治療院の経営と開業の基礎知識

公開日:2023年11月01日
最終更新日:2023年11月30日

治療院の開業のポイント

  • 治療院の開業は、「どんな治療院にするか」を考えることから始める。
  • 治療院の経営は、治療院の儲けの基本を理解することが大切。
  • 治療院の経営を黒字化するためには、売上ではなく利益を重視する。

 

治療院を開業するうえでは、開業資金や店舗の選び方、ホームページの活用方法など最低限の知識が必要です。
また、治療院の経営を黒字化させ事業を成長させるためには、治療院の儲けのしくみ、集客、リピート率の向上のための施策を行っていく必要があります。

この記事では、治療院の種類や開業資金の調達方法、開業後のスムーズな経営を実現するための方法などについて、ご紹介します。
 

自分で会社設立するなら「freee会社設立」

freee会社設立なら、会社設立に必要な約10種類の書類を無料で作成できます。会社設立完了までに必要なフローをステップに沿って案内してくれるので、はじめての人でもスムーズに手続きを進めることができます。

治療院の開業・経営の基礎知識

治療院は、材料費がほとんどかからず粗利益率が非常に高い業種です。
また、開業するうえでの初期費用も、飲食店や美容院などの開業と比べると少なくて済みます。
しかし、治療院を経営し、利益を確保するためには、治療院の儲けのしくみを理解し、利益を確保するための構造を理解することが大切です。

(1)治療院の国家資格・民間資格の違い

治療院には、整骨院、鍼灸院、整体院などさまざまな種類があり、なかには国家資格に合格しなければならないものもあります。

・整骨院・接骨院
急性・悪急性の外傷を主に取り扱う治療院
国が定める養成機関に通い、国家資格に合格しなければならない

・鍼灸院
鍼灸を使って、めまい、肩こり、頭痛、腰痛などの症状改善を行う治療院
最近は、女性をターゲットとした美容鍼が人気
国が定める養成機関に通い、国家資格に合格しなければならない

・あん摩・マッサージ・指圧
症状回復を目指し、もむ・押すなどの手技を使い施術する治療院
国が定める養成機関に通い、国家資格に合格しなければならない

・リラクゼーション
疲労回復を目的として、身体等に施術を行う治療院
資格は不要だが、一般的には民間資格のスクールで学ぶ

・リフレクソロジー足裏にある反射区を刺激して疲労を取り除く治療院
資格は不要だが、一般的には民間資格のスクールで学ぶ

・カイロプラクティック
背骨の歪みを正しくし、身体の調子を整える治療院
資格は不要だが、国際認証を受けた海外の大学で学ぶ方法もある

保険適用の有無
国家資格を必要とする整骨院、鍼灸院、あん摩マッサージは健康保険を利用することができます。ただし、平等に健康保険が適用されるわけではなく、鍼灸院、あん摩マッサージは、保険を扱う際には医師の同意書が必要になるなど、煩雑な手続きが必要になります。
民間資格については、健康保険は適用されません。

広告規制
国家資格を必要とする治療院については広告規制があり、治療院名や受付時間など定められた内容のみが広告可能で、治療家の技能や経歴は広告してはいけないことになっています。
一方、民間資格の治療院については、広告に関する規制はほとんどありません。

院内設備の規制
国家資格を必要とする治療院については院内設備の規制も設けられています。たとえば、待合室と治療室の基準、換気設備や照明などの基準です。
一方、民間資格の治療院については、基本的に規制はありません。

(2)開業資金は治療院の開業スタイルによる

治療院を開業するうえで必要な資金は、治療院の規模や開業スタイルによって大きく変わりますので、自分が始める治療院のコンセプトに合わせ、予算に合わせて慎重に検討していく必要があります。

店舗を借りて開業する
もっとも一般的な方法が、店舗を借りる開業スタイルです。患者に安心感を与えることができるというメリットがありますが、初期費用がかかるというデメリットがあります。
東京で整骨院を開業する場合には、1,000万円前後の費用が必要になりますが、医療機器をあまり必要としない鍼灸院であれば、500万円程度で済む場合もあります。

