電子帳簿保存法とは|2021年度改正(2022年1月施行)のポイントは?

公開日:2021年11月03日
最終更新日:2022年03月28日

1998年に施行された「電子帳簿保存法」について2021年度改正が行われ、大幅な要件緩和が行われました。
申請承認を必要としていた制度の根幹が届出制度に改められ、実施要件についてもこれまでの要件が大幅に緩和される内容となりました。

この改正によって、これまで一部の企業にしか利用されていなかった電子帳簿保存法が広く浸透し、より効率的なビジネス展開が期待されています。

この記事では2021年度改正点を踏まえながら、電子帳簿保存法の概要や基礎知識についてご紹介します。

電子帳簿保存法とは

「電子帳簿保存法」とは1998年に施行された法律で、正式名称を「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(※以下電子帳簿保存法)」といいます。
企業は、帳簿や証憑書類などを原則として7年間保存する義務があり、「紙の原本」を保管する必要がありました。これがIT化の進展によって電子保存も可能になったことを踏まえ、税法の特例として電子データでの保存を容認することとしたのが、電子帳簿保存法です。

20年以上の歴史がある電子帳簿保存法ではありますが、改ざんや仮装の懸念から導入するためには厳しい要件が求められていたため、これまでは一部の企業にしか普及していませんでした。

2005年には一部内容が緩和され、スキャナによる電子保存が認められ、その後2015年及び2016年の税制改正によってさらに要件緩和が行われ、スマートフォンで撮影した画像の保存も認められるなど、徐々に要件緩和は行われてきましたが、依然として導入するためには厳しい要件がいくつもありました。

しかし2021年度改正では、これまでの要件緩和とは明らかに次元が異なる大幅な要件緩和等の改正が行われ、大規模なシステムを導入することなく比較的緩やかな要件を満たせば電子データ保存が可能となりました。

(1)電子帳簿保存法の概要

電子帳簿保存法上、電磁的記録による保存は大きく以下の3種類に区分されています。

電子帳簿等保存:
電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存
帳簿の電子保存、自己作成書類の電子保存、スキャナデータの保存について規定されています。

スキャナ保存:
紙で受領・作成した書類を画像データ(スキャナデータ)で保存

電子取引:
注文書、契約書、領収書など、日々の取引に関する書類について、取引先と電子データでやり取りしている場合の、電子データの保存

参照:国税庁「電子帳簿保存法が改正されました(令和4年1月1日施行)」

(2)電子帳簿保存法とe-文書法の違い

「e-文書法」とは、通常は紙で保存することが必要な文書について、一括で電子化を認める法律です。
「電子帳簿保存法」は、「e-文書法」の法律のなかで、特に国税に関する法律(所得税法など)を対象として、具体的な電子化の対応方法を規定したものです。
つまり、「電子帳簿保存法」と「e-文書法」の関係性は、「e-文書法」という大枠の法律があり、それをさらに細かく規定された各法律の一部として「電子帳簿保存法」が存在するということになります。

(3)電子帳簿保存法における「帳簿・書類」

電子データ保存の対象となっているのは、総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳などの帳簿、および貸借対照表や損益計算書などの決算書類、およびその根拠資料である注文書、請求書、領収書などの証憑書類です。

つまり会計ソフトで入力したデータ・登録されたデータを保存すれば、総勘定元帳などの帳簿や決算書類を印刷・保管することを省略できるというわけです。

※稟議書、株主総会議事録、就業規則、給与規定といった書類は、国税の法律によって保存が義務づけられているわけではないことから、電子帳簿保存法の対象とはなりません。

(4)電子帳簿保存法における「自己が一貫して作成」とは

帳簿を電子データで保存するためには、「保存義務者」が「自己が最初の記録段階から一貫してPCを使用し、人手が介在せずに作成」することが前提となっています。
「保存義務者」とは、国税に関する法律の規定により国税関係帳簿書類の保存をしなければならないこととされているもののことをいいます。

保存義務者が帳簿を電子化するためには、自己が最初の記録段階から一貫してPCを使用して統一的に作成することが前提となっているため、手書きで作成された帳簿については、電子データで保存することは認められません。
※PCでの事務処理は、保存義務者自身によって行われる必要はなく、委託を受けた税理士等の第三者による事務処理も含まれます。

