決算期・事業年度の意味は?どのように決めるべき?

公開日:2019年12月16日
最終更新日:2023年12月29日

この記事のポイント

  • 法人の事業年度は、1年を超えなければ何カ月でも自由に決めてよい。
  • 事業年度は、消費税の免税メリットや繁忙期などの点から、決める。
  • 決算日から2カ月以内に納税する必要もあるので、その点も考慮する。

 

法人の決算期は、自由に決めることができます。ほとんどの会社は設立日から1年後としていますが、会社に繁忙期がある時にはその時期を避けるなど、業種や自社の事情に応じて時期を変更することができます。
 

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決算期と事業年度

会社を設立した場合には、期間を区切って「いくら儲かったのか」「資本金がどれだけ増えたのか」「財産は会社にどれくらい残っているか」を計算する必要があります。
これを「決算」といい、区切った期間を「事業年度」といいます。
つまり、事業年度を決めるということは、決算日を決めることを意味します。

(1)決算とは

決算とは、一定期間における収益や費用、一時点の資産と負債を計算して、損益と財産の状況を確定させることをいいます。そして、会社の資産状況が分かる「貸借対照表」や、儲けが分かる「損益計算書」を作成し、税務申告や株主総会などに備えます。
年次決算においては、まず1年分の合計残高表を作成し、期中の取引内容を確認します。そして、各勘定科目の金額を確定させ、貸借対照表・損益計算書を作成します。最後に、その決算書を報告し、税金の申告を行います。

年次決算は、正確な処理を行わなければならないうえに、スピードが求められる作業です。
事業年度は「4月1日から3月31日まで」「1月1日から12月31日まで」などと決めます。
そして、この3月、12月のような「最後の月」を決算期または決算月といいます。

(2)事業年度とは

事業年度は、1年(事業年度を変更する場合は、変更後の最初の事業年度については1年6カ月)を超えることはできないとされています。一般的には、1事業年度を12カ月にして月末を決算日とします。
また、法人税法上も1年を超える事業年度は認められず、設立時の事業年度は1年以内に定める必要があります。

(3)事業年度の公告とは

会社を設立する際には、定款を作成しなければなりません。
定款に記載すべき事項は、「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3つに分けられています。
事業年度は、任意的記載事項なので、必ず定款に記載しなければならないというわけではありませんが、税務署に対する「会社の決算期の意思表示を行う」という意味で、事業年度を記載するのが通常です。

なお、国や公共団体、会社が広く一般に対して知らせることを公告といいます。
株式会社においては、事業年度ごとの決算のほか、会社が合併する場合や資本金を減少する場合には、必ず公告をしなければならないことになっています。

事業年度の定め方

よく「3月決算」「12月決算」といわれることから、決算月は3月か12月であると思っている人も多くいますが、中小企業の場合には、特に3月決算や12月決算にこだわる必要はありません。決算には多くの時間をとられるものなので、繁忙期を避けて決めるのがおすすめです。事業の内容によっては、年間のうち特定の月がとても忙しいという場合もありますから、その時期は避けた方が無難です。また、決算には棚卸という作業が必要になるため、在庫の少ない時期を選んで決算期を決めていることもあります。

また、資本金が1,000万円未満の会社であれば消費税は免除されるので、消費税の免税メリットを最大限享受するために設立登記の日からできるだけ離れた月を決算期にするといったことも検討しましょう。

(1)決算期が繁忙期と重ならないようにする

会社を設立したら、決算は1年に1度は必ず行わなければならないイベントのようなものです。また、決算期から2カ月以内に税務申告を行う必要があるので、繁忙期に決算を迎えてしまうと、書類の整理や棚卸などの決算準備が繁忙期に重なって大変なことになってしまいます。
さらに、繁忙期が決算期だと利益の予測が立てにくく、予想外に利益が増えて納税額が増えたり、逆に利益が予想外に低く納税額が減ったりということがあり得ます。
そうなると、事前に節税対策を行う余裕もありませんし、利益の回復を図る余裕もありません。
したがって、決算期から2カ月は繁忙期とかぶらないようにするのがおすすめです。

中小企業の決算期は1月から12月までバラバラですが、強いて言えば、3月、6月、9月、12月が多いようです。
つまり、3月、6月、9月、12月は税理士の繁忙期でもあります。
そこで、なかには「顧問税理士の繁忙期を避けて、じっくり節税対策をしたい」という観点から、決算期を決める経営者もいるようです。
どの要素を重視して判断するかは、最終的には経営者の判断となります。

(2)消費税の免税メリットを考える

株式会社の設立時の資本金が1,000万円未満の株式会社は、原則として設立してから2事業年度は消費税の納付が免税されます。この免税期間をなるべく長くするためには、設立登記の日からできるだけ離れた月を決算期にします。

