原価差異とは?求め方・会計処理を解説

公開日:2022年11月14日
最終更新日:2024年05月26日

この記事のポイント

  • 原価差異とは、会社が算定した目標の原価と実際に発生した原価との差額。
  • 原価差異には、材料費差異や労務差異などがある。
  • 原価差異の原因を分析することで、原価管理に役立てることができる。

 

原価差異とは、標準原価や予定原価といった会社が目標となる原価を算定したときに、その算定した原価と実際に発生した原価との差額をいいます。原価差異には、材料費差異や材料消費数量差異などがありますが、具体的な分類の方法は、個々の会社の原価管理の目的によってさまざまです。
この原価差異の原因を分類することで、適切な原価管理を行うことが可能となります。
 

原価差異の豆知識

原価差異とは、企業が製品やサービスを提供する際に発生する実際の原価と、計画や予算段階で設定された標準原価との間に生じる差を指します。この差異は、製造業やサービス業においてコスト管理や経営分析の重要な指標となります。
原価差異を分析することで、企業はコスト管理を強化し、どの部分でコストが計画を超過しているかを特定することができます。無駄なコストを削減し、効率的な経営が可能となります。また、実際の原価と標準原価との差異を把握することで、将来の予算や計画の精度を向上させることができます。さらに、原価差異の原因を詳しく分析することで、業務プロセスの改善点が明確になり、生産効率を高める手助けとなります。
ただし、原価差異の分析には手間と時間がかかりますし、また、多くの要因が絡み合うため、差異の原因を正確に特定するのは容易ではありません。経営改善に精通している税理士に相談すれば、原価差異を適切かつ効率的に分析してもらう方法についてアドバイスを受けることができます。特に人員が足りない中小企業においては、コストの無駄を減らし、効率的な運営を実現するためにサポートしてくれる税理士の存在は欠かせないものといえるでしょう。

原価差異とは

原価差異とは、将来の一定期間における実際価額を予想することで定めた単価(予定価格)と、実際価格との間に生じた差異をいいます。
発生する原価差異としては、材料費差異、労務費差異、製造間接費差異などが挙げられます。

予定価格とは:
過去の経験などに基づいて材料などの価格を予想して設定する価格のことで、原価管理を行う目的で設定されます。
たとえば、材料の購入価格に予定価格を設定した場合、実際購入価格が予定価格よりも高い場合には「不利差異」であり、予定よりも高く購入してしまったことを表します。一方、低い場合には「有利差異」であり、安く購入したことを表します。

目標として設定する原価を「標準原価」といいますが、実際原価からこの標準原価を差し引いた差異が原価差異です。

標準原価とは:
原価標準に実際製造数量を乗じたもので、会社が目標数値として設定した原価です。すなわち、標準原価は過去の予測や科学的統計的な分析などに基づいて、目標として達成可能な能率で1個当たりの材料や労働時間などに目標となる購入価格を乗じて、実際製造量を乗じて計算します。
原価標準×生産数量=標準原価
実際原価-標準原価=原価差異
実際原価とは:
実際に発生した原価です。たとえば製品が完成し、発生した材料費、労務費、経費などすべての原価を合計して事後的に算定されたものです。

(1)原価差異分析の目的は原価管理

実際原価はいわば過去の実績ですから、算定しようとすると、実際価格による支出額の集計に時間がかかります。そしてその集計を待っていると、決算が遅れたり迅速な意思決定ができなかったりといったリスクがあります。つまり、極端なことをいえば、それだけでは将来のために役立たせることができません。
そこで、実務上は将来の一定期間における実際価格を予想することで定めた「予定価格」を用いて、実際原価を計算する方が効率的です。

予定価格を採用した実際原価計算を実施した場合、実際原価は以下の計算式で計算します。

予定価格×実際消費量=実際原価

上記の計算式から分かるように、実際価格に基づく実際原価(実際価格×実際消費量=実際原価)との間に差異が生じます。そのため、この予定価格を採用して原価差異を分析することで、「材料を高く買い過ぎている」「人手と時間をかけ過ぎている」「電気やガスを使い過ぎている」など、改善すべき問題点が具体化されて原価管理に活用することができるほか、原価計算の迅速化にも役立てることができます。

