定款認証とは?手続きや費用を分かりやすく

公開日:2023年10月18日
最終更新日:2023年10月18日

この記事のポイント

  • 株式会社は、定款を作成した後、公証人の認証を受けなければならない。
  • 定款は、発起人(会社をつくろうと言い出した人)が作成する。
  • 出資金は、定款を作成して、公証人の認証を受けたあとに払い込む。

 

定款とは、会社の憲法、ルールブックとも呼ばれるもので、会社の活動はすべてこの定款に基づいて行われることになります。

株式会社の場合には、定款を作成した後に、公証人の認証を受ける必要があります。
定款に記載ミスがあっても、公証人の認証を受けた後の修正は原則としてできませんので、記載ミスなどがないよう十分な確認が必要です。
 

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定款認証とは

定款認証とは、公証人によって定款の記載事項についてチェックしてもらい、証明してもらうことをいいます。
会社を設立する場合には、定款を作成する必要がありますが、株式会社の場合には、定款を作成するだけでなく、作成した後に公証人に認証を受ける必要があります。

(1)定款認証とは公証人による認証

定款の認証とは、完成した定款について登記をする前に、「定款の記載事項に間違いはないか」「法令の強行規定や公序良俗、会社の基本原則に違反していないか」などについて、公証人にチェックしてもらい、間違いのない定款であることを証明してもらうことです。
定款の認証は、公証人役場で行います。
公証人役場は、設立登記を受ける法務局や地方法務局の管内であれば、どこで認証を受けても良いことになっています。

(2)合同会社は認証の必要なし

設立する会社が合同会社である場合には、定款は公証人の認証を受ける必要はありません。
社員となる人が定款を作成し、全員がこれに記名捺印します。
株式会社のように公証役場で認証を受ける必要はありませんが、記載内容について間違いがないかについては、法務局で相談を受け付けています。

定款認証の流れ

定款は、会社の憲法のようなもので、会社を設立する際にはかならず作成しなければなりません。
そして株式会社の場合には、定款を作成したら公証人の認証を受けなければなりません。公証人の認証を受けなければ、効力を生じませんので注意が必要です。

(1)定款を作成する

定款は、発起人全員で作成します。
定款には、商号や事業目的、本店所在地などかならず記載しなければならない「絶対的記載事項」が、法律で決められています。
また、定款に作成しなくても定款自体には影響はないものの、記載がないとその定めの効力が生じない「相対的記載事項」、法律の規定に反しない内容であれば任意に定めることができる「任意的記載事項」があります。

区分 内容
絶対的記載事項 会社法の規定により、定款にかならず記載しなければならず、記載がない定款は無効となる。

①商号
②目的
③本店の所在地
④出資される財産の価額またはその最低額
⑤発起人の氏名(または名称)、住所
⑥発行可能株式数

相対的記載事項 定款に記載しなくても定款の効力には影響はないが、記載がないとその定めの効力は生じない。

①現物出資
②財産引受
③発起人が受ける報酬等
④株式会社の負担する設立費用
⑤株式譲渡制限に関する事項 など

任意的記載事項 法律の規定に違反しない内容であれば、会社が任意に定めることができる。

①事業年度に関する規定
②株主総会の議長に関する規定
③社訓 など

(2)定款の記載事項の注意点

定款を作成する際には、いくつかの注意点があります。
たとえば「商号」について類似商号の規制はなくなりましたが、他の会社と勘違いされるような名前は避けるべきですし、「目的」には将来の事業予定も記載する方が、後々変更登記申請が必要なくなるので、おすすめです。
ここでは、定款の記載事項について、最低限知っておくべき注意点についてご紹介します。

商号
株式会社の商号には、前後どちらかにかならず「株式会社」の文字を入れます。
「&」「,」等は使用可能ですが、「!」「♪」などは使えません。
類似商号の規制はなくなったので、同じ住所でなければ同一の商号をつけることはできますが、他の会社と勘違いされるような商号は避けた方が無難です。
法人番号公表サイトでは、商号調査をすることができるので、事前に調査しておきましょう。

