起業のやり方!資金調達・手続き・費用は?

公開日:2023年07月11日
最終更新日:2023年10月17日

この記事のポイント

  • 起業は、個人事業主、会社設立といったやり方がある。
  • 起業前には、起業資金や必要な手続きについて理解しておくことが大切。
  • 起業時は、初期費用をかけ過ぎない方がリスクは少ない。

 

起業したいと思い立ったら、まずは起業の全体像を知ることが大切です。
全体像を把握し「起業できそうだな」というイメージを持つだけで、起業へのハードルがグンと低くなることがあります。
今は、経験ゼロ・実績ゼロ・人脈ゼロのふつうの人が、どんどん起業する時代です。
この記事で起業のやり方について把握し、起業へ向けて第一歩を踏み出すきっかけとしていただけたらと思います。

起業のやり方①基本知識編

起業をするうえでは、具体的な手続きを行うよりも前に「起業資金は、いくら必要なのか」「起業する前に準備しておくことは何か」など、最低限知っておきたい基本的な知識があります。
そこでまずは、起業資金や起業するための準備についてご紹介します。

(1)起業資金はいくら必要?

起業資金は、事業の規模や内容、専業で始めるか、副業で始めるかなど、個々の状況によって大きく異なります。

働き方の多様化を目指し、政府が副業解禁を推奨していることから、サラリーマンが副業として起業するケースも増えています。
日本政策金融公庫の調査によると、起業家のうち、勤務しながら起業した人は27.5%となっています。
このような副業で起業するケースは、とくに女性、若年層で高く、女性が30.2%、「29歳以下」の割合が32.1%となっています。

参照:日本政策金融公庫総合研究所「起業と起業意識に関する調査」

調査結果によると、副業で起業する事業内容としては、ソフトウェア開発の請負、インターネット通販、webライター・校正等などが挙げられています。確かに、このような事業を個人事業主として開業するのであれば、自宅で事業を行うことができるうえに、材料費等もかかりませんから、資金はそれほど必要ありません。

しかし、それまで勤めていた会社を退職して専業で起業する際には、それなりの起業資金を準備しておく必要があります。

では、どれくらいの資金を準備しておくべきかということになりますが、おおよその目安は、以下のポイントを踏まえて検討します。

設立費用
個人事業主として自宅で起業する場合は、事務費用はほとんどかかりませんが、会社を設立する場合には、個々の状況に寄りますが、株式会社で25万円以上、合同会社で10万円程度費用がかかります。

許認可事業の事務費用
事業内容によっては、起業する際に許認可や認証が必要なこともあります。
予め調べておきましょう。

事務所や実店舗の費用
事務所や店舗を借りて起業する場合には、敷金、礼金、保証金、仲介手数料などが必要となります。また、机、椅子、パソコンなどの備品費用もかかります。自宅の一部で起業したり、コワーキングスペースを利用したりする場合には、これらの費用を節約することができます。

運転資金・当面の生活費
起業してすぐに、事業が軌道に乗るとは限りません。
したがって、当面の運転資金や生活費を確保しておきましょう。
目安としては3カ月程度、できれば半年程度の資金を用意しておくと安心です。

起業資金については、できる限り自己資金で用意するのが理想ですが、どうしても足りない資金については借入を検討します。

日本政策金融公庫では、起業を目指す人のためにさまざまな融資制度が用意されています。
また、国や自治体が行っている創業支援制度もあります。
こうした公的機関からの借入では、事業計画書が必要となることがありますので、早めに資金調達に力を入れている税理士に相談しておきましょう。

住民税や国民健康保険料
住民税や国民健康保険料は、昨年の所得に応じて確定します。
したがって、昨年はサラリーマンだったために収入が多く、その後起業して一時的に収入が減っても、昨年の高い収入の基準で課税されるので、起業後に慌てないように、あらかじめ準備しておきましょう。

なお、初期費用は低ければ低いほど始めやすく、リスクも少ないものです。
金銭的なリスクはもちろんですが、起業資金を準備するまである程度時間がかかることを考えると、初期費用はなるべく低く抑えた方が無難です。

たとえば、起業するとおしゃれなオフィスを構えたくなるものですが、今はパソコンとインターネットがあれば、ある程度の仕事はこなせる時代です。自宅やコワーキングを利用して起業している人もたくさんいます。
とにかく、初期費用はなるべく抑えて起業する方法を考えてみましょう。

(2)起業前に済ませておくべきことは?

