公開日:2018年11月09日
最終更新日:2022年06月22日
消費税は、負担する人と納税する人が異なる「間接税」の一つです。
事業者は、商品やサービスの売上で消費者から預かった消費税を納税しなければなりませんが、他方で、事業者は仕入や経費で消費税を負担する立場でもあります。
そして、事業者が納税する消費税を計算する時は、消費者から預かった消費税と仕入や経費などで支払った消費税をそれぞれ集計し、その差額を計算して、納付することになります。
消費税は、物やサービスを消費した人が負担する税金で、商品などが販売されるたびに販売価格に上乗せされていて、最終的に税を負担するのは消費者ということになります。そして、事業者は「預かった消費税」と「自社が支払った消費税」の差額を税務署へ納付しなければなりせん。
原則として消費税の課税事業者になったら、法人であるか個人であるかにかかわらず消費税の納税義務があります。ただし、実務の負担を考慮して、実際に納税する義務が発生するのは、一定以上の規模の事業者に限られています。
消費税の納税義務の有無は、課税売上高(消費税の課税対象になる売上高)で判断されます。
税法上は「課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超えた事業者」を課税事業者としています。
この基準期間とは、課税期間の前々年度のことです。たとえば、令和3年の申告をする事業者であれば、基準期間は令和1年になります。そして、その間の課税売上高が1,000万円を超えていると、その2年後に課税事業者となります。
つまり、2期前の課税売上高が1,000万円を超える事業者は、消費税の納税義務がある課税事業者となります。
なお、新たに開業した年度とその次の年度は「2期前の課税売上高」がないため、納税は免除されます。ただし、資本金が1,000万円以上の法人等の場合には、新規開業した年から課税事業者となります。
消費税では、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、その課税期間における課税資産の譲渡等について、納税義務が免除されます。
ほとんどの場合、免税事業者は消費税を納めなくてよい分、有利になります。
ただし、免税事業者でも、売上高にかかる消費税より仕入れなどにかかる消費税額の方が大きい時には、課税業者を選択する方が有利になることもあります。
その場合には、自ら選択することで、課税事業者になることができます。
事業者は「預かった消費税」と「自社が支払った消費税」の差額を税務署へ納付します。つまり、事業者は消費者から預かった消費税と仕入や経費などで支払った消費税の差額を納付することになります。
ですから、設備投資や輸出が多い場合には、預かった消費税より支払った消費税の方が多くなるので、課税事業者として申告することで消費税の還付を受けることができます。
免税事業者が課税事業者になる届出を提出すると、2年間は元に戻せないため、仕入れや設備投資に時間がかかっていて、課税事業者かを選択しようとする際には、翌年度がどうなるか見きわめて、あらかじめ税理士に相談し、慎重に決めるようにして下さい。
なお、課税事業者を選択する場合には、その事業年度が始まる前までに、所轄の税務署に「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要があります。
消費税の納付税額は、課税売上高にかかる消費税から以下の項目を控除して計算します。
①控除対象仕入税額 ②返還等対価にかかる税額 ③貸倒れにかかる税額 |
上記3項目のうち、一般的に最も金額が大きく重要性が高いものは、①控除対象仕入税額です。そして、この①控除対象仕入税額の計算方法には、原則課税制度と簡易課税制度の2種類があります。
簡易課税制度は、中小事業者にのみ選択が認められている方法です。
原則課税制度では、控除対象仕入税額を以下の計算式で行います。
①課税売上割合の計算 ↓ ②課税仕入れの集計 ↓ ③課税仕入れにかかる消費税額の計算 ↓ ④ ・課税売上高が5億円以下かつ課税売上割合が95%以上の場合 …③で計算した全額が控除対象仕入税額となる ・課税売上高が5億円超または課税売上割合が95%未満の場合 ①課税売上割合:
②課税仕入れに係る消費税額:
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簡易課税制度は、消費税の計算を容易にする方法で、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の場合には、簡易課税方式による計算も認められています。