参照:国税庁「法人番号公表サイト」

目的
目的は、将来行う予定の事業も入れておきましょう。
入れておかないと、その事業を行う際に株主総会で目的を追加するための定款変更決議を行い、法務局へ変更登記申請が必要となり費用がかかるからです。

本店所在地
本店所在地は、最小行政区画(例:東京都千代田区)まで記載しるのがおすすめです。
将来、同一市区町村内に本店移転する際に、定款変更手続きが必要なくなるからです。

株式の譲渡制限
株式は原則として譲渡自由ですが、株式を譲渡する場合に会社の承認が必要となる株式を「譲渡制限株式」といいます。この条項を定款に入れておけば、将来、会社にとって好ましくない者が株主となることを防ぐため、株式の譲渡を自由にできない規定を置くことができます。

(3)定款を作成したら公証人役場に行く

定款を作成したら、公証人役場で認証を受けなければなりません。
定款の認証は、株式会社の本店所在地を管轄する法務局または地方法務局管轄の公証人によって行われます。
たとえば、東京都千代田区に本店を置く会社は、東京都内の公証人の認証を受けます。自宅に近いからと言って、千葉県で定款認証を受けることはできません。
また、定款認証後で設立登記前に本店の所在地を他府県に変更する場合には、改めて変更後の本店がある公証人役場で、定款認証を行う必要があります。
完全予約制としている公証役場も多いので、早めに予約をとっておきましょう。

(4)定款認証に必要なもの

定款認証に必要なものは、以下のとおりです。

定款3通
登記申請用、会社保存用、公証人保管用の3通を用意します。
すべての定款に、発起人の署名(または記名)押印をします。押印するのは、すべて個人の実印です。

発起人の印鑑証明書
発行3カ月以内のものを用意します。

発起人の実印
発起人の実印を用意します。

収入印紙
4万円の収入印紙が必要です。
電子定款の場合には、印紙税4万円を節約できます。

委任状
公証人役場は、原則として発起人全員で行くことになっていますが、行けない人がいる場合には、委任状が必要です。

実質的支配者となるべき者の申告書
実質的支配者とは、会社の事業経営を実質的に支配することが可能な関係にある個人です(後述)。

公証人の手数料
株式会社の定款認証の手数料は、これまで「5万円」でしたが、令和4年1月1日から以下のように変更となりました。

・資本金の額等が100万円未満の場合:3万円
・資本金の額等が100万円以上300万円未満の場合:4万円
・その他の場合:5万円

また、謄本手数料が1枚につき250円必要となります。

参照:日本公証人連合会「会社の定款手数料の改定」

その他、発起人に未成年がいる場合には、法定代理人の同意書、法定代理人の印鑑証明書、戸籍謄本が必要となります。

(5)「実質的支配者となるべき者の申告書」とは

実質的支配者とは、会社の事業経営を実質的に支配することが可能な関係にある個人で、具体的には以下の①~④のいずれかに該当する人です。

①株式の50%を超える株式を保有する個人
②上記①に該当する人がいない場合には、株式の25%を超える株式を保有する個人
③上記①、②に該当する人がいない場合には、事業活動に支配的な影響力を有する個人
④上記①~③に該当する人がいない場合には、代表取締役

上記の実質的支配者の要件を満たす人が、複数いる場合には、原則として全員の者について申告をする必要があります。

暴力団員等が実質的支配者であり、その会社の設立行為に違法性があると認められる場合や、説明を求められても説明ができない場合、申告書を提出しなかった場合などは、公証人は認証することができません。

