公開日:2024年07月03日
最終更新日:2024年07月03日
低資金でスタートでき、好きな場所で営業ができる移動販売は、1人で稼げる商売として人気が高まっています。20代~30代で始める人も増えていますし、50代や60代で週に2回だけランチの販売を始める人もいます。
ただし、移動販売を開業するためには、道路交通法、都市公園法、食品衛生法、火災予防条例などの法律や条例を理解することが大切です。また、キッチンカーを始める場合は、設置したタンクの容量によって許可内容に違いがあります。
移動販売が増えている背景には、好きな場所で営業できるという魅力があります。また、コロナ禍で打撃を受けた飲食店やその他の企業が、助成金や補助金を活用して新たにキッチンカービジネスに参入する動きも、増加する一因となりました。
ただし、移動販売を行う際には、関連する法律や条例を確認することが重要ですし、出店する際には、地域の需要と供給を見極め、業種や商品を慎重に選ぶことが大切です。
移動販売のメリットは、何といっても営業場所を自由に選べるということです。季節や天候、イベントなどに合わせて、販売を行うことができるため、売上を最大化するチャンスが広がります。
また、初期投資が比較的少ない点もメリットの1つと言えるでしょう。固定店舗を構える場合と比べて、店舗賃料や内装工事の費用がかからず、キッチンカーの購入や改装費用のみで始められるため、資金面での負担が軽減されます。
さらに、直接顧客と接する機会が増えるため、顧客とのコミュニケーションが取りやすいことも大きなメリットです。顧客の反応を直に感じることで、商品の改良や新商品の開発に活かすことができ、リピーターの獲得やブランドの信頼性向上にも繋がります。
移動販売に関する主な法律、条令としては、以下のようなものがあります。
道路 交通法 |
路上で営業する場合には、管轄の警察署の許可が必要となる。ただし、単独の移動販売営業に道路使用許可がでるケースは難しいことから、移動販売は原則として私有地に駐停車して営業することとなる。 |
都市 公園法 |
公園内で営業する場合には、自治体などの許可がひつようとなる。許可を取得するためには、①占用が公衆の利用に支障を及ぼさないこと、②占用が必要やむを得ないと認められること、③政令で定める技術的基準に適合すること、の3つの条件を満たす必要がある。 |
道路運送 車両法 |
移動販売車は、8ナンバーの取得が可能であり、8ナンバーを取得していれば、社内に厨房機材や作業台を固定したまま、車検を受けることができる。 8ナンバーを取得するためには、①特殊設備、調理面積が運転席を除くスペースの50%以上あること、②運転席部分と調理販売スペースが完全にしきられていることなどの条件を満たす必要がある。(※) |
食品衛生法 | キッチンカーや食品販売車に適用される。 キッチンカーは、保健所の飲食店営業が必要。許可取得には、細かい要件があり、さらに設置した給排水タンクの要領によって許可内容が異なる。 ただし、社内で調理せず、仕入れた食品を販売するだけなら保健所への届出だけで済む。 |
火災予防 条例 |
イベントに出店するキッチンカーは、消火器設置義務がある。また、出店者はイベント開催日の5日前(地域によって異なる)までに出店地の消防署への届出書提出が必要。 |
※8ナンバーは、自動車税が乗用車より若干安い傾向がありますが、懸賞の内容や実際の車体で判断されるので、一概には言えません。
また、保険会社によっては、8ナンバーの販売車に関して自動車保険を取り扱っていないところもあります。かなり改造していると、自動車保険に加入しても、保険金がおりない可能性も考えられるので、保険のかけ方については事前に検討しましょう。
先ほどご紹介したように、キッチンカーの場合は厳密な設備要件があり、さらに給排水タンクの容量によって、できることが異なります。
ただし、車内で調理をしないで仕入れた食品を販売するだけなら保健所への届出だけで済みます。したがって、車を購入する前に所轄の保健所に相談に行って、下記条件を満たす車を探して購入するようにしましょう。
40ℓ | 80ℓ | 200ℓ | |
提供品目数 | 1品目 | 複数品目 | 複数品目 |
容器 | 使い捨てのみ | 使い捨てのみ | 食器も可能 |
車内での 仕込み作業 |
不可 | 不可 | 可 |
調理工程 | 簡易調理のみ | 2工程まで | 複数工程可能 |
事例 | ・冷凍品を焼くだけ、炒めるだけ ・具材をパンに挟むだけ |
・生地に具材を乗せて焼いてから提供する ・肉を焼いて切って提供する |