たとえば、材料費の発生額が増加している場合に予定価格を採用していれば、市場価格の変動など外的要因の影響が排除されるため、消費能率の悪化が材料費の増加に影響しているということが分かります。

(2)実際原価計算と標準原価計算

原価計算の方法には、その目的によって標準原価計算実際原価計算があります。
つまり、「実際原価計算で、原価の一部について予定価格等をもって計算した場合の原価と実際発生額との間に生じる差額」、および「標準原価計算において、標準原価と実際発生額との間に生じる差額」があります。

実際原価計算で発生する原価差異と標準原価で発生する原価差異の主なものとしては、以下のようなものがあります。

実際原価計算で発生する原価差異
材料副費配賦差異 材料副費の一部または全部を、予定配賦をもって材料の購入原価に算入することで生じる原価差異
材料受入価格差異 材料の受入価格を、予定価格等をもって計算することで生じる原価差異
材料消費価格差異 材料の消費価格を、予定価格等をもって計算することで生じる原価差異
賃率差異 労務費を予定賃率で計算することで生じる原価差異
製造間接費配賦差異 製造間接費を、予定配賦率をもって製品に配賦することで生じる原価差異
加工費配賦差異 部門加工費を、予定配賦率をもって製品に配賦することで生じる原価差異
補助部門費配賦差異 補助部門費を、予定配賦率をもって製品に配賦することで生じる原価差異
振替価格差異 工程間に振り替えられる工程製品の価額を予定原価または正常原価をもって計算することで生じる原価差異
標準原価で発生する原価差異
材料受入価格差異 材料の受入価格を、標準価格を持って計算することで生じる原価差異
直接材料費差異 標準原価による直接材料費と、直接材料費の実際発生額との差額であり、以下の計算式で表される。
標準消費量×標準消費価格-実際消費量×実際消費価格
これを数量差異と価格差異に分解する
数量差異=(標準消費量-実際消費量)×標準消費価格
価格差異=(標準消費価格-実際消費価格)×実際消費数量
直接労務費差異 標準原価による直接労務費と、直接労務費の実際発生額との差額であり、以下の計算式で表される。
標準賃率×標準作業時間-実際賃率×実際作業時間
作業時間差異=(標準作業時間-実際作業時間)×標準賃率
賃率差異=(標準賃率-実際賃率)×実際作業時間
製造間接費差異 製造間接費の標準額と実際発生額との差額であり、作業時間で配賦した場合には、以下の計算式で表される。
標準配賦率×標準作業時間-実際発生額
これを能率差異、操業度差異、予算差異に分解して分析する。

標準原価計算とは、標準原価を用いて原価計算を行う方法で、実際原価計算とは実際にかかったコストを用いて原価計算を行う方法です。

標準原価計算では、あらかじめ定めた原価標準を用いて原価計算を行います。そして実際原価との比較および差異について分析する作業を行います。

原価標準を設定する
 ↓
標準原価を計算する
 ↓
実際原価を集計する
 ↓
実際原価と比較する
 ↓
原価差異を分析する
 ↓
報告・改善をする

標準原価計算を採用した場合には、標準原価を真実の原価と捉えます。そのため、会計帳簿への記帳も標準原価を基本とし、実際原価との差額は原価差異として処理をします。
実際原価計算を行い場合には、実際の消費量や価格の情報収集に時間がかかり、集計を待つ時間が決算遅延につながるリスクがありますが、標準原価計算を行うことで、記帳手続を迅速に行うことができます。

(3)原価差異の種類と分析

原価差異は「直接材料費差異」「直接労務費差異」「製造間接費差異」に分け、それぞれの発生原因にさかのぼって分析します。

直接材料費差異
直接材料費(使った分の材料費)は、消費量×消費価格ですから、材料を予定より多く使っているために発生した数量差異なのか、それとも材料を高く購入しているための価格差異なのかを調べます。

直接労務費差異
直接労務費は、直接作業時間差異(※①)と賃率差異(※②)に分解することができますから、直接作業時間に差異が出ていれば、ムダな時間の使い方をしていないかをチェックすることが必要となります。