たとえば、6月8日に設立した法人であれば、5月を決算期にすれば1年目は6月8日~5月31日となりますので、2年目は6月1日~5月31日までの24カ月が免税期間となります。

もし、この法人が7月を決算期とすると、1年目は6月8日から7月31日まで、2年目は8月1日から7月31日までとなり、14カ月が免税期間となりますので、24カ月-14カ月で10カ月も損をしてしまうことになります。

ただし、事業年度を長くとれば必ず得をするというわけでもありません。
第2期目の消費税を納めるべきか否かは、設立当初6カ月間の売上と給与のいずれかが1,000万円以下かどうかで判断されます。
つまり、いずれか1,000万円以下であれば、第2期も消費税はかかりません。
ただし、いずれも1,000万円を超えたとしても、第1期が7カ月以下であれば、第2期は消費税がかかりません。

したがって、売上か給与のいずれかが1,000万円以下であると予想される場合には、第1期は長くとった方がお得であり、1,000万円を超えると予想される場合には、第1期を7カ月以下とした方が有利になるということになります。

消費税の豆知識

2023年10月からインボイス制度がスタートします。
インボイス制度がスタートするからといって、必ずしも適格請求書発行事業者の登録申請をしなければならないわけではありませんが、免税事業者のままだと、こちらが発行する請求書が適格請求書でない場合に取引先にとっては「売上時に預かった消費税」から「仕入や経費で支払った消費税」を差し引くことができず、消費税額の負担が増えてしまうことになります。そして、それを理由として取引を打ち切られてしまう可能性も指摘されています。
免税事業者にとって、適格請求書発行事業者になるということは、消費税の課税事業者になることであり、消費税の申告納税が必要になり経理事務も増加します。
免税事業者のままでいるか、それとも課税事業者となり適格請求書発行事業者になるかは、個々の状況に応じて判断する必要があります。

(3)税金を納める時期を考える

決算期を決める際には、会社の資金繰りから考え、税金を納める時期(決算期末より2カ月後)に会社の資金が潤沢になっているよう意識することも大切です
たとえば、5月末を決算期末とすると、7月末には法人税や地方税、消費税といった税金を納めなければなりません。赤字であっても法人地方税の均等割は避けられないですし、消費税の課税事業者になれば、損益関係なく消費税を納めなければならなくなる可能性もあります。また、決算報酬として月々の顧問料とは別に税理士に顧問料の数か月分の決算報酬を支払うこともあります。

なお、決算以外でも、労働保険料の支払いは7月(分割納付する時には7月、10月、1月)ですし、半年分の源泉所得税の支払いがあるのは7月と1月です。

したがって、これらの事情も加味しながら、7月の納税に対応できるような資金計画を立てる必要があるということになります。

まとめ

以上、決算期や事業年度の意味、事業年度を決める際に注意すべきポイントなどについてご紹介しました。
事業年度を決める際には、決算期と繁忙期が重ならないようにすること、消費税の免税のメリットを最大限生かすことなどについて配慮する必要があります。また、税金は決算後の2カ月以内に納めなければなりませんので、年間の資金繰りも考えるようにしましょう。

なお、会社設立後に「急に利益が出ることになった」という時には、決算期を変更することで節税することができます。

決算を税理士に依頼している場合には、一時的に税理士への報酬が増えることになりますが、長い目で見れば経営状況を予測しやすい流れに変えることができるので、大きなメリットがあります。

税金面や繁忙期、資金繰りの面など、さまざまな観点から考えると、決算期や事業年度をいつにするかは、会社を経営するうえで非常に大切なポイントとなります。
税理士に相談して慎重に判断をするようにしましょう。

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税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
 

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この記事の監修者:アトラス総合事務所

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将来的に事業を大きく成長させていきたいのであれば、会社を設立して社会的信用力をつけることは非常に有効です。会社を設立するメリットは数多くありますが、会計期間を自由に決めることができるという点も、会社を設立するメリットのひとつといえます。
個人事業主と異なり、会社は会計期間を自由に決めることができるため、業務内容にあわせて繁忙期を避けた決算期を設定することができます。たとえば、スキー用品を専門に販売している会社であれば、売上の大半が冬場に集中しますから、この時期を避けて会計期間を決めることができます。
この点、個人事業主は事業年度は1月から12月と決まっているので、1年で最も忙しい時期に決算作業を行わなければならなくなり、十分な節税対策も講じる余裕がなくなってしまうかもしれません。
さらに、資本金が1,000万円未満であれば消費税の免税事業者となりますが、この時設立の日から数えてできるだけ長く決算期となるよう設定すれば、節税メリットを最大限生かすことができます。
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こんな場合、定款に記載した決算期間の変更は行った方が良いですか?

 

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