ジョイント・ベンチャー(合弁会社)の設立と基礎知識

公開日:2023年12月25日
最終更新日:2023年12月25日

この記事のポイント

  • ジョイント・ベンチャー(JV)とは、共同出資して立ち上げる法人のこと。
  • ジョイント・ベンチャーは、合弁会社とも呼ばれる。
  • ジョイント・ベンチャーの設立により、単独事業を上回って利益を得られる可能性がある。

 

ジョイント・ベンチャーとは、複数の企業が互いに出資して、新しい会社を立ち上げて事業を行うことです。
ジョイント・ベンチャーは、企業提携の選択肢として重要な手段であり、日本だけでなく世界中で広く利用されています。

ジョイント・ベンチャーは、合弁事業に必要な経営資源を効率的に活用すれば、単独事業を上回る利益を享受できるしくみとして注目されています。
ジョイント・ベンチャーを設立するためには、各当事者の基本情報の調査から始まり、提携手法の検討、基本合意の形成と秘密保持契約の締結、デューディリジェンスの実施、そして合弁契約書の締結が必要です。

 

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ジョイント・ベンチャーの基礎知識

ジョイント・ベンチャーとは、合弁事業によって単独事業を上回るシナジーを得ることを目的として、複数の企業が出資し、新しい企業を立ち上げることをいいます。
ジョイント・ベンチャーは、それ以外のアライアンスとくらべて、事業自体がジョイント・ベンチャーに移るため、シナジーが発揮されやすい、事業スピードがアップするなど多くのメリットがある一方で、設立後に経営方針で対立が生じたり、意思決定に時間がかかったり、利益配分を巡ってトラブルが起きたりといったケースがあります。このようなトラブルを回避するためには、合弁相手の基本情報の調査や提携手法などについて、慎重に検討することが重要です。

(1)そもそもジョイント・ベンチャー(合併会社)とは?

ジョイント・ベンチャーとは、二者以上の複数の独立した法人が、共同してある一定の事業を営むために設立する会社です。
複数の企業や資本家が共同出資して立ち上げる会社であることから、合弁会社、合弁企業、JV(joint venture)などと呼ばれます。
ジョイント・ベンチャーは、法令上の用語ではないので、正確に定義することは難しく、実際にジョイント・ベンチャーと呼ばれる組織には実にさまざまな形態があります。

なお、ジョイント・ベンチャーを設立して事業を開始するために、出資者間で締結する契約を「ジョイント・ベンチャー(合弁契約)」といいます。

(2)ジョイント・ベンチャー(合併会社)のメリット

ジョイント・ベンチャーを設立することで、投資リスクを分散し、ノウハウや人脈を相互利用することで、事業の効率を高めることが期待できます。
具体的には、自社では足りない事業ノウハウ、知的財産、許認可、施設、販売ルートなどを補完することが可能となり、単独事業で行うよりも事業展開のスピードをアップしリスクをシェアリングすることができます。また、シナジーが発揮されやすく、大きな事業収益を得ることが期待できます。
また、ジョイント・ベンチャーの設立により、新規分野に迅速に参入することができる、技術系企業同士の製品開発の技術補完が可能となるというメリットも考えられます。
なかには、国家の外資規制などの制約条件から、現地企業と共同出資して新会社を設立することで、現地での事業展開が円滑に進むこともあります。

(3)ジョイント・ベンチャー(合併会社)のデメリット

ジョイント・ベンチャーのデメリットとしては、提携相手によって企業の社会的評価が下がるリスク、情報漏えいのリスク、ノウハウを得たパートナーの独立のリスク、意思決定までに時間がかかるリスクが考えられます。
また、将来的に利益配分を巡って意見の相違が生まれたり、事業撤退で揉めたりといったリスクなども考えられます。このようなリスクを防ぐためには、相手方の基本情報の調査や交渉、契約締結について慎重な検討を行うことが求められます。

ジョイント・ベンチャーの設立手続き

ジョイント・ベンチャーは、一般的には、以下の流れで設立します。

(1)基本情報の調査
(2)提携手法・法人の形態の検討
(3)秘密保持契約の締結
(4)デューディリジェンスの実施
(5)合併契約書の締結

(1)基本情報の調査

ジョイント・ベンチャーでは、複数のパートナーが関与することになるため、まずはそれぞれの事業内容や組織の概要、役員構成などの基本情報や、パートナーとしての基本方針が合致しており、うまく付き合っていけるかを調査する必要があります。
事業を立ち上げて収益化するためには、事業に必要な要素を把握することが不可欠です。
そこで、経営資源や資産と負債といった現状の把握はもちろん、ジョイント・ベンチャーによる自社の事業への影響などについても改めて検討する必要があります。
なお、この段階ではジョイント・ベンチャーありきではなく、資本提携や業務提携など他の提携の選択肢についても視野に入れつつ、調査を行うのが通常です。