一方、書類(注文書、請求書、領収書など)については、帳簿のように記録を蓄積するという過程がないことから、「最初の記録的段階から」という要件は求められていません。

(5)電子帳簿保存法における「納税地」とは

最近は、サーバが海外というケースやクラウドサービスを利用しているケースが増えていますが、サーバ自体は納税地になくてもよいとされています。
その代わり電子保存されたデータをパソコンのディスプレイの画面および書面ですぐに出力できる状態にしておくことが条件となっています。

(6)電子帳簿保存法における「電子取引」とは

電子帳簿保存法における「電子取引」とは、やり取り自体を紙ではなく電子で行う取引のことです。たとえば、請求書や領収書のPDFファイルを、メールで送信したり受診したりする場合や、WEBページから請求書や領収書をダウンロードして受け取る場合が該当します。
電子帳簿保存法では、その取引に関連する内容をデータで保存しなければならないとされています。
紙で受け取った書類を電子保存する場合には、スキャナ保存制度を活用します。

電子帳簿保存法の2021年改正点

電子帳簿保存法が2021年度に改正(2022年1月施行)され、手続き・電子帳簿の要件が大幅に緩和されました。また、スキャナ保存について要件が緩和される一方で、データ改ざんなどが行われた場合には、重加算税が課されることになりました。

(1)税務署長の事前承認制度が廃止

従来の電子帳簿保存制度は、電子的に作成した国税関係帳簿を電子データで保存するためには、「訂正、削除の履歴が確認できること」「電子化された帳簿やその他の帳簿との間に関連性が確認できること」そして「一定以上条件で検索することができること」などの要件を満たしたうえで、事前に税務当局へ承認申請書、添付書類の提出が必要でした。

この事業者の事務負担を軽減するため事前承認は不要とされ、電子帳簿保存の準備が整った時から利用開始できることとなりました(電子的に作成した国税関係書類を電磁的記録により保存する場合についても同様)。

(2)優良電子帳簿・一般電子帳簿の区分

電子帳簿保存制度について、「優良な電子帳簿」「その他の電子帳簿(一般電子帳簿)」に区分されました。

一般電子帳簿:

一般電子帳簿とは、以下の要件を満たした電子帳簿をいいます。

①電子計算処理システムの概要書やその他の一定の書類の備え付けを行うこと
(システム概要書・入出力容量などの操作方法書類・入出力処理の手順やデータ保存の手順などを明らかにした書類など)

②電子計算機・プログラム・ディスプレイ・プリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、ディスプレイの画面等に整然・明瞭な状態で速やかに出力できること
(すなわち、データを単にデータベースに保存しているだけでは要件を満たしたことにはなりません。)

③国税庁・税務署等の職員が質問検査権に基づいて帳簿書類の電磁的記録のダウンロードを求めた時には、これに従うこと
(調査官からデータの閲覧、またはダウンロードの要求があった場合には、これに応じる必要があります。)

優良な電子帳簿:

改正前の厳格な要件を満たす事後検証可能性の高い電子帳簿です。
つまり、一般電子帳簿の要件に「訂正・削除履歴の確保」「帳簿等の相互関連性」「検索要件」を満たしている必要があります。

①訂正、削除の履歴が確認できること
(訂正や削除を行った場合、その事実や内容が確認できること、その業務の処理に係る通常の期間が経過した後行った場合にその事実を確認できること)

②電子化された帳簿やその他の帳簿との間に関連性が確認できること
(電子保存された帳簿と、その他の帳簿と一連番号が記録されているなど、相互関連が確認できること)

③一定以上条件で検索することができること
(取引年月日、取引金額、取引先等で検索できること、日付や金額については範囲指定できること、2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて検索できること)

(3)優良な電子帳簿を適用した場合の優遇制度

優良電子帳簿の適用を受けた場合には、①過少申告加算税の軽減措置、②所得税の青色申告特別控除について65万円控除の適用、などの優遇措置がもうけられています。

①過少申告加算税の軽減措置
優良電子帳簿については、過少申告加算税の軽減措置が適用されます。
優良電子帳簿によって一定の国税関係帳簿の電子保存等を行う者の電磁的記録に記録された事項について所得税・法人税または消費税にかかる修正申告または更正があった時には、その記録された事項に関して生じた申告漏れに課される過少申告加算税が、通常課される過少申告加算税の額からその申告もれに係る税額の5%相当額が控除されます。
ただし、この申告もれが隠蔽または仮装したものである場合は、適用されません。

