公開日:2018年08月01日
最終更新日:2023年10月17日
最近は、起業資金250万円未満で起業するケースが増加傾向にあります。
ただし、起業してすぐに売上が立つことは難しいケースも多いものです。したがって、起業準備の際には、起業前後のイニシャルコスト、ランニングコストや当面の生活費がいくら必要となるか計算し、その資金を確保する方法についてもあわせて検討することが必要です。
ここでは、起業時にかかる費用や、起業資金を調達する方法などについてご紹介します。
起業するためには、さまざまなお金がかかります。
会社を設立するのであれば、登記費用などがかかりますし、事務所や店舗を借りる場合には、その資金が必要になります。
最近は、事業内容を絞ったり小資金ビジネスを始めたりと、起業資金を抑えるさまざまな工夫をすることで、ここ30年間で起業資金の額は減少傾向にあります。
日本政策金融公庫の調査によると、ここ30年で起業資金は減少傾向にあり、「250万円未満」で開業する割合が増加傾向にあるということです。「250万円未満で起業した」は21.7%、「250万~500万円未満で起業した」は21.4%となっており、500万円未満が4割以上を占める結果となっています。
参照:日本政策金融公庫「~「250万円未満」で開業する割合は増加傾向)」 |
近年は、「そもそも費用がかからない事業を考えた」「内装の一部をDIYして内装予算を削減した」など、さまざまな工夫でコストを抑え、身軽にスタートするケースが増えており、「お金がないから起業できない」という時代から変わろうとしているのです。
起業の設立費用は、個人事業で始めるか会社を設立するかによって異なります。
個人事業主で規模が小さい場合には、税務署や都道府県税事務所に設立の届出をする必要はありますが、手数料はかかりません。また、会社を設立する場合にかかる登録免許税なども、個人事業主は不要です。
しかし、会社を設立するとなると、登録免許税や公証人報酬、公証役場印紙代などがかかります。
会社の形態としては、大きく株式会社、合同会社、合資会社、合同会社の4つの種類があり、いずれの形態で会社を設立するかによって設立費用は異なります。
株式会社の場合でいうと、登録免許税が15万円程度、定款に関する費用が9万円ほどかかります。
LLC(合同会社)、合資会社、合名会社などは、株式会社より設立費用を抑えることができます。
なお、法人を登記する場合には、会社の印鑑を作成する必要があります。
印鑑は銀行印、代表者印、社印などさまざまな種類がありますが、設立時には実印があれば、法的に問題はありません。
また、事業によっては許認可が必要なこともあります。
許認可といっても、役所に届出さえすればよいものから、申請書を提出して行政官庁の審査を受け、初めて「許認可」されるもの、一定の資格が必要となるものなど、さまざまです。
これから始めようとする事業に許認可が必要かどうか、またその費用がかかるのかについては早めに確認しておきましょう。
届出 | クリーニング店、コインランドリー、医療用具の販売店、美容院、マッサージ店など | 保健所 |
駐車場、ガソリンスタンドなど | 都道府県 | |
許可 | バー、ゲームセンター、パチンコ店、古書店、骨とう品店、リサイクルショップなど | 警察 |
職業紹介など | 厚生労働省 | |
タクシー、バス、運送業など | 運輸局 | |
危険物製造・販売、ガソリンスタンドなど | 消防署 | |
建設業、産業廃棄物処理など | 都道府県 | |
免許 | 酒類販売 | 税務署 |
登録 | 旅行代理店、政府登録ホテル・旅館など | 都道府県 |
認可 | 専門学校、幼稚園、保育園など | 都道府県 |
委託 | 郵便切手類販売 | 郵便局 |
報告 | 食品製造、販売、おもちゃ製造など | 保健所 |
会社を辞めると定期的な収入(給料)がなくなるうえに、健康保険料や年金保険料の金額はグッと上がることになります。
会社員の場合、健康保険料や年金保険料は、それまで会社が半分負担してくれていましたが、起業するとすべて自己負担になるからです。
さらに事業をスタートさせても、すぐに事業が軌道に乗るとは限りません。
毎月の定期収入がなくなるうえに、健康保険料や年金保険料の額が増えることもしっかり視野に入れ、住居費、水道光熱費、通信費、食費、各種保険料など細かく書き出して、当面必要な生活費を計算するようにしましょう。
子どもがいる場合には、子どもの教育費なども計算に入れるようにしましょう。
なお、生活費を何カ月分確保しておけばいいかについては、人それぞれです。
「1年分は確保しておかなければ不安」という人もいるでしょうし、すでに副業などでビジネスをスタートさせており、起業してすぐに黒字を計上できる自信がある人は、3カ月程度の生活費を用意すれば十分な場合もあります。
これらの事情もよくシミュレーションして計算する必要がありますが、半年分の生活費を確保しておけば、まずは安心といえるのではないでしょうか。
事務所や店舗を借りる時には、敷金、礼金、保証金、仲介手数料などが発生します。さらに、起業してからすぐに黒字を計上できない場合も考えて、3カ月~半年分の賃料もあわせて見ておくとよいでしょう。
