税理士と上手に付き合う会計ソフトの選び方

「自社で会計業務を行うのであればともかく、税理士に業務をお願いするのであれば会計ソフトは何でも良いんでしょ?」と思っていませんか?、答えは「No」です。
近年、電子帳簿保存法やインボイス制度等の様々な制度改正がありましたが、その改正に伴い会計ソフトは大幅に進化を遂げ、利用する会計ソフトによって税理士自身の業務効率にも大きな差が生じています。

その結果、税理士に業務を丸投げする場合においても「どの会計ソフトを得意とする税理士にお願いするか」によって手間暇や支払う金額に対して受けられるサービスの質に明確な違いが生まれています。
会計業務にかかる負荷を減らし、自身のリソースを本業に集中することが出来るようにするために、自分にとって最適な税理士と会計ソフトの組み合わせがどういったものか、考えていきましょう。

会計ソフトの種類

インストール型とクラウド型の違い

会計ソフトを選ぶ際にまず一番重要なのは、インストール型かクラウド型かどちらを選ぶか、です。
先に結論を申し上げると、「税理士と一緒に利用する場合はクラウド型が断然お勧め!」となりますが、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。

それぞれの特徴を表で簡単に説明すると以下のようになります。

インストール型 クラウド型
料金 △~〇
業務の自動化 ×
資料の保管 ×
手作業のしやすさ
業界対応
セキュリティ
同時使用 ×

(〇…優れている △…得意とは言えない ×…できない、苦手)

料金

料金については一概にどっちが安い・高いの判断はできません。特にインストール型の会計ソフトに関しては、現金出納帳レベルの入力専用のものから年間の仕訳数が数百万行を超えるような上場企業向けのものまで様々であるので、単純な比較は難しいかと思います。
ただ、インストール型は通常購入時にまとめて金額を支払うことになるのに対して、クラウド型は月額払いから申込が可能であるため、資金繰りの観点からはクラウド型の方が導入しやすい料金形態と言えるでしょう。

業務の自動化

これは圧倒的にクラウド型が有利と言えます。インターネット上で銀行口座やクレジットカードと連携することで利用明細を取得でき、一定のルールに従って自動で記帳処理を行うことが可能です。

資料の保管

資料の保管については、まさに近年のクラウド会計ソフトが大きく進化した部分になります。OCR(光学文字認識)技術の向上によって領収書や請求書の情報を精度高く読み取ることができるようになり、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応が可能な高度なストレージ(データ保存)サービスを安価で提供することが可能になりました。

手作業のしやすさ

ここまでクラウド型の会計ソフトのメリットが先行する形になりましたが、全てにおいてクラウド型が優れているという訳ではありません。

クラウド型は自動化に優れているとお伝えしましたが、逆に言うと手作業での大量入力にはあまり向いていません。インストール型に比べて入力の際に僅かなタイムラグが生まれるため、手入力に慣れている人にとってはインストール型の方がストレス無く入力を行うことができます。

業界対応

例えば公益法人や学校法人、医療法人など、一般の株式会社とは異なる独自の決算書フォーマットが必要なケースにおいて、クラウド会計で対応できるソフトはまだまだ少なく、インストール型の業界特化型のソフト以外に選択肢がないという場合が多くあります。

セキュリティ

意外に思うかも知れませんがセキュリティ面では基本的にクラウド会計の方が強いと考えられます。
イメージとしてインターネット上では情報漏洩が不安という方も多いですが、クラウド会計を提供している各社共にセキュリティには万全の体制を敷いています。何よりデータが仮想空間上にあるので、地震や火事といった自然災害に対する脅威が無いことは大きなメリットです。

一方でインストール型の場合は、インストールしたPCのみでしか利用が出来ないため、自然災害に加え、PCや外付けメモリが壊れてしまったり、盗難にあってしまったりした場合に大きなリスクがあります。

また、クラウド型では会社と税理士間のデータのやりとりも同じ仮想空間上で行うことが出来ますが、インストール型の場合はデータは別で行う必要がありますので、そちらでも紛失等のリスクが発生します。
もちろん、クラウド型であればリスクが全くないということではありませんが、相対的にはインストール型よりもセキュリティには優れていると言えるでしょう。

