公認会計士とは?税理士との違いは?

公開日:2019年11月20日
最終更新日:2024年02月21日

この記事のポイント

  • 公認会計士は、会計、税務、財務、経営の専門家。
  • 公認会計士の独占業務は「監査業務」である。
  • 公認会計士が税理士登録して、税務業務を行うこともある

 
公認会計士は、会計や税務、財務、経営コンサルティング業務など、主にビジネスにおけるお金の管理に関わる業務を行なうの専門家です。
公認会計士については、税理士の違いについてよく分からないという方も多いようです。これは、どちらも「お金に関する業務を行う専門家」というイメージが強いからでしょう。

そこでこの記事では、公認会計士の仕事内容や税理士の仕事の違いについて、ご紹介します。
 

公認会計士の豆知識

公認会計士の仕事の中心は大企業を相手にしている業務がほとんどで、税理士のように身近な専門家というわけではないことから、公認会計士の業務のイメージがわかないことが多いものです。簡単にいうと、公認会計士が企業を相手に監査業務を行ないますが、税理士は企業や個人を相手に税務業務を行ないます。
公認会計士は試験に合格すると、多くが監査法人に就職します。監査法人とは、従業員のほとんどが公認会計士という法人で、主に大企業の財務諸表が適正に作成しているかをチェック(監査業務)します。そこで、公認会計士は資本市場における番人と呼ばれることもあります。
また、金融機関や公的機関、教育機関などで活躍したり、企業のCFOとして活躍したりするケースもあります。
さらには、監査法人である程度のキャリアを積んだ後に、独立開業して中小企業や個人事業主を対象とした税務業務や経営コンサルティング業務などを行う人もいます。
公認会計士は、税理士としても登録することができるからです。

公認会計士とは

公認会計士とは会計の専門家のことで、主な仕事は「監査業務」です。
日本公認会計士協会では、公認会計士の代表的な業務として、独占業務である「監査」の他、「会計」「税務」「コンサルティング業務」などを挙げています。
独占業務である監査業務とは、会社の決算書が正しく作成されているかをチェックして、監査報告書を作成して会社に提出する業務です。

上場企業や一部の大企業の場合には、決算書を作成して監査を受けることが義務づけられているため、公認会計士の監査を受ける必要があります。

(1)公認会計士と税理士との違い

公認会計士が監査業務を行う専門家であるのに対して、税理士は納税者である相談者の側に立って税務に関する依頼を引き受ける専門家です。
しかしなかには、公認会計士・税理士として活動をしている人もいますし、税理士のなかにも経営コンサルティングを中心に活動している人もいます。
多くの公認会計士は、独立すると税理士登録をしてから税理士業務を行っていますが、これは、公認会計士は税理士試験を受験しなくても、税理士登録をすることが可能だからです。

また、弁護士は、弁護士業務以外の税理士の業務を行うこともできますし公認会計士が税理士会に登録すると税理士業務を行うことができますので、弁護士や公認会計士の資格を有しながら、税理士業務を行っている人もいます。

公認会計士と税理士の違いの主な違いを簡単にまとめると、以下のようになります。

税理士と公認会計士の違い

公認会計士 税理士
専門分野 会計 税務
独占業務 会計監査 税務関連
主なクライアント 上場企業・大企業 中小企業・個人事業主
得意分野 ・財務分析
・会計コンサルティング
・デューデリジェンス業務
・税務相談、税務申告書作成業務
・経営コンサルティング、資金調達コンサルティング
・中小企業の顧問

(2)公認会計士は税理士登録することも可能

公認会計士の資格を取得すると、税理士登録をすることも可能です。
したがって、公認会計士・税理士という肩書で会計事務所を経営するケースも多々あります。一方、税理士は公認会計士試験に合格しない限り、公認会計士業務を行うことはできません。

※ちなみに、税理士の業務とは…

税理士の業務は、納税者の税務代理業務、税務書類の作成、税務相談業務です。
最近ではこれらの税理士業務に加えて、経営コンサルタントや事業承継サポートなどを行う税理士も増えています。

