定款変更の手続き|決議方法・登記(記載事例付)

公開日:2019年12月29日
最終更新日:2022年07月28日

この記事のポイント

  • 会社の称号や事業内容を変更するためには、会社の規則である定款の規定を変更する必要がある。
  • 添付書類として、株主総会議事録や株主リストが必要となることもある。
  • 登記事項の変更登記を行う際には、登録免許税が1件3万円必要となる。

 

株式会社設立後に、会社の称号や事業内容を変更するためには、会社の規則である定款の規定を変更しなければなりません。
そして、定款を変更するためには株主総会の決議を経て、変更した事項(社名変更や事業内容の変更、発行可能株式総数の変更など)を申請書に記載して、登記申請手続きを行う必要があります。

この記事では、定款変更しなければならないケースや手続き、記載事例などについてご紹介します。

定款とは

定款とは、会社を設立する時に必ず作成しなければならない、会社の規則集です。
会社設立時の定款は、発起人全員で作成しなければならず発起人の署名または記名捺印して公証人の認証を受ける必要があります。
この定款は、最初に作成したものを変更しながらずっと使い続けていきます。

(1)定款の記載事項を理解する

定款に記載すべき事項には「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」があります。

絶対的記載事項
必ず記載しなければならないもの。絶対的記載事項のない定款は、無効となる。

①目的
②商号
③本店所在地
④設立に際して出資される金額
⑤発起人の氏名、住所
⑥発行可能株式総数

相対的記載事項
定款に記載しなくても、定款自体の効力に影響はないが、記載がないとその定めの効力が生じないもの。

①現物出資
②財産引き受け
③発起人が受ける報酬、その他の特別の利益
③株式会社の負担する設立に関する費用
⑤株式譲渡制限に関する規定 など

任意的記載事項
法律に反しない内容であれば、会社が任意に決めて記載できる事項。ただし、設立後に定款に定めた事項を変更する時には、株主総会の決議が必要となるので注意する。

①事業年度に関する定め
②株主総会の議長の定め など

(2)株主総会での特別決議を開催する

定款変更するには、株主総会における特別決議を経なければなりません。特別決議は、株主総会で議決権を行使できる株主の議決権の半数より多い株式を持っている(定款で3分の1以上の割合を定めることも可)株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成がなければ否決されます。

定款で「3分の2以上」よりも厳しい変更条件を設定していれば、それも有効です。また、株主総会に出席しない株主は、書面によって議決権を行使することもできます。

(3)株主総会の議事録を作成する

定款変更にあたって登記申請が必要な場合は、株主総会で変更点について決定した旨の議事録を法務局に提出し、登記申請をする必要があります。
したがって、株主総会議事録の作成が必要です。また、このとき株主リストもあわせて準備しておきましょう(※後述)。

(4)変更登記申請

変更登記の申請は、定款変更の効力を生じた日から、本店所在地においては2週間以内、支店所在地においては3週間以内に行う必要があります。

登記申請の手続きは、オンライン申請、QRコード(二次元バーコード)付き書面申請のほか、書面で作成して持参または送付することも可能です。

参照:法務局「[株式会社・合同会社の設立]オンライン申請・QRコード(二次元バーコード)付き書面申請について」

定款変更のための株主総会

定款変更の主なルールが分かったところで、次にそれぞれのルールの詳細について見ていきましょう。

(1)株主総会の決議要件

まずは、株主総会です。
定款変更についての株主総会の決議要件は、以下の4つがあります。

①商号、目的、公告方法の変更、株式の譲渡制限規定の廃止等の定款変更
②株式の譲渡制限規定の設定の定款変更
③株主ごとに異なる取り扱いを行う旨を定める定款変更
④全部の株式を取得条件付株式とする定款変更

①商号、目的、公告方法の変更、株式の譲渡制限規定の廃止等の定款変更
株主総会の特別決議によって、行われます。
特別決議は、株主総会で議決権を行使できる株主の議決権の半数より多い株式を持っている株主が出席し、出席した株主議決権が3分の2以上の賛成(ただし、定款で議決権の3分の1とすることも可能)が必要です。

②株式の譲渡制限規定の設定の定款変更
株式の譲渡制限規定の変更は、株主の利害に大きな影響がありますので、特別決議より決議の成立要件が重くなります。
議決権を行使できる株主の半数以上であって、株主議決権が3分の2以上の多数が必要とされています。

③株主ごとに異なる取り扱いを行う旨を定める定款変更
総株主の半数以上で合って、総株主の議決権の4分の3以上に当たる多数の賛成が必要となります。

④全部の株式を取得条件付株式とする定款変更
株主全員の同意が必要となります。

株主総会の特別決議で変更が受理された場合、定款とともに、株主総会の議事録を保存しておかなければなりません。

登記申請がいらない定款記載事項は、決算月の変更です。この場合は、税務署への「異動届出書」の提出に株主総会の議事録を添える必要があります。

(2)書面決議によることも可能

株主総会に出席しない株主は、書面によって議決権を行使することもできます。
ただし、この場合もそれを証する書面として、株主総会議事録を作成し添付しなければなりません。

