相続税対策の必要性
平成25年度の税制改正により、平成27年1月1日以降の相続について相続税の課税対象が大幅に拡大されています。
多くの方にとって身近な問題になりつつある相続問題ですが、しっかりとした相続対策を行っている人は、まだまだ少ないのが実情です。
しかし、ひとたび相続が開始してしまうと、取れる対策は非常に限られてしまいます。
相続問題というと、「一部のお金持ちの問題」というイメージを持つ人も多いと思いますが、実は財産がそれほど多くないケースの方が、トラブルに発展しやすいものです。「我が家はそんなに財産はない」「兄弟は皆仲がいいから」と考えていても、思いもよらないトラブルに発展するケースは多々あります。
また「自宅はあるが、預貯金があまりない」というケースでは、納税資金を確保できず自宅を手放さなければならないケースもあります。
このような相続トラブルを回避するための対策や、相続税の節税対策や納税資金確保などの対策は、早く始めれば始めるほど選択肢が広がりますし、相続税を大幅に減らし、悲しい相続トラブルを防ぐことにつながります。
相続は誰しもが体験することですが、早めに対策を始めるか否かで、円満な相続を実現できるかが変わってきます。
残されたご家族のためにも、また大切な資産をスムーズに次世代に残すためにも、相続対策は可能か限り早めに始めることをおすすめします。
相続税対策の進め方
相続税対策を行う際には、相続税だけでなく、相続トラブルの回避、納税資金の確保という3つの視点から検討し、いくつもある対策のなかから最もスムーズかつ円満な相続を実現する方法を選択していくことが必要です。
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相続トラブルの回避
「相続対策」というと、「相続税対策」をイメージする人が多いと思いますが、最も大切なのは、遺産分割等の争いが生じるのを防ぐための「相続トラブル回避のための対策」です。
仲のいい家族にも、相続トラブルは起こるものですが、それが相続人同士の家族関係が複雑だとなおさら大変です。
それまでほとんど顔を合わせたことのないような親族が突然現れて、遺産分割協議が難航するケースは決して珍しくありませんし、仲の良かった親族ですら「遺産分割で揉めたまま10年目、20年」というトラブルもよくあることなのです。つまり、相続トラブルは、相続税が課税されない一般家庭でも起きている問題なのです。
このように、残された相続人間にヒビが入ってしまうような火種は早めに摘み取り、相続トラブルが起きないよう対策を考えておくことが大切です。
「うちは相続税など関係ないから」「相続トラブルになるような財産などないから」というケースでも、相続トラブルを回避するための対策は行っておくことをおすすめします。
納税資金の確保
相続税の基礎控除額が大幅に引き下げられたため、主要都市に自宅を所有されているだけでも、かなりの確率で相続税が発生する可能性が出てきました。
しかし、相続対策をしていなかったために、「何の用意もしておらず、財産は自宅だけなのに相続税を納めることになってしまい、やむなく自宅を手放すことになった」というケースも増えています。
納税資金を確保するためには中長期計画が必要となるケースが多いので、早めに税理士に相談しましょう。
相続税対策
相続税を軽減する方法は、生前贈与以外にも、小規模宅地等の特例の活用、相続時精算課税制度の活用などさまざまな方法があります。
しかし、なかには生前の暦年贈与について十分な対策を講じなかったり、間違った対策を行ったりしたことで全く節税にならなかったり、必要な準備をしなかったためにさまざまな特例を適用させるための要件を満たせず、適用できなかったりというケースもあります。
相続税対策は、個々の家族構成や財産内容に合わせて、相続開始前にプランを立てる必要があります。
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相続税申告
相続税申告は、相続開始の翌日から10カ月以内に行わなくてはなりませんが、この限られた期間内に行うべき手続きは数多くあります。
主な相続の流れとしては以下のようなものがありますが、その他にも葬儀の準備や葬儀費用の支払い、お墓の用意、役所への手続き、相続財産や預貯金の名義変更など、想像以上の慌ただしいスケジュールで行わなければなりません。
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主な相続の流れ
①遺言書有無の確認
②相続人の確認
③相続財産の確認
④限定承認や相続放棄の検討
⑤遺産分割協議
⑥遺産分割手続きの実施
⑦相続税の申告・納付
