起業・開業したら必要な会計・経理業務

公開日:2018年08月01日
最終更新日:2022年07月06日

この記事のポイント

  • 経理の目的は、経営状況を正確に把握し、正しい経営判断を下せるようになること。
  • 経理は、大きく日次、月次、年次の業務に分けることができる。
  • 経営状況をタイムリーに把握するためには、会計ソフトの活用と税理士との連携が重要。

 

事業を経営するうえで大切なのは、物やサービスを製造したり営業したりといった活動だけではありません。事業を経営するうえで大切なものの1つとして忘れてはならないのが「資金繰り」です。そして、この資金繰りを把握するために欠かせないのが、会計・経理業務です。

会計・経理業務とは、お金の出入りを管理する業務や給与支払い、税金の申告・納付などといった、お金に関する事務全般のことをいいます。

ここでは、起業・開業したら必ず行わなければならない、会計・経理業務の基礎知識についてご紹介します。

経理とは何か

起業・開業したら、製品やサービスに力を注ぎ、営業に時間をかけたいと思う人も多いのではないでしょうか。しかし、起業・開業したら経理・会計の業務は避けては通れない問題です。

お金を数えて、税金を納めるという目的のためだけあれば、日常の経理業務はすべて税理士に任せてしまうこともできます。

しかし、経理にはもっと大切な目的・役割があります。それは「経営状況を正確に把握すること」そして「分析したデータから、経営者が正しい経営判断を下せるようになること」です。

そして、このような経理業務は大きく日次、月次、年次に分けることができます。そしてこの一連の流れを1年間というサイクルのなかで繰り返していくのが、経理業務です。

(1)日次の経理業務とは

毎日行う経理業務としては、領収書の内容を帳簿に記録したり、伝票などの書類の管理を行ったりすることが中心となります。備品の購入や出張旅費の精算といった小口現金の精算なども含まれます。
領収書の数が少ない場合には、週末にまとめて処理するケースもあるでしょう。また、「クラウド会計ソフト freee会計」を導入して、銀行やクレジットカードと連携させれば、明細が自動で帳簿に反映されるので、日時の経理業務はほぼ自動化することも可能です。

(2)月次の経理業務とは

事業の1カ月の活動をまとめ、日々の仕訳の入力にミスがなかったのかをチェックします。請求書の発行や売掛金の回収、仕入れ代金の支払いなども月次で行います。
さらに月次決算を行い、前月と比較して売上や経費の状況も確認します。
その他、給与の計算や社会保険料の計算も、月次で行う業務です。

(3)年次の経理業務とは

年次の経理業務は、1年間の活動の集大成ともいえる決算書の作成です。
決算書を作成することで、会社のその年のもうけ、現在の財務状況を把握することができます。その他、税務申告などもこなさなければならず、決算期は本業以外に必要な業務が多々ある状況になります。

日々の経理業務の基礎知識

経理とは、事業に必要なお金や物の出入りを記録したうえで、経営状況を客観的な数値で表すことをさします。会社では、一定期間の業績を決算という形で報告しなければならず、その決算を行うための元になる作業が、日々の取引データの記録作業なのです。
簿記とは、毎日会社のなかで発生する「お金やモノの出入り」を記録するための方法です。簿記は、複数の帳簿といくつかの手続きによって構成されています。
企業の経理では、特に「複式簿記」と呼ばれる方法に沿って取引を記録します。税務申告を青色申告で行う場合は、複式簿記での記帳が必須になります。

そして簿記で日々の活動の成果を集計し、それを1年分まとめる作業が「決算書の作成」ということになります。したがって、決算書をみればその会社がどのくらい稼いでいるのか、どのような財産をもっているのかといった状況が明らかになります。

(1)仕訳とは何か

簿記では、お金やモノの出入りを記録する方法ですが、この「お金やモノの出入り」のことを「取引」と呼びます。そして、日々の取引を帳簿に入力する時に使われるのが「勘定科目」です。そして、この勘定科目を使って、取引を振り分ける作業のことを「仕訳」といいます。

