以下のようにさまざまなものがあります。そして、資金調達方法ごとにメリット・デメリットを検討し最適な方法を選択することが大切です。

借入金 銀行等の金融機関からの借入で、もっとも一般的な資金調達方法。
補助金・助成金 国や地方公共団体等から支給される。
ベンチャーキャピタル 出資を受けても返済義務は生じないが、ベンチャーキャピタルは出資した分に見合うリターンを求めるため留意が必要。
株式発行 新しい株式を発行して資金調達をする方法で、利息負担がない・返済期限がないなどのメリットがあるが、支配権に影響力がある・配当金負担があるなどのデメリットがある。
ファクタリング 自社の売掛債権をファクタリング社に譲渡することで資金調達をする方法。迅速な資金調達が可能となるが、金利負担が高めである。

このように、資金調達の際には、その方法に合わせて必要な準備を行ない、事業をアピールする効果的な方法や融資の必要性についていかにアピールできるかがポイントとなります。
資金調達に豊富な経験を持つ税理士等の専門家であれば、それぞれの目的を熟知したうえで、その目的に合わせた準備をサポートしてもらうことができます。

たとえば、銀行から借入を行う際には格付けが大変重要となります。
格付け評価を上げるためには、「借入金を減らす」「営業利益を増やす」「自己資本比率を増やす」など、さまざまな方法がありますが、税理士等の専門家であれば、「現在の決算書ではどこが問題なのか」を指摘したうえで、改善策等を提案してくれます。
なお、法人税確定申告書の右下には、税理士の署名捺印欄がありますが、この欄に顧問税理士等の記載がないと、税理士が作成した決算書とは認められず、審査で一気に不利になってしまいます。

また、補助金や助成金を申請する際には、それぞれの補助金や助成金の目的を見極めた申請書を作成する必要がありますし、ベンチャーキャピタルから出資を受ける際には、直近の実績と半年先程度の資金繰り、成長市場であるか否かなどを重視します。

税理士は、このように資金調達の方法、手段ごとに注意すべきポイントを熟知していますので、方法に応じて適切なサポートをしてくれます。

(3)資金繰りの改善についても相談できる

税理士がいれば、資金調達のサポートだけでなく、資金繰りの改善についてもチェックしてもらうことができます。たとえば、新型コロナウイルス感染症の影響の下で債務が増大した中小企業者の収益力改善等を支援制度として、「民間ゼロゼロ融資等の返済負担軽減のための保証制度」があります。
これは、一定の要件を満たした中小企業者が経営行動計画書を作成し、金融機関による継続的な伴走支援を受けることを条件に、借入時の信用保証料を大幅に引き下げる制度です。これは2024年3月31日まで(予定)の制度ですが、この制度以外にも中小企業が利用できる制度はたくさんあります。

税理士に依頼すればこのような国の支援制度の情報提供はもちろん、制度を活用するための手続きについてサポートしてもらうことができます。

参照:中小企業庁「新着情報」

(4)借入以外の資金調達方法を教えてもらえる

また、資金調達の方法は、ここでご紹介する「金融機関からの借入」「助成金・補助金などの受給」「出資を受ける」以外にも、増資、少人数私募債の発行などの方法もあります。

増資
会社に資本金として、お金を入れてもらう方法。
現在の株主に保有している株式数に応じて資本金を入れてもらう「株主割当」、現在の株主の株式数に関係なく資本金を入れてもらう「第三者割当増資」がある。

少人数私募債の発行
証券会社を通じて、広く一般に募集される公募債とは違い、承認数の投資家が直接引き受けてくれる社債のこと。

これらの方法は、金融機関からの借り入れと比較すると元本の返済が不要で、担保や保証料が不要となり、中小企業でも取り組みやすい方法ではありますが、税金面や経営権の問題を十分に考慮する必要があります。
税理士であればこのような方法についても、メリット・デメリットを提示しながら手続きを進めてもらうことができます。

(5)税理士法第33条の2の書面で信用力がアップする

金融機関からの信頼を高める方法として、中小企業の一番身近な専門家である税理士からお墨付きをもらうという方法があります。
これは、税理士法第33条の2項に規定されている制度で「書面添付制度」と呼ばれています。この書面が申告書に添付されているということは、税理士が専門家の立場から申告書の作成に関与したことを示します。
申告書は決算書に基づいて作成されますから、結果として決算書の信用力を高めることになります。
金融機関のなかには、この制度を利用している会社には優遇金利で融資するところもあります。
さらに、この書面を添付することで税務調査の対象となりにくいというメリットもありますから、税務調査のために本業の時間をとられるといったデメリットも減らすことができます。