同時使用

実はここが冒頭に触れた「税理士と一緒に利用する場合はクラウド型が絶対お勧め!」となる部分です。

クラウド型の会計ソフトは仮想環境上にあるマスタデータに対して、ネット環境がある所では何時でもどこからでも、スマホやPCを通じてログインをすることが可能(※)です。そして、同時に複数人がログインして同時に使用することが可能です。このマスタデータは同一のものなので、誰かが作業をしたらその結果は全員に同時に反映されます。
(※セキュリティを重視する場合は、IPアドレス制限というものを行うことで、特定のPCのみログインを許可する方法もあり)
ここが非常に重要な点で、お互いの作業が直ぐに把握できるので、例え遠隔であってもリアルタイムに税理士とやり取りが行えますし、何か行う都度、お互いに作業完了の連絡を行う手間も無くなります。

これは、インストール型の会計ソフトでは実現が難しく、クラウド型会計ならではのメリットになります。このメリットを活かしたユースケースについては後ほど解説します。

従来型と統合型の違い

従来型は、会計帳簿から決算書の作成までに機能特化した会計ソフトを指します。対して統合型とは、上記機能に加えて請求書発行や支払管理等の仕訳入力以前の経理業務まで機能を有している会計ソフトを指します。
統合型においては、業務ソフトの機能を利用することで、その業務に関する仕訳を自動生成し、会計ソフトに連携することができます。このようにソフト間で繋がりが持てる点が統合型と言われる所以です。

上述のインストール型・クラウド型との関係でいうと、大雑把に従来型≒インストール型、統合型≒クラウド型とまとめることができます。

インストール型かクラウド型かに関わらず、会計ソフトを提供する会社の殆どは経理業務ソフトもラインナップとして揃えています。ただし、インストール型の場合は会計ソフトと業務ソフトが別々となっており、それぞれでインストールが必要となります。システム単体で見た場合にはインストール型の会計ソフトは原則的に従来型の位置づけになります。

一方で、クラウド型の会計ソフトの場合は、業務ソフトが同一のプラットフォーム上に存在していることが多く、機能によっては別途契約をする必要がある場合もありますが、会計ソフトの画面上から業務ソフトに移動することが可能です。

freee会計とその他の会計ソフトの違い

統合型の中でもfreee会計は他のソフトと明確な違いがあります。それは「業務と会計が一体となっている」点です。
従来の会計ソフトは、入力の単位が「仕訳」という会計帳簿作成のための固有の形で行います。そのため、例えば業務ソフトで請求書を発行した場合、その請求書情報を「仕訳」の形に変換した上で会計ソフトに取り込む必要があります。その結果、連携は出来るものの「請求書データ」と「仕訳データ」は別のデータとして存在し、仮に請求書側で修正を行った場合に仕訳データが自動で修正されることはありません。

一方で、freee会計では入力の単位を「取引」という仕訳より情報量の多い形で行います。freeeでは請求書も仕訳も一つの取引データを基に作成されるので、例えば請求書側の情報を修正すると自動的に仕訳情報も修正されます。この特徴により享受できるメリットについては後ほど解説します。

その他の注意点

「インストール型とクラウド型の違い」で述べた「業界対応」にも通ずる部分になりますが、業種固有に存在する論点、例えば建設業における工事台帳や入金台帳の作成、小売/卸売業における在庫管理、製造業における原価管理等に関しては、汎用的な会計ソフトの中で解決することは難しいことが多いです。
2025年現在においては、業界専門の会計ソフトが存在する場合、その多くはインストール型になるので、クラウド型の会計ソフトを利用する場合は、上記のような管理作業は別システムで対応することを前提に考える必要があります。

税理士にとっての会計ソフト

「クラウド型の会計ソフトを使いたかったけど、税理士に断られた」そんな経験がある方も少なくないと思います。
同じ税理士の中でも、指定の会計ソフト以外は一切不可という人もいれば、お客様が使いたいソフトがあればどの会計ソフトでもOK、という人もいます。
この違いは何によるのか、その背景について解説します。