取引を原因と結果に分類して、それぞれの増減に応じて「借方(左側)」と「貸方(右側)」に記録します。

どちらを借方・貸方に記録するかは、以下のルールに従います。

・資産(事業に必要なお金や物、権利など)
増加すれば「借方」、減少すれば「貸方」

・負債(事業のために外部から借りたお金など)
増加すれば「貸方」、減少すれば「借方」

・純資産(事業の元手、利益の蓄積)
増加すれば「貸方」、減少すれば「借方」

・収益(事業で得たお金)
増加すれば「貸方」、減少すれば「借方」

・費用(収益を得るためにかかったお金)
増加すれば「借方」、減少すれば「貸方」

たとえば、売上の代金100円を現金で受け取ったときは、仕訳は以下のようにします。

(借方)現金 100円 /(貸方)売上 100円

現金は資産なので100円増えたことを借方に記録します。売上は収益なので100円増えたことを貸方に記録します。

(2)仕訳に必要な主な勘定科目

勘定科目とは、日々の取引を記入する時に使われるものです。
取引の原因や結果を「勘定科目」という見出しに基づいて分類します。ある程度共通した勘定科目を使うことで、誰が見ても取引内容がわかるしくみになっています。

簿記で扱う取引は、資産、負債、純資産、費用、収益の5つのグループに区分されます。言い換えれば、すべての取引は必ずこの5つのグループのいずれかに属するということです。
なお、決算書のうち貸借対照表には、資産、負債、純資産が表示され、損益計算書には費用と収益が表示されます。

主な勘定科目は以下のとおりです。

・資産
現金、普通預金、当座預金、売掛金、繰越商品、貸付金、未収入金、前払費用、建物、器具備品、土地 など

・負債
買掛金、借入金、未払金、未払費用、貸倒引当金 など

・純資産
資本金、資本剰余金、利益剰余金

・収益
売上、受取利息、雑収入 など

・費用
仕入、給与、法定福利費、地代家賃、交際費、水道光熱費、消耗品費、租税公課、減価償却費、支払利息 など

どの勘定科目を使うかは会社ごとに自由に決めることができますが、取引の実態に見合ったものを使う必要があります。また、同じような取引については一貫して同じ勘定科目を使わなければなりません。勘定科目が頻繁に変わると過去との比較ができなくなり、経営の分析の妨げになってしまうからです。
どの勘定科目にどの取引を当てはめて仕訳をすればいいのか分からない時には、税理士のサポートを受けるようにしましょう。

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(3)日々の経理業務を効率化する「会計ソフト」

日々の経理業務においては、会計ソフトの導入が欠かせません。会計ソフトは大きく分けて二つの種類があり、ソフトを購入して自社のパソコンにインストールして使用するインストール型と、インターネット上のサーバーにデータを保存するクラウド型があります。

クラウド型の会計ソフトである「クラウド会計ソフト freee会計」には、金融機関とデータ連携することで仕訳の入力がほぼ自動化できるメリットがあります。また、経費精算、請求業務、給与計算などの機能を組み合わせることで、事務作業が効率化できます。
「freee会計」の最大の特徴は、銀行口座やクレジットカードとのデータ連携で、日々の取引を自動で入力してくれる機能が備わっているため、経理作業が格段に楽になります。
「freee会計」を導入し銀行口座やクレジットカードとデータ連携させれば、利用履歴が取り込まれ、取引入力が自動で行われます。したがって、領収書を見ながら勘定科目を確認しつつ入力する必要がなく、日々の経理作業は、最低限の事項だけを後で確認するだけの作業になり、作業がとても楽になるというメリットがあります。

月次の経理業務の基礎知識

月次で行う経理業務としては、月次決算、売上代金の請求書の発行、仕入れ代金の支払い、給与計算、税金納付などがあります。
月次決算は、義務づけられているわけではありませんが、経営状況を把握し、問題点があれば迅速に対策を講じることができるというメリットがあります。

(1)月次決算

会社の経営状況を客観的な数値で把握するために、月次決算をすることをおすすめします。年間に1回の決算だけでは年度の途中で損益を正確に把握することができず、業績が悪化したときの対策が後手に回ってしまいます。

「クラウド会計ソフト freee会計」では記帳などの事務作業にかかる手間が省けるうえに、日々の取引入力より自動でレポートが作成されるので、リアルタイムで経営状況がチェックすることができます。