仕込みから調理まですべて可能 |
キッチンカーの場合は飲食物を扱うので、飲食店と同様の営業手続きが必要となります。
営業許可をもらうためには、主に以下の手順で手続きを進めなければなりません。ただし、自治体によって検査基準が異なる場合がありますので、事前に各保健所に問い合わせを行ないます。
①事前相談
東京都の場合には、仕込み場所の所在地を所轄する保健所に相談します。
仕込み場所とは、自動車で取り扱う食品の調理、包装等、給水タンクへの給水などの作業を行う施設です。
東京都の場合には、原則的に仕込み場所がないと営業ができなくなりましたので注意が必要です。
事務所や自動車の保管場所が都内にある場合は、事務所または保管場所の所在地を所轄する保健所に相談します。
申請者の住所が都内にある場合には、所在地を所轄する保健所に相談します。
②申請書類の提出
申請書類の提出は、施設工事完成予定日の約10日前を目途に提出するとよいでしょう。
主な必要書類は、以下のとおりです。なお、法人の場合は下記に加えて登記事項証明書も必要です。
・営業許可申請書 ・営業設備の大要、配置図 ・営業の大要 ・仕込み場所の営業許可所の写し ・許可申請手数料 ・車検証の写し ・キッチンカーの車庫証明、地図 ・食品衛生責任者の資格証明書類 |
③施設検査の打ち合わせ
キッチンカー入手後、施設検査の日程調整をします。
④施設完成の確認検査
キッチンカーを保健所に持ち込み施設検査を実施します。
⑤許可書の交付・営業開始
許可を取得した跡、法人所在地や営業車のレイアウト変更を行ったときには、どのような変更をしたかの届出が必要となります。営業許可申請事項変更届に営業許可書および変更内容を明記した書類を添付して、変更があった日から10日以内に提出します。
移動販売をスタートする場合には、個人事業主として開業届を提出したり、会社を設立したりする必要があります。
個人事業主として開業する場合には、仕込み場所のある地域を管轄している税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を提出します。また、開業してから2カ月以内に節税メリットが大きい「青色申告承認申請書」も提出しておきましょう。最大65万円の控除を受けることができます。
会社を設立して移動販売をスタートするためには、以下の手続きが必要です。
(1)発起人・重要事項を決める (2)個人の印鑑証明書を取得する (3)会社の代表印をつくる (4)定款を作成する (5)定款の認証を受ける (6)資本金を払い込む (7)登記を作成する (8)登記を申請する (9)登記が完了する (10)税務署などへの届出を行う |
事業年度や資本金の決め方で、設立後の税負担が異なりますので、事前に税理士に相談しておくことをおすすめします。
詳しい手続きについては、以下の記事でご紹介しておりますので、あわせてご覧ください。
▶ 法人設立の10ステップ|設立費用・登記の方法・必要書類ほか
移動販売は、営業場所を自由に選べる、初期投資が少ないなどのメリットがありますが、移動販売を始めるためには、保健所での営業許可を取得したり、さまざまな法律や条例を理解したりすることが必要です。
また、個人事業主として開業する場合には、税務署に「開業届」などを提出すればOKですが、会社の設立手続きはやや複雑で、定款の作成や法務局への登記、資本金の準備が必要です。
移動販売に精通した税理士に相談すれば、個人事業主として開業するか、会社を設立した方がよいのかについてアドバイスを受けることができますし、適切な節税対策を講じることができ、納税額を抑えることが可能です。また、帳簿の作成や申告業務を代行してもらえるため、本業に専念できます。
freee税理士検索では、数多くの事務所の中から、移動販売を開業する際の開業届や青色申告のメリット・デメリット、経理作業などについて相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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・移動販売をしていて各現場で出店料を支払っています 「各地へ出向いて移動販売をしています。 その支払ったお金の用途は、勘定科目では何になりますか?…」 |
監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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