※① 直接作業時間:休憩時間などを除いた作業時間
※② 賃率:1時間当たり、または数量1単位当たりの労務費の金額から求める金額で、一般的には現場作業員全体の予定賃金を予定作業時間で割った「予定平均賃率」が使われる。

製造間接費差異
製造間接費差異は、操業度差異、能率差異、予算差異に分解できますから、それぞれの原価差異の発生原因を調査します。
操業度差異とは、予定配賦額と予算許容額との差で、能率差異とは、操業度の標準と実際との差異であり、不能率部分を示します。また、予算差異とは、製造間接費の固定費および変動費の実際発生額と固定費予算額と実際操業度による変動費予定配賦額との差額をいいます。
いずれの場合も発生原因を突き止め、最終的には担当部門に報告し必要な措置をとってもらいます。

原価差異の会計処理

原価差異の会計処理は、原価計算の種類や原価差異の発生要因によって異なります。
原価差異は、材料受入価格差異をのぞき、原則として当年度の売上原価に賦課します。
材料受入価格差異は、材料の払出高と期末在高に賦課します。また、比較的多額な原価差異が発生したときは、売上原価と期末在高に賦課します。
ただし、税務上は、原価差異は売上原価と期末の製品・仕掛品に按分することとされています。したがって、特に不都合がない場合には、税務上の処理に従うのも効率的です。

(1)通常の原価差異発生時の処理仕訳

通常の原価差異は、当該事業年度の売上原価として処理をします。
たとえば、「標準原価計算を行ったことで、原価差異100万円が発生した」というケースでは、全額を当期製造費用として処理し売上原価とします。原価差異を売上原価として処理する場合に、特に仕訳等は必要ありません。

(2)材料価格差異発生時の処理仕訳

材料受入価格差異(標準受入価格と実際受入価格との差異)は、当年度の材料の払出高と期末有高に配賦します。この場合、材料の期末有高については、材料の適当な種類群別に配賦計算を行います。
つまり、A材料において発生した受入価格差異は、A材料の払出高と期末在高に配賦計算し、B材料において発生した受入価格差異は、B材料の払出高と期末在高に配賦計算します。

材料Aの予定価格を90円としていたが、実際価格は100円であったことから、材料Aの当期仕入高は100万円であった。材料価格差異10万円を当期材料払出高(8万円)と期末材料在庫(2万円)に配賦する。

借方 貸方
原材料 20,000 材料仕入 20,000

(3)原価差異の税務上の処理は

原価差異は、税務上は原価差額といい、原価と在庫に配分しますが、当期の製造費用のおおむね1%以内であれば、明細を添付すれば調整は行わなくてもよいとされています。
原価差額の調整を行う際には、まず仕掛品の原価差額を調整して、当期製造費用に含まれる原価差額を把握します。そのうえで、当期売上原価と期末製品について原価差額を調整するのが原則です。
ただし、各事業年度において生じた原価差額を仕掛品、製品の順に調整しないで、その原価差額を一括にして下記の計算式で計算した金額を、期末棚卸資産に配賦することもできます。

原価差額×(期末の製品・仕掛品の合計額)/(売上原価+期末の製品・仕掛品の合計額)

(4)四半期決算の留意事項

予定価格や標準原価計算を採用した場合、操業度等が季節的に大きく変動することで、四半期会計期間における売上高と売上原価の対応関係が適切に表示されない可能性があることを考慮して、下記要件のすべてを満たす時には、継続適用を条件に、当該原価差異を流動資産または流動負債として繰り延べることが認められています。

①予定価格または標準原価が年間(または6カ月など)を基礎に設定されているために発生する原価差異であること
②原価計算期間末である年度末(または第2四半期会計期間末など)までに、ほぼ解消が見込まれること

まとめ

原価差異の分析は、原価をつかんだうえで原価管理に役立てること、そしてコストダウンにつなげることを目的としています。

原価管理とコストダウンを成功させるためには、製品開発の部署だけではなく、仕入、製造、営業といった部門と関係するメンバー全員が原価とコストダウンの意識を強く持つことが必要となりますが、そのための強力なツールとなるのが、原価計算です。
適切に原価差異の分析を行い、それを数値化してより効率的な原価管理、より利益があがる減価構成を追求するためにも、さまざまな原価計算からコストダウンを検討することは非常に大切であるといえます。

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