また、開業資金は都市部で開業するか地方で開業するかによっても大きく変わりますし、開業する店舗の選び方でも大きく変わります。
たとえば、ショッピングモールで開業する場合には、保証金や内装などの費用がかかるので、1,000万円以上、場合によっては2,000万円前後の資金が必要になることもあります。

安い物件を探して、内装などにお金をかけなければ、50万円程度に抑えることも可能です。

自宅で開業する
自宅の一室を治療院とする開業スタイルは、初期費用を抑えることができる・近所のつながりで集客できるなどのメリットがありますが、次から次へと患者が訪れるようになると、家庭が落ち着けない空間となってしまうデメリットがあります。
開業資金は、備品を揃えるだけなので10万円以内で済むケースもあります。

出張専門で開業する
出張専門の開業スタイルの最大のメリットは、とにかくお金がかからないという点です。しかし「家に他人を入れるのに抵抗がある」という人も多いため、集客が難しいというデメリットがあります。
自宅で開業する場合と同様、10万円以内での開業が可能ですが、開業後の交通費などが意外に高くつくこともあります。

(3)開業資金はどう用意する?

開業資金は、自己資金が基本です。
しかし、店舗を構えるとなればそれなりの資金が必要ですから、開業資金のすべてを自己資金で賄えるという人は少ないでしょう。
その場合には、不足分をねん出する必要があります。
最近は、クラウドファンディング等で出資してもらう方法も増えていますが、一般的なのは、金融機関から融資してもらう方法です。
ただし、金融機関から融資を受ける際にもある程度の自己資金の用意が必要になります。
融資制度の種類にもよりますが、融資を受ける要件として「創業資金緒3分の1以上の自己資金を確認できる人」などとされていることがあるからです。

そして、治療院を開業するうえでぜひ活用したい融資が、日本政策金融公庫です。
日本政策金融公庫とは、政府全額出資の金融機関で、治療院をはじめて開業する人が担保も保証人もいないという場合でも「新創業融資制度」を利用することができます。

日本政策金融公庫以外では、都道府県などの制度融資を利用する方法もあります。
制度融資とは、自治体と信用保証協会と金融機関の三者協調で成り立つ融資制度です。
要件等は、制度融資の種類によって異なりますが、はじめて治療院を開業する場合でも、少ない金利負担で資金調達が可能となります。

(4)店舗選びはコアターゲットに合わせる

一般的でかつ最も多いのが、店舗を借りる開業スタイルです。
店舗を構える場合の第一歩が、出店エリアです。
治療院の経営がうまくいくか行かないかは、出店エリアに大きく左右されます。

高齢者向けの施術を提供したいのに、オフィス街で開業しても、高齢者は足を運んでくれない可能性が大きいですし、20代~30代の人向けにリラクゼーションの施術を提供したいのに、高齢者の多い住宅街で開業しても、やはり集客は難しいでしょう。
したがって、出店エリアを選ぶ際には、「どのような治療院にしたいのか」というコンセプトと「どのような人に来てほしいのか」というコアターゲットを明確にしてから、慎重に検討する必要があります。

住宅街であれば、主婦や高齢者層が平日の昼間に来院することが見込まれますし、夜は仕事帰りの人や学校帰りの来院が期待できます。
オフィス街であれば、サラリーマンが平日の昼間、夕方から夜間にかけて仕事帰りに来院するケースが多いでしょう。

店舗を選ぶ際には、店舗面積や治療院としての導線のよさ、物件の内外装の状態もしっかり確認することが大切です。1階の物件は、間口が広いほど目立つので認知度が高まりますが、賃料が高くなるというデメリットがあります。
2階以上の物件では、治療院名をいかにアピールできるかが大切になります。
郊外や地方で開業する場合には、駐車場の有無や広さも必ずチェックしましょう。

なお、初めて開業する際には広すぎる店舗は避けた方が無難です。
店舗が広ければ家賃も高くなりますし、スタッフを増やさなければならず人件費がかかります。
小規模の治療院を開業するのであれば、店舗面積は10坪程度あれば十分成り立ちますので、まずは小規模で初期費用をかけずに開業し、その後2号店、3号店と複数院展開する際に、徐々に店舗面積を広げることをおすすめします。