税理士の業務「税務代理業務」
税務代理業務とは、法律で定められた法人や個人の税務書類を期限までに税務署に提出する必要がある場合に、この税務関係の書類を税理士が納税者に代わって代理で提出する業務です。
この他、納税者が税務調査の対象となった際に納税者に代わって税務署に不服申し立てを行う業務も、この「税務代理業務」に含まれます。

税理士の業務「税務書類の作成」
納税者の税務書類(所得税、消費税、法人税の確定申告書類や、年末調整、法定調書の作成、相続税・贈与税の申告書類など)・申請書・請求書・不服申立書の作成は、納税者以外では税理士でないと行うことができない「独占業務」です。

税理士の業務「税務相談業務」
税務署等に提出する申告書等を作成する場合には、税金を計算する必要があります。
そして、この税金を算出するために納税者からの相談に対応業務も税理士の仕事です。
「所得税がどれくらいかかるか知りたい」「相続税対策を行いたい、相続税申告の手続きをしたい」などの個人の税務相談の他、「節税対策を行いたい」「法人税の申告をしたい」「会社設立に伴い税務署などに提出する届出を知りたい」などといった相談は、税理士が対応することになります。

なお税理士が、起業支援や事業計画策定、国際税務・海外進出サポートなどを行うこともあります。
詳しくは、「税理士の仕事内容|税理士に依頼できる12の業務」でご紹介していますので、あわせてご覧ください。

(3)公認会計士の業務「監査業務」とは

監査業務とは、簡単に言うと会社の健康診断のようなものです。
会社は株式市場に参加して、投資家などに情報を提供する必要があります。そしてその場合には、会社が自ら作成した情報が正しいことを公認会計士に証明してもらわなければなりません。これが、公認会計士の行う「監査」です。

監査は、通常は10人程度の監査チームを編成して取り組むことになります。監査業務は、帳簿を確認したり実際の棚卸作業に立ち会ったり財務管理状況を検討したりするなど実に多岐にわたっているため、チームで効率よく作業を行うことが非常に大切です。
そして、問題点(検出事項)が見つかったら、その場で修正を促すこともあります。

なお公認会計士の監査は、一般の会社だけにとどまらず、私立学校や地方公共団体などで求められることもあります。

(4)公認会計士の業務「監査報告書の作成」とは

公認会計士は監査した結果を「監査報告書」にまとめ、会社に提出います。
つまり「この決算書の内容は正しい」ということを証明するわけです。ちなみにこの証明を「適正意見」といいます。
この「適正意見」とは、一定のルールに従っていることを証明するもので「経営成績がよい」「成長性のある会社である」といったことを証明するものではありません。

なお、適正意見を出せない時には、「不適正意見」や「意見差し控え」を行います。
不適正意見とは、「この決算書は一定のルールに従っていません」と株式市場で発表することで、実質「株式市場への上場廃止処分」となり、倒産のリスクを招くことになります。
つまり、不適正意見の影響はそれほど大きいということになります。

(5)どうすれば公認会計士になれるのか

公認会計士になるためには、国家試験である公認会計士試験に合格する必要があります。公認会計士試験は短答式試験と論文式試験の2つに分けられていて、合格率は10%前後の難関で、通常は2年間ほどの勉強が必要です。

短答式の試験科目:
財務会計論、管理会計論、監査論、企業法

論文式の試験科目:
会計学、監査論、企業法、租税法、選択科目から1科目

参照:公認会計士・監査審査会

公認会計士試験に合格するとどうなるか

公認会計士事務所の形態は大きく、以下の3つがあります。

①監査法人
公認会計士法に基づいて設立された、会社組織の事務所です。
監査法人は、最低5人以上の公認会計士で設立することができますが、なかには、2,000人以上の公認会計士を抱える大規模な法人もあります。
公認会計士試験の二次試験に合格し会計士補となると、ほとんどが監査法人に勤務して研修と業務補助を行います。

②個人事務所
公認会計士が、個人で事務所を経営する事務所です。
公認会計士は税理士登録することができるので、ほとんどが税務業務や経営コンサルタントを中心に行っています。

