繰延税金資産の基礎知識|税務メリットは?判断基準とは?

公開日:2019年12月12日
最終更新日:2019年12月12日

目次

  1. 繰延税金資金とは
    • なぜ支払う税金を減少できるのか
    • 繰延税金資産の取り崩しとは
  2. 繰延税金資金の会計処理
    • 対象となる税金は
    • 繰延税金資産の計算方法
    • 繰延税金資産の仕訳例
    • 繰延税金資産の回収可能性の判断指針
  3. まとめ
    • 税理士をお探しの方

この記事のポイント

  • 繰延税金資産とは、将来支払う税金が減る可能性があるという点に資産価値があるとするもの。
  • 繰延税金資産について資産価値があると判断しても、その後業績が悪化した場合には、資産価値はなくなったものとみなされる。
  • 繰延税金資産の対象となる税金は、法人税、地方法人税(国税)、住民税(都道府県民税および市町村民税)、事業税(所得割)、地方法人特別税。

 

繰延税金資産とは、将来支払う税金が減る可能性がある場合に、この「支払う税金が減る」というところに資産価値があると考え、計上する資産のことをいいます。
しかし、いったん資産価値があると判断されるためには合理的な事業計画が必要となりますし、資産価値があると判断されたとしてもその後業績が悪化した時には、その計上した繰延税金資産を取り崩して損失処理をしなければならないなどのデメリットもあるので、利用する場合には十分な注意が必要です。

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繰延税金資金とは

繰延税金資産とは、「税効果会計」という会計ルールのなかで計算される資産です。
「税効果会計」とは、法人税等の金額を調整するという意味の「法人税等調整額」を計上することによって、税引前当期純利益と税金費用(法人税等+法人税等調整額)が合理的に対応するようにする会計上の手法です。

たまに新聞などで「繰延税金資産の取り崩しによる大幅な赤字転落」といった企業業績に関する記事が掲載されることがありますが、これは資産価値があると判断されたあとに業績が悪化してしまい、その繰延税金資産に資産価値がなくなった時に、この繰延税金資産を取り崩して損失処理を行わなければならなくなった事態をいます。

なぜ支払う税金を減少できるのか

繰延税金資産は、支払う税金を減少させる効果を持っていると言われます。
それではなぜ、繰延税金資産は、支払う税金を減少できるのでしょうか。

たとえば、ある年に不良資産の評価損を100計上したとします。
評価損とは、ある時点での潜在的な損失の評価であり、実際には、売却するまでは損益は確定しませんので、税金計算上評価損は認められません。なぜなら、税務上は評価損を認めることはそれだけ利益が小さくなるということであり、税収減につながってしまうからです。そこで、税務上は評価損を認めないようにしているのです。

しかし、この不良債権を実際に処分した場合には、税務上も実際の処分損として認めてもらうことができます。つまり、評価損は、企業会計譲渡税金計算譲渡では、損失になるタイミングにズレが生じることになります。
評価損は将来のどこかのタイミングで税務上も損失として認められるもので、その時には利益が小さくなり、支払う税金を減少させる効果があります。

繰延税金資産とは、このように何かしらの理由で将来支払うべき税金が減る可能性がある場合、その「支払う税金が減る」というところに資産価値を見出し計上する資産のことをいいます。

さきほどの不良資産の評価損を100計上した例で税率30%とすると、将来は30の税金軽減効果があるはずだと考え、その軽減した分には資産価値があるととらえ、繰延税金資産を30計上しておくということになります。

繰延税金資産の取り崩しとは

繰延税金資産は、いったん資産価値があると判断してもその後業績が悪化した場合には、資産価値はなくなったものとみなされます。そして、それまで計上しておいた繰延税金資産を取り崩して損失処理をしなければならなくなります。

新聞などで見かける「繰延税金資産の取り崩しによる大幅な赤字転落」とは、業績が悪化してしまったために繰延税金資産に資産価値がなくなったとみなされ、損失処理を行わなければならなくなった事態というわけです。

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繰延税金資金の会計処理

これまで述べてきたように、繰延税金資産は業績が悪化した時には資産価値はなくなったとみなされるため、将来の回収の見込みについては毎期見直しを行わなければなりません。また、すべての税金が対象となるわけではなく、対象となる税金は限定されています。

対象となる税金は

税効果会計の繰延税金資産の対象となる税金は、利益に関連する金額を課税標準とすることから、法人税、地方法人税(国税)、住民税(都道府県民税および市町村民税)、事業税(所得割)、地方法人特別税です。
したがって、事業税の外形標準課税制度における資本割、付加価値割、事業所税、固定資産税などは、税効果会計の繰延税金資産の対象とはなりません。

