有料職業紹介事業を開業するために必要な手続き

公開日:2019年12月22日
最終更新日:2023年10月17日

この記事のポイント

  • 有料職業紹介事業は、大幅に規制が緩和され、多くの新しい会社が業界に参入している。
  • 有料職業紹介事業には、許認可を取得するための条件がある。
  • 有料職業紹介事業を開業するためには、職業紹介責任者講習の受講が必要である。

 

転職が以前よりもずっと身近になり、さらに有料職業紹介の事業免許の取得について規制緩和されたことから、人材紹介を始める人が増えています。
しかし、人材紹介を始めるためには許認可を取得するための条件を満たす必要がありますし、さまざまな手続きが必要となります。また開業した後も、定期的な収入がすぐに確保できるわけではないことから、資金繰りの計画をしっかり立てることも大切です。

有料職業紹介事業とは

有料職業紹介事業とは、企業から求人案件を仕入れて、その要件に見合う求職者を探し、応募・入社までサポートをするのが主な職業です。
企業と応募者双方の反応が良ければ、条件交渉など行い、入社が決まったら求職者の円満退職から入社までのフォローを行います。

有料職業紹介事業は、1997年から大幅に規制が緩和されたこともあり、多くの新しい会社が業界に参入し、令和2年度職業紹介事業報告書の集計結果によれば、有料職業紹介事業の数は26,793件となっています。

参照:厚生労働省「令和2年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」

(1)有料職業紹介事業は許認可が必要

有料職業紹介事業を開業するためには、許可要件を満たしたうえで、許認可を取得するための講習会を受講しなければなりません。
この講習会を受講しなければ許認可を取得することができないので、まずはこの講習会に申し込むことが必要です。

(2)有料職業紹介事業の許可基準

有料職業紹介事業を開業するためには、以下の許可要件を満たす必要があります。

①直近の貸借対照表の純資産額が500万円以上あること
②事業資金として、自己名義の現金預金額が150万円+60万円×(開業予定事業所の数-1)以上あること
③会社登記簿謄本に有料職業紹介業を行う旨の表記があること
④職業紹介責任者講習を受講もしくは申し込みをすでに終了していること
⑤役員・職業紹介責任者のなかに、欠格事由(※)に該当する人がいないこと
⑥個人情報を適正に管理し、および求人者、休職者の秘密を守るために必要な措置が講じられていること

※欠格事由とは
①禁固刑などに処せられて5年を経過していない場合、または労働法関係、刑法、暴力行為等処罰に関する法律、出入国管理法などで違反があり、罰金刑に処せられてから5年を経過していない
②職業紹介事業の許可を取り消され、取消から5年を経過していない
③成年被後見人、被保佐人、破産者のいずれかに該当し、復権を得ていない者
④未成年者が役員・職業紹介責任者のいずれかに該当し、上記①から③のいずれかに該当する者が法定代理人である

参照:厚生労働省「令和4年4月1日から適用される職業紹介事業の業務運営要領|許可基準」

(3)職業紹介責任者講習の受講が必要

有料職業紹介事業の講習は、厚生労働省指定団体である「一般社団法人 日本人材紹介事業協会」のホームページから申し込むことができます。
自分が住んでいる地域で講習を受けなければいけないというわけではありませんので、急いでいる場合には他の都市で受講することもできます。

参照:一般社団法人 日本人材紹介事業協会

講習に申し込みをすれば、許認可の申請をすることができますので、講習会の申し込み→会社設立→許認可の申請という流れで続けて行う方が、タイムロスがありません。

申請手続きは、申請してから許可証が発行するまで2~3カ月かかります。
申請書の記入内容にミスがあると受け付けてもらえず、それだけ時間をロスしてしまいます。有料職業紹介事業の許認可申請についてサポートをしてくれる税理士もいますので、スムーズに手続きを行いたいのであれば、このような専門家に依頼するのもおすすめです。

有料職業紹介事業を開業したら

無事有料職業紹介事業を開業した後は、求人案件を仕入れることからスタートします。仕入れた求人企業の案件に合う人材を探して紹介し、採用されるまでをサポートしていきます。なかには不当な値引きを要求されたり、採用そのものがうまくいかなかったりすることもありますので、それらを見極めたうえで事業計画を立てる必要があります。

(1)有料職業紹介事業の売上計画の立て方

有料職業紹介事業は、開業するためにさまざまな要件や手続きが必要ですが、必要となる要件はそれほど厳しいものではなく簡単にスタートできるビジネスのひとつということができます。しかし、一方で成功するのは決して簡単とはいえません。
同業他社と差別化するためには、どのような戦略を立てるか、数値目標を含め目標管理はどう設定するかなどを具体的に検討する必要があります。

有料職業紹介事業の平均的な売上単価(報酬料金・フィー)は理論年収の30%から50%(平均35%程度)となっていますから、まずは最低でも月に1件は成約し、年間で12件の成約を目指すのがおすすめです。

※理論年収とは
新しい年度初めから、その年度末まで在籍した場合の年収のこと。

なお、若手対象のジュニア案件の場合には、すぐに採用が決まることが多いのである程度の成約件数を見込むことができますが、ミドル・シニア数は採用プロセスが長くなる傾向があります。そこで、ミドル・シニア案件の目標成約数は年間2件、ジュニア案件の目標成約数は10件などと分けて、その合計で年間12件といった計画を立てるのもよいでしょう。

(2)求職者の情報の入手方法は?