③共同事務所
複数の公認会計士が、共同で組織・運営している事務所です。

(1)多くは監査法人に入る

公認会計士試験に合格すると、そのうちの大部分が監査法人という組織に入ります。監査法人はその名の通り、公認会計士の独占業務である監査を組織として行ないます。監査法人は大手と準大手、その他中小零細の監査法人からなります。
公認会計士として正式に登録するためには、筆記試験である公認会計士試験に合格した後に満たさなければならない条件がいくつかありますが、そのうちの1つの条件が3年間の実務経験であり、かつ公認会計士の独占業務である監査について学ぶためにも、監査法人に就職することが王道と言えるからです。

(2)公認会計士の独立事情

公認会計士も、自身の会計事務所を設立開業するケースがあります。
しかし監査とは、大企業が法律の定めによって受けなければならないものであり、大企業の監査は膨大な作業量が必要となるため、独立した小規模の公認会計士事務所が担当するケースはあまりありません。そこで、独立した公認会計士の多くが税理士登録をして、税務業務を行うのが一般的です。

(3)一般の会社に転職するケースもある

監査法人に就職した後一般の会社に転職するケースもありますが、それほど一般的ではありません。転職先としては、監査法人グループの系列会社で会計知識を活かしたコンサルティング業務を行ったり、外資系の金融機関に転職したりするケースがあります。

公認会計士Q&A

公認会計士に関するご質問のなかには、「このようなケースでは、公認会計士と税理士のどちらに相談すればいいのか」とといったものが多くあります。そこでここでは、具体的な例に沿って公認会計士と税理士のどちらに相談すべきかについてご紹介します。

(1)節税の相談はできるか

公認会計士は会計の専門家ですが、税務の専門家ではありません。したがって、節税の相談は、税理士に相談するべきでしょう。
ただし、公認会計士は税理士登録することも可能なので、実際には公認会計士・税理士として節税のアドバイスを行っているケースも多々あります。
その場合には、公認会計士・税理士に節税の相談を行うことができます。

(2)資金調達の相談はできるか

資金調達をしたい時には、決算書の内容を見直したり事業計画書を作成したりといった準備が必要になります。そして、これらの準備を行うためには、融資をしてくれる先の視点に立ち効果的にアプローチしていく必要があります。
したがって、資金調達の相談をするのは決算書の内容を見直し、事業の内容を熟知したうえで事業計画書の作成をサポートしてくれる税理士に相談することをおすすめします。

(3)経営の相談はできるか

「売上をもっと伸ばしたい」「事業を拡大させたい」「従業員の数を増やしたい」といった経営の悩みを解決するには、まず自社の課題を明確にする必要があります。そして、この自社の課題を明確にするための材料が「決算書」です。
どんな会社でも、1年に1度は決算書を作成しています。この決算書を「税金を払うために作成し納税額を計算する書類」と思っている人もいますが、決算書には企業の会計上のデータがすべて詰まっていて、決算書を適切に分析すれば自社の課題や強みなどが明確になります。
そして言うまでもありませんが、税理士は会社の数字のプロです。
決算書の内容を分析し、節税に関するアドバイスをしながら、事業が成長できるための提案をしてくれます。
したがって、経営の悩みを、税理士登録している公認会計士に相談することは、非常に有益といえるでしょう。

(4)M&Aの相談の相談はできるか

M&Aで行われる財務デューデリジェンスは企業会計に関する専門的な知識が必要となります。そこでM&Aに関する相談を、公認会計士に相談するケースも多いでしょう。
ただし、中小企業が事業承継や経営難を乗り切る目的などでM&Aを考えたとき、まずそもそもM&Aに適した案件なのか、M&Aを行うとしたらどのような方針で進めるのかを検討する必要があります。
また、事業に競争力はあるか、財務状況に問題はないかについて評価することも必要です。
案件によっては、専門的な税務の知識が必要となることもあります。したがって、まずは税理士に相談し、必要に応じて公認会計士と連携をとるのがよいでしょう。

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まとめ

以上、公認会計士の仕事内容や税理士との違いについてご紹介しました。

公認会計士の仕事は、上場企業や一部の大企業の監査を行うのが主で、税理士の仕事は、記帳代行、給与計算、各種帳票類の作成(貸借対照表、損益計算書、月次決算書など)、決算申告(決算書の作成など)、経営に関する相談、相続税対策・申告など多岐にわたります。
ただし、公認会計士は税理士登録することもできるので、税務に関する相談をすることも可能です。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

 

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