年末調整の書類|令和3年度分の年末調整で必要な書類は?

公開日:2019年04月07日
最終更新日:2021年08月20日

この記事のポイント

  • 年末調整で従業員から回収しなければならない申告書は、4つある。
  • 給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書は、記入もれが多いので注意する。
  • 新設された「所得金額調整控除額」の計算は、控除額に注意する。

 

年末調整を行うためには、さまざまな書類を事前に準備しておくことが必要です。
「結婚した」「離婚した」「子どもが生まれた」「住宅を購入した」などの事情がある従業員に対しては、必要な書類が何かということや、その書類がなぜ提出しなければならないのか、といった点を早めに従業員に周知するようにしましょう。

また、年末調整を行ったあとは、源泉徴収票と給与支払報告書を作成して税務署や市区町村役場に提出しなければなりません。
期限は1月31日なので、遅れずに手続きを行うようにしましょう。

ここでは、年末調整の際に回収しなければならない書類についてご紹介します。

年末調整とは

従業員の毎月の給与から天引きしている所得税は、仮の金額に基づいて計算され、天引きされています。源泉徴収税額表・月額表に当てはめて月々の給与から所得税を予め天引きしているのです。

しかし、1月1日から12月31日までの1年間の間には、従業員の状況が変わることがあります。たとえば、扶養家族の増減や給与・賞与のアップダウン、保険料の変動などといった事情です。徴収される納税額については、このような個々の事情が考慮されます。

年末調整は、このように「仮の金額で天引きされていた所得税」について、従業員の個々の状況に応じて正確な計算を行い、その過不足を調整しようとする作業のことをいいます。

年末調整で従業員から回収しなければならない申告書は、以下の4つです。

(1)給与所得者の扶養控除(異動)申告書(当年分)
(2)給与所得者の扶養控除(異動)申告書(来年分)
(3)給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書(当年分)
(4)給与所得者の保険料控除申告書

(1)給与所得者の扶養控除(異動)申告書(当年分)

給与所得者の扶養控除(異動)申告書は、毎年1月の給与の支払いまでに提出してもらっているものですが、12月までに扶養親族等に変動があった場合(子どもが就職した、親を養うことになったなど)には、訂正して提出してもらいます。

1.氏名、住所など

①所轄税務署長等
給与の支払者(会社など)の所轄税務署長と、従業員の住所地等の市区町村長を記載します。

②給与の支払い者の法人(個人)番号
給与の支払者(会社など)の個人番号または法人番号です。あらかじめプリントして従業員に渡す方が効率的です。

③あなたの個人番号
従業員の個人番号を記載します。
※一定の要件に該当する場合、記載しない場合もあります。

2.源泉控除対象配偶者、控除対象扶養親族

①源泉控除対象配偶者
その年の12月31日現在、合計所得が900万円以下の給与所得者の夫または妻で、年間の合計所得金額が95万円以下の人について、記載します。
なお、年末調整において、配偶者(特別)控除の適用を受けるには、別途「給与所得者の配偶者控除等申告書」(※後述)の提出が必要です。

②控除対象扶養親族
配偶者以外の16歳以上の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)で年間の合計所得金額が48万円以下である人について、記載します。
合計所得金額の見積額が48円以下の里子や養護老人も扶養親族に含まれます。

③個人番号を記載します。

④老人扶養親族
扶養親族のうち、その年の12月31日現在の年齢が満70歳以上の人について、記載します。

⑤特定扶養親族
扶養親族のうち、その年の12月31日現在の年齢が、満19歳以上満23歳未満の人について、記載します。

⑥非居住者である親族
源泉控除対象配偶者または控除対象扶養親族が非居住者である場合に◯を付けます。この場合、親族関係書類の添付等が必要です。
※ 「非居住者」:国内に住所を有せず、かつ、現在まで引き続いて1年以上国内に居所を有しない個人。

3.障がい者、寡婦、ひとり親または勤労学生

①同一生計配偶者
その年の12月31日現在、給与所得者の夫または妻で、年間の合計所得金額が48万円以下の人について、記載します。

②扶養親族
扶養親族が一般の障害者、特別障害者又は同居特別障害者に該当する場合には、該当する欄にチェックを付けます。

③寡婦など
従業員自身が、寡婦、ひとり親、勤労学生に該当する場合にチェックします。

※ 寡婦:夫と死別または離婚してから結婚していない人で一定の要件に該当し、合計所得金額が500万円以下である人(ひとり親以外)

※ひとり親:現在結婚していないまたは結婚歴がない人で、その年の合計所得金額が500万円以下で、一定の要件に該当する子どもがいる人

※勤労学生:大学、高校、中学、小学校などの学生・生徒で、合計所得金額が75万円以下、かつ給与所得以外の所得金額が10万円以下の人

4.住民税に関する事項

①16歳未満の扶養親族
年齢16歳未満の扶養親族について記載します

② 控除対象外国外扶養親族
国内に住所を有しない扶養親族に該当する場合に○を付けます。

参照:国税庁「令和3年分 給与所得者の扶養控除等申告書の記載例」

(2)給与所得者の扶養控除(異動)申告書(来年分)