仕入などで支払った消費税は実際には計算せず、課税売上高にみなし仕入率と税率をかけて求める方法で、税額を計算する事務作業を軽減することができます。
この時の「みなし仕入率」は、業種に応じて90%から40%の範囲で指定された数値を使用します。
みなし仕入率
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簡易課税制度は、税額計算が簡単にすることができますが、みなし仕入率が低い業種では原則課税に比べて納税額が高くなる可能性があります。なお、簡易課税方式を選択する場合には、「消費税簡易課税制度選択届出書」を所轄の税務署に届け出る必要があります。
原則課税方式と簡易課税方式のどちらが有利かは、実際に計算をしてみなければ分かりませんので、安易に簡易課税方式を選択すると、そのあと2年間は継続して適用しなければなりませんので、どちらを選択するかについては、税理士に相談して綿密にシミュレーションをすることをおすすめします。
消費税は、仕入の他にも、会社の経費や固定資産の取得などについても課税されます。これらの消費税に関する会計処理には、税抜処理と税込処理の2つがあります。
会計処理の方法も、どちらを採用するかは会社の判断に委ねられますが、多少面倒な作業が発生することになっても、税抜処理を選択するのがおすすめです。
なお、免税事業者の場合には、税込処理となります。
税抜処理とは、消費税額を除いて売上、仕入などを計上する方法です。
売上や仕入、費用を計上する時に本体と消費税を分けて計上します。消費者から預かった消費税は「仮受消費税」として、取引先に支払った消費税は「仮払消費税」として処理します。
通常、仮受消費税から仮払消費税を差し引いた金額が納付税額となります。仮払消費税のほうが多い場合は税額の還付を受けることができます。
この計算方法では、消費税が費用や収入として発生せず、損益に無関係で、消費税は一種の「通貨勘定」とみなされます。
税込処理と比較すると、会計処理作業は煩雑になりますが、交際費などから消費税が除かれることになるので、限度額を目一杯使えるというメリットがあります。
税込処理とは、売上や仕入、経費などの価格に消費税を乗せて計上する方法です。
本体と消費税を区分せず収益と費用に消費税を含めて計上します。税込方式では、仮受消費税や仮払消費税といった勘定科目は用いられません。
税込方式を採用している場合には、会社はその決算において納税額を租税公課勘定に計上することになります。
税込処理は、計算方法が簡単であるというメリットはありますが、交際費や少額減価償却資産などで消費税額が加算されるので、その意味でも、税抜処理より不利になります。
消費税の課税事業者は税務署への届出が必要です。
この場合、基準期間が1年に満たなければ、基準期間における課税売上高を1年分に換算して1,000万円以下かどうかが判定されます。
なお届出は、年度が始まってからでは間に合わないケースもあるので十分に確認しましょう。
なお、その他にも消費税に関する届け出事項にはさまざまな種類があり、届出書類の様式は国税庁ホームページから、ダウンロードすることができます。
ここでは、消費税に関する届け出事項のうち代表的なものをご紹介します。
○消費税課税事業者届出書(基準期間用) 基準期間(2期前)の課税売上高が1,000万円を超えた場合に速やかに提出 ○消費税課税事業者届出書(特定期間用) ○消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書 ○消費税簡易課税制度選択届出書 ○消費税簡易課税制度選択不適用届出書 ○消費税課税事業者選択届出書 ○消費税課税事業者選択不適用届出書 ○消費税の新設法人に該当する旨の届出書 |
以上、消費税の基礎知識についてご紹介しました。
なお、2023年(令和5年)10月1日から「適格請求書等保存方式」が導入されます。適格請求書発行事業者は、適格請求書(インボイス)を交付して、その写しを保存する義務が課され、買い手は、帳簿及び適格請求書の保存が仕入税額控除の要件となります。
不明点等があれば、早めに税理士に確認し、必要な手続きやメリット・デメリットについてアドバイスやサポートを受けることをおすすめします。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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