法人の税務調査

法人の税務調査について知る

法人の税務調査とは

日本は申告納税制度を原則としていて、納税者自らが税務署等に申告し税額を確定させて納税します。
そして、これらの申告が正しく行われているかについて税務署が調査するのが「税務調査」です。

大企業の税務調査の担当は、国税庁の調査部ですが、中小企業の調査を担当するのは税務署です。

「税務調査」と聞くと、テレビドラマやニュースなどで見る強制調査をイメージする人も多いのですが、そのような強制調査は、国税庁査察部(通称マルサ)が悪質な脱税者に対して行う調査であり、一種の犯罪調査です。
したがって、一般的に行われるのは「任意調査」とよばれるものです。

任意調査は、調査目的や調査場所などから、「準備調査」と「実地調査」に区分されます。
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準備調査
準備調査とは、主に税務署内で行う調査のことをいいます。
準備調査の段階で対象となる納税者に問合せを行うこともありますが、準備調査は主に実地調査が必要かどうかを判断するために行われるケースがほとんどです。

・机上調査
納税義務者が提出した決算書や申告書を、税務署内で確認する調査です。

・外観調査
調査対象者として選定するかどうかの資料収集を目的として、取引先を確認したり来客数を確認したりする調査です。

・書面調査
納税義務者が提出した決算書や申告書の内容について、調査官が不明点や疑問点がある場合に、対象者に書面で問合せを行う調査です。

・呼出調査
対象となる納税者を税務署に呼び出して、申告書の内容などについて説明を求める調査です。

実地調査
実地調査とは、納税者の事業所や店舗などに出向いて帳簿書類などを調査することで、一般的に税務調査というと、この実地調査のことをいいます。

・一般調査
帳簿や伝票などの資料をもとに、納税者が提出した申告書が、税法に基づいて作成しているか、その内容が正確かどうかを確認していく調査です。

・現況調査
納税者の状況を把握するために、抜き打ちで行われる調査で、現金取引が主である業種など、税務署が特に現況調査が必要であると判断した場合に行われる調査です。
たとえば、飲食業や美容院などの店舗がある業種の場合には、誰がレジを打っているのか、領収書を渡しているか、別の帳簿類に記帳などしていないかなどもチェックされます。

・反面調査
一般調査だけでは足りないと判断された時に会社と付き合いのある、銀行や取引先に向けて行われる調査です。

・特別調査
脱税など、一般調査だけでは足りないと判断された時に行われる厳しい調査です。
社長の自宅や銀行、取引先に同時調査が入ることがあります。

・特殊調査
単独の個人や法人に対しての税務調査だけでは実態を把握できないと判断された時に、グループ企業も含めて総合的に行われる調査です。
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なぜ調査対象に選ばれたのか

税務署の調査官の数は限られていますから、このすべての法人を調査するのは不可能に近いでしょう。そこで、税務署では選定基準を設けて特に処理ミスや不正が見つかる可能性の高い企業を調査することになっているのです。

法人の税務調査は、通常は、3年~7年くらいのサイクルで行われるのが基本です。
不動産賃貸業の会社などは売上や経費が毎年ほぼ一定しているので、調査に行かなくても確定申告書の信頼性がほぼ確認できるとして、10年以上調査が行われないこともあります。

好況の業種や現金取引の多い業種などは税務調査の対象とされることが多いようです。
また、過去に不正を行っていた会社や悪質な会社、脱税した会社の場合には、毎年でも調査が行われることがあります。

なお消費税については、決算内容と関係なく納税義務が生じたり消滅したりしますので、消費税に関する税務上の不備が明らかな場合には、調査対象となります。

税務調査の連絡がくると「疑われているのか」と、いやな気持になる人もいるでしょう。
しかし税務調査は、事業を行っている人にとっては避けては通れない宿命のようなものです。むしろ「いつかは、やってくるもの」と考えておいた方がよいでしょう。

