合同会社とは?株式会社との違いは?「代表社員」って何?

公開日:2019年11月23日
最終更新日:2023年12月29日

この記事のポイント

  • 合同会社の場合には「出資者=社員」となる。
  • 合同会社は、代表取締役ではなく「代表社員」と呼ばれる。
  • 合同会社は、設立費用が安い、決算公告が必要ない、などのメリットがある。

 

会社を設立する際には、会社形態を選ばなければなりません。
会社の種類は大きく4種類ありますが、このなかでも「株式会社にするか、合同会社にするか」で迷う人が多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、株式会社と合同会社の違いや、それぞれのメリット、デメリットについてご紹介します。
 

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合同会社とは

会社には、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社がありますが、合同会社は平成18年の会社法改正によって創設された会社形態ですから、比較的新しい会社形態といえるでしょう。
合同会社は、持分会社としての特徴があります。
合同会社の設立で従業員になろうとする場合には、定款の作成後に合同会社の設立の登記をするときまでに、その出資にかかわる金額の全額を払込み、またはその出資にかかわる金額以外の財産の全部を給付しなければなりません。

(1)合同会社は日本版LLC

アメリカでは、1977年にLLCが誕生しました。これは、法人課税と構成員課税のいずれかを選択できるという画期的なシステムで、構成員課税の場合には組織体自体には課税されないため、パススルー課税ともいわれます。
このLLCに経済産業省が注目して、日本でも同様の会社形態をつくれないものかと動き、その結果誕生したのが合同会社です。
たとえば、Appleの日本法人は、Apple Japan合同会社です。

ただし、日本の合同会社は財務省が「合同会社には法人格があり、法人税法を適用する」としたため、構成員課税を選択することはできません。

(2)合同会社と株式会社の違い

会社は、出資者と経営者の関係性によって、大きく2つのタイプに区分されます。
ひとつは出資者と経営者が別人でもOKの株式会社、もう1つは出資しないと経営ができない持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)です。
とは言っても、最近は合名会社と合資会社はあまり見かけなくなりました。それは、合名会社や合資会社は、経営者が直接リスクを負わなくてはならないからです。
そこで、会社を設位する際には株式会社にするか合同会社にするかで、迷う人がほとんどです。

合同会社と株式会社の違いについてご紹介する前に、まずは会社の種類について知っておきましょう。
会社法における分類は、全部で4種類あります。

合名会社
出資者全員が「無限責任」を負います。合名会社の出資者のことを「無限責任社員」といい、万が一、会社が破産をすると出資者個人の全財産を投げ打ってでも会社の借金を支払う必要があります。

合資会社
合資会社には、「無限責任社員」と「直接有限責任社員」の両方の社員(出資者)がいます。中心となって会社を興した人が無限責任社員となります。
直接有限責任社員は、あらかじめ決められた出資額の限度で、会社の債権者に対して連帯責任を負わなければなりません。つまり、会社が立ちいかなくなっても出資金以上の責任を負う必要はありません。

合同会社
合同会社は、株式会社をさらに小さくしたイメージで、小規模の事業をするのに向いています。
合同会社の出資者の責任は緩和され、社員全員が「有限責任社員」となります。したがって、万が一事業に失敗した場合でも、社員は自分が出資した金額の範囲内で責任をとればよいことになります。
合同会社も、出資者全員が会社を代表して業務を行うのが原則ですが、社員が複数いる場合には株式会社のように定款で代表者を決めることもできます。ただし、代表者となっても有限責任社員であることに変わりはありません。

株式会社と比較すると設立費用が安く定款の認証などが不要なので、合同会社を設立した後、株式会社に変更するケースもあります。

株式会社
株式会社は出資者と経営者が別人でもOKですが、経営者が自ら出資することも可能です。一方、合資会社・合同会社・合同会社は出資者が「社員」となります。

株式会社は利益をあげることを目的に、株主から資本を集める仕組みとなっていて、株主から経営を委託された人のことを「取締役」といい、取締役は集めた資本を増やして会社の価値を上げる責任を負います。
株式会社は資本と経営が分離しているので、株主は「有限責任」のみを負うことになります。

以上から考えると、会社を設立する場合の選択肢は、株式会社か合同会社のいずれかとするのがおすすめといえるでしょう。株式会社と合同会社はどちらも有限責任社員で構成されるからです。
 

合同会社の豆知識

株式会社の場合には、定款を作成して公証人の認証を受ける必要があります。合同会社の場合にも定款の作成は必要ですが、公証人の認証が不要のため、認証手数料などがかかりません。さらに電子定款を作成すれば、印紙代も不要となります。
また、設立に必要な期間も合同会社の方が短期間で済みます。株式会社の場合には、設立登記までおおむね10日間ほどかかりますが、合同会社の場合には5日間ほどで設立登記が可能です。なお、登記が完了するのは、株式会社も合同会社も、登記申請をしてから1~2週間かかります。

(3)合同会社に適している業種

合同会社は、大きな資本を必要としない専門的なサービスに向いています。
たとえば、介護サービス、建設業、コンサルタント業、ソフトウェア開発、デザインなどです。これらの事業は物的資産より人的資産が中心となりますし、合同会社は株式会社よりローコストで設立することができます。
合同会社であれば、外部から出資を募ったり上場を目指して株式会社にしたりする必要はありません。会社が大きくなれば合同会社から株式会社に変更すればよいだけです。