(5)治療院の儲けのしくみを理解しよう

治療院の経営を行ううえでは、治療院の儲けのしくみを理解することが大切です。
治療院に限らず、儲けは「収益-費用」で考えます。
たとえば、単価5000円で月に2000人(1日10人・月20日稼働)の来院があれば、月の収益は100万円です。
そこから固定費である家賃、人件費を差し引いた残りが儲け(利益)です。
たとえば、家賃が月10万円、広告費が月10万円、消耗品費などが10万円程度であれば、70万円(100万円-30万円)が儲けとなります。

つまり、効率的に集客し単価を上げ、月々の経費をできる限り抑えれば、その分儲けは増えるということです。
ただし、経費削減を考える場合には、売上に貢献する経費と貢献しない経費を分けて考えることが大切です。
お客様が直接使用する材料費や、広告宣伝費などを削減すると、売上が下がってしまうリスクがありますので、「どの経費を削るか」については、よく検討することが大切です。

(6)集客はGoogleビジネスとSEOの使い分け

集客というと、ひと昔前まではチラシを配る方法が一般的でしたが、今はネットを活用した集客が主流です。

ネット集客の方法としては、主にGoogle広告、Googleビジネス、SEO対策などがあります。
Google広告を出稿する方法は自分で設定することもできますが、Googleの機能は日々変化しているので、運用するのはなかなか大変であることから、代行業者に依頼するケースが多いようです。出稿するには費用がかかりますし、代行業者に依頼する場合には、当然ながら報酬を支払う必要もあります。

Googleビジネスは、無料で利用できるサービスです。
Googleで検索すると、広告が表示されたあとに地図が表示され店名が3件表示されます。これがGoogleビジネスプロフィールです。
治療院の内装や外装、施術中・問診中の写真などを掲載し、治療院の雰囲気がひと目で分かるように工夫します。
この時、一気に写真を何十枚も掲載するのはNGです。Googleは更新頻度も重視しますので、定期的に更新した方がGoogleからの評価がアップします。

SEO対策というのは、あるキーワードを入力した時に上位表示されるようにホームページやブログのコンテンツを投稿する対策です。
検索される回数の多いキーワードで上位表示されるのは、広告やGoogleビジネスですが、「腰骨の下 痛み」「足裏 親指の下 痛い」など、細かい症状について検索するキーワードに対しては非常に有効な対策です。

(7)ホームページのポイントは症状ページ

先ほど「腰骨の下 痛み」「足裏 親指の下 痛い」など、細かい症状について検索するキーワードについて、コンテンツを投稿するSEO対策は非常に有効な集客方法だとご紹介しましたが、具体的には、ホームページで対応できる症状ページを用意していきます。
症状ページは多ければ多いほど良いですが、まずは集客しやすい症状を10ページほど作成し、あわせてそのページにGoogle広告を出しながら、定期的に症状ページを追加していく方がよいでしょう。

この時作成するコンテンツで大切なポイントは、どのような人に・どのような施術をされ、どのような効果が見込めるのかを端的に伝えるようにすることです。
コンテンツを読んでいる人に、「来る前に治療院の良さを伝える」ことを意識することが大切です。

(8)リピート率アップのコツは「説明方法」

どこの治療院でも課題となっているのが、リピート率の向上です。
リピート率を向上させることができれば、治療院の経営は非常に安定したものとなります。

しかしお客様のなかには、治療院で1度施術を受ければ改善されると思っている人がいます。施術が終わったあとに通院の必要性を伝えても、「1度であまり効果が実感できなかったから」と2回目の通院につながらないケースが多いのです。
リピート率を上げるためには、「治療院は、継続して通院してこそ症状が改善する」ということを、分かりやすく伝えることが大切です。

「これから施術をすると、必ず身体はよい方向に向かう」「放置しておくと、またもとに戻ってしまう」「2回目はもっと効果が実感できるし、3回目はさらに効果が実感できる」「症状が改善すれば、再発防止のための施術で済むようになるから、回数を減らすこともできる」ということを、問診前に、ていねいに図表やグラフを使って説明するのです。

