公開日:2022年12月07日
最終更新日:2023年10月28日
これから事業を始めようとする場合には、個人事業主としてスタートするパターンと会社をつくって起業するパターンがあります。
会社形態には、株式会社・合同会社・合名会社・合資会社があります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分の希望する形やこれから行おうとしている事業の内容に合わせた会社形態を選択することが大切です。
会社形態とは、その文字のとおり、会社の形態(組織立ったもの)のことであり、会社法上の会社としては、「株式会社」、「合同会社」、「合名会社」、「合資会社」があり、その他の法人としては、「一般社団法人」「一般財団法人」「社会福祉法人」「NPO法人」などがあります。
法人とは、「法的に認めた人」です。本来、人といえば、世の中には人間しかいませんが、経済活動を円滑に行うために、人の集団である会社に人格を与え、人間同様に法律行為を行えるようにしています。
法令の定めに従って法人を設立し、法人格が認められることで、法人そのものが権利を持ち、義務を負うことになります。
法人 | 公法人 | 独立行政法人 一般公共団体(国、地方公共団体など) 特殊法人(NHKなど) |
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私法人 | 営利法人 | 株式会社 合同会社 合資会社 合名会社 |
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非営利法人 | 公益法人 | 社会福祉法人 医療法人 NPO法人 学校法人 宗教法院 財団法人 社団法人 |
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中間法人 | 協同組合 労働組合 |
会社には、会社法によって設立される会社と、その他の各種法令によって設立される法人があります。
会社法上の会社には、株式会社・合同会社・合名会社・合資会社があります。
設立される会社のほとんどは、株式会社か合同会社であり、合名会社や合資会社の設立件数は非常に少なくなっています。
以下は、令和4年9月に設立された会社形態別の数ですが、最も多いのが株式会社で89.98%、次いで多いのが合同会社で9.65%となっています。
株式会社 | 合同会社 | 合名会社 | 合資会社 | |
令和4年9月設立数 | 76,446 | 8,200 | 77 | 232 |
割合 | 89.98% | 9.65% | 0.09% | 0.27% |
株式会社・合同会社・合名会社・合資会社には、主に以下のような違いがあります。
所有と経営の一致を前提とするのが、合名会社や合資会社です。
株式会社の特徴は、所有と経営が原則として分離している点、そして全出資者が有限責任という点です。
合同会社も、所有と経営の一致を前提とし、全出資者が有限責任ですが、株式会社と比べると、定款に定めることを前提とした自由裁量の余地が大きいという特徴があります。
株式会社 | 合同会社 | 合名会社 | 合資会社 | |
出資者の名称 | 株主 | 社員 | 社員 | 社員 |
出資者の責任 | 有限責任 | 有限責任 | 無限責任 | 無限責任と有限責任 |
決算公告 | 必要 | 不要 | 不要 | 不要 |
意思決定機関 | 株主総会 | 社員総会 | 社員総会 | 社員総会 |
株式会社とは、営業事業を行う法人としては最も設立数の多い法人で、上場企業から中小企業までさまざまな規模の株式会社が存在します。
会社法施行によって、最低資本金制度が撤廃されたことから、1円でも株式会社が設立できるようになりました。また、取締役会を設置しない取締役1名の株式会社の設立も可能となりました。
株式会社の機関として、重要事項を決定する株主総会を設置しなければなりませんが、取締役会を設置しない場合には、取締役は1名以上いればよいとされています。
取締役会を設置する場合には、原則として取締役は3名以上・監査役は1名以上を置く必要があります。
株式会社は多様な機関設計が可能となっていて、会計参与や会計監査人の設置などの機関設計も考えられます。
株式会社の出資者は、株主と呼ばれ、会社の債権者などに対して負う責任は限られています(有限責任)。合名会社や合同会社の出資者には、無限責任を負う出資者がいます。無限責任とは、会社の債務を会社の財産で弁済できない場合には、個人の財産で弁済しなければならないという、重い責任です。
株主には、そのような責任はなく、会社に何千万という借金があっても、株式の引受価額だけ責任を負います。このような特徴から、株式会社は不特定多数の人から出資を集め、大きな会社に成長させたい場合に適している会社形態といえます。
株式会社の主なメリット ・ポピュラーな会社形態であり、取引先に対して安心感を与えることができる。 ・投資家から資金調達をしやすい(ただし商工中金は、株式会社と合同会社は、信用力の面で大差ないと評価しています)。 株式会社の主なデメリット |
合同会社は、平成18年施行の会社法で創設された、比較的新しい形態の会社です。
株式会社と比較すると、設立時の登録免許税が安かったり、公証人による定款認証が不要だったりと、低コストで会社を設立することができるというメリットがあります。
さらに、定款自治の余地が大きいという特徴もあり、好きなように会社を経営しつつ、有限責任でもあるという「いいとこ取り」の会社形態であることから、設立数も年々増えています。
合同会社は、出資者である社員の中から業務を執行する業務執行社員を選び、その中から会社を代表する代表社員を選びます。
厳密には異なりますが、株式会社の「株主」が合同会社の「社員」であり、株式会社の「取締役」が合同会社の「業務執行役員」、そして株式会社の「代表取締役」が合同会社の「代表社員」に該当するイメージです。
株式会社 | 合同会社 |
株主 | 社員 |