求職者の情報の入手については、SNSを活用したり自身の人脈を活用したりするケースが多いようです。また、過去に転職をサポートした人からの紹介というケースもあります。したがって、有料職業紹介事業を成功させるためには、これらのネットワークを広げて上手に活用していく必要があるということになります。

なお、求職者が見つかったあとも、面接対策のアドバイスなどのサポートをする必要があります。求職者に役立ちそうな情報を入手した場合には、その情報を迅速に本人に提供し、本人にも十分準備をしてもらうよう依頼します。
このようなきめ細かいサポートも、有料職業紹介事業を経営するうえでは求められるのです。

(3)開業したては「サーチ契約」がおすすめ

職業紹介サービスは、一般に登録型紹介、サーチ型紹介、アウトプレースメント型紹介に分けられます。
登録型とは、いわゆる人材バンクで、サーチ型は求人ニーズに適合した人を探しカウンセリングを行い、求人者へ職業を紹介します。そしてアウトプレースメント型は、再就職のための教育研修を行い、その延長線上で職業紹介を行います。
このうち開業間もない会社が参入しやすいのが「サーチ型」です。

参照:独立行政法人労働政策研究・研修機構「 有料職業紹介事業の運営と課題」

サーチ契約とは、サーチ型紹介を行う際に有料職業紹介事業のコンサルタントのサービスを明文化した文書のことです。報酬の計算根拠や支払条件、返金条項などについて明文化します。

選考過程を経て企業側の最終的な意思決定(内定)が行われ、求職者がそれを受諾すると成約になります。サーチ型紹介に係る紹介手数料の基本は、採用された者の年収の一定割合(通常、30%~35%)です。

万が一、求人企業が請求した報酬を支払わない場合にも、このサーチ契約書があれば、請求根拠が妥当であるという証明になります。後々無用なトラブルを避けるためにも、しっかりとサーチ契約書のうえで合意しておく必要があります。

(4)請求書送付の際には締め日を確認しよう

支払条件に付いては、採用されてから実際に入社した後30日以内と規定している人材紹介会社が多いようですが、求人企業の支払条件に合わせなければならないケースもあります。
入社前に請求書を送付すると、求人企業とトラブルになることもありますので、請求書を送付するタイミングには十分配慮するようにしましょう。
とはいえ、企業の締め日が毎月20日締めで翌々月払いだとすれば、それまで入金を待つことになります。人材紹介ビジネスは、1件の成約を得るために平均で2~3カ月の時間がかかることがあります。さらに成功報酬であることから、実際に入金されるまではさらに2~3カ月かかることもあります。
この期間は、キャッシュフローに大きな影響を与えることもありますので、請求書を送付する時には、求人企業の締め日を常に確認し、タイミングに注意する必要があります。

(5)費用はもれなく計上しよう

費用を多くすれば、それだけ税金が安くなります。
何でも経費としていいわけではありませんし、たくさん経費を使えばそれだけ現金が減るということは覚えておく必要がありますが、納税する税額は、利益に税率を掛けた金額ですから、利益が多く出れば税金もそれだけ多くなります。

したがって、事業に関係のある費用はもれなく計上することで、利益を抑え税額が減り、手元資金が残ることになります。

そこでここでは、有料職業紹介事業で見落としがちな経費についてご紹介します。

①カフェのお茶代
打ち合わせのお茶代はもちろん、カフェなどで仕事をした場合には、そのお茶代も経費になります。

②出張費
出張のための交通費、宿泊代はもちろん経費になります。また、事前に出張手当についての規定を作成しておけば、出張した際の出張手当をもらうことができ、この手当も経費になります。

③自宅の家賃
自宅を会社名義で契約すれば、家賃の50%程度を経費とすることができます。

④保険料
法人で契約した保険は、保険の種類によっては一部または全部が経費になります。

⑤居酒屋の飲み代
事業に必要な接待で使用した場合には、経費になります(中小企業の場合)。

⑥経営セーフティ共済
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)に加入すると、掛金が法人税法上の損金(経費)となり、節税効果があります。

⑦小規模企業共済
小規模企業共済とは、中小企業経営者の退職金積立や年金代わりに掛ける共済です。掛金が全額所等控除となるので、会社ではなく、個人の所得税の控除に大きな節税効果があります。

(6)有料職業紹介事業の経理は会計ソフトで

開業したての頃は、本業で忙しく税理士事務所にデータ入力を依頼する記帳代行を利用するケースもありますが、「クラウド会計ソフト freee会計」を活用し、ネットバンキングと連携させれば、自動で銀行のデータが取り込まれ、仕訳までが自動で完了します。
スマートフォンからも確認することができるので、ちょっとした空き時間を活用し、いつでもどこでも経理作業を行うことができます。

さらに、「クラウド会計ソフト freee会計」では、日々の売上や経費がレポート化され、現在どのくらいの売上や利益があるのか、目標までいくら必要なのか、もしくはどのくらい節約しなければならないのかなどが、タイムリーに分かるようになります。

経理作業に時間をとられずに本業に専念できるうえ、データを税理士とリアルタイムで共有することができるので、課題点があればすぐに指摘してもらうことができますし、決算作業までスムーズに行うことができます。

まとめ

以上、有料職業紹介事業を開業するために必要な手続きや要件、開業後に注意すべきポイントなどについてご紹介しました。
人材紹介ビジネスは、開業したらすぐに入金があるわけでなく、成約して入金するまでには平均で3~6カ月かかるのが一般的です。

したがって、許可に必要な「純資産額が500万円以上」や「自己名義の現金預金額が150万円+60万円×(開業予定事業所の数-1)以上」の要件を満たしている場合でも、最初の半年は定期的な収入がなくても事業が回るくらいの資金を用意して、無駄な経費は極力抑えるなどの努力が必要です。

資金繰りの計画については、有料職業紹介事業の開業手続きに精通している税理士に相談してみましょう。場合によっては、必要な開業手続きまでサポートをしてくれることもあります。

有料職業紹介事業について相談する

freee税理士検索では数多くの事務所の中から有料職業紹介事業の開業や、資金計画について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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