合同会社のメリット

株式会社と合同会社は、共通点は多いのですが、合同会社も設立費用が安い、決算公告が必要ない、などのメリットがあります。

(1)合同会社は設立費用が安い

株式会社は、法務局に払う登録免許税が15万円程度、電子定款認証料が5,000円、公証人手数料が5万2,000円程度かかりますが、合同会社の場合には、登録免許税6万円、電子定款認証料2,000円程度で済みます。
つまり、株式会社と比較すると合同会社は15万円ほど安く、会社を設立できることになります。

(2)合同会社は柔軟な運営が可能

合同会社は、原則として社員全員が出資者でありかつ業務を遂行するので、株式会社と異なり所有と経営が一致しています。したがって、合同会社では業務をスムーズに行うために定款自治がとられています。
定款自治とは、定款による自治運営が可能であることを意味し、定款の作成や変更を行うことで、事業に応じた柔軟な運営が可能となるのです。
一方、株式会社は原則として所有と経営が分離しているので、合同会社ほどスムーズな意思決定を行うことができません。
また、合同会社は特定の決定を行えば、出資比率に関わらず出資者のノウハウ等に応じて、柔軟な損益分配が可能です。
ちなみに株式会社の「株主総会の決議(議事録)」は、合同会社の「総社員の同意(書)」、株式会社の「取締役会の決議(書)」は、合同会社の「業務執行社員全員の決定(書)」にそれぞれ対応します。

(3)合同会社の社員が「有限責任」

合同会社は有限責任制であり、出資者は出資額までしか責任を負うことがありません(株式会社も同じ)。したがって、会社が万が一倒産しても自分の出資金は返ってきませんが、会社の債務を個人財産から返済する義務を負いません。そのためさまざまな事業にチャレンジしやすいというメリットがあります。

(4)合同会社は決算公告が原則必要ない

決算公告とは、会社の事業年度の終了後の決算で作成した貸借対照表を株主総会で承認した後に、官報や日韓新聞紙などに掲載することです。実際にすべての株式会社が決算公告しているわけではありませんが、株式会社は本来決算公告をして会社の決算書を公表する義務があります。
一方合同会社の場合は、決算公告は不要です。

合同会社のデメリット

これまでご紹介してきたように多くのメリットがある合同会社ではありますが、株式会社の方が社会的なイメージもよく、出資割合に応じて議決権や配当が決まるので、出資者が多い場合には、株式会社の方が適しているケースもあります。

(1)合同会社は出資割合が関係ないのでもめると厄介

株式会社の場合、出資割合に応じて株主総会の議決権の割合が決まります。たとえば、資本金1,000万円のうち700万円をAさん、残りの300万円をBさんが出資したとします。この場合議決権も同じ割合となり、会社の意思決定権はほぼAさんにあることになります。

また、株式会社が配当する場合も、出資割合に連動して配当金を支払います。たとえば「1株あたり1,000円配当する」と決めれば、100株持ち人は10万円の配当、20株持つ人は20万円の配当金を受け取ることができます。

一方合同会社の場合には、出資した割合は関係ありません。
合同会社の場合には「出資者=社員」となる
ので、事業がうまくいっている時はよいのですが、社員同士でもめたりすると、収拾がつかなくなるというリスクもあります。
また、合同会社が配当を行う場合には出資割合と関係なく、利益配分を設定することができます。

(2)合同会社の社会的なイメージが浸透していない

最近は合同会社も増えてきてはいますが、まだ新しい会社形態のため知らない人も多く、社会的なイメージはまだ株式会社の方が良いようです。
また、将来的に役員を増やしたり事業の拡大をしていったりしたい場合には、お金を出す人と経営を行う人が分かれている株式会社の方がおすすめです。
実際、登記されている会社形態も圧倒的に株式会社の方が多いのも実情です。
また余談ですが、株式会社は(株)と略しますが合同会社の場合(同)と略すため、これがインパクト不足で合同会社の略称であると分かってもらえないというケースもあるようです。

(3)合同会社の「代表社員」の意味が浸透していない

これまでもご紹介してきたように、合同会社は出資者を「社員」と呼びますが、これはいわゆるサラリーマンや従業員とは違う意味です。社員のなかから代表社員を選び、この代表社員が、株式会社における代表取締役兼株主に該当します。
つまり、社長や代表取締役に相当する立場であっても、名刺上は代表社員です。合同会社の会社形態を理解していない人には、「代表社員って?従業員と違うの?」と思われてしまう可能性もあります。

まとめ

以上、合同会社の意味や株式会社との違い、それぞれのメリット・デメリットについてご紹介しました。合同会社は設立費用も安いですし「LLC」として海外では認知度も高いので、海外取引が多い会社では合同会社を選択するのもよいでしょう。
ただし、会社を設立するうえでどちらがよいのかはっきりと決められない場合には、株式会社を選択しておくのがよいでしょう。

なお、株式会社も合同会社も定款を作成する必要がありますし、会社を設立する際には、法務局に登記をする必要があります。また、会社設立後は税務署などにさまざまな届出を提出する必要があります。

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合同会社の豆知識

合同会社は、株式会社と比較すると周知度の面で劣るかもしれませんが、融資を受けようとする際には株式会社と比較しても差はありません。商工中金は「法人格のある合同会社は、信用力の面で株式会社と大差ない」と評価しています(日本経済新聞平成19年5月30日)。
なお、創業資金を民間の金融機関からの借入で調達するのは難しいため、公的な融資制度を利用するのがおすすめです。日本政策金融公庫は、創業融資にも積極的に取り組んでおり、多くの起業家が利用しています。

 

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税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

 

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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