レポートの種類 使い方のアイディア
入金管理レポート
  • 来月の入金予定を確認する
  • 得意先ごとの金額を確認する
支払管理レポート
  • 来月の支払い予定を確認する
  • 支払い先ごとの支払い予定を確認する
  • 一括振込用のファイルを出力する
  • 請求書が届いたので、いつの買掛金に対応しているかを確認したい
収益レポート
  • 今月の売れ筋商品を確認する
  • 得意先ごとの売れ筋トップ10を確認する
  • 売上が多い月を確認する
費用レポート
  • 今月の費用内訳を確認する
  • 費用が多い月を確認する
損益レポート
  • 今月の損益のうち多かった商品は何かを確認する
  • 収支別の取引先トップ10を確認する
  • 損益の主要項目を時系列で確認する
現預金レポート
  • 今月のお金はどれくらい動いたのかを確認する
  • 先週の現預金の残高を確認する
資金繰りレポート
  • 今月はどういった勘定科目で一番お金を使ったのかを確認する
  • 今後のお金の出入りを踏まえた上で、資金ショートを起こさないかを確認する
集計表
  • 「売上高」として入力した取引の件数を確認する
  • 複数の条件で絞り込みをかけて集計結果を知る

(2)売上代金の請求・仕入代金の支払い

取引先に対して、販売した商品の代金を回収する際に納品書などとともに発行するのが請求書です。請求書を発行するタイミングは、商品を納入する毎に発行する場合と、1か月分をまとめて一定の締め日に発行する場合があります。
請求書の内容にミスがあると、代金を正しく回収できなくなってしまいますので、十分な注意が必要です。
また、仕入れに関する請求書が送られてきたら、請求書の内容を確認してから、代金を支払います。取引先が多い場合などは、間違いや支払い忘れがないように、きちんと管理する必要があります。

(3)給与計算・税金納付など

起業したばかりの企業ではとくに、月々の給与計算も経理担当者が行うケースが多いでしょう。
給与計算の具体的な流れとしては、まず締め日に遅刻や早退などの勤務状況を確認して残業代などを計算します。次に、基本給に残業手当や休日出勤手当などの各種手当を加算して、総支給額を決定します。そして、そこから社会保険料や税金を差し引いて、差引支給額を計算します。

社会保険料とは、国が運営する社会保険料制度のうち、健康保険や介護保険、厚生年金保険、労災、雇用保険のことをいいます。社会保険料は、税金と異なり必ずしも従業員全員が控除の対象とはならないという点に注意が必要です。たとえば、介護保険は40歳以上の従業員が加入対象となりますし、アルバイトなどは労働条件によって各保険の対象とならないこともあります。
従業員を雇っていれば、毎月1回定められた日に給与を支給しなければなりません。残業代の計算のほか、税金や社会保険料の計算と天引きも必要になるため、給与計算は非常に複雑で、税理士や社労士などに依頼するケースもあります。

「freee人事労務」を使えば、これらの複雑な給与計算が簡単に行うことができるだけでなく、計算結果が「freee会計」に転送され仕訳が起票されます。金融機関の振込データを作成する機能もあり、従業員への支払もスムーズになります。

年次の経理業務の基礎知識

年次の経理業務としては、1年間の集大成ともいえる年次決算があります。
また、年末調整も年次の重要な経理業務です。年末調整の対象者を確定し、従業員から提出された書類をもとに、各控除の合計額を計算します。

(1)年次決算

年次決算においては、まず1年分の取引が正しく記録されているのかを確認し、損益計算書や貸借対照表といった決算書を作成し、あわせて税金の申告をします。
決算書は本来、株主や債権者などの利害関係者に経営状況を報告するためのものです。ただし、経営者自身が株主である中小企業では、税務申告が主な目的といってもよいでしょう。

「freee会計」を使用している場合は決算書や申告書は自動的に出力されますが、決算書や申告書の内容チェックは、税理士に依頼することをおすすめします。

年次決算は、期限が決められているため、正確に処理することとあわせてスピードも求められます。処理のモレやミスがないように効率よく業務を進めることが大切です。

法人には、主に以下の税金が課税されます。

・法人税(法人の所得に対して課税される税)
・法人住民税(自治体が住民サービスなどを目的として課税する税)
・法人事業税(すべての事業者が負担する税)
・消費税(地方消費税も含む)

各税金は、決算日の翌日から2カ月以内に申告し、納付しなくてはなりません。期限までに申告や納付ができなかった場合には、延滞税などのペナルティが課されることもあります。なお、法人税・住民税・事業税については、税務署に申請すれば納付期限を延長することもできます。