税理士と会計ソフトとの関係性

税理士の業務は幅広くありますが、独占業務として定められているのは①税務代理、②税務書類の作成、③税務相談の3つです。皆さまが顧問税理士にまず期待することも「税務申告をつつがなく済ませてもらう」ことかと思います。
これは税理士にとっても同様で、最も重要なソフトは会計ソフトではなく税務申告ソフトになります。

そして、特に大手の税理士法人・会計事務所になるほど利用する税務申告ソフトは統一されていることが多いのですが、この税務申告ソフトこそが税理士が会計ソフトを選ぶ/選ばないの大きな要素となるのです。

少し細かい話になりますが、決算書の作成と法人税の申告は、あくまで別物ではあるものの密接に繋がっています。というのも、法人税の計算は会計上の利益の金額から始まるため、法人税申告は会計情報がないと行えない、という関係にあります。
そのため会計ソフトから必要なデータを税務申告ソフトに取り込むことになりますが、税務申告ソフトによってどの会計ソフトからでもデータを取り込むことが比較的容易なものもあれば、同じメーカーの会計ソフト以外はデータの取込が難しいものも存在します。

会計ソフトを指定する税理士

この場合は、税理士が税務申告と会計ソフトが一体となっているメーカーのものを利用しているケースが多いです。
会計ソフトを指定する、というとネガティブなイメージが強いかと思いますが、良い点もあります。それは「その会計ソフトに対しては税理士が使い方に精通している」ということです。顧問契約の中で日々の仕訳入力はご自身で行うこととなっている場合、税理士から丁寧に指導して貰える環境であれば、ストレスなく作業を行えるでしょう。
また、会計ソフトを指定される場合、そのソフト代金は顧問契約料に含まれるかもしくは使用料が比較的安価に収まると思うので、その点もメリットになるかと思います。

会計ソフトを選ばない税理士

この場合は、税理士が特定の会計ソフトに依存しない税務申告ソフトを利用しているケースが多いです。 これらの税務申告ソフトの場合、どの会計ソフトを利用してもデータ取込に大きな差はないため、お客様の使いたいソフトに合わせることが可能です。ただしその場合は原則として会計ソフトの料金は会社側の負担となります。

なお、税理士に日々の入力までお願いする「記帳代行」をお願いする場合は、基本的には税理士さんが普段最も利用している会計ソフトでの取り扱いになります。

税務申告ソフトに依らず、会計ソフトを指定する税理士

これまでは税理士から会計ソフトを指定する場合、ほとんどは税務申告ソフトに起因するものでしたが、近年では税務申告ソフトに依らず会計ソフトを指定するケースも増えています。これはクラウド型会計ソフトの登場により、これまで大きな差がなかった会計ソフトが多様化したことが背景にあります。

この場合、税理士から会計ソフトを指定する理由は大きく2つに分かれます。

1つはその会計ソフトを使うことがお客様の効率化に繋がると考えているから、そしてもう1つは会計ソフトごとの特性を学ぶことが大変だからです。

両者は全く内容が異なります。前者はお客様本位の考え方ですが、後者は自分本位の考え方です。もし自分の使いたい会計ソフトの利用を断られた場合、その理由が何によるものであるかは、きちんと納得するまで確認することをお勧めします。

依頼する業務内容に応じたfreee会計の使い方

ここからはfreee会計を使った場合の、税理士との関わり方のイメージをお伝えします。会計ソフトの種類でいうと、freee会計は「クラウド型」で「統合型」の会計ソフトです。中でも仕訳ではなく「取引」という独自の入力方法を採用し、簿記知識のない人でも直感的に入力を行うことができる点は、freee会計ならではの特徴です。

日々の入力を自社で行う場合でも、入力は税理士にお願いするという場合でも、freee会計ならではの様々なメリットがありますので、それぞれで税理士と共にfreee会計を利用する際の効率的な使い方のイメージを解説します。

日々の記帳業務を自社で行う場合
税理士と事前に業務設計を行うことで、圧倒的な業務効率化を実現

freee会計は業務ソフトとしての機能も兼ね揃えているだけでなく、業務を行うと自動で仕訳が作成されるという特徴があります。 freee会計の業務機能は汎用的なものであるため「会社の業務をfreeeの仕様に合わせる」ことが必要になりますが、機能に合わせる形で業務設計を行うことができれば業務効率の大幅な改善が達成できます。