また、優良電子帳簿として過少申告加算税の軽減の適用を受けるためには、あらかじめ所轄税務署長に対して、届出書を記載する必要があります。

この過少申告加算税の軽減については、2022年(令和4年)1月1日以降の法定申告期限が到来する事業年度に係る国税から適用されることになります。

②所得税の青色申告特別控除について65万円控除の適用
個人事業主が青色申告特別控除65万円の適用を受けるためには、確定申告書等の提出を、e-Taxで行うこととされていますが、個人事業主が優良電子帳簿の適用を受けた場合には、e-Taxによる申告でなくても、青色申告特別控除65万円の適用を受けることができます。

(4)スキャナ保存制度の規制緩和

スキャナ保存制度を開始するための要件とされていた、税務署長に対する事前の承認手続きが不要となります。また、書類の受領者本人が、スマートフォンによる撮影などでデータ保存する要件についても大幅に緩和されました。
入力期間内にデータ保存したことを確認できて、訂正・削除を行った事実と内容が確認できるシステムでデータを保存する場合には、タイムスタンプも不要となりました。

改正前 改正後
事前承認 税務署長の承認が必要 承認制度が廃止
タイムスタンプ・自署 ①営業担当者は、おおむね3日以内に付与
②経理担当者は、最長2カ月以内に付与
③領収書等へ受領者が自署
①、②について、最長約2カ月以内に統一
削除履歴が残るシステムに2カ月以内に保存する場合にはタイムスタンプ不要
相互牽制・定期検査等 原本とスキャナの同一性を社内または税理士等が確認 廃止
検索要件 ①取引年月日とその他の日付・取引金額と他の主要項目の検索が可能であること
②日付・金額は範囲指定検索できること
③2つ以上の任意の記録項目の組み合わせ条件が可能であること
①については、年月日、取引金額、取引先に限定
②、③については、税務署等の調査官の求めに応じる場合は不要

(5)決算書(BS/PL)、請求書等の電子保存の規制緩和

書類を電子データとして保存するためには、税務署等に事前申請・承認が必要でしたが、これが不要となりました。
また、貸借対照表・損益計算書等の決算書を電子保存する場合や自社発行の請求書をデータとして保存する場合、税務調査時のデータ提供という要件が新設され、一定の要件のもと検索機能の確保は不要となりました。

(6)電子取引にかかるデータ保存制度の改正

電子取引について、請求書領収書等を紙出力することで保存する規程が廃止となり、一定の改ざん防止措置が行われている場合には、紙に出力することなく電子データでの保存が可能となりました。
一方、電子取引の取引情報が隠蔽、仮装された場合には、重加算税が従来の重加算税に加えて本税の10%が加算されることとなりました。

まとめ

以上、電子帳簿保存法の概要、改正点のポイントについてご紹介しました。
「クラウド会計ソフト freee会計」は、2022年の電子帳簿保存法改正に対応しており、訂正・削除履歴機能のリリースにより、2022年の電子帳簿保存法改正後において現行のタイムスタンプの付与作業は不要となります。発行した請求書の履歴・検索機能もリリース予定となっており、「クラウド会計ソフト freee会計」全プランで、損益計算書、貸借対照表の決算関係書類だけでなく、仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、固定資産台帳など、すべての帳簿書類の電子保存が可能です。

電子帳簿保存法のfreee会計対応範囲

国税関係帳簿 国税関係書類 電子取引
決算関係書類 取引関係書類
  • 仕訳帳
  • 現金出納帳
  • 売掛金台帳
  • 買掛金台帳
  • 固定資産台帳
  • 売上/仕入帳
  • など

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 棚卸表
  • など

  • 納品書
  • 請求書
  • 領収書
  • 見積書
  • 注文書
  • 発注書
  • など

  • 銀行明細
  • クレジットカード明細
  • 電子マネー明細
  • 決済サービス明細
  • ECサイト明細
  • 電子書類
  • など

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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