(2)提携手法・法人の形態の検討

基本情報の調査を経て、具体的な提携の方法を検討することになります。
企業間の提携方法としては、販売提携、資本提携、生産提携など様々な方法がありますが、なかでも合弁会社の設立というのは、他の提携手法と比較すると、提携の密度、結合の度合いがかなり強い手法です。結合の度合いが強いということは、逆に言うと、関係を解消しにくいということになります。
業務提携等による契約関係だけの場合には、解除事由が生じれば容易に提携を解消できますが、ジョイント・ベンチャーの場合には、そう簡単に解消することはできず、より強固な提携関係になります。
したがって、ジョイント・ベンチャーの設立を選択する際には、相応の覚悟が必要です。
お互いが資源とノウハウを提供し合い、一つの事業体として事業展開することが最良の選択であると言えるのかどうかを検討します。
また、ジョイント・ベンチャーとして立ち上げる法人の形態についても、様々な選択肢があり得ます。株式会社を設立することが原則的な形態ですが、それ以外にも、国内合弁であれば合同会社、LLP、任意組合等のしくみを利用するという選択肢もあります。

(3)基本合意書&秘密保持契約の締結

ジョイント・ベンチャーを設立し事業を展開すると決まった場合でも、具体的な合弁契約を締結するうえでは、どのようなガバナンスを実施するか、経営資源はどのようにコントロールするかなど、具体的な細かい条件について交渉を行う必要があります。
そこで、ジョイント・ベンチャーを設立するという基本方針が決まった時点で、通常は「合弁契約締結に向けて、準備検討段階に入り、誠実に交渉を行う」旨の基本合意書を締結します。
基本合意書で、双方の考え方や大まかな条件を確認することで、その後のプロセスが円滑に進むことが期待できます。
また、この段階でお互いに相手方に対して財務資源、人材・組織資源、技術資源などを開示し合い、具体的な合弁契約の内容を検討するための材料とすることになります。
そこで通常は、基本合意書とは別に秘密保持契約書を締結するか、基本合意書内に秘密保持条項を設けて、情報漏えいや盗用のリスクを回避します。

基本合意書には、法的拘束力を持たせないのが一般的ですが、独占交渉権を認める場合もあります。

(4)デューディリジェンスの実施

デューディリジェンス(Due diligence、以下DD)とは、コンサルティング会社や法律事務所などによる詳細調査です。
DDの目的は、交渉の労力を費やしたにも関わらず、ジョイント・ベンチャー設立後に、隠れていた問題によって損害を被るリスクを回避すること、および合弁契約の諸条件を固めることです。
DDには、税務・財務のDD、法務のDD、事業のDDなどがあります。

ジョイント・ベンチャーのDDは、新しい事業をスタートさせるためにふさわしいパートナーであるか、提携分野について問題がないかについて、税務・法務などの観点から、確認作業が行われます。事業そのものを売買するM&Aなどとは異なりますので、M&AなどのDDよりは、簡易なDDで済ませるケースもあります。

DDの結果、対象となる技術が第三者の知的財産権を侵害していたり、相手方が反社会的勢力と関係していたりするなど重大な問題が見つかった場合は、案件が中止されることもあります。

(5)合併契約書の締結

ジョイント・ベンチャーを設立する際には、ジョイント・ベンチャーが生み出した収益をどのように分配するのかを設計しなければなりませんから、合弁契約では出資額、引受株式数、出資比率(その結果としての持分比率)などを定める必要があります。
パートナーの拠出した経営資源や、経営に対するコミットメント、収益分配のバランスがとれていることなどについて、十分に検討することが長期的なジョイント・ベンチャーを継続するうえで極めて重要となります。

ジョイント・ベンチャーの事業は、各パートナーの出資比率をどうするかによって大きく変わります。ジョイント・ベンチャーの理想的な持分比率というと、「50:50であること」とイメージしがちですが、この比率は取締役会の決議もできないデッドロック状態(膠着状態)に陥りやすく、実際の運営が困難になることがあります。
そこで、一方のパートナーがジョイント・ベンチャーの議決権の過半数を保有するケースが多く、場合によっては3分の2以上の議決権を有することもあります。
なお、当然ながら、この持分比率を確保するためには、それに応じた出資金が必要となりますが、持分比率を確保したいからといって資金をムダ遣いしないためにも出資額は必要最小限にとどめるべきです。
「ジョイント・ベンチャーからどれだけの利益を得たいか、その利益を得るための最低ラインの比率はどの程度か」を常に意識することが大切です。

また、問題が発生したときや契約終了時の状況を想定し、リスクを回避または軽減させるためにはどうしたらよいか十分検討し、自社に有利になるように条件交渉を行います。
ただし、ジョイント・ベンチャーは長期の信頼関係が必要になることから、一方的に有利な契約を締結しようとすると、かえってトラブルに発展しかねませんから、相互に合理的な妥協点を見つけるようにします。

合併契約書の注意点と実際の運営

合弁契約書の締結においては、ジョイント・ベンチャーの概要や運営方針、組織体制、意思決定法、経営資源・資金の確保方法、利益の分配、競業避止義務・ジョイント・ベンチャーの解消方法などについて交渉していくことになります。