起業をするうえでは、準備万端ということはありません。
起業してから、足りないものを徐々に補っていくというケースがほとんどですから「完璧に準備しておこう」などと、思う必要はありません。しかし、それでも最低限準備しておくことがあります。

当たり前かもしれませんが、まずは「何をやりたいか」をはっきりさせることです。
自分の強みを活かせること、かつ、やりたいことを明確にします。起業したら、楽しいことばかりが待っているわけではありません。特に起業してしばらくは、苦しい期間が続くかもしれません。それでもなお、やり続けるためには、自分の強みを活かせる好きな分野を選ぶことが非常に大切です。
そのうえで、必要とする顧客がいるかも十分に検討します。どうしたら、顧客に喜んでもらえるか、受け入れてもらえるかを検討することは大変重要です。

なお、家の購入や引越し、クレジットカードの作成は、会社を辞める前に済ませておきましょう。
サラリーマン時代であれば、勤め先の信用度が高ければ源泉徴収票を提出すれば審査上とくに問題なく通っても、起業してしまうと勤め先の後ろ盾がなくなってしまいます。
とくに1人会社の場合には審査が厳しくなってしまい、会社の決算書と自分の源泉徴収票の両方が必要になるため、引っ越しが難しくなることがあります。

また、クレジットカードも同様の理由で起業したばかりの場合には、作りにくくなります。退職前に作っておくようにしましょう。

(3)起業の準備時間がとれないときは?

働きながら、起業準備をするのは大変です。「毎日忙しくて、時間が取れない」という声もよく聞きます。けれども、起業準備は先送りするのはやめましょう。「1週間後には、時間がとれる」「1カ月後には、今の業務が落ち着く」と言い訳を考えていると、そのうちやる気がなくなってしまうからです。

それに、起業したら今よりもっともっと忙しくなります。「忙しいから」など言っていられなくなります。

起業したいと思ったら、何としてでも起業準備の時間を確保することです。
とは言っても「1日のうち、19時から22時までは、起業準備に充てる」といった考えは、余計にプレッシャーになってしまうので、おすすめできません。
通勤時間、移動時間など、スキマ時間をうまく活用すると、かなりの時間を起業準備に充てることができるはずです。

起業のやり方②手続き編

起業資金を確保し、事業内容が固まり、起業の大まかな全体像が見えてきたら、具体的にどのような形態で起業をするか検討します。
起業のやり方としては、大きく個人事業主として開業するか、会社を設立するかに分けることができます。
個人事業主も会社設立も、どちらにもメリット・デメリットがありますので、自分がやりたい事業内容や規模から、個人事業主と会社設立のどちらで起業する方が有利かを検討しましょう。
もし、どちらを選択するべきか分からないという場合には、初期費用を抑える意味からも、個人事業主でスタートし、事業が成長したら法人化を検討するのもおすすめです。

(1)個人事業主でスタートする場合

個人事業主の開業手続きは、開業して1カ月以内に税務署に開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を提出するだけです。

参照:国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」

なお、個人事業主は確定申告をしなければなりませんが、この確定申告には「青色申告」と「白色申告」があります。
節税という観点から見れば、青色申告がおすすめです。基本的な税金の計算方法は青色も白色も変わりませんが、青色申告には白色申告にはない優遇制度が設けられていて、同じ売上高、同じ儲けであっても数十万円も節税できるケースもあります。
青色申告の適用を受ける場合には、青色申告承認申請書を提出する必要があります。

参照:国税庁「所得税の青色申告承認申請手続」

開業したら税務署に提出する主な書類 個人事業の開業届出・廃業届出書
(開業届)
開業の日から1カ月以内
青色申告承認申請書 開業の日が1月15日以前:3月15日まで
開業の日が1月16日以降:開業の日から2カ月以内
青色事業専従者給与に関する届出書
必要に応じて提出する書類 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 随時
所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書 最初の確定申告の提出期限
都道県税事務所に提出する書類 個人事業開始申告書 開業後速やかに

なお、個人事業主としてスタートした後、会社を設立することを「法人成り」といいます。売上や利益が伸びてきたら、会社を設立する方が節税メリットは高くなります。目安としては事業所得が800万円を超すようであれば、税理士に確認したうえで、法人成りを検討することをおすすめします。

(2)株式会社を設立する場合

株式会社の設立手続きは、発起人の決定から登記の完了そして諸官庁への手続きまで、さまざまな手続きが必要です。

株式会社の設立には、募集設立と発起設立があります。募集設立とは、株主を募集する方法で、発起設立は発起人が全株式を引き受ける方法です。
ここでは、一般的な発起人が全株式を引き受けて現金で出資を行う「現金出資による発起人設立」について、ご紹介します。