この作業を自社で完結することは簡単ではありませんが、freee会計に精通した税理士であれば、会社実務と照らして「どの業務がfreeeの機能で置換可能で、どの業務は不可能か」の判断や「freeeの機能を利用した場合に正しい仕訳が自動生成される」ための設定を行い、記帳のみならず会社の経理業務の効率化を実現してくれます

銀行の入出金情報は、税理士監修の登録ルールで自動で完了

freee会計ではネットバンキングサービスとの同期連携により入出金明細を取得することで、銀行名や取引金額などの大部分の入力が省略されますが、AIが自動推測した勘定科目の確認や推測されなかった場合の入力は自身で行う必要があります。
この点、freee会計に精通した税理士であれば、AIの自動推測ではなく税理士自身が作成した登録ルールを適用して自動処理が出来るように設定してもらうことが可能です。

不明な点は、溜め込まずにコメント機能で素早く解決

どれだけ自動化を進めても、新しい取引は次々に発生します。そんな時、従来の税理士との関係においては、相談できる機会は限定的で中々相談できなかったことも多かったと思います。
freee会計では明細や画像ファイル1つ1つに個別にコメントを付して税理士にメンションすることが可能です。税理士にとってもfreee会計は時間・場所を選ばずにログインできるので、例えば移動中の隙間時間などにコメントを確認して素早く対応することができ、お互いに円滑なコミュニケーションを行うことができます。

日々の記帳業務を税理士にお願いする場合
受け取った領収書や請求書はスマホで撮影するだけで受け渡しが不要に

記帳代行においても、避けては通れない面倒な手続きが領収書や請求 書といった取引の根拠となる証憑(しょうひょう)類を税理士に受け渡す作業。通常1か月分をまとめて税理士の事務所に郵送、もしくは税理士が来するタイミングで直接手渡すことになりますが、必要なものが抜けていたり関係ないものが入っていたり、で一度で完結せず何度もやりとりすることもあるかと思います。

この点、法人版freee会計では電子帳簿保存法完全対応の画像データ格納機能「ファイルボックス」が基本料金内に含まれており、受け取った証憑はその場でfreeeのスマホアプリから撮影するだけでfreee内に格納されます。格納された証憑は税理士にも共有されるので、面倒だった証憑の受け渡しが一瞬で完了します。

「入力作業のための作業」から解放され、税理士対応が大幅に削減

従来の代行業務においては、出納帳や債権債務の一覧表など、「税理士が入力作業をするために作成する資料」が多く存在し、業務の代行をお願いしているはずなのに結局お願いのための時間がかかる、というジレンマが多く存在していました。

freee会計では、銀行の入出金情報はネットバンキングサービスとの同期連携で自動取得できますし、債権債務の一覧表も税理士の入力作業の裏側で自動生成されます。上述の証憑受渡が不要であることと併せて、本来の意味での「丸投げ」を実現します。

決算早期化の実現で、会計情報を経営に活かせることが可能

このようにfreee会計では会社との税理士のやりとりがリアルタイムで瞬時に完了するので、従来であれば税理士はそもそも月が終わるまで月次の入力作業を行うことが出来なかったのが、freee会計では月中の取引は月末までにリアルタイムで作業を終わらせることも可能になりました。その結果、月次決算が完了する期間が大幅に短縮され、会社は早ければ翌月初の数営業日後に前月の会計数値を見ることができます。
月次決算が完了するのが1~2か月先というこれまでの体制では、情報が陳腐化してしまうので会計数値を経営に活かすということは難しかったですが、freee会計では「前月の数値を会計踏まえて今月の経営方針を決定する」という理想の形を実現することが可能です。

何れのパターンにおいてもfreee会計を使うことで、これまでとは全く違う税理士との関係性を構築することができるでしょう。

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freee認定アドバイザーは「フリー社が認定したfreeeプロダクトに詳しい税理士」です。フリーの資格試験を合格しfreee会計の顧問先を一定数有している税理士事務所でしか名乗ることが出来ないものなので、アドバイザーであることがまさにfreee会計に精通している証になります。

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