このほか、個人と同様に固定資産税や自動車に関する税金なども課税されます。法人では土地や建物のほか、機械などの資産についても固定資産税(償却資産税)が課税されます。

法人が納める税金は種類が多いため、申告や納税は税理士にサポートしてもらうなどして、間違えないように手続きをしましょう。

▶ 決算・申告業務(年次決算)とは|自計化を目指すための基礎知識③

(2)年末調整

従業員の給与や賞与から天引きして税務署に納めた源泉所得税は、あくまで概算による金額を前払いしたものに過ぎないため、1年が終わる段階で正確な納税額を求めて払い過ぎや不足していた税額を精算することが必要です。これが「年末調整」です。
年末調整は、従業員から「給与所得者の扶養控除等申告書」などを提出してもらい、従業員ごとに所得控除を適用して本来の納税額を計算し、天引きした金額との過不足を調整します。不足があれば役員・従業員から集め、余りがあれば返金します。

▶ 年末調整の書類|令和3年度分の年末調整で必要な書類は?

年末調整が終わると、役員・従業員に源泉徴収票を発行するほか、税務署に源泉徴収票を、市区町村には給与支払報告書を提出します。市区町村に提出する給与支払報告書は翌年6月以降の住民税に反映されます。

まとめ

以上、起業すると必ず必要となるのが経理業務であり、経理業務を正確に行うことで、経営状況を把握することができ、経営計画の指標とすることができます。

「freee会計」を導入すれば、効率的に経理業務ができるため、起業したばかりでもそれほど経理業務に時間をかけずに済むというメリットがあります。ただし税務については税理士の関与が欠かせませんが、「freee会計」は、クラウド上でデータを管理するため、税理士と同じデータを確認することができるため、タイムリーな意思疎通が可能となるというメリットもあります。
したがって、起業したら早めに税理士に相談し、「freee会計」の導入も含めサポートを受けることをおすすめします。

(1)青色申告は必ず承認を受けておく

青色申告とは、一定以上のレベルで帳簿をつけることを前提に、税制上の優遇が受けられる制度です。欠損金(赤字)を翌年以降に繰り越すことができるほか、少額の資産の取得費を一括で経費にできるなど税制上の優遇が受けられます。

もし、まだ白色申告のままだという場合には、今すぐ管轄している税務署で承認を受けておきましょう。
青色申告の承認を受けるには、青色申告の承認申請書を入手し、会社がある住所地を管轄する税務署に提出するだけです。

申請の期日は、設立した年度から青色申告の適用を受けたい場合は、設立の日以後、3カ月を経過した日の前日までに行う必要があります。
ただし、設立後3カ月を経過した日より前に会計年度終了の日が到来する場合は、会計年度終了の日の前日までに行なえばよいとされています。「青色申告の取消を受けた」などの特段の事情がない限りは、基本的には自動的に承認されます。

なお前述したとおり、青色申告を行なうことになると、複式簿記で帳簿づけを行うこと、帳簿などを最低7年間保存するなどの義務があります。

(2)起業したら早めに税理士に相談する

税法に従って所得と税額を正しく計算するためにも、効果的に節税対策を行うためにも、税制に精通した税理士のアドバイス・サポートを受けることは非常に重要です。

「freee会計」を導入すれば、離れた拠点からでも同じデータを見ることができるため、即時に税理士に経営状況を確認してもらうことができます。また、試算表(貸借対照表、損益計算書)などの帳票も税理士側で出力でき、財務内容についてのアドバイスを受けることができるため、「この問題を今解決するためには、どのような対応を取るべきか」などについて、タイムリーにアドバイスをもらうことができます。

従来のインストール型の会計ソフトでは、税理士に来社してもらうかデータを税理士のもとに転送するなどしなければ、仕訳内容のチェックを受けることができなかったことと比較すると、税理士との連携は格段に行いやすくなったといえます。

(3)経理について相談できる税理士をさがす

freee税理士検索では数多くの事務所の中から起業手続きや、経理業務について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

クラウド会計ソフトの「クラウド会計ソフト freee会計」が、税務や経理などで使えるお役立ち情報をご提供します。
「クラウド会計ソフト freee会計」は、毎日の経理作業を最小限で終わらせることができるクラウド型会計ソフトです。疑問点や不明点は、freee税理士検索で税理士を検索し、起業・開業したら必要な会計・経理業務について相談することができます。

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