①発起人の決定
発起人とは、設立時の株主で1名以上いればよく、1株以上の出資が必要となります。個人で会社を設立する場合には、発起人1名が100%出資して、代表取締役社長となります。

②会社の基本事項の決定
会社の目的、商号、事業内容、本店所在地、資本金の額、決算期など、会社の基本事項を決めます。資本金の額や決算期などは、設立後の納税額に関わることもありますので、税理士に確認することをおすすめします。

③定款の作成
定款とは、会社の基本的なルールです。
定款には、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」、会社が任意に定める「相対的記載事項」「任意的記載事項」があります。絶対的記載事項の項目は、1つでも抜けていたり違法だったりすると、定款そのものが無効となりますので、注意が必要です。

④公証人による定款の認証
定款が完成したら、当期をする前に公証人による定款の認証を受けます。

⑤出資金の払い込み
発起人代表の預金口座に、出資金を払い込みます。
そして、確かに払い込んだ証拠として、通帳をコピーします。このコピーは、登記申請の際に必要となります。

⑥設立時役員等の選任
発起人が、設立時役員等(取締役、監査役)を選任します。
役員は、1人でも登記することができますが、取締役会は設置できず株主総会で決議します。取締役会を設置する場合には、取締役は3名以上、監査役は1名以上が必要です。

⑦取締役会の決議
取締役会を設置する場合には、取締役会で代表取締役の選出、本店所在地の決定について決議して、決議書を作成します。取締役1名の場合は、開催する必要はありません。

⑧設立登記の申請
本店所在地を管轄する登記所に、登記申請を行います。株式会社設立登記申請書、定款、発起人の同意書、印鑑証明書等が必要となります。
また、出資金の0.7%(但し、最低15万円)の登録免許税がかかります。

⑧会社設立
会社設立日は、登記を申請した日となります。

⑩税務署や都道府県税事務所等への届出
税務署や都道府県税事務所などに、さまざまな届出を提出します。

提出先 届出書名 提出期限
税務署 法人設立届出書 設立の日から2カ月以内
青色申告の承認申請書 会社を設立してから3カ月を経過した日か、最初の事業年度末日のうち、いずれか早い日の前日まで
給与支払事務所等の開設届出書 給与等の支払い事務を取り扱う事務所等を開設してから1カ月以内
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 規定なし
棚卸資産の評価方法の届出書 確定申告書の提出期限
減価償却資産の償却方法の届出書 確定申告書の提出期限
都道府県税事務所 法人設立届出書 都道府県によって異なる(東京都は15日以内)
市町村の役所(東京23区はなし) 法人設立届出書 市町村によって異なる

(3)合同会社を設立する場合

合同会社は、株主会社と比較すると登録免許税が安く済み、定款認証も不要なので、最近増えている会社形態です。
合同会社と株式会社との違いは、「経営者と出資者が同一である」という点です。そのため、会社の重要な決議事項についてスムーズに判断することができるというメリットがあります。小規模で事業をスタートさせたい場合に、運営しやすい形態です。

合同会社も出資者の決定から、登記の完了そして諸官庁への手続きまで、さまざまな手続きが必要です。

①出資者の決定
合同会社を設立するためには、出資して業務執行を行う社員が1名以上必要です。出資者は、全員がそれぞれ1円以上の出資金を支払い、「社員」と呼ばれ、経営にも参加することになります。

②会社の基本事項の決定
会社の目的、商号、事業内容、出資金などを決定します。この時決定したことは、定款の土台となります。

③定款の作成
社員になる人が定款を作成し、全員で記名押印します。公証人の認証を受ける必要はありません。

④出資金の払い込み
社員になる人が、設立登記前に出資金全額を払い込みます。

⑤設立登記申請
本店所在地を管轄する登記所に申請します。

⑥務署や都道府県税事務所等への届出
税務署や都道府県税事務所などに、さまざまな届出を提出します。届出は、株式会社の場合と同様です。

まとめ

起業をすると「どんなビジネスなら、稼げるのか」「どのようなやり方が、最も安全かつ効率的か」を、常に考えていくことになります。
起業すれば、売上も自分の給料もスケジュールも、すべて自己管理、自己責任となります。けれども、起業して事業がまわりはじめれば、楽しくて充実した毎日が待っています。
起業は、可能性を大きく開花させる手段です。自分が考えたアイデアや行動したことが、お金という形で戻ってくるのですから、自己肯定感が高まります。

手続き面で分からないことや、節税対策、必ず必要となる経理事務については、効率化するためにも税理士等の専門家に相談し、サポートを受けるべきところは受け、効率よく進めることをおすすめします。

起業について相談する

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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