なお、この説明は、問診の前に行うことが大切です。施術が終わった後では「リピートしてほしいからでしょ」と思われてしまう可能性があるからです。また、長々と説明するのは禁物です。お客様は、早く施術をしてほしい・症状を改善してほしいと思っているのですから、長くても2分程度で説明をするようにしましょう。

(9)経理システムは効率アップで事務負担減

治療院の経営状態を正しく把握できていなければ、税務申告のときに慌てるだけでなく、先々の計画を立てることもできません。
これは治療院に限らず、どの業種についても言えることですが、経営状況を正しく把握できていない事業が大きく成長していくことは、ほとんどありません。

経営状況を正しく把握するためには、日々の売上や仕入、経費や入出金などの取引を記録しておかなければなりません。これらの作業を効率化させるためには、「freee会計」を活用します。freeeとAirREGIを同期させれば、ボタンを押すだけで、レジの売上データが会計ソフトに反映されるので、手作業で売上を計上する必要はなくなります。

「freee会計」は、クラウドで会計データを保存するため、税理士とデータを共有して作業を行うことができます。
銀行口座やクレジットカードと連携させれば、データが自動で反映されるため、さらに作業効率がアップしますし、経営状況は自動的にグラフ化されます。

(10)複数院経営するなら会社設立

治療院を経営していて事業が順調に成長してきたら、2店舗目の開業を検討する人も多いでしょう。
治療院の売上が伸びてきて規模を拡大したり、複数院経営を目指したりする場合には、会社を設立した方が節税につながります。
さらに、個人事業主より会社を設立した方が融資を受けやすくなりますし、優秀な人材を確保しやすいというメリットもあります。
一方、会社を設立すると法人住民税均等割という赤字でも納めなければならない税金があったり、社会保険加入義務があったりといったデメリットもあります。
会社を設立した方が、事業を大きく成長させる可能性は高くなりますが、これらのメリット・デメリットを踏まえ、長期的な視点で治療院をどのようにしていきたいのかをよく検討することをおすすめします。

まとめ

治療院の収益がアップしてきたら、税務のスペシャリストである税理士と契約することをおすすめします。
顧問税理士がいることで、お金の流れがクリアになり、安心して仕事に集中することができるようになるからです。
治療院経営は、お金の管理が大雑把になっているケースがありますが、治療院を大きく成長させている経営者は、お金の管理をきちんと行い、そのうえで税理士に相談しながら事業を行っています。
治療院の経営を安定させ、さらに事業を大きく成長させたいと思っているのであれば、まずはお金の流れを把握し経営状況を正確に把握するために、税理士との顧問契約を検討することをおすすめします。

治療院の経営について相談

freee税理士検索では、数多くの事務所の中から、治療院の開業や経営、経理システムの構築や税務申告、複数院経営などについて相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
 

\ 治療院の経営について相談できる税理士を検索 /

都道府県
業種

治療院の経営の経験談と税理士の回答を見る

・個人事業主の共同経営についての疑問点
「個人事業主として美容サロンを共同経営しています。
・事業用の口座、クレジットを分けていない場合
「個人事業主として夫婦で住んでいる自宅のサロンと出張で整体をしています。
・法人化で節税できますか?
「夫婦で鍼灸院を経営しています。

この記事の監修・関連記事

監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

クラウド会計ソフトの「クラウド会計ソフト freee会計」が、税務や経理などで使えるお役立ち情報をご提供します。
「クラウド会計ソフト freee会計」は、毎日の経理作業を最小限で終わらせることができるクラウド型会計ソフトです。疑問点や不明点は、freee税理士検索で税理士を検索し、相談することができます。

 

自分で会社設立するなら「freee会社設立」

freee会社設立なら、会社設立に必要な約10種類の書類を無料で作成できます。会社設立完了までに必要なフローをステップに沿って案内してくれるので、はじめての人でもスムーズに手続きを進めることができます。

PageTop