事業承継

事業承継について知る

事業承継とは

事業承継とは、事業(会社)の経営を後継者に引き継ぐことをいいます。
事業承継の具体的な中身としては、経営権の譲渡、自社株式の譲渡、事業用資産の譲渡があります。

近年、中小企業の経営者の高齢化が進むなかで、後継者を確保できなかったために会社を解散せざるを得ないケースが増加しています。
また後継者がいる場合でも、後継者と親族間で対立が起こって会社の株式や事業用資産が分散し、安定した経営権を確保できなくなってしまって会社の経営どころではなくなってしまうケースも多く存在しています。

しかし、事業承継は計画を立てて行えば円満な承継が可能であり、しかも早く始めれば始めるほど有利になります。

政府は我が国の中小企業の役割を重視していて、中小企業の事業承継が円滑に進むようさまざまな制度を設けています。

事業承継の問題は、ついつい後回しになってしまうものですが、これらの制度を活用し円滑な事業承継を実現できるよう、早めに中長期計画を立て実施していくことが大切です。

事業承継が進まない理由

事業承継について適切な対策を行わなかったために、経営が破たんしているケースが増加しているにもかかわらず、事業承継対策について検討している経営者はまだまだ少ないのが実情です。
このように中小企業・小規模事業者の事業承継が進まない理由のひとつとしては、日本の厳しい経済状況が挙げられます。

そもそも多くの中小企業は「やらなければならないとは思うけれど、毎日の仕事で忙しく時間がとれない」という厳しい経済状況のもとで事業を行っています。
さらにこのような厳しい経営が続けば、経営者は娘や息子に「こんなリスクを負わせたくない」と考えますし、娘や息子も「継ぐ意思が持てない」と考えるようになるのは無理のないことでしょう。

しかし、「それでは親族以外で後継者を探して育成しよう」となると、それはそれで多大な時間とエネルギーが必要になります。
オーナー会社にとって相続・事業承継問題は避けて通れない問題であるにもかかわらず、つい後回しにしがちになってしまうのは、このような理由があるからと考えられます。

日本政策金融公庫の調査では、60 歳以上の経営者のうち50%超が将来的な廃業を予定しており、このうち「後継者不足」を理由とする廃業が全体の約30%を占めます。これは、結果的に毎年何十万人もの雇用が失われてしまうということです。
帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」動向調査(2020 年)」

しかし、事業承継の準備が進まないなかで後継者へのバトンタッチがうまくいかなければ、会社の成長はストップし業績の停滞を招いてしまいます。さらに最悪の場合には倒産に至るケースもあるのです。

円滑に次世代に事業を引き継ぐことは、家族や従業員だけでなく、取引先のためにも非常に大切なことなのです。

事業承継はなぜ必要か

経営者に万が一のことがあったり予期せぬ病気になったりして、それを理由に第一線を退かなければならなくなってしまえば、突然承継をせざるを得ない状況になってしまいます。
所有と経営が分散・分担されている大企業と異なり、意思決定権が経営者に集中しているケースが多い中小企業の場合には、経営者の予期せぬ病気、ケガ、死は、経営の機能不全に直結する問題となってしまいます。

経営が機能不全に陥れば、家族だけでなく従業員や取引先にも影響を及ぼすことになります。
このような事態を避けて、円滑な事業継承を実施するためには、可能な限り早く事業承継対策を検討することが欠かせません。

では、いつから事業承継について検討を始めるべきかというと、これは企業によって事情はさまざまです。早すぎて困ると言うことはありません。また、遅ければ手遅れかというとそういうこともありません。

ただし、事業承継は中長期計画を立て後継者の選定・育成、財産の承継などさまざまな手続きを行う必要があります。これらをしっかりと行うためには10年程度の時間が必要です。
たとえば67歳で引退したいと考えているのであれば、その10年前の57歳から事業計画をスタートする必要があるということになります。
おおよその目安を示すとするならば、55歳を過ぎたら事業承継について少しずつ相談を始めるのがよいでしょう。

事業承継は早いほどよい理由

事業継承対策は、1年や2年で完了できるものではなく、中長期計画が必要となります。
節税対策や、後継者の選定・育成、遺言書の作成等、時間をかけて検討すべき事項が多く、また実行するにしても時間がかかるからです。

特に最も重要となってくるのが後継者の選定と育成です。後継者を選定する際には、社内・社外の影響などを総合的に考慮して、可能な限り早い時期から後継者を選定し、他の相続人や従業員とトラブルが起きないよう対策をとっておかないと、会社の株式や事業用資産が分散してしまい、経営自体が困難となってしまいます。

税理士選びを事業承継から学ぶ

税理士に依頼するメリット

事業承継について検討する際には、事業継承対策を重要な経営課題と捉え、現状分析、問題点の抽出、事業承継方法にあわせた対策を計画的に実行していくことが不可欠です。
なかでも後継者の選定は最重要課題で、事業承継問題を検討する際には、後継者を選定・育成し、その計画に併せて個人保証の問題、承継に際して必要な資金の確保、相続税・贈与税といった問題も検討していく必要があります。

自社株の対策も不可欠です。非上場株は取得する立場や形態によって株の評価も変わることもあり、早めの株評価対策をするかしないかは、将来の事業承継に大きな影響を与えることになります。
急に引継ぐと、税金面で色々な問題が発生し結局廃業しなければならなくなったり、相続トラブルが発生して工場や自宅を手放さなければならなくなったりするケースもあります。

事業承継問題に精通している税理士に相談すれば、後継者の選択から節税対策、主要な取引への根回しの方法など、他士業と連携して問題を共有してサポートをしてもらうことができます。

税理士によるサポート

事業承継については、単なる税務手続きのみならず後継者問題・資産問題を中心として、以下のようなさまざまな事項を検討する必要があります。
しかし現経営者が、事業承継にばかり関わって本業に手が回らなくなってしまっては、本末転倒です。負担の軽減のためにも、事業承継に精通した税理士のアドバイスとサポートは欠かせないといえるでしょう。

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後継者の選定・育成
後継者を選定し育成する際には、さまざまな視点からメリット・デメリットを見極めることが重要です。後継者が見つからない場合には、外部からの後継者招へいなども検討します。
後継者育成プログラムの作成や実行には、第三者の意見も受け入れ効率的に進める必要があります。

承継方法
経営者が築いてきた事業にはさまざまな財産があります。不動産や資産のみならずノウハウや優秀な従業員なども含まれます。今後の発展に支障をきたさずに後継者へ事業を承継するために、どのような方法があるのか検討します。
売買を利用するのか、生前贈与か相続か、遺言書は必要か、M&Aは活用できるのかなどを決めて承継計画にもい込まなければなりません。
法律的な知識や税務知識が必要な事項も多く含まれるため、税理士等のアドバイスは欠かせません。

税金対策
多額の相続税が発生する可能性がある場合には、納税資金の確保や生前贈与の検討等による早めの対策が重要です。
効果的な税負担軽減措置や納税資金の準備対策は、税理士への相談が望ましいでしょう。
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また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるのであわせてご利用ください。

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50代、60代の経営者から見れば、「事業承継はまだ早い」と思われるかもしれませんが、これまで述べてきたように、事業承継対策では、多くの事項について時間をかけて検討する必要がありますし、実行にも多くの時間を要します。
仮に今すぐに検討して計画を立て開始しても、実行されるのは10年後、20年後といったケースもあります。
なるべく早めに税理士に相談して、長期計画を立て実行することこそが、経営を安定させ、会社を発展させる秘訣ともいえるでしょう。

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