(1)経営体制の設計

合弁契約では、出資額、引受株式数、出資比率(持分比率)を定めます。
持分比率は、経営体制を左右しますが、いちいち株主であるパートナーと協議していては、事業のスピードが落ちてしまいます。そこで、ジョイント・ベンチャーにある程度の独立性を与える必要があります。
一方で、各パートナーは利害関係にもあるので、ジョイント・ベンチャーに対する統制も必要です。
ジョイント・ベンチャーにおいては、この独立性と統制のバランスをとることが非常に重要です。
実務上は、重要な意思決定は取締役会で行うことになります(取締役会を設置しない場合は、株主総会)ので、ジョイント・ベンチャーに関しても、過半数の持分比率を有している株主が取締役会を選任できます。
しかし、ジョイント・ベンチャーの本質からすれば、少数派の意向が全く反映されないとなると、本来の「相互に経営資源を拠出して、運営する共同事業」という意味合いを持たなくなってしまいます。
そこで、ジョイント・ベンチャーにおいては、各パートナーが指名できる取締役や代表取締役の数を定めるのが一般的です。

また、事業の成果を上げるため、社内の責任者と具体的な目標、その達成度を見るための方針と手法を決めて、適宜モニタリングする体制も必要です。

(2)事前承認事項の設計

過半数の持分比率を有していると、少数派株主の意向に関わらず意思決定ができてしまうことになりますが、そうなるとアライアンスが長続きしないリスクがあります。
そこで、少数派株主がジョイント・ベンチャーの経営に参画できるように、重要な一定の事項(少数派株主が獲得しようとしていた経営資源や利益を守るために必要な事項)については、少数派株主に事前承認が必要である・拒否権を与えるなどを規定することがあります。
また、少数株主としては、連結決算の対象となる「関連会社」となるかどうかという視点も必要です。20%以上50%未満の議決権を有する場合と、15%以上20%未満で一定の支配力を有する場合には関連会社にあたります。

(3)経営資源・資金の確保方法の検討

ジョイント・ベンチャーを設立する場合には、事業を運営する経営資源を確保・維持する必要があります。
設立時には、各パートナーがそれぞれ一定額の出資を行いますが、事業計画が予定どおり進むとは限らず、追加の資金が必要となるケースがあります。
そのような場合に、どうやって資金調達を行うのかについては、あらかじめ規定しておく方がよいと考えられます。
資金調達方法としては、借入や第三者割当増資(エクイティ)が考えられますが、エクイティにより調達した場合には、少数派株主の議決権割合が一定割合を下回ることがありますので、この場合には、少数派株主の拒否権等を執行させるなどの調整が必要になることもあります。

また、ジョイント・ベンチャーにおいては人材の確保という問題もあります。
各パートナーは、知識、ノウハウ、価値基準、プロセスなどをジョイント・ベンチャーに注入するという観点から、どのような従業員やチームを出向させるかについて、慎重に検討する必要があります。

(4)利益の分配についての調整

合弁契約においては、事業の利益をどのように分配するかについても決める必要があります。
ジョイント・ベンチャーの利益は、大きく①持分に基づく利益、②取引に基づく利益、③連結により計上される利益に区分されます。

①持分に基づく利益とは、配当利益やキャピタルゲインが該当します。
②取引に基づく利益とは、取引をすることで得られる利益のことで、たとえば、パートナーのライセンスフィーや、販売手数料などが該当します。
③連結により計上される利益とは、持分比率に応じて連結されることで、自社が得ることができる利益のことです。

ジョイント・ベンチャーの利益の分配は、それぞれのパートナーがどれだけの利益をどのような形で得るのかという調整が必要になります。

(5)競業避止義務・JVの解消方法の検討

ジョイント・ベンチャーの事業は、特定の事業について、ジョイント・ベンチャーを通じて行うことを約束するものです。
それなのに、ジョイント・ベンチャーの事業と競合する事業を各パートナーが行うことになると、必要な経営資源が分散してしまうだけでなく、ノウハウが流出するリスクも生じます。
そこで、合弁契約では、競業避止義務について定める必要があります。
また、事業の継続が困難または不可能になった場合に備えて、どのようにジョイント・ベンチャーを解消するのかについても定める必要があります。
ジョイント・ベンチャーの解消については、各パートナーに責任がある場合(相手方に重要な契約違反があった場合など)と、各パートナーに責任がない場合(支配権の変動やデッドロックなど)に分けて整理し、それに応じた方法を検討することになります。

なお、成果が達成されないジョイント・ベンチャーをいつまでも継続すると経営資源のムダになってしまうので、年間の売上や営業利益など定量的な基準を設けて、それが連続して達成できない場合に、各パートナーに解約権が付与されることもあります。

まとめ

ジョイント・ベンチャーは、業務提携や資本提携と異なり、独立した法人を設立することになりますので、各パートナーがどのように経営にコミットできるのか、利益をどのように分配するのか、そして解消する場合にはどのような方法を選択するのかといった点が非常に重要となります。
各パートナーの意向を尊重しつつ、ある程度譲歩しなければならないケースも多々ありますが、安易な妥協は禁物です。
交渉においては、スケジュールを優先させることなく、各パートナーが議論し十分に納得した条件交渉を行うことが大切です。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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