来年分の給与所得者の扶養控除(異動)申告書は、あくまで翌年使うものなので、本来は年明けに回収するものですが、全員一定の時期に提出してもらう方が担当者の手間が省けるので、ほとんどの会社で一緒に回収しています。

翌年分は、当年の年末調整には使いませんが、翌年の毎月の給与計算の扶養控除額について使用します。通常は、当年分も翌年分も同じ内容になります。

(3)給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書(当年分)

「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」は、令和2年分の年末調整から新設された申告書で、3つの申告書の兼用申告書です。

年末調整の対象となる人については、基本的に基礎控除を申告するため、すべての人に提出してもらいます。

基礎控除

基礎控除は、令和2年より所得要件が設けられ、給与収入だけの場合で年末調整の対象となる人は10万円引き上げられ、48万円控除されます。

合計所得金額 基礎控除の額
2,400万円以下 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円
2,500万円以上
配偶者控除と配偶者特別控除

給与所得者と生計を一にする配偶者がいる場合には、以下の要件に該当した時に配偶者の所得の額に応じて所得控除を受けることができます。

①控除を受ける年の給与所得者の合計所得金額が、1,000万円以下(給与収入1,195万円以下)

②控除を受ける年の配偶者の合計所得金額は、それぞれ以下のとおりであること。
・配偶者控除…48万円以下(給与収入103万円以下)
 控除額は、給与所得者本人の所得に応じて異なります。

・配偶者特別控除…48万円以上133万円以下(給与収入額103万円超201万6,000円未満)
 控除額は、給与所得者本人と配偶者の所得に応じて異なります。

③配偶者控除等申告書を提出した人であること。

所得金額調整控除額の計算

子育てなどに配慮する観点から、給与等の収入金額が850万円を超えている人であっても、以下のいずれかに該当する場合には、「所得金額調整控除」が給与所得控除後の金額から差し引かれます。

①23歳未満の扶養親族がいる人
②本人が特別障がい者に該当する人
③特別障がい者である扶養親族がいる人
④特別障がい者である同一生計配偶者または扶養親族がいる人

所得金額調整控除額は、以下のように計算します。

所得金額調整控除額=(給与等の収入金額-850万円)×10%

※15万円を超える場合には、所得金額調整控除額は15万円となります。

(4)給与所得者の保険料控除申告書

従業員が生命保険料や地震保険料を支払った場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。

該当する従業員については、各保険会社から送付されてきた証明書を添付した「給与所得者の保険料控除申告書」を提出してもらいます。

生命保険料、地震保険料

生命保険料の控除額は、契約した時期によって異なります。

旧契約(平成23年12月31日以前に契約した保険契約)は、上限5万円、新契約(平成24年1月1日以降に契約した保険契約)は、上限4万円です。

地震保険料控除の金額は、地震保険および旧長期損害保険料のそれぞれの計算結果を合計した金額で、上限は5万円です。

社会保険料等控除

一定の要件に該当する社会保険料や小規模企業共済等掛金を支払った場合には、社会保険料控除を受けることができます。

・社会保険料控除
本人または本人と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合に受けられる所得控除です。

①健康保険、雇用保険、国民年金、厚生年金保険
②国民健康保険の保険料または国民健康保険税
③介護保険法の規定による介護保険料
④国民年金基金・厚生年金基金の掛金

・小規模企業共済等掛金控除
①独立行政法人中小企業基盤整備機構と契約した共済契約
②確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金または個人型年金加入者掛金
③地方公共団体が、条例の規定によって実施する心身障がい者扶養共済制度で一定の要件を備えているものに基づき支払った掛金

(5)(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書

住宅借入金等特別控除とは、住宅ローンなどを利用して住宅を取得または増改築等をした場合で、一定の要件に該当する場合に一定年数にわたって、所得税額から控除されるものです。
控除を受ける最初の年分は、従業員本人が確定申告をしなければなりませんが、2年目以降は年末調整の対象となります。

住宅ローン控除の控除期間は原則として10年ですが、令和元年の消費税引き上げに伴い、控除期間13年の特例(令和2年12月31日までの居住)が施行されました。
しかし、その後コロナで建築資材が輸入できず、令和2年12月31日までに入居できない人もいたことなどの理由から、特例が令和4年12月31日までに居住された人については控除期間が13年になります。

(6)各申告書を提出することで受けられる控除

ここまでご紹介した各申告書は、個々の事情に応じて適用される所得控除について確認するものです。
各申告書を提出することで受けられる控除をまとめると、以下のとおりになります。

申告書 受けられる控除
給与所得者の扶養控除(異動)申告書 扶養控除、障がい者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除
給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書(当年分) 基礎控除、配偶者(特別)控除、所得金額調整控除
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 (特定増改築等)住宅借入金特別控除

まとめ

以上、年末調整で回収すべき書類についてご紹介しました。
年末調整ではさまざまな書類が必要となりますし、作成する書類も分かりにくい箇所が多いものです。「freee人事労務」なら、従業員が入力するだけで入力内容がそのまま自動計算されますし、必要書類を自動で作成することもできます。
さらに、給与明細への反映まで一括で行うこともできます。

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