金融機関から融資を受ける場合

金融機関からの融資は、大きく「銀行・信用金庫などからの融資」と「公的機関からの融資」に分けることができます。

銀行・信用金庫などからの融資

銀行・信用組合は、みずほ銀行や三井住友銀行などの「都市銀行」と千葉銀行や京都銀行などの「地方銀行」、さわやか信用金庫などの「信用金庫・信用組合」の3つに分けることができます。

都市銀行は、日本全国に支店があって規模も大きく、取引相手は大手企業が中心です。したがって、中小企業が都市銀行から融資を受けるというケースはあまりありません。

地方銀行は、それぞれのエリアの大手・中堅・中小企業との取引を中心とした銀行です
地域の活性化を目的としているので、都市銀行よりも中小企業向けのさまざまな融資制度も用意されています。

信用金庫、信用組合は、ごくごく限られたエリアをターゲットとした小さな金融機関です。融資を受ける場合は、基本的に保証協会付融資となるケースが多いです。

公的機関からの融資

日本政策金融公庫とは、100%政府出資の公的な金融機関です。
中小企業や個人事業主、農林漁業者を対象とした融資制度が多数用意されています。
起業間もない中小企業はもちろん、起業前の創業融資制度は毎年2万社が利用しています。

(1)銀行の融資は「格付け」が重要

銀行は「格付け」をもとに融資するか否か、融資するとしたらどのような条件で融資を行うのかを判断します。

格付けとは、金融検査マニュアルに基づいた会社のランク分けで、「正常先」「要注意先」「破たん懸念先」「実質破たん先」などと、会社が区分されているものです。

この格付けが正常であれば、その会社が融資を受けやすくなります。
逆に「要注意先」であったり「破たん懸念先」であったりする場合には、審査の際に「自社は今後『正常先』に回復する」というイメージをしっかり与えることができなければ、審査は通ることはありません。

格付けをアップさせるためには、まずは利益が少しでも多くなるようにすることが必要です。その分税金は増加してしまいますが、節税ばかりに気を取られていると格付けを下げてしまい、資金調達能力が低くなってしまいます。

(2)決算書はどのようにチェックされるか

決算書(貸借対照表・損益計算書)は、金融機関における融資審査だけでなく、どの資金調達の方法においても重視される書類のひとつです。
決算書の内容が悪ければ、それだけ融資審査では不利になってしまいます。

損益計算書

損益計算書とは、決算書のひとつで、1年間の事業活動による儲けを示した書類で、まずチェックされるのは「経常利益」です。

経常利益とは、その会社が継続的にどれだけ稼げるのかを見る利益です。
経常利益が黒字だと「この会社は、利息を払っても利益がプラスである」ということを意味しますので、融資の際に高評価を得ることができます。

また、損益計算書で経常利益とともに「営業利益」もチェックされます。
営業利益とは、その会社が事業でどれだけ稼げる力があるかを見る利益です。
営業利益は、経常利益ともに最低でもプラスである必要があります。
営業利益、経常利益がマイナスだと「この会社は稼ぐ力がないんだな」と解釈されてしまいます。

▶ 損益計算書とは?見方やポイントをまとめて解説

貸借対照表

貸借対照表とは、損益計算書とともに重視される決算書で、事業全体でどんなお金がいくらあるかを示した書類です。

純資本のうち、純資産の占める割合を自己資本比率と呼びます。この比率が高ければ高いほど、会社は健全であるといえますが、赤字が累積してくると純資産はマイナスになってしまい「この会社は債務超過の状態だ」とみなされてしまいます。

▶ 貸借対照表とは|構造・ルール・見方・ポイントまとめ

▶ 自己資本比率|会社経営の「安全性」をあらわす指標

(3)金融機関への事業計画書はどこがポイントか

事業計画書とは、簡単に言えば「事業の中身を理解させるための書類」で、中長期目標や数値計画、実行・管理態勢の表明などを記載します。
どのような業種なのか、どのターゲットに向けたどのような商品(サービス)なのか、市場規模はどれくらいなのか、現状の課題は何なのか、そして返済はどのようなスケジュールで行うのかなど、自社の情報について必要不可欠な内容を数値化し、バランスよく盛り込んだ書類を作成して、担当者に説明できるように準備する必要があります。