繰延税金資産の計算方法

税効果会計は、まず一時差異を把握し集計します。一時差異とは、貸借対照表に計上されている資産・負債の金額と、課税所得計算上の資産・負債の金額との一時的な差異のことで、いずれはその差異が解消するものをいいます。
繰延税金資産は、この一時差異のなかで将来所得が減額することで税金を減少させる資産なので、以下のように計算します。

繰延税金資産=将来減算一時差異×法定実効税率

ちなみに将来解消される可能性のない差異は「永久差異」と呼ばれ、税務会計上は算入できないので注意が必要です。

なお、繰延税金資産とは逆に、将来課税所得を増額させることで税金を増加させる負債のことを「繰延税金負債」といいます。繰延税金負債は、以下のように計算します。

繰延税金負債=将来加算一時差異×法定実効税率

繰延税金資産については、将来的に回収ができるか否かという「回収可能性」を検討して、回収可能性のある金額についてのみ繰延税金資産として計上します。
一方、繰延税金負債についても同様に「支払い可能性」を検討し、将来課税所得が発生することが見込まれる場合のみ、繰延税金負債を計上することになります。

繰延税金資産の仕訳例

将来回収ができると判断し繰延税金資産として計上した場合には、どのように仕訳をするのでしょうか。
ここでは、繰延税金資産の仕訳例をご紹介します。

「当期決算(3月)において、翌期の6月に支払われる従業員賞与にかかる賞与引当金繰入額10,000円を計上した。この賞与引当金は、当期の法人税の計算では損金不参優とするが、翌期において損金算入する。法定実効税率は30%とする。」

繰延税金資産の回収可能性の判断指針

繰延税金資産は、「将来黒字が出る」という大きな前提が必要となります。
将来赤字の場合には、税金はそもそも支払う必要はなくなりますから、それ以上税金の支払いが減るということにならないからです。
繰延税金資産について将来的に回収ができるものと判断し、税金軽減の見込額に資産価値が認められるためには、将来が黒字であるという合理的な事業計画が必要です。
具体的に繰延税金資産の回収可能性を判断するためには、以下のような指標から行います。

要件 回収可能性 将来回収見込年度が長期の場合
(1)過去(3年)および当期のすべての事業年度において、期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得がある。
(2)当期末において、近い将来に経営環境に著しい変化が見込まれない。
繰延税金資産の全額について回収可能性がある。 繰延税金資産の全額について回収可能性がある。
(1)過去(3年)および当期のすべての事業年度において、臨時的な原因によって生じたものを除いた課税所得が、期末における将来減算一時差異を下回るものの、安定的に生じている。
(2)当期末において、近い将来に経営環境に著しい変化が見込まれない。
(3)過去(3年)および当期のすべての事業年度においても重要な税務上の欠損金が生じていない。
スケジューリングの結果、繰延税金資産を見積もる場合には当該繰延税金資産は回収可能性がある。 繰延税金資産の全額について回収可能性がある。
(1)過去(3年)および当期のすべての事業年度において、臨時的な原因によって生じたものを除いた課税所得が、大きく増減している
(2)過去(3年)および当期のすべての事業年度においても重要な税務上の欠損金が生じていない。
将来の合理的な見積もり可能期間(おおむね5年)以内の一時差異等、加減さん前課税所得の見積額に基づいて、当該見積可能期間の一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積もる場合には、当該繰延税金資産は回収可能性がある。 合理的な見積もり可能期間(おおむね5年)を超える場合でも、当該将来減算一時差異の最終回収見込み年度までに解消されると見込まれる場合には、回収可能性がある。
(1)過去(3年)および当期のすべての事業年度において、重大な税務上の欠損金が生じている。
(2)過去(3年)において、重要な税務上の欠損金の繰越期限切れとなった事実がある。
(3)当期において、重要な税務上の欠損金の繰越期限切れが見込まれる。

翌期の一時差異等、加減算前課税所得の見積額に基づいて、翌期の一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積もる場合、当該繰延税金資産は回収可能性がある。 翌期に解消される将来減算一時差異にかかる繰延税金資産は回収可能性がある。
(1)過去(3年)および当期のすべての事業年度において、欠損金が生じている。
(2)当期においても重要な税務上の欠損金が生じることが見込まれる。

繰延税金資産の回収可能性はない。 繰延税金資産の回収可能性はない。

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まとめ

以上、繰延税金資産は、将来黒字であるという合理的な事業計画が必要です。
つまり、将来の経済情勢など誰にも分からない状態で、将来計画を前提に資産価値があるかないかを決めなければならないわけです。
さらにいえば、将来税金の支払いを減らせるのはその時に黒字が出ている場合だけであり、赤字の場合にはそもそも支払う税金がないので、それ以上税金の支払いが減るというメリットもありません。

したがって、繰延税金資産を計上するためには、十分な事業計画を策定するためにも税理士に相談し必要な事項について確認することが不可欠といえるでしょう。

「事業計画書の役割・作成方法」を読む

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