また、事務所や店舗の内相や外装費用、電気工事、配管工事、看板製作などの設備費用がかかることもあります。工事が必要な時には、複数の業者から相見積もりを取って、不明な見積もり項目があれば、しっかり交渉するようにしましょう。
なお、事務所・店舗を構える際には、退去費用がかかることも忘れないようにしましょう。
なかには、退去費用として1,000万かかることもあり、この退去費用が払えないがために退去することができず、無理に営業を続けている店舗もあります。
事務所・店舗と賃貸契約を締結する場合には、この退去費用についてもしっかり確認するようにしましょう。
起業をしたばかりの時期は、どうしても思い入れが強くなってしまい、無理な設備投資をしてしまうこともあります。しかし起業時だからこそ、無理は禁物です。
強いこだわりのある設備なら構いませんが、その場合にも「本当に今必要な設備なのか」を今一度考え、まずは費用を抑える努力をするようにしましょう。
最近は、起業資金を極力抑えるために、店舗を持たずに出張サービスを始めたり、内装費をDIYして大幅に費用削減したり、他の業者と連携して事務所費用を抑えたりといった工夫を行う人も増えています。
起業資金は、可能な限り抑えることで、より早くビジネスを始めることができます。資金を抑えて予備資金に回せば、起業後の不測の事態に備えることもできます。
サービス業など仕入のない業種の場合には、仕入費用はかかりませんが、販売業を始める場合には、材料や商品などの仕入費用がかかります。すぐに売上が計上できない場合にも、仕入れ費用は支払う必要がありますので、正確に計算をしておくようにしましょう。
また、事務所や店舗を借りる場合には、机、椅子、パソコン、電話などの備品を購入する必要があります。
借りる事務所や店舗の規模にもよりますが、最低でも100万以上はかかるケースが多いようです。
仕入・備品購入費用についても、購入アイテムを減らしたり、中古品を活用したり、準備期間を長くとって少しずつ必要品を揃えたり、レンタルを活用したりといった工夫で費用を抑えることができます。
中古資産は、新品同様で新品の半額近い金額で購入できることもあります。さらに購入金額によっては、新品で購入した場合に相当する償却費の計上が可能となり、節税対策としても効果的です。
会社を設立して名刺やホームページなどを作成する際には、広告宣伝費がかかります。
起業時には、事業を多く知ってもらいたいということで、案内状やチラシをたくさん作成したくなると思いますが、SNSの活用を併用するなど、他の広告宣伝の手段がないか検討するとよいでしょう。
ネット広告は、出稿すればそれで効果が出るものではなく、出稿後にはターゲットを再設定したりバナーを改善したりといった作業が必要となります。したがって、費用を抑えるためにも作業時間をかけないためにも、媒体の数は2~3程度に絞り込むことをおすすめします。
また、交通費や書籍代などの営業費用も検討しておく必要があります。
起業時には、交流会やセミナーなどに積極的に参加して、人脈を広げたり販路を拡大したりする努力が必要になることもあります。
予想外に営業活動費がかかることもありますので、余裕を持って計算するのがおすすめです。
これまでご紹介したように、起業時にはさまざまな費用が必要となります。
全額を自己資金で賄える人もいると思いますが、店舗や事務所の工事費が数百万円単位とかかるような場合には、自己資金ですべてを賄うのは無理なケースがほとんどでしょう。家族や知人からお金を借りるという方法もありますが、お金のやり取りが介在すると、今まで良好だった人間関係が壊れてしまうケースが多々ありますので、おすすめはできません。
まずは個人事業主として小規模で開業し、その事業で稼いだお金を投じて法人化し、さらに事業拡大しておく方法は、理想的な資金調達方法です。事業で得た資金であれば返済する必要もありませんから、返済による資金減少もありません。
しかし個人事業主では、事業の拡大がしにくい、信用面で法人に劣るなどのデメリットがあるのも事実です。
また、個人事業主でスタートする際にもある程度資金が必要な事業もあるでしょう。そんなときに検討したいのが、起業時のさまざまな資金調達方法です。
①日本政策金融公庫の「新創業融資」
起業時の資金調達方法として、おすすめなのが日本政策金融公庫の「新創業融資制度」です。
日本政策金融公庫とは、政府系金融機関で、株式の100%を国が常時保有することが法律で定められている特殊な株式会社です。
起業時にも利用することができ、無担保・無保証で利用することができます。
新創業融資制度を利用するためには、「新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できること」などの条件に該当している必要があります。
日本政策金融公庫から融資を受ける際に最も重視されるのが、事業計画書です。
事業計画書は、起業前もしくは起業したばかりで、決算書など実績をあらわす素材が何もない企業に対して、融資を行うか否かを判断するための重要な指標となるからです。
事業計画書には、事業の概要やユーザー分析、事業投資の具体的な目標などを、記載する必要があります。
新創業融資制度は、原則として無担保無保証人の融資制度です。ただし、法人のお客さまがご希望される場合は、代表者が連帯保証人となることも可能であり、その場合は利率が0.1%低減されます。