補助金・助成金を受ける場合

補助金・助成金とは、政府が事業の発展を支援し労働者の賃金を増やすことを目的として、行っている施策のことです。
補助金も助成金も、原則として返済不要ですが、さまざまな要件を満たすことが必要ですし、審査を通過して始めて受給することができます。

(1)補助金・助成金は制度ごとの目的を理解する

補助金・助成金は、制度ごとに運営する事務局が異なります。
大きく分けると補助金は経済産業省、助成金は厚生労働省が事務局となりますが、補助金・助成金の種類は大変多く、経済産業省や厚生労働省、中小企業庁、都道府県経済産業局、都道府県労働局など、さまざまな機関が事務局となり、さらに制度ごとに目的や手続きが異なります。

たとえば補助金は、国や自治体などが達成したい政策目的のために支給し、企業や個人事業主を支援する制度ですし、助成金は、労働者の雇用維持を目的としています。
したがって、それぞれの制度ごとの目的を理解し、その目的に沿った準備が必要ということになります。

(2)「認定支援機関」が要件となっていることも

補助金の種類にもよりますが、なかには申請するうえで経営革新等支援機関によるフォローが要件となっている場合があります。

経営革新等支援機関(認定支援機関)とは国が認定する公的な支援機関で、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士などの専門家から専門性の高い支援を受けられる制度です。
経営革新等支援機関に認定されている税理士に相談することで、財務内容や経営状況に関する細かな調査や分析、検討が可能になり、補助金申請の際の書類作成や手続き等をサポートしてもらうことができます。

▶ 経営革新等支援機関(認定支援機関)とは

ベンチャーキャピタル(VC)から出資を受ける場合

ベンチャーキャピタルとは、創業期の会社に出資して、その出資先が株式公開をした時のキャピタルゲインを得ることを目的とした会社です。
ベンチャーキャピタルは、政府系、銀行系、証券会社系などさまざまな種類があり、それぞれに投資対象の分野が異なることがあります。
政府系ベンチャーキャピタルは、投資対象となる分野は限定していないケースが多いですが、銀行系や証券会社系のベンチャーキャピタルは、成長性に期待するというより安定感のある分野を重視する傾向があるようです。
また、「バイオテクノロジー分野」「インターネット分野」など、ある特定の業種に特化したベンチャーキャピタルもあります。

(1)ベンチャーキャピタルの目的を理解する

ベンチャーキャピタルは、将来株式公開できるような有望な会社に投資を行い、その会社が株式公開後に、投資した会社の株式を売却して、キャピタルゲイン(売買差益)を得ることを目的としています。
つまり、株式公開前の有望な会社の株式を安く買って、株式公開後にその株式を高く売って、その差益を得ることを目的としているのです。
上場できなかったとしても、より大きな企業に事業を買い取ってもらうなど、何らかのエグジットを想定していなければ、出資を受けることはできません。

(2)ベンチャーキャピタルに求められる書類の準備

ベンチャーキャピタルは、新聞や雑誌、ネット記事などから常に投資先の会社を探しています。このほか、人脈からの紹介などによって投資先の会社を見つける場合もあります。投資先の会社が見つかった場合には、事業計画書や資本政策、資金繰り表などの書類の提出を求め、その会社の事業計画が投資するに値するかを審査・評価します。

これらの書類は、ベンチャーキャピタルが「投資先の会社は、今後どのように成長するか」を見極めるための書類です。したがって、ベンチャーキャピタルの審査書類を準備する際には、「ベンチャーキャピタルはどの書類のどの点を重視するのか」「審査ではどのような質問をされるのか」「手続きはどのように進むのか」といったベンチャーキャピタルの審査の実態を熟知した税理士等の専門家のサポートを受けるのがおすすめですし現実的です。

▶ ベンチャーキャピタルとは|VCの種類・出資を受ける方法

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まとめ

以上、融資・補助金・出資などの資金調達の方法や、その際に活用したい税理士のサポートについてご紹介しました。
税理士等の専門家の仕事は、決算・申告業務や節税対策の提案だけではありません。会社を成長させるための幅広い情報を持っており、その情報を活用して経営を成長させるサポートをしてもらうことができます。
だからこそ税理士は、よく「中小企業の経営者のパートナー」と呼ばれるのです。

最近は、資金調達や経営相談などを積極的に行う税理士も増えています。自社の求めるものを明確にして、それに合った税理士を探しましょう。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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