税務調査の流れ

税務調査の対象となった場合には、原則として顧問税理士や会社に対して事前に連絡がありますが、飲食業や小売業など、不特定多数の人と現金決済で商売しているケースや脱税行為を行っていると想定されるケースでは、連絡なしで税務調査が行われることもあります。

個々のケースで異なりますが、税務調査は通常、以下のような流れで行われます。
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・ 事前調査(業績の推移、申告書の内容の分析など)
・ 実地調査(現場・事務所への立入り調査、取引先、銀行の反面調査)
・ 調査の収拾(事実関係の確認・交渉)
・ 申告是認、修正申告または更正処分(修正して申告する、または税務署が申告額を決め通知する)
・ 調査後の対策(必要な業務改善を行う)
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税理士選びを法人の税務調査から学ぶ

税理士に依頼するメリット

税務調査の連絡がきたら、すぐに税理士に連絡しましょう。

税務調査当日までには、さまざまな書類の準備が必要です。
税務調査当日までに準備するべき書類としては、現金出納簿や売上仕入に関する帳簿、損益計算書や貸借対照表、現金や領収書、現金預金に関する証憑類など、多岐にわたりますが、税理士に依頼すれば税務調査が円滑に進むよう、内容を確認し対策を講じてもらうことができます。

また、税理士には税務調査当日も立ち会ってもらうことができます。
税理士法1条では「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場で、申告納税制度の理念に沿って、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする」と明記されています。
つまり税理士は、明らかに納税者側に立って仕事をしなければならないとされているのです。
税務署の調査官は税務調査までに相当な情報を収集していて、調査したいポイントを絞って細かく質問してきますが、このような時納税者の味方である税理士が立ち会ってくれれば、心強いことはいうまでもありません。

税務調査に精通している税理士は、自身の経験からどのようなチェックを受けるか推測しています。税理士と事前に打ち合わせを行っておけば、質問される事項についてある程度予想することができますし、さらにリハーサルをしておけば安心して調査当日を迎えることができるでしょう。

税理士によるサポート

税務調査においては、解釈によって黒とも白とも言えない、いわゆる「グレーゾーン」について、細かく指摘される可能性が高くなります。
たとえば、交際費や福利厚生費、会議費などが何のためにどのような形で支出したのかについては判断が分かれることが多く、問題ありと指摘されることがあります。

この時、あらかじめ税理士と打ち合わせを行い、事実の確認、説明方法、解釈の方法などあらゆる観点から検討しておけば、税務調査当日にも毅然として対処することができます。

調査官が問題ありと考えたとしても、「これが正しい解釈だ」と判断して申告したこと、そしてそのような申告をしたことについて証明書類をきちんと提示して説明できれば、解釈によっては問題なしとなる可能性があり、税務調査結果が大きく変わることがあるのです。

税務調査当日に税理士に立ち会ってもらい、調査官にその旨をきちんと伝えれば、調査官がその説明に納得し、その場で指摘を取りやめることもあり得ます。

もちろん、どの指摘もすべて拒否するというわけにはいきません。
明らかに処理が間違っている場合には、指摘されたことをすぐに認める方が心証は良くなります。

税理士に相談すれば、「税務調査を受けるための事前準備」「当日のシミュレーション」「調査当日の立会い」はもちろんのこと、認めるところは認め、反論すべきところは反論してもらうなど、臨機応変な対応をしてもらうことができるので、税務調査をスムーズに進めることができます。

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ですから、税務署から「調査したい」と連絡があった場合には、すぐに顧問税理士に連絡しましょう。顧問税理士がいない場合でも、税務調査だけ対応してくれる税理士もいるので、早めに連絡を取り打ち合わせを行うようにして下さい。
日頃からきちんと経理業務を行っていれば、税務調査は決して怖いものではありません。税務調査に強い税理士を活用して、落ち着いて税務調査に対応しましょう。

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