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したがって「まだ10カ月ある」などと思わず、早めに税理士に依頼し計画的に手続きを行う必要があります。
相続税対策は、相続開始前に行うことが一番ですが、「配偶者控除」や「未成年者控除」「相似相続控除」など、相続開始後にも利用できる場合もありますので、その点についても税理士に相談してみましょう。
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配偶者控除
配偶者のための税額控除制度です。
配偶者が取得した財産の金額のうち、法定相続分または1億6,000万円のどちらか多い金額が無税となります。
ただし、相続の申告期限までに遺産分割ができていること、および相続税の申告が必要です。
未成年相続
未成年者のための税額控除制度です。
相続人が未成年の場合は、教育費や養育費が必要となりますので、「10万円×(20歳-相続人の年齢」の式で算出した額を、相続税の金額から控除することができます。
※ただし成人年齢が18歳に引き下げられる2022年4月1日以降は、18歳に達するまでの年齢が未成年控除の基準の年齢となります。したがって、控除額は従来よりも20万円(20際-18歳=2年分)減少します。
相次相続控除
相続が相次いで起こる場合に、1回目の相続で課税された相続税の一部を差し引いた金額を、2回目の相続で発生する相続税額から控除できるとする制度です。
ただし、1回目の相続から2回目の相続までの期間は、10年以内でなければなりません。
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なお、すでに相続税申告を終えている場合でも、「セカンドオピニオン」で税理士に相談することもあわせておすすめします。申告後5年以内であれば、再度財産評価を行い申告し直すことができて、その結果財産の評価額が変更になれば「還付」を受けられる場合があります。
税理士に依頼するメリット
相続税の額の決め手となるのは、財産の評価額です。
当たり前のことですが、評価額が高ければ税金も高額となりますし、評価額が低ければ税金は安く済みます。
そしてこの財産評価は、評価方法によって大きく変わることがあります。
たとえば、不動産のうち宅地の評価方法には、「路線価方式」と「倍率方式」があります。原則として路線価方式で評価し、路線価が定められていない地域については倍率方式で評価します。
しかし、宅地にはいろいろな地形があり、間口が狭い宅地やいびつな形の宅地については、それなりに評価額が低くなるように調整します。
これらの調整は、不動産評価に精通した専門家に相談しなければ分かりづらいものですし、税理士によるサポートで適切に評価すれば、大幅に相続税を減らすことが可能となる場合もあります。
また、自営業の方などで自社の非上場株を持っている場合には、生前から株価対策を行なうことで、相続発生時の相続税を抑えることが可能になります。
非上場株の評価額は、相続発生後に変えるのは難しいため、可能な限り早く事業承継対策にも精通した税理士に相談することをおすすめします。
税理士によるサポート
税理士に相談することで、相続財産の状況に合せた最適なご相続対策を行うことが可能となります。
また、相続対策だけでなく、老後の安定した生活も視野に入れた不動産運用、生命保険を活用した節税対策などについてアドバイスを受けることもできます。
相続税の申告と納付は、相続開始の翌日から10カ月以内と期限が定められているうえ、申告にあたっての必要書類は大変多く、初めて相続税申告を行う場合には、これらの書類を作成するだけでも大変なことです。
税理士に相談すれば、複雑で難しい相続税申告書類の作成や必要書類の準備、申告手続までサポートしてもらうことができます。
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財産評価
相続財産の調査を行い、一つ一つの財産及び債務の評価をします。
適切な評価によって、相続税額を軽減できるケースもあります。
遺産分割協議書作成
相続人全員が、亡くなられた方の財産および債務をどのように分割し、相続するかを協議して、書面を作成します。
そのうえで相続人全員の方に署名・捺印をします。
相続税申告・納付
相続税申告書の作成及び発生する相続税の納付までサポーとしてもらうことができます。相続税について後日の税務調査の対象とならないよう配慮してもらうことができます。
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