社名(商号)変更に必要な手続き(書式例付き)

公開日:2019年11月26日
最終更新日:2023年10月17日

この記事のポイント

  • 社名(商号)は定款に記載されているため、商号を変える時は定款変更が必要となる。
  • 定款変更には「株主総会特別決議」が必要となる。
  • 法務局に商号変更登記を申請する際には登記申請書、株主総会議事録などが必要。

 

会社名(社名)は、正式には「商号」といいます。
商号は定款に記載され、登記されているものですから、これを変えるには定款変更と登記内容の変更を申請する必要があります。
また、社名(商号)を変更した後も、変更の記載がされた登記事項証明書を取得して税務署・都道府県税事務所・市区町村役場・労働基準監督署・ハローワークなどに届け出る必要があります。

社名(商号)とは

会社の名称は、会社法では「商号」といいます。
個人でいうところの姓名にあたる部分で、会社の顔ともいうべき大切な決定事項です。

会社法が施行される前は、同一市区町村内に同じような名前の会社や似たような事業内容の会社がすでにある場合には、その名前を使うことができませんでした。

しかし、会社法施行後は類似商号の規制が廃止されたので、同じ住所で同じ名前の会社でもない限り、登記は受理されるようになりました。
とはいうものの、ある会社の称号とまったく同じ商号をいくらでも用いることができるとすれば、マネをされた会社は信用を傷つけられて損害を被ることになりかねず、それがトラブルに発展することもあります。

そこで、他人と同じあるいは似たような商号を用いることは、不正競争防止法などによって規制されています。
したがって、商号を決める時には他社からマネをしたと思われないよう、同一でないだけでなく類似した商号も避ける方が無難です。
こちらに悪気がなくても、差し止め請求や損害賠償請求をされることもあり、注意が必要です。

(1)社名(商号)のルール

商号は、好きな商号を好きなようにつけられるわけではなく、一定のルールがあります。たとえば、感嘆詞「!」「?」「♪」「@」や、「Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」などのローマ字は商号に使用することはできません。また、「株式会社○○営業部」など、部門をあらわす文言を商号に使用することもできません。

商号のルールや決め方については、以下の記事でご紹介しておりますので、あわせてご覧ください。

▶ 商号とは|会社の名称の決め方と7つのルール

(2)商号変更の3つの方法

商号変更を行うためには、以下の3つの方法があります。

①オンライン申請
②通常の書面申請
③QRコード付き書面申請(※)

※「QRコード(二次元バーコード)付き書面申請」とは、「申請用総合ソフト」という専用のソフト(無料)を利用して作成した申請書の情報を、事前に登記所にインターネット経由で送信した後、その内容を登記申請書として印刷し、登記所に提出する方法です。

参照:法務局「商業・法人登記の申請書様式」

社名(商号)変更の手続き

社名(商号)変更を行うためには、株主総会特別決議を行い、定款変更を行う必要があります。
また定款変更を行ったら、本店所在地では2週間、支店所在地では3週間以内に変更登記の申請をする必要があります。

社名(商号)変更の流れは、以下のとおりです。

①取締役会を開く(株主総会の開催を決定)
②株主総会の招集通知を発送
(株主総会の2週間前まで。非公開会社は原則1週間前)
③株主総会議事録を作成する
④登記申請書類を作成する
⑤登記申請をする
⑥商号変更の登記完了
⑦諸官庁への届け出

(1)株主総会議事録を作成する

社名(商号)は会社の重要事項として定款に記載されているため、商号を変えるためには定款を変更して登記内容の変更を申請する必要があります。
定款の変更といっても、単に今の定款を書き直せばよいというものではありません。
定款を変更するためには、株主総会を開催して、特別決議で商号を変更することを決定し、議事録を作成する必要があります。

株主総会を招集するにあたっては、株主総会の開催の日時・場所のほか、株主総会に提案する定款変更の内容などについて決定する必要がありますから、まず取締役会を開催し取締役の過半数の決議によって、これらを定める必要があります。

株主総会で商号変更に関する定款変更の決議が成立したら、「株主総会議事録」を作成します。議決権を行使できる株主の過半数にあたる株主が出席している必要があります。
この議事録は、申請の際に添付する必要があります。