なお、日本政策金融公庫の融資制度としては、他にも「新規開業資金」「女性、若者/シニア起業家支援資金」などがあります。
②補助金・助成金
補助金・助成金とは、国や自治体から交付される「返済不要」のお金です。
新しいアイデアや技術を持つ企業や雇用を増加するための施策を行った企業が申請すると、審査・面談などを経て交付されます。
補助金 | 助成金 | |
管轄 | 経済産業省および自治体が中心 | 厚生労働省が中心 (経済産業省および自治体が実施しているものもある) |
支援の目的 | 技術開発、商店街活性化など | 雇用の増加・安定、能力開発など |
難易度 | 倍率が高い | 条件に該当していれば、申請することで高い確率で受給できる |
金額 | 数百万~数億円(5000万円程度が多い) | 数十万~100万円程度 | 募集時期 | 不定期 | 通年 |
補助金・助成金は公募が原則です。
また、内容は政策方針によって毎年変わるので、こまめにチェックする必要があります。また、申請をして交付が認められても、すぐに入金されるわけではなく、原則として補助金・助成金は「後払い」です。対象となる事業を実施して、その報告書を作成し提出した後に、やっと交付されるというケースがほとんどです。
なお、起業時に利用できる補助金としては、「創業促進補助金」があります。
新たに創業しようとする個人、中小企業、小規模事業者が起業するために必要な経費の一部を補助することを目的とした補助金です。
限度額は200万円で、起業にかかった費用の女性や若者の地域での起業・創業に、補助が出ます。
③ベンチャーキャピタル
ベンチャーキャピタル(略してVC)とは、中小企業に出資を行い、いずれその会社の株式が株式上場することによって、その売却益を得ることを目的とする企業のことをいいます。
VCから出資を受けるためには、株式上場を狙えるほどの優れた技術やサービスを持っていることが前提であり、厳しい審査が必要です。
ベンチャーキャピタルは、公的(政府系)ベンチャーキャピタル、銀行系ベンチャーキャピタル、証券会社系ベンチャーキャピタルなどさまざまな種類があります。
ベンチャーキャピタルからの出資を検討する際には、それぞれの特徴を理解したうえで、その特徴に沿って、事業計画書の作成などの準備を進める必要があります。
④エンジェル投資家
エンジェル投資家とは、起業間もないベンチャー企業に投資し、投資した以上のリターンを得ることを目的とした個人投資家のことで、将来そのベンチャー企業が株式上場した際の出資金のキャピタルゲインを得ることを目的としています。
製品やサービスが魅力的であれば、エンジェル投資を受けることができるうえに、エンジェル投資家の人脈やノウハウの支援(ハンズオン)を受けて事業を成長させることができるというメリットも期待できます。
⑤クラウドファンディング
昨今は、クラウドファンディングによる資金調達も増えてきました。クラウドファンディングは、事業自体に面白さや目新しさ、意義があり、さらにそれらが分かりやすく人の目に惹くものであると、成功しやすい傾向にあります。
ただし、クラウドファンディングであっても結局は資金調達をしようとしている本人が知人や友人に呼びかけを行うことが必要であること、またクラウドファンディングの手数料は調達額の10%~20%程度で、決して安いものではないことを視野に入れて利用を検討する必要があります。
以上、起業時にかかる費用や資金調達の方法などについてご紹介しました。
これまでご紹介してきたように、起業時には必要な費用も多く、登記手続きなど慣れない作業も多々あります
また、資金調達をするためには、事業計画書などの作成が必要になり、本業の準備以上に時間が取られることもあるでしょう。
そのような時には、会社設立に精通している税理士に相談するのがおすすめです。
会社設立に精通している税理士であれは、必要に応じて司法書士、社会保険労務士、弁護士等の複数の専門家と連携し、会社設立の際に必要となる手続や、起業時に利用できる融資制度や助成金や補助金の活用についてアドバイスやサポートしてもらうことができます。
また、「クラウド会計ソフト freee会計」の導入支援を受け、自計化を実現することができますし、節税対策についてアドバイスをしてもらうこともできます。
freee税理士検索では数多くの事務所の中から、起業時の費用や資金調達について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
\ 起業について相談できる税理士を検索 /
・資金調達について 「数年後(三、四年後)に店舗も持ちたいと思っております。その場合、公庫の創業融資はうけられるのでしょうか?…」 |
・政策金融公庫の創業融資について 「政策金融公庫の融資について質問があります。政策金融公庫の創業融資はバーチャルオフィスでも応募することは可能でしょうか。…」 |
・融資を受ける際の法人設立の方法について 「融資を受ける際、配偶者が連帯保証人になるとしたら ・配偶者も共同経営者(取締役や役員など)がよい ・配偶者は会社の経営に無関係の立場 どちらの場合が良いかなどございますでしょうか。…」 |