(3)議事録の作成

定款変更の決議をしたことを証するための、株主総会議事録を作成します。
以下は、法務局で公表されている株主総会議事録です。

定款変更の登記申請手続き

変更登記の申請は、定款変更の効力を生じた日から、本店所在地においては2週間以内、支店所在地においては3週間以内に行う必要があります。

登記申請の手続きは、オンライン申請、QRコード(二次元バーコード)付き書面申請のほか、書面で作成して持参または送付することも可能です。

オンライン申請の場合を除き、すべて書面で行う必要があります。変更登記の申請は、原則として会社の代表取締役が行いますが、代理人が行うこともできます。

変更登記申請書に記載すべき事項

変更登記申請書に記載すべき事項は、次の①から⑧までです。

①会社法人等番号
法人等番号を記載します。

②商号
会社の社名で、すでに登記されている商号を記載します。
商号変更の場合には、旧商号を記載します。

③本店
会社の住所で、すでに登記されている場所を記載します。
「1-2-3」のように略記せず「1丁目2番3号」のように記載します。

④登記の事由
定款の変更によって、登記されている事項のどこが変更したのかを記載します。

・本店を移転した時…「本店移転」
・社名を変更した時…「商号変更」
・目的を変更した時…「目的変更」
・取締役会などの機関構成を変更した時…「取締役会設置会社である旨等の変更」
・公告方法を変更した時…「公告方法の変更」

⑤登記すべき事項
定款の変更によって、変更登記を求める事項を記載します。

⑥添付書類
登記申請書に記載された事項が合致しているか審査するための書類(株主総会議事録など)です。

⑦登録免許税
登記事項の変更登記は、1件につき3万円です。

⑧その他
登記申請書を提出する日、会社の称号、本店および代表取締役の住所・氏名を記載します。代理人が登記申請をする時には、代理人の住所・氏名が必要です。

(1)社名(商号)を変更した時

社名(商号)を変更した時には、申請書の「登記すべき事項」に、以下のように記載します。

令和2年○月○日(株主総会で決議した日)商号変更
商号 ○○会社

この時、変更後の商号が決議されていたとしても、すでに他人によって同一所在場所で登記されている場合には登記することはできませんので、注意が必要です。

(2)事業内容(目的)を変更した時

事業内容(目的)を変更した時は、オンラインにより提出することになりますので、申請書には「別紙のとおりの内容をオンラインにより提出済」と記載することになります(CD-Rにより提出する場合には「CD-Rにより提出済」と記載します)。

(3)発行可能株式総数を変更した時

発行可能株式総数を変更した時を変更した時には、申請書の「登記すべき事項」に、以下のように記載します。

令和2年○月○日(株主総会で決議した日)発行可能株式総数を変更
発行可能株式総数 ○○株

(4)公告方法を変更した時

公告方法とは、官報に記載する方法、新聞に計算する方法、電子公告の方法があります。定款に定めがない会社の場合は、官報に記載する方法となります。

電子公告である場合でも、やむを得ない理由で電子公告による公告ができない場合の公告方法を定款に定めることもできます。
公告方法を変更した時を変更した時には、申請書の「登記すべき事項」に、以下のように記載します。

令和2年○月○日(株主総会で決議した日)公告方法を変更
公告方法 ○○

(5)存続期間を変更した時

存続期間を変更または廃止した時には、申請書の「登記すべき事項」に、以下のように記載します。

令和2年○月○日(株主総会で決議した日)下記のとおり変更した。
存続期間 令和○年○月○日まで
令和2年○月○日(株主総会で決議した日)存続期間の定めを廃止した。

(6)定款変更の登記の添付書類

添付書類は、定款変更によって生じた事項と登記の申請書に記載された内容が合致しているか審査するために要求されます。
添付書類は、変更内容によって異なりますが、先ほどご紹介した株主総会議事録のほか、株主の氏名又は名称,住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト)を用意しておきましょう。

株主リスト
登記すべき事項について、株主全員または種類株主全員の同意を必要とする場合や、株主総会または種類株主総会の決議を必要とする場合には、株主リストを添付する必要があります。

(7)定款変更の登録免許税

変更登記の申請の際には、1件につき3万円の登録免許税が必要となりますから、印紙を購入し添付します。
変更する登記が複数ある場合でも、1件の申請で行う時には3万円で済みますが、個別に申請をすると、その都度3万円の登録免許税が必要となるので、注意しましょう。

まとめ

以上、定款変更する際に必要な手続きについてご紹介しました。
これらの変更登記申請手続きは、株主総会議事録の作成や株主リストの作成が必要となり慣れない場合には、煩雑に感じられることも多いと思います。
株式会社の設立手続きや経営に精通している税理士のなかには、変更登記申請についてサポートしてくれる税理士もいます。
不明点や疑問点等ある場合には、相談してみてはいかがでしょうか。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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