①開催日時・場所
開催日時を、算用数字で記載します。あわせて株主総会の開催場所を記載します。本店以外の場所で開催した時には、建物の名称と所在地番を記載します。
株主の総数、発行済株式の総数、議決権を行使することができる株主の総数等を記入します。

②議長
議長には、定款で定められた人がなります。この時、「取締役」「代表取締役」などの肩書を記載します。

③議事録作成日
議事録を作成した日付を記載します。株主総会の議事録に議長と出席取締役が押す印鑑については、議長である代表取締役の印は、法務局に届け出ている代表取締役の印を押すのが一般的です。他の取締役の印については、認印でもかまいません。

(2)定款変更する

定款とは、会社のルールを決めた規則集です。会社の商号や本店所在地などの基本情報のほか、株主総会はいつ開くのか、決算期はいつにするのか、取締役は何名にするのかなどを決めて記載することができます。

定款には記載しないと無効になる「絶対的記載事項」、決めたら記載しなければならない「相対的記載事項」、記載するかどうかは自由である「任意的記載事項」があります。

商号はこのうち「絶対的記載事項」に該当し、記載しないと無効になる事項です。
絶対的記載事項には、商号の他、「事業目的」「本店の所在地」「出資額」「発起人の氏名・住所」などがあります。

(3)登記申請書を作成する

商号を変更した時の登記すべき事項としては、「変更後の商号」と「変更の年月日」があります。
定款変更の効力が生じた翌日から起算して、本店所在地では2週間、支店所在地では3週間以内に変更登記の申請をする必要があります。

もし登記の申請をしないままその期間が経過してしまっても、登記の申請は行う必要があります。所定期間内に登記の申請をしないと、100万円以下の過料の制裁がありますので、注意しましょう。

法務局に商号変更登記を申請する際には、以下の書類を用意する必要があります。
代表取締役の改印届書は、商号変更と同時に届出印を改印する場合には添付する必要があります。

①登記申請書
②株主総会議事録
③委任状(代理人による申請の場合)
④代表取締役の印鑑(改印)届出書(改印する場合)

登記申請書は、法務局のホームページからダウンロードすることができます。
参照:法務局「株式会社(商号の変更)」

①会社法人等番号
法人番号を記載します。

②商号
まず、変更前の会社の称号を正確に記載し、()内に、新商号を記載します。
この時、(株)や略字を用いることはできません。

③本店所在地
会社の本店所在場所を記載します。
この記載は、会社の登記簿上の記載と一致している必要があります。
「○○区○○町1-2-3」というように、略して記載することは認められていません。

④登記すべき事項
登記すべき事項に、変更年月日(定款変更決議の日)と変更後の新商号を記載します。

例:
「商号」○○興行株式会社
「原因年月日」平成○年○月○日変更

なお、登記すべき事項については申請書の記載に代えて電磁的記録媒体を提出することができます。詳しくは,法務局ホームページの「商業・法人登記の申請書様式」中の関連リンク「登記・供託オンライン申請システムによる登記すべき事項の提出について」で確認しましょう。

参照:法務省「商業・法人登記申請における登記すべき事項を記録した電磁的記録媒体の提出について」

⑤登録免許税
商号変更登記の登録免許税は、本店の所在地では3万円です。

⑥添付書類
商号変更を決議した株主総会の議事録を、登録申請書の添付書類として提出します。
代理人による申請の場合には、委任状も必要です。

⑦申請年月日など
申請年月日は、実際に登記所に申請書類を提出する日付です。
申請年月日の後に記載する本店所在場所は、会社の登記簿上の記載と一致しなければなりません。
申請人として、変更後の称号を記載します。

⑧代表取締役の住所氏名
登記の申請人となる代表取締役の住所氏名を記入します。
氏名の左側には「代表取締役」の資格を記載します。なお、代表取締役の住所は、登記簿上の表示と一致している必要があります。

代理人が申請する場合には、代理人の住所氏名を記載します。この住所氏名は委任状に記載された代理人の住所氏名と一致している必要があります。
この場合には、代表取締役の押印は必要ありません。

⑨申請先の法務局
申請先が法務局あるいは地方法務局の本局である時には、単に「○○法務局」か「○○地方法務局」となります。申請先が法務局か地方法務局の支局である時には、「○○(地方)法務局○○支局」と記載します。
申請先が出張所である時には「○○(地方)法務局△△出張所」となります。