取締役 | 業務執行社員 |
代表取締役 | 代表社員 |
合同会社の主なメリット ・設立費用が安く、設立手続きもカンタンで早く設立できる。 ・所有と経営が一致しているので、定款による自治運営が可能。柔軟な機関設計、損益分配が可能となる。 合同会社の主なデメリット ※ただし、合同会社を設立して事業が軌道に乗り株式会社に変更したくなった場合には、株式会社への変更は可能。 |
一般社団法人・一般財団法人とは、平成20年施行の一般社団法人及び一般財団法人に関する法律によって創設された社団法人及び財団法人です。
「社団法人」とは、人の集まりである団体に法人格を与えたものです。
「人の集まり」ですから、一般社団法人を設立するためには、2人以上の社員が必要です。
一般社団法人は、重要な事項を決定する社員総会の設置が必須となっていますが、理事会を設置しない場合は理事が1名以上いればよいとされています。
一方理事会を設置する場合には、理事を3名以上、監事を1名以上置く必要があります。
「財団法人」とは、財産に対して法人格を与えたものです。
「財産」に対して法人格を与えるものであることから、総資産額が2期連続して300万円を下回ると解散事由になります。
一般財団法人は、評議員が3名以上で評議員会を構成し、この評議員会で重要事項を決定します。
また、理事会は必ず設置しなければならず、理事は3名以上、監事は1名以上置く必要があります。
社団法人も財団法人も内閣府または都道府県知事の公益認定を受けることで、公益社団法人・公益財団法人に移行することができます。
一般社団法人・一般財団法人の主なメリット ・税法上のメリットがある。 一般社団法人・一般財団法人の主なデメリット |
NPO法人とは、営利を追求するよりも、社会貢献活動や社会問題を解決することを活動の目的とする非営利法人です。
NPO法人を設立するためには、所轄庁の認証を受けることと法人登記をすること、そして登記完了後に登記完了届の提出が必要です。
さらに、これらの手続きの他に、いくつか条件を満たす必要があり、かつ運営を行ううえで提出書類が多いなどのデメリットはありますが、法人税などの税金が減免されるというメリットがあります。
NPO法人の主なメリット ・社会的な課題に対して公的機関と連携しやすい。 ・税法上のメリットがある。 NPO法人の主なデメリット |
各法人の設立費用や設立に必要な人数、定款認証の比較については、以下のとおりです。
なお、ここで掲載する設立費用は法定の費用のみとなっており、印鑑証明書等の公的書類の実費などは別途かかりますし、専門家に依頼した場合にはその報酬がかかります。
株式会社 | 合同会社 | 一般社団法人 | 一般財団法人 | NPO法人 | |
設立に必要な人数 | 1人以上 | 1人以上 | 1人以上 | 理事3名以上、監事1名以上 | |
設立者の名称 | 発起人 | 社員 | 設立時社員 | 設立者 | 理事 |
業務執行する役員 | 取締役 | 業務執行社員 | 理事 | 理事 | 理事 |
代表者 | 代表取締役 | 代表社員 | 代表理事 | 代表理事 | 代表理事 |
最高意思決定機関 | 株主総会 | 社員総会 | 社員総会 | 評議員会 | 理事会 |
設立時に必要な 出資金の額 |
1円以上 | 1円以上 | なし | 300万円以上 | なし |
設立時の定款認証 | 必要 | 不要 | 必要 | 必要 | 必要 |
設立費用 | 登録免許税 15万円 公証人手数料 5万円 定款印紙代 4万円 |
登録免許税 6万円 定款印紙代 4万円 |
登録免許税 6万円 公証人手数料 5万円 |
登録免許税 6万円 公証人手数料 5万円 |
0円 |
・設立時の登録免許税は、資本金の額の100分の7 株式会社の場合にはその金額が15万円に満たないときは、15万円、合同会社の場合には、その金額が6万円に満たないときは6万円 ・電子定款の場合には、4万円の収入印紙は不要 |
これから事業を行いたいと考えた場合、個人事業主でスタートするか、会社を設立するか、そして会社を設立する場合にはどのような会社形態で設立するかを検討することになります。
そして、会社を設立した後は、税務申告のための準備や会計処理、資金ショートを起こさないための資金繰りについても理解し、すべてを自分の裁量で判断しなければなりません。
さらに従業員を雇用すれば、源泉徴収事務や社会保険の労務手続きなども必要になります。
事業は、準備段階から想定外のことが起こることが多々あります。
したがって効率よく事業をスタートさせるためにも、不明点や疑問点がある場合には、早めに税理士や社会保険労務士、司法書士や行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。
定款の作成や認証は司法書士、各種許認可の申請や外国人を雇用する時は行政書士、社会保険や労働保険などの手続きや就業規則の作成などは社会保険労務士、税務署への届け出や税務上のアドバイス、決算申告などは税理士に相談することができます。
なお税理士には、起業前の準備段階から、ビジネスプランや事業計画の相談、資金調達サポート、補助金・助成金サポート、創業融資等の資金調達サポートなど、事業を始めるうえで必要となるサポートを受けることができます。
税理士のなかには、司法書士や行政書士など他士業と連携して、設立手続きはもちろん、法務、税務全般にわたりサポートしてくれるケースもありますので、まずは起業・会社設立のサポートに精通している税理士に問い合わせをして、直接面談してみることをおすすめします。
freee税理士検索では、数多くの事務所の中から、会社形態や会社設立、会社設立後の資金調達や資金繰り、事業計画の策定、決算申告、節税対策などについて相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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