▶ 実質的支配者の意味や申告書を分かりやすく

(6)電子定款だと収入印紙代はかからない

定款認証は、電子文書で作成し認証を受けることができます。これを電子定款といいます。電子定款であれば収入印紙代の4万円が不要となりますが、ICカードリーダー、アドビ社のソフト、電子証明書の取得、法務省オンライン申請システムのユーザー登録などの準備が必要です。

電子定款とする場合には、テレビ電話で公証人が本人確認を行い、認証を受けることも可能です。
公証人からテレビ電話用のURLをメールで受け取って、予約日時にパソコンやスマホを利用して、音声と電話によって確認が行われます。

参照:法務省「定款認証を含む電磁的記録の認証手続について,より広くテレビ電話等を利用して行うことが可能となりました」

(7)資本金の払込みは定款認証後

発起人は、通常は定款認証が終わり次第すぐに資本金の払込みをします。

法務省の「会社法等の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いに関するQ&A」では、「原則として、定款認証日後に払い込みがなされるべきである」としています。

ただし、実務上は定款の作成日またはは発起人全員の同意書作成日以降に払い込みがあった場合については、設立の登記の申請を受理して差し支えないものとされています。
また、令和3年2月15日から、定款認証の嘱託及び設立登記の申請をオンラインで同時に行うことが可能となりました。
この制度により、一定の条件を満たす場合には24時間以内に当期が完了することも可能となります。

参照:法務省「オンラインによる定款認証及び設立登記の同時申請の取扱いを開始しました」

出資金は、現金でも不動産などの現物出資でも構いません。
現金で払込む場合は、会社の発起人名義の銀行口座を1つ用意して、この口座に発起人全員がそれぞれの出資金を振り込みます。
出資金の払込みを終えたら、その日から2週間以内に会社の設立登記を申請します。

会社の設立登記の申請は、原則として法務局で行いますが、オンラインで行うことも可能です。
認証を受けた定款のほかに、①登記申請書と登録免許税納付用台紙、②別紙(OCR用紙)、③会社の実印を届け出る印鑑届出書、④その他の添付書類が必要になります。
④その他の添付書類とは、取締役会を設置した時の設立時代表取締役選定書や、現物出資したときの調査報告書や財産引継書などです。
設立登記を申請した日が、会社の設立日となりますので、設立日を特定の日にしたい場合には、申請する日に合わせて早めに準備を進めておきましょう。

定款認証の会計処理

定款認証の費用は、「創立費」として処理をします。
支出時に営業外費用として処理しますが、繰延資産として処理することもできます。

(1)定款認証の勘定科目は「創立費」

創立費とは、会社の負担すべき設立費用をいいます。
定款認証でかかった費用は「創立費」として、原則として支出時に営業外費用として処理をしますが、繰延資産として計上することもできます。

創立費として処理する支出は、定款認証の費用のほか、株式募集等のための広告費、創立事務所の賃借料、金融機関の取扱手数料、設立時の登録免許税などです。

(2)定款認証の仕訳処理

定款認証の費用は、創立費として原則として営業外費用として処理をしますが、繰延資産に計上して5年以内のその効果が及ぶ期間にわたり、定額法で償却することができます。
支出の効果が期待されなくなったときには、未償却残高を一時に償却します。

「創立のために支出した登録免許税7万円、手数料等諸経費100万円を費用処理していたが、創立にあたって創立費として資産計上した。」

①繰延資産計上

借方 貸方
創立費 1,700,000 租税公課 70,000
支払手数料 1,000,000

②繰延資産償却

借方 貸方
創立費償却 340,000 創立費 340,000

まとめ

株式会社の場合には、定款の作成が終わったら、公証役場の認証を受けなければなりません。定款の認証を受ける公証役場を決めたら、事前に作成した定款の内容をチェックしてもらい、事前チェックが終わったら公証役場に認証を受けに行きます。
公証役場で定款認証を受ける際には、定款3通、発起人全員の印鑑証明書、発起人の実印等が必要となるので、忘れないように準備をしておきましょう。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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