登録免許税納付用台紙との間に、申請人が申請書に押印した印と同じ印で一カ所に契印(書面が2枚にまたがる場合に、一体のものであることを示すために綴じ目をまたいで押印する)をします。

※委任状
委任状は、代理人に委任して登記の申請をする際に添付する必要があります。
委任状の内容が、ほかの添付書類より明らかである場合には、登記申請書の「登記の事由」欄に記載するだけでもかまいません。

①日付
日付は、委任した日付を記載します。日付は株主総会の決議の日から登記申請の日までの間の日付にならなければなりません。

②本店の所在地・商号
本店の所在地を、登記簿上の表示のとおりに記載します。
商号は、変更後の称号を記載します。
「代表取締役」の肩書を示してから、氏名を記入します。印鑑は、法務局に届け出てある印鑑を使います。

(4)新商号の改印手続きを行う

商号を変更した場合には、代表取締役の印として法務局に登録されている印鑑届出事項の記載事項に変更が生じます。
商号を変更すると同時に法務局に届け出ている印鑑を変更する場合には、印鑑の改印届を行う必要があります。先に印鑑届出書を提出しておくと、手続きをスムーズに行うことができます。

なお、後述するとおり、社名(商号)変更後は、税務署や社会保険の変更届も必要となります。
これらの手続きを行う際には登記事項証明書が必要となりますので、予め登記事項証明書を何通か用意しておくようにしましょう。

(5)税務署へ届出

社名(商号)変更後、すぐに定款の写し、登記事項証明書などの添付書類を添えて届け出ます。社名(商号)変更の際に本店を移転して税務署の管轄が変わる場合には、新旧の税務署にそれぞれ書類(異動届)を提出する必要があります。

(6)都道府県税事務所・市区町村役場へ届出

社名(商号)変更後は、都道府県税事務所や市町村にも届出が必要です。
登記事項証明書(異動前後の履歴が分かるもの)を添えて「異動届書(法人事業開始等申告書」を提出します(自治体によって異なります)。
本店を移転して自治体が変わる場合には、新旧の役所それぞれに書類を提出する必要があります。なお、東京23区に事務所がある場合には、都税事務所への届出だけでよく、区役所に改めて届出を行う必要はありません。

(7)労働基準監督署・ハローワークに届出

社名(商号)変更の際には、労働保険の手続き、雇用保険の手続き、社会保険の手続きが必要となります。

①労災保険の手続き
所轄の労働基準監督署に、「労働保険名称、所在地等変更届」を提出します。
会社の商号変更があった日の翌日から数えて10日以内に提出しなければなりません。

②雇用保険の手続き
ハローワークに「雇用保険事業主事業所各種変更届」を提出します。なお、この時には、①の労災保険の届け出の「労働保険名称、所在地等変更届」の事業主控えを持参する必要があります。

③社会保険(健康保険・厚生年金保険)の手続き
社名(商号)変更の際には、所轄社会保険事務所に「健康保険厚生年金保険適用事業所所在地・名称変更(訂正)届」を提出します。変更届には、管轄内用と管轄外用がありますが、名称変更の場合には、管轄内用を使用します。
この変更届の提出の際には、同時に被保険者(労働者本人)とその被扶養者全員分の健康保険証を、いったん社会保険事務所に返還します。それから事業所名称の訂正処理をしてもらって再度交付する必要があります。
したがって、従業員から健康保険証を回収する必要がありますので注意しましょう。
もし、従業員が保険証を紛失してしまっている時には「健康保険被保険者証回収不能届」の提出も必要となります。

まとめ

以上、社名(商号)変更の際に必要な手続きについてご紹介しました。
会社は登記をする義務があるので、登記をした内容に変更がある場合には、その都度登記をし直さなければなりません。第三者が登記事項証明書を取得した時に、最新の会社の情報が分からなければ、円滑な取引に支障が出てしまうこともあるからです。

会社の登記変更は期間が定まっていて、一定の期間内(2週間であることが多い)に登記をしなければ過料の制裁を受けることがあります。
過料は、登記を申請した時ではなく後日通知がきます。
社名(商号)変更以外では、取締役などの役員変更の登記を忘れていて過料が請求